IS Striker   作:アーヴァレスト

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それは一人の青年の物語
惨劇を生み出して世界を壊し、創造による破壊と再生を行った者の記憶

それを知る人物が語る、もう一つの真実とは?


騒乱編Ⅱ
破壊と再生、その先を望んで


「捕まっちまったか・・・」

 

のんびりと起き上がりながら俺はそう言う

これもカズマと計画した流れではあるが面倒な事には変わらない

 

「お前達の隠してきた秘密の一つ、今日ここで明かしてもらうぞ?」

「やれやれ・・・お前ら、それが()()()()()を持つのか分かっているのか?」

 

俺達がコイツら・・・一夏達に隠してきた事、それは聞けば後悔するようなものだ

それほどに、聞いたことにたいして後悔することになるのは間違いない

 

「つっ・・・!!」

 

これから語るのはアイツを語る上で最も忌むべき罪、人類を敵に回して勝ってのけた男の最期、愛しき者を失った時の行動を・・・

 

「語れるのが俺だけしかいない、最大にして最悪の出来事だ、それでも聞く覚悟があるというのなら・・・」

 

殺意を解放して睨みつける、これは俺の決意であると同時に本心だから

 

「死ぬ気でアイツを止めてみせろ。でないとお前ら、何も出来ずに死ぬぞ?」

 

それが結果となる、どのように未来を作ろうと、すべてを無意味にする力をカズマは持っているのだ

本人はそれを知ってるのか知らないのかはぐらかすが、俺はその一面を見ているからこそ分かる、アイツは神をも殺せる存在だと

 

「覚悟はある、刺し違えてでもカズマを止めるさ」

「いいだろう、その決意が揺らがぬよう、話してやる。一人の男の、運命に反逆した物語をな」

 

これから俺が語るのは真実、繰り返してきた転生の中で一番最悪の結果に陥った記憶だ

 

「俺とカズマ、もう面倒だから俺達は幾つもの世界を転生してきた。その原罪はある一つの世界で生み出されたものなんだ」

「え・・・?」

 

幾つもの世界、とはこれまで言ってなかった事だ

()()()()()()とは言って来たが、()()()()()()と言うのはおそらく初めてだろう

 

「その世界は魔法と科学が高次元で融合した世界だった。そこでのカズマは一時期、本当に救われていたような・・・とても穏やかで暖かな時間を満喫していたよ、心の底からな」

「前に聞いていた、最初に転生した世界なのか?」

「その通りだ、最初に転生した世界で、自分が壊してしまった故郷を思い出して、思わず泣き出すほどに救われていた・・・あの時までは」

 

そう、あの時までは、だ

その理由は・・・

 

「自分の全てをとして蘇生した女の子・・・()()()()を失って、アイツは元に戻ってしまった。彼女からしてみれば本望なのかもしれないが、少なくともカズマはそれを望んでなかったのだから」

「アリシア・・・?」

 

その名はおそらく初めてだろう、一度も言っていない名前。あの世界・・・"魔法少女リリカルなのは"の世界の事は一度も語っていないのだから

 

「カズマがその世界で自分の命の半分を賭けて救った人物だ、聡明で、愛らしい女性だったよ」

 

時たまイタズラを仕掛けてきていたが、それも愛おしいと思えるほど心優しい女性だった。今でも思い出すと、微笑んでいる顔をしか浮かんでこないぐらいに

戦いの中で育ってきた俺や、戦争で自身を狂わせてしまったカズマにとって、彼女の存在がどれほど大きかったか、今になってわかる

 

()()()()()()()()、ただそれだけの事が、俺達にとって何にも代え難い存在になっていた。彼女の為なら命もかけると、そう決意していた・・・なのに」

 

結果は、惨劇だった

そう決意していた、そのために戦った、命さえとして寿命を削って得た結果は・・・

 

「俺とカズマは、敵に敗れた」

「なっ・・・!?」

 

俺とカズマが組んで戦えば、国連軍が総力戦で挑んできても半年は均衡を保てる。このことは前に言ってあるが、それを()()()()()()()が超えていたのだ

 

「そして、カズマは身体の55%を喪失した」

「馬鹿なっ!?敵はそれだけの力を有していたのか!?」

「あぁ、敵はそれだけの力を持っていた、決戦時は更に出力を上げていた」

 

限界まで出力を上げた事で敵には絶対性がなくった、それを利用して辛くも勝ったが、こちらも甚大な被害を被った、それは・・・

 

「決戦後、残った寿命はたったの5年だった。残ったその期間、カズマが何をしていたかわかるか?」

「・・・」

「贖罪だよ、月命日に彼女の墓に行って、献花していた。季節の花と、彼女の好きだった花を添えてな」

 

毎月、月命日にアリシアの墓の前にいるカズマはまるで抜け殻のようだった。魂の抜けたように全ての事を諦めていた

正しく絶望のドン底。それでも・・・

 

「それでも・・・最後の最後に、奇跡は起きた」

「え・・・?」

「奇跡・・・?」

 

一夏達が驚く、その奇跡、最後の奇跡は・・・

 

「死にゆくその時に、彼女と再会したんだ。死にゆく俺とカズマの前に現れた彼女は、言葉を何も発しない代わりにいつものように微笑んで・・・」

 

ただ一言、たったの一言。ただそれだけで、ただそれだけに・・・どれほどの意味があったか・・・

 

「ありがとう。ただそれだけを告げて、消えていった・・・」

「・・・」

 

その言葉一つで、カズマがどれほどの涙を流したか。考えずとも分かる

 

「救った者に救われて、再度の転生を願った」

「今度は、このような事にならないように・・・と?」

「あぁ、自分の手で、今度こそ守れるように、とな」

 

守りたかったものがあった、救いたい存在がいた。それを今度こそ守れるように・・・と、呪うかのように心の底から祈った

その結果の果てに、今アイツが思うのは・・・

 

「アイツは死にたがっている、心の底では死に場所を求めている。だからお前たちが止めるというのなら・・・」

「つっ・・・」

「殺すな、生かせ。殺す気で殺すな」

「なんてしんどい二律背反だよ、それ・・・」

 

それでもやってくれるだろう、一夏達なら。何故なら・・・

 

「俺達にはまだまだお前やカズマが必要なんだ、勝手に巻き込んでおいて殺してくれと世界を転々とするなんて許さねぇよ」

「・・・そうだな」

「だから、さ」

「止めてくれ、アイツを」

 

俺には出来ないことを任せる。一夏達だからこそ任せられる

 

「お前の、前に進もうとするその勇気、それこそが未来を掴む鍵だ」

「おう・・・」

 

微笑んで、互いに拳を打ち付ける。そこには互いを信じる信念があると、信じて




主人公が悲しいよぅ・・・主人公が邪神化しそうだよう・・・

でも、愛ゆえに壊れるのってある意味とても普通じゃないかと思う作者でした




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