IS Striker   作:アーヴァレスト

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それは奇跡の再現、奇跡の果てに得る最後の力とは?


再誕の白

「警報···!?敵が来たのか!?」

「そうだ、少し遅いがな」

「つっ···!?」

 

後ろからした声に振り向くと、そこには俺に似た姿の男がいた

 

「何もんだお前?」

「未来のお前、本人だ」

 

姿はそのまま、声だけが変わった、低く重い声に

 

「俺は世界に捨てられた、その意味がわかるか?」

「言ってろ、今更言われて驚くと思ってんのか?それに···どうでもいい、俺が好かれる必要は無いんだからな」

 

そう、世界に好かれる必要なんてない、人はそれぞれ別の生き物、好かない奴もいれば、好くやつもいる

 

「そうか、やはり俺はここで死ぬべきだな」

 

未来で何があったかは知らない、知るすべがないから

だけどこれだけは言える、コイツは何かを知っている!!

 

「お前は何を知ってんだ?」

「お前の進んだ先にある答えを」

「その先は、変えてやる」

「そうか···ならば死ね」

 

奴が纏ったのは···俺のよく知る機体を黒く塗りあげたモノだった

 

「白···式···!!」

「そうだ、お前が生涯持ち続けた宝物、その果ての姿だ」

 

ゆっくりとした歩を進めながら未来の俺は語る

 

「残ったものは死、だけだ。できるだけ多くの人を救おうと殺して殺して殺し尽くした···結果その数千倍の人々を救えたよ」

「残ったのは後悔、だけか!?」

「そうだ、お前···いいや俺には人を救う資格などない」

 

なら、それを否定してやる

 

「なら、俺とお前は別人だ、俺は後悔だけはしない!!だから、お前の事も認めない!!間違った理想は、俺自身の手で叩き潰す!!」

「愛機もなく、どう戦うという?」

「つっ!!」

 

確かに、白式はない。それでも、今の俺にはコイツを倒さなければいけない理由がある!!

 

「それでも···!!」

「その甘さが、おまえを殺す!!」

 

剣戟が始まる、相手の攻撃を躱し、掻い潜り、攻撃を与える

同時に軌道を逸らして攻撃を無効化する

···はずだった

 

「ぐっ···がっ!!」

 

結果はボロボロだ、未来の自分に打ち負けていた

攻撃の間にもその記憶が垣間見えてしまった、それで理解した、してしまった

 

「うっ···ぐっ!!」

 

今、ようやく。カズマの言葉の意味を、その無念さを理解出来た

全てを救おうとした道の果てには、その全てを失う断崖があった

あぁ、もう···月の明かりも、星の明かりすらも···もはや、見えない

 

「死ね、織斑·一夏」

「1つ、聞きてぇ」

「なんだ?」

「仲間を傷つけた気分は、どんなだ?」

「最悪だ」

 

そう言って、未来の自分はそのまま俺を投げ飛ばした

 

「がッ!!」

 

そうだ···もう、(奇跡)は無く、(希望)も無く、(理想)は闇に溶けてしまった

それでも···あぁ···それなのにッ!!

 

「あぁ、あぁぁぁッ!!」

 

この体()が残っている!!

だからこれは、今抱いた感情は祈りじゃなく

もっと独善的で、矮小で、どうしようもなく無価値な自分に向ける!!

 

〈戦場、織斑·一夏(未来)〉

 

「馬鹿な···白式の、復活だと!?」

「・・・」

 

この世界、俺が救世主としての運命を歩き始めるその日に自分を消そうと現れた

しかし結果はどうだ、最悪の一言だ

この日まで織斑·一夏は白式を再展開不能だったはずだった

なのに今、目の前にいる織斑·一夏はそれを纏っている

両手には剣とクロー、どちらも零落白夜の発動で高い威力を出す兵器だ

 

「何故かはわかった、俺に覚悟がなかったからだ」

「つっ···!!」

「こいよ、未来の自分()···俺はお前という自分を、打ち負かすッ!!」

 

その瞳には強い覚悟があった

瞳の色が、金になっている

その力がなにか知っていても、()は止まらんだろう

だから···

 

〈戦場、織斑·一夏〉

 

「お前は英雄になりたいのか!?」

「なりたいんじゃねぇ、絶対になるんだよ!!」

「そうだろうなッ!!なぜならそれがお前にとって、唯一に等しい感情だからだ!!」

「何をッ!!」

 

激しい戦闘が再開される、その速度はイグニッションブーストのまま空中戦を繰り広げる程だ

 

「お前は、憧れただけだ!!」

「つっ!!」

「お前を助けた、姉である織斑·千冬のあの姿があまりに美しく、同時に自分の無力さを知ったあの日!!そこから、自分とは違う藍澤·カズマの行為の尊さに涙し憧れた!!」

「それの何が悪いッ!!」

 

確かに憧れた、それを己の夢と描いた

だがそれの何が悪い!?

確かに夢は夢でしかない、絶望する程の現実だってある!!

だけど、それでも叶えようと努力さえすれば、本当にそれはきっと!!

 

「自分を犠牲にして誰かを救おうなどと、空想のお伽噺だ!!そんな夢しか抱けぬならば、抱いたまま溺死しろッ!!」

「するかよ、するわけには行かねぇんだ!!」

 

剣戟は鋭さをさらに増し、一撃が必殺となる

 

「そうだ、それこそが俺の過ちのはず!!」

「決して、間違いなんかじゃない!!」

 

俺はそう叫び、裂帛の勢いに乗せ、未来の自分の雪片弐型を破壊した

そして···

 

「俺の勝ちだ」

「あぁ、そして、俺の敗北だな」

「俺は、未来に何が待ち受けていようと後悔はしない···絶対に乗り越えてみせる」

「そうだな、そうでなければならない」

 

ざぁ···という音を残して、未来の自分はこの世界から消えた

元の世界に帰ったのだろう、きっと

 

「まだ、戦いは始まったばかりか」

 

周りから敵の反応が来ている、すごい数だ

思わずうんざりしてしまう···

 

「ん、千冬姉ぇ!?」

 

味方のIFFを覗いたら千冬姉ぇが戦闘していた、かつての愛機たる暮桜で

 

「マジかよ、急いで向かわねぇと!!」

 

かつてカズマにまずは家族から救えるものを救うと言った手前、ここで千冬姉ぇを救えなかったら

 

「救えなかったら、男じゃねぇ!!」

 

俺は復活した愛機、白式で再び空を駆ける




はい、白式復活ぅ!!

いやはや本当に難産だった、次はサクサクしたラスクみたいな内容だよ!!


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