IS Striker   作:アーヴァレスト

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最後の戦いが始まり、運命を超える物語が始まる
これは一人の勇者(バカ)の答えを教える戦いであり、父親と言われた彼がたった一つ教えられるモノ・・・
そして敵は覚醒する、最愛の人を犠牲にして。かつて主人公がそうしたように・・・


正義VS正義(後編)

「うおぉぉっ!!」

「そうだ、本気を見せろ!!お前の全身全霊で、俺を超えてみせろ!!」

 

激戦は突如開始された、それもそのはず、会話していた状態からいきなりスタートしたのだから

 

「はあぁぁ!!」

「遅いっ!!」

「がふっ!!」

 

正義と正義の戦いはそう簡単に決着がつかない。どちらも同じ思いで戦うからであるが、それだけに性質は悪い

それは平和を象徴するハトと同じく、必殺の一撃となり得る爪や牙を持たぬからであり、その様相は血反吐を吐くどころでは済まされないレベルなのだ

 

「どうした、その程度か!?お前のDNAの父親程度、超えてみせろ!!自分で俺を父親と言っただろうがっ!!」

「うあぁぁっ!!」

 

でも、正直に言えば、父親と言われて少しだけ嬉しかった。それだけ彼がまっすぐに育てられたのだと思えたから

細胞は急速培養だろうと、その身に宿る心は誰かの操作を受けていないのだろう。それ故に戦い方もオリジナルで、一夏に近い近接格闘型だ

対応できるが、もし一夏の師匠を買って出ているセリアの下で師事を乞うたなら。と思うと非常に残念でならない

 

「俺は自分の過ちに気がついてやっと……取り戻す事ができた!!己の本当に成したいモノがなんであるかを思い出せた!!」

「つっ・・・!!」

「お前にもあるのだろう!?だったらそれすら世界と天秤にかけろッ!!()()()()()()()()ッ!!」

 

俺が本当に守りたいのは世界じゃなく、隣に生きる大切な者達、ただそれだけだ

世界と仲間、天秤にかけて重いと感じるのは問われるまでもなく仲間だと即答できる

それ故に、全力で愛して全力で守りぬくと誓っている!!

 

「さぁ、みせろ!!それとも・・・」

 

銃口を向ける、その先は

 

「マズいっ!!」

 

敵の部下、最後まで離れようとしなかった女性だった

 

「え・・・?」

「こうしようか?」

「やめろぉぉッ!!」

 

無慈悲に引き金を引き、黒の光条(ビーム)がその胸を貫いた

 

「藍澤・・・カズマ!!」

「伝説や寓話など、所詮は絵空事に過ぎん。守りたいなら自由を奪ってでもどこかに連れて行かせればよかったのだ」

「つっ・・・!!」

 

俺ならきっとそうしていただろう、今回だって適当に理由をつけて遠ざけたのだから

だからこそ・・・

 

「好きにしろ、君も、嫌われてもいいと思うぐらいの気持ちでやれ。そうしないと、いつまでも思いは届かんぞ」

 

その数瞬後、何のためらいもなく彼女は自分の腕を切り、鮮血を俺が倒した人間に与えた

 

「なるほど、プロトオーバーセカンドシフター(試作強制二次移行装置)か」

 

その行為で俺はようやく気がついた。と同時にそう来たか・・・と感心する

プロトオーバーセカンドシフターには欠点がある、その欠点は・・・

 

「自分の命、それすら犠牲にするとはね、いい覚悟だ。俺の時と、同じ状況になったわけだ」

「・・・」

「なら目覚めてもらおう、命の繋がり。()()()()()()()()()を」

 

抱き抱えられた男と、抱えている女性を包むかのように白い瘴気が立ち上り始める

それは瞬く間に濃度を増していき・・・

 

 

<戦場、???>

 

「君はどうして一緒にいてくれるのかな?」

 

ずっと昔・・・というわけではないけれど、恋人になる前、そう言った事がある

 

「え?どうしたんです、いきなり?」

「あ・・・いや、それは・・・何ていうか」

 

目を丸くして問い返されて、口ごもって下を向いたのも覚えている

あの時は、自分が生まれ育てられた研究所・・・地獄を焼き払った直後で、付き添ってくれていたのも彼女と他数名だった。こんな自分にも仲間が居る、と嬉しかったし、心強かったけど・・・

 

()()()のことを、もし恩義に感じているのなら、それはもういいんだよ?」

 

研究所で()()()()される予定だった彼女と、仲間の何人かを救って、その直後に焼き払った事

 

「それだけのことで付き添ってくれるなら、それは・・・」

 

彼女の未来を自分が邪魔してはいけない。これから苦境に身を投じる自分に、甘えている余裕なんてない

世界に復讐する・・・こんな()()()()に、彼女達を巻き込むなんて、あまりに申し訳ない

 

「あぁ、そんな事ですか?」

 

それでも彼女はあっけらかんと笑って、自分の思ってもいない言葉を告げてきたのだ

 

「ただ一緒に居たいからですよ。それ以外に理由なんて浮かばないもの」

「え・・・?」

 

そんな言葉しか出なかった、驚きゆえに

 

「というか、私の方こそ感謝しているんですよ?」

「感謝・・・?僕に?」

「えぇ、あなたに救われる前、私は色んなものが嫌いでした。でもあなたに出会って、それが少しはマシになったんです」

「そ・・・それって・・・」

 

抽象的すぎて分からない言葉、自分には分からなかった

 

「なんて言うんでしょうか・・・ようは救われたんですよ。だからこうして一緒にいるんです」

「・・・」

「来るな。と言ってもムリヤリ付いてきますからね?覚悟しておいてください」

「あ・・・」

 

思いがけない言葉にとっさの反応ができなかった。なんて返せばいいのだろうか・・・

 

「こ、こちらこそ・・・ついてきてくれると・・・うれしい」

「はい、もちろん。どこまでも、ずっとついていきます」

 

それで救われたのは、自分の方だった。君がいてくれたから・・・僕は

 

「つっ・・・!?」

 

白に染まった視界が晴れ、目を閉じていると分かったと同時、口の中に感じたのは鉄の味だった

喉に流し込まれていく熱い()の感覚、ひどく温かくて懐かしい、誰かの声が・・・

 

「これからも、一緒ですからね・・・?」

 

とたん、頭の中で耳障りな音を立てて、絡みついていた"何か"が崩壊していく

全身が燃えるように熱くなっていき、巨大な力を秘めた"何か"に変容する

 

「お・・・あぁ・・・あぁぁぁぁ、あぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

叫びと同時に、視界が再び白に染まった

 

 

<戦場、カズマ>

 

「おやおや、そうなるとは・・・いやはや全くの想定外だよ。()()()()()()()()なんてね」

 

敵が変異した。そう言うしかないほどの変わりように驚く。それは俺とイセリアの中で起きたことと同じだった

機体の形そのものは当然のこと、おそらくスペックすら測定できないだろう

敵の背中には、仲間の命を糧とした紅き翼が出現し、禍々しさを通り越して神々しささえ醸し出しているほどなのだから

 

「愛のなせる御技か、闇を抱えながら生きる人間の本能の発現か・・・どちらにしろ」

 

だからこそ、そう・・・己が己として、その先駆者として

 

「本気でお相手しよう、これが俺の、全力全開と知れ」

 

完全にリミッターを解除し、全ステータスをオーバードライブモードに切り替えた

 

「行くぞ、我が遺伝子を持つ者。この闇を・・・()()という()()()、黎明を待つ者を超えてみせろ!!」

「あぁ、行くぞ・・・!!」

 

再度激戦は開始される、これまでよりも激化して。しかもこれまでとは違い、世界を超えた別次元の力も使う

そう、今、敵は俺と同じ位階に到達していた

 

「全身に、力が満ちる!!」

「そうだろう、それこそが転生の意味だ。己で掴み取った分の力以外はいらん!!」

 

この世界の技術だけでなく、他の世界の技術も含まれる攻撃

俺の戦う戦場は、正しく混沌と化していた

 

「はぁぁっ!!」

「でぇぇっ!!」

 

衝撃一つをとっても、建物を震えさせ、剣戟の先で破壊をもたらしている。それだけでなく、存在値そのものが破格の性能まで引き上げられた事により圧倒的なまでに強化されている

 

「これが、第六法・・・神の力!!」

「いいや、正確には異なる」

 

そう、正確には異なる、この力の正体は・・・

 

「これが、俺の仲間の力だ。君も仲間の力をふるっているだけに過ぎん」

 

互いに装甲にダメージを追わせて距離を取る

 

「さぁ、どうする、時間はないぞ?」

「くっ・・・!!」

「だから早く終わらせようか」

 

天に手を掲げ、俺は話す

 

「これは過去の現象を真似る程度のものに過ぎん。が、破壊力は折り紙付きだ」

「つっ・・・!!」

「ソーラ・レイ!!」

 

太陽光を収束し、一点に向ける。その威力は厚さ数十センチはある特殊合金を僅か一秒で貫通するほどだ

それだけのパネルはないので・・・

 

「左腕の機能だ、持っていけぇぇぇ!!」

 

空に巨大なレンズを形成した、それを敵は見抜いて左腕を犠牲に突破したらしい

 

「がはっ・・・!!」

「ブルージェット!!」

「がぁぁ!!」

 

今度は自然現象を使う、それは通常とは逆に起こる雷の現象だ。日本語名では超高層雷放電という

 

「続き・・・行くぞ?」

「まて、カズマ・・・撤退だ!!」

「なに・・・?」

 

そこにセリアからの緊急回線通信があった、すぐに反応して・・・

 

「急いで帰るぞ、ファントムタスクは囮にされていた!!」

「なに・・・!?」

「まさか・・・」

 

敵にも驚きの表情が浮かんでいる、自分達が誰かに利用されていたのだから

 

「フェリア・・・!!」

 

敵はすぐさま自分の愛する女性の元に向かった、治療を施すのだろう

 

「セリア、作戦を中止だ・・・即刻帰還する」

「了解・・・ファントムタスクは?」

「俺が焚きつける」

 

俺は二人の敵のもとに向かい、声をかける

 

「味方になるか?」

「何を言っている?」

「憎いだろう?自分達をコケにして、いいように利用しやがった連中の事が」

「つっ・・・!!」

 

手を差し出し、俺は告げる

 

「ファントムタスクのまま、我が軍門に降れ。約束された勝利を、その手に握らせてやろう」

「正気か、貴様?」

「あぁ、正気だとも。これでも大真面目だ」

 

ついさっきまで戦っていた敵を信じることなんてなかなか出来ない、それでも・・・

 

「いいだろう・・・今回限りだ」

 

敵と共同戦線になる場合だってある




ファントムタスクと共同戦線!?そんな事が・・・(恐怖)
にしても主人公の性格が・・・まぁいいか




感想ください、作者のエンジンオイルにもなったりします

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