IS Striker   作:アーヴァレスト

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家族として向き合う前に仲間として向き合っている二人
家族として向き合うために、トラブルを利用する


仲間として

IS学園への帰投中に事件は起きた、マドカが起こしたのだ

 

「マドカがやらかした!?」

「あぁ、独断先行して取り残された」

 

大問題が起きた、マドカが敵に囲まれた状態で取り残されたらしい

しかも···

 

「敵兵力はそちらに集中してるんです!!」

「山田先生、冷静になりなさい」

 

スコールが慌てている山田先生をたしなめ、俺に判断を促した

 

「指示を出してくれ、山田先生」

「マドカさんを救いに」

「却下だ」

 

山田先生の指示を即答で拒絶し伝える

 

「俺は作戦開始前に散々無茶をするなと言い含めていたのだ。それはつまり命令である」

「藍澤君!!」

「それを破ったのなら、何を遠慮することがある。奴一人のために部隊全体を危険に晒すわけには行かん」

「だけど、マドカはっ!!」

 

あぁ、そうだろうな、大量の敵を自分の方に差し向けさせるようにやってのけた

それでもな

 

「だからどうした、一夏。状況はわかっている。それでもマドカはお前と合流するべきだったのだ。一人では限界だからそれなりのプランを出せるツーマンセルでの作戦遂行を指示したにも関わらず自身の独善に走った奴が悪い」

「だからって、見捨てるのかよ!?」

「見捨てたのはマドカ自身だ、判断ミスを犯し、命令を破った」

「あくまで、それを通すのかよ!!」

 

通すさ、通してみせるとも・・・それが

 

「それが隊を率いるということだ。それにな、俺の部下に自らを犠牲とし仲間を助けようなどと戯言を抜かす輩はいらん」

「藍澤君、ですけど・・・」

「命令はしたぞ、山田先生(・・)、貴女は部隊全員が生還できるプランを立案しろ。無論、マドカの事は考慮するな。反応を示す光点(ブリップ)も消せ、いつまでも目障りになる」

「カズマ!!」

 

一夏が叫んできたが、俺はそれを無視する

 

「これより本隊はIS学園に帰投する、その際、有象無象の露払いをしながら帰還するため戦闘になるだろう」

 

次に、ルートを示すマップを全員に送信して俺は続ける

 

「現在の布陣から、合流ポイントに最も近いのは織斑·一夏だ、当人は合流地点の確保を行え」

「つっ···!?」

 

一夏はなにか()()()()()らしい。それもそうだろうな

合流地点は···

 

「合流地点に存在する者も、その際に蹴散らして構わん。捕虜などいらぬので殲滅戦だ、各員が腰を据えて敵を叩き潰す事を祈る」

「了解!!」

 

全員が返答して攻撃を開始する、その動きはこれまで以上に激しいものだった

 

「カズマ、お前なぁ・・・」

「ふん、みなまで言うな」

 

一夏を単独で動かしたのには意味があった、それは

 

「一夏とマドカの二人を戦場で互いに理解させるなんて・・・大馬鹿者だよお前は」

「戦闘効率は途中急速低下するだろうが、まぁ問題あるまい」

 

ニヤニヤと笑いながら俺は山田先生に通信を入れて、反応をうかがう

 

「先生、わかっていたんでしょう?」

「え・・・えぇ、まぁ・・・全員から、と言われなかったですし」

「その通りです、慧眼ですね」

「それぐらい分からんで先生とは呼べん」

 

おやおや、織斑先生がオカンムリだ。フォローをせねばな

 

「そういう織斑先生も、止めなかったでしょう?」

「・・・」

「同罪ですよ?」

「分かっている・・・どいつもこいつも、問題児め・・・」

 

おそらくこめかみを押さえながら言っているのだろう、声に苛立ちと呆れのようなものを感じた

 

「ですがマドカにはきちんと責任を取らせます、とりあえず今回の作戦は俺の立案とセリアの作戦指揮がありますので、こちらの裁量でいいですね?」

「好きにしろ、もう何も言うつもりはない」

了解(ヤー)!!」

 

完全に悪趣味な笑い声で返し、俺はコソコソと仕込んでいたプログラムを、遠隔で起動した

白式にこっそりと入れていた、盗聴・録音プログラムを

 

 

 

<戦場、一夏>

 

マップに示されていた新たな光点、合流地点にはマドカの反応が重なっていた

それで・・・これがカズマからの無言の指示だとすぐにわかった

 

「素直じゃないやつ!!俺とマドカを向き合わせたいんだろうに!!」

 

途中で邪魔してくる人達を構わず突破する、どうせカズマたちが露払いをしながら前線を合流地点まで押し込んでくるんだ、心配なんてない

 

「見えたッ!!」

 

なんとか到着してマドカに取り付いていた奴を蹴り飛ばす

 

「なっ・・・なんで貴様が来るんだ!?」

「黙ってろっ!!言いたいことは山ほどあるけど、こいつらを片付けるのが先だっ!!」

「ふざけるな、これは私の!!」

「お前のだからどうしたんだよ!?んなこと俺の知ったことか!!何言ってもやらせてもらうぞ!!」

 

叫び声で怒りながら返すとマドカは少し小さくなった、それでも俺に怒っているようで・・・

 

「なぜ、だ!!」

「ほら見ろ、もう体もまともに動かせないんだろがッ!!」

「だから、どうした!!このくらいでっ!!」

「このくらいで済む怪我かよ!!説明してやらないと分からないほどバカじゃないだろうが、えぇ!?」

 

さらに叫び返すと、嗚咽のような声で俺に叫び返してきた

 

「わからない・・・わかるわけがないだろう!?」

「じゃあわからなくていい、いいから動くな!!つっても動けないだろうけどな!!」

「お断りだ!!今のお前に命令できる権限なんてあると思っているのか!?カズマは"考慮するな"なんて言ってたから、今お前は単なる一学園生に過ぎないんだ!!」

「そうか・・・なら尚更・・・」

 

その声に、俺はキレてしまった。なら、尚更・・・なんだって言うんだ!!

 

「なおさら放っておけるか!!その怪我、普通だったらショック死だぞ!!()()()()()()()()()()()()んだよ!!」

「つっ・・・!!」

 

それが俺の答えだった。あぁ、困る、非常に困る

だってまだ、家族としての日常も始められていないんだぞ!!

 

「なんで、来たッ!!」

「やっぱり、そう来るよなぁ」

「せっかく、せっかく上手く出来そうだったのに!!今度こそ出来たはずなのに、なんでだ!!よりによってお前が来たら、何のためにやったのか分からなくなってしまうだろう!?」

 

その言葉を噛み締めながら俺は反芻する

 

「なんで、ね」

「お前のせいで台無しだ!!こんな事一つ、満足にさせてくれないのか!!」

「邪魔だったか?」

「あぁ邪魔だ!!お前でさえなかったら、今頃、私はっ!!」

 

この、死にたがりが!!俺がそんなのを見捨てられないって、まだわからないのかよ!!

 

「きれいに死ねた、と言いたいのか?」

「お前など、さっさと死ねば良かったんだ!!」

「・・・」

 

互いに無言になる、遠くから聞こえてくる弾音はだんだん近づいてきていた

それを聞きながら俺は話す

 

「このままだと、お望み通り死ねるな」

「だから早く消えろ!!」

「駄目だ」

「一夏ァ!!」

 

次の瞬間、俺はマドカの正面に向き、目を合わせる

 

「お前が残るなら俺も残る、そうなったら、俺を殺したのはお前だ」

「やめろ・・・!!」

「やめるのはお前のほうだっ!!」

「つっ・・・!!」

 

激情のままに俺は叫びながらマドカを俺に向かせる

 

「何が死ねばいいだ?そう言って結局殺せなかったのはどこのどいつだ!?頭がマトモなら、よく考えて言ってみろよ!!」

「今更、関係ないだろう!?」

「はぁ!?考えが足りないなら、残っている部分にも怪我負わせてやろうか!?そうすれば少しはマトモに考えられるんだろうな!!それともレイプでもしてやれば気付になるか、えぇ!?」

「何を、言って・・・こんな時に!!」

 

過呼吸気味のマドカを抱えて移動して、俺は続ける

 

「こんな時だから言ってるんだよ。あぁ、死んじまったらいいだろうな。でも、お前がそう思ってる奴はどこのどいつだ、さんざん言い続けるのにそれでもしぶとく生きてるんだろ?」

「望んで・・・そうしたわけではない」

「あぁ、そいつは偉い事だな、だけどそれは、お前がそうしたいからだろ!?」

「・・・」

 

黙ってしまったマドカに俺は畳み掛ける、もう二度と言わせないために

 

「俺の知っているマドカは、望んでもいないのにダラダラと生き延びるほど情けない奴じゃねぇ!!」

「人の事を・・・好き勝手に!!だったら私はなんなのだ!?何のために・・・こんな」

「知るか、俺もマドカも、元々頭いい方じゃないだろ。考えたって簡単には出てこない。だったら・・・」

 

そこで呼吸を一つ入れ、続ける

 

「今までお前が、その答えじゃないのか?」

「今まで・・・って」

「どれだけバカやらかしても、怒られても、ちゃんと最後は始末つけてただろ?」

「違う・・・違うんだ・・・一夏」

 

何が違うんだよ、どこが違うんだ・・・!!

 

「好き勝手に自分も俺も生かしといて、何が違うんだ。それとも、全部嘘だったのか?」

「違うッ・・・!!」

「だったら、それでいいじゃないか」

「そんな、簡単に・・・いうな・・・!!」

 

とても辛そうに叫ぶマドカに俺は優しく告げる。怒ってもいるが、それよりも向き合いたい

 

「そうだな、家族として過ごした日々がないから、その過去がどれほどのものだなんて分かりはしない」

「お前・・・まさか!!」

 

あぁ、そのまさかだ、お前レベルのバカをやらかしてやる

 

「待て・・・行くな!!」

「どこにも行きはしないさ、マドカが、心変わりしない限りはな」

 

優しく床に眠らせ、再度、白式を纏いながら背を向ける

 

「そこなら、多少のことじゃ被弾しないだろ」

「やめろ、私は!!」

「マドカを見捨てたら、後味が悪い。それこそ、落ち込んでニートになりそうなぐらいに」

「誤魔化すなぁ!!」

「それは俺のセリフだ、残されたらどんな気分になるのか知らないとは言わせないからな」

 

敵影が近づいてきたので迎撃に向かいながら俺はマドカと話し続ける

 

「人の過去を、勝手に探ったな!?」

「悪い、とは言わないぞ。間違っているのは、お前のほうだからな」

「そんな事、最初からわかっている!!」

「・・・」

 

少ししょげるな、何度も言われると

 

「最低だお前は!!死んでしまえば、いいのに!!こんなところにまで、来るなんて!!」

「あのなぁ・・・なんで俺がこんな状況になってまで、言い出せなかったと思うんだよ?」

「可哀想だとでも、思ったんだろう?」

 

それは違う、そんな事、ほんの少しも思っていない

何故なら・・・

 

「馬鹿言え、それだったらもっと優しくしてるさ」

「・・・」

 

これから俺は、マドカに告白することがある

それはマドカの過去をさぐる前から抱いていた感情だけど・・・




次話、一夏視点!!
主人公の出番が最近減少中、その代わりほかのキャラを出してます




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