IS Striker   作:アーヴァレスト

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それは最優と最恐の違い
それでも挑むのは、守るべき大切な存在があるから


闇を抱える者VS世界が生み出した災禍

「今度は(たばね)か···」

 

千冬の次にやられたのは束だった、しかも同じやり口である事から同一犯だ

 

「しかしやられる寸前で情報搾取に成功してくれたあたりは感謝だな、本当に···」

「この情報がなかったら今頃詰んでいた、感謝してもしきれん」

 

敵の攻撃で意識を失いながらも彼女は敵機の情報を吸い取った

そして判明したのは最悪の一言に尽きた。

日本の倉持技研に提供したアメリカとの共同開発機、Z-1(ゼータ·ワン)···(アマツ)だったのだ

しかもこの試作機はかつて自爆欠損事故を起こした"いわく付き"の機体である

 

「悪夢か、これは?」

「残念ながら現実だ、最悪なんて昔に通り越している」

 

現在進行形でそれが自分の大切にしている存在達を傷つけていると思う、それだけではらわたが煮えくり返る気分だ

 

「どんな経緯で使えているかはともかく、確実に破壊し尽くす」

「いいんだな?」

「俺の作ったものはあくまでも自衛と他衛の為にあるものだ、破壊のための道具などでは決してない」

 

セリアが聞いてきたのは自分の心血を注いで開発した最新鋭機を、自らの手で壊すことになる事を悲しんでの事だ

それでも構いはしない、大切な存在を傷つけられていつまでも黙っていられる自分ではない

 

「セリア」

「なんだ?」

「この戦い、WALRUSではなく俺の独断で行う。首を突っ込ませるなよ」

「そこまで言われて、"はい、そうですか"と、食い下がる奴がいると思うか?」

 

セリアの言に言い返せない自分がいた、組織の長として今の発言に恥を覚えたからだ

同じ思いを組織に所属する全員が抱いているのだ、だからこそ

 

「そうだな、今の発言は無責任だった。扱き使うから全員俺についてこい」

「それだよ、俺達はお前という主柱を支える支柱だ、使い倒される覚悟ぐらいは出来ているとも、だから···」

 

互いに向き合い、右手を拳にして突き合わせた

それは昔から変わらない友情の証のように、熱く激しい意思を込めた動作だ

 

「お前に俺達の全てを託すぜ?」

「おう、任せろ。()()()()()()!!」

 

そして俺は約定を違えたことは一度とてない、ただの1度もだ

故に今度も勝つ、そうなるべくして。そうしてのけるのだ、自分こそが

 

「襲撃です!!機体照合完了!!ゼータワン!!」

「来たか、遠距離飽和煙幕展開!!センサージャマーも加えろ!!」

「はい!!」

 

そう思っていた時をまるで狙っていたように相手が攻めてきた

これは好機だ、ここで一気に

 

「倒すぞ」

了解(ヤー)!!」

 

俺の独り言に全員が大声で返礼した、それだけ彼らも本気ということだろう

 

「よし···セリア!!」

「なんだ?」

「ここは任せる、俺を狙うように指示しても構わん」

「了解だ、流れ弾に当たるなよ?」

 

そう言ってセリアは指示を出しはじめた、それを視界の端におさめた後、戦場となる場所に向かう

 

「あはっ!!ようやく会えたね!!」

「よくもまぁ、やってくれたな、ガキ」

 

蓋を開けてみれば一夏と同じ年代(肉体的には俺も同じ)の人間だった

そんなやつがあのような大それたことをしてくれやがったのだ、怒りのあまりに頭がプラズマ融解してド安定しそうだ

 

「楽しいからいいじゃん!!」

「楽しい···だと?」

 

沸点を超える一言に足る言葉を聞いた瞬間、完全にタガが外れた

 

「よろしい、殺戮しよう」

 

右手を地面と水平になるように展開して"ある物"の名を告げる、それは

 

ロンギヌスランゼ·テスタメント(聖約·運命の神槍)

 

それはかつて、神の位階へと上り詰めた際に手に入れていたモノ。仲間の意識を束ね、利用する最高の力だ

その代わり、呼び出す本体たるブラックフレームは性能が急低下するというデメリットがある。

なまじ素の性能が高すぎるが故に目立つ欠陥だが、それに見合うだけの汎用性はあり、破格の破壊力を持ってもいる

 

「へぇ、おもしろ兵器だね!!」

「黙って、死ね」

 

そのためにお前の力を借りるぜ、セリア!!

 

「さらばヴァルハラ、光輝に満ちた世界。聳え立つその城も微塵となって砕けるがいい」

 

手に持つ神槍は青い色を放ち始める、ソレは元来の使用者の機体の色だ

 

「さらば、栄華を誇る神々の栄光。神々の一族も、喜びのうちに滅ぶがいい」

 

コレがセリアの機体、ブルーフレームのワンオフアビリティ、超々速度機動、その名は

 

「ワンオフアビリティ、ニブルヘイム·フェンリスヴォルフ(死世界·狂獣変生)ッ!!」

「速いね?」

「つっ!?」

 

ソレは史実上、視界に捉えることすら出来ないはずだった

しかし敵はそれが出来ていた

それはどのような仕業なのか、どうして敵はそれが出来るのか分かりはしないが、危険だという事はわかっていた

なのに

 

「なっ!?」

「あはっ!!」

「があっ!?」

 

敵の手が脚部装甲に触れた瞬間、内部から()()()()()()()()

 

「ぐっ!!」

「なーんだ、つまんないの」

 

たまらず地面に肩膝をついた俺を眺めながらそう言い放つ

 

「私を、ジークフリートを倒したいなら···()()()()()()()()よ」

「なにぃ?」

「あははっ!!その顔だよ私が見たいの!!」

 

そう言いながら敵の姿は消えていく、まるで最初からいなかったように

 

「また会いましょう、世界を変えた闇の勇者さん♪」

「待てッ!!」

 

その日、俺は転生して久しい感情···屈辱を味わった

味方の見守る、戦場で




ジークフリート登場。主人公に最大の危機が迫る!!



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