通信が入る、相手はセリアだった。かなり急いでいたらしく、息も絶え絶えとなっている
「新生ファントムタスクが動いた!!奴ら・・・
「なに・・・!?」
「本当か!?」
「あぁ、マジだ!!よりによって・・・俺たちに正々堂々、宣戦布告しやがったんだ!!」
なんて奴らだ、マジで信じられん・・・どんな奴がトップになったんだか!!
「作戦本部を開く、WALRUS単独での作戦とIS委員会には通達!!学園側からの援助は出来る限り受け入れるものの制限はお前の判断でかけろ!!」
「了解、B1Fの会議室で行う!!」
「急いで向かう、少し遅くなるが先に始めてくれ!!」
セリアは通信を切り、俺と一夏は頷いて向かう。飯はなしでこれから緊急会議だ。なぜ一夏が共に行くかというと、IS学園で今回のような緊急時にWALRUSと合同会議を開く際は、生徒会から更識楯無と一夏が出ることが決められているためである
「すまん、遅れた!!」
「問題ない、今始まったばかりだ」
それから数分後、会議室に入った俺達の目の前には問題の宣戦布告らしき映像が流れていた
「この野郎か?」
「あぁ、新生ファントムタスクの首領だ。捕虜として保護しているダリルにも確認した」
「カズマに・・・似てるな」
「分析は?」
山田先生がいつもとは違う緊張の表情で報告してくれる、俺はそれを聞きながら作戦を練り上げていく
「以上です、織斑先生、どうしますか?」
「藍澤、そちらはどうする?」
「IS学園生に協力を願いたい、今回の作戦はある程度連度の高い連中が必要だ」
「WALRUSからは?」
もちろん、全力だ、常時投入戦力はせいぜい大尉程度の練度だが今回は代表たる俺直々の作戦指揮をとる必要がある
「最大戦力で行う、この戦い、全力で挑まねばなるまい」
WALRUS所属員の練度は軍のそれとは桁違いレベルで高い。元々が軍所属の人間が多いこと、セリアやアヤナ、イセリアの三人が主導で新人教育を行っている事により自己防衛だけでなく他者防衛の観点での見方が優秀である。それ故に昇進や昇官などが早く、幹部候補生だけでも数百人は下らないほどだ
その戦力を1回の戦闘に全力投入する、それはかつての戦闘のさらなる大規模化を意味している
「スコール、マドカ、オータムの三人は?」
「参戦するそうだ、かつての大義の存在しないファントムタスクは敵じゃないとか言っていたぞ」
「なるほど、自分達の手で終止符を打ちたいわけだな。前線には立たせるな、突出してはかなわん」
「了解、カズマ、お前はどうする?」
そうだな、どうしようか・・・結果は一つしかないか・・・
「俺は前線に出る。どのみちそうした方がお前としても指揮はしやすかろう?」
「今回もお前を筆頭に作戦を遂行しようと思っていたからな。向こうの代表もおそらくそう考えるだろう」
セリアの分析でこれまで外れたことはほぼない。あったとしても10000回に1回程度で、それですら即応してリカバリ出来る程度の損害が出たとしても軽いものでしかない
それだけに、セリアの話は一考どころか熟考したものとして重用している
「因果かなにかだろうか・・・皮肉な話だな・・・」
「あぁ、これはある意味因果のある戦いだ。故に手加減はせん」
全力を出した俺は手加減なんてしない。優しさだけで世界を救うのは不可能だと散々経験しているから
「作戦開始時刻は明日、PM9:00、それまでは普段通りの生活を。以上、解散!!」
それでも、日常は大切にしていきたい。それこそが俺の守るべきものだから。そばにいる人間を守れなくて、屈辱と絶望を知っているからこその思いは誰にも譲らない
エゴでこそあるが、それでも・・・
「由宇は参加させるのか?」
「いや、今回の作戦では参加させん、イセリアもだ」
セリアはそんな俺に懸念と忠告をしてくれる、親友としてはもちろん、部下としても
「過保護だな、相変わらず」
「過保護ではないさ、二人には
「言いようは様々だが、ようは行かせたくない口実だな?」
「・・・あぁ」
ため息をつきながら俺はセリアの言葉を待つ、セリアが言ったのは意外な言葉だった
「アヤナも置いていく、二人では不安もあるからな」
「・・・いいのか?」
「今回の作戦では狙撃兵はいらん。それにアイツは俺やカズマ、イセリアと比べれば全力戦に出た回数も少ない、練度は高かろうが、不慣れなことには突発でやるといい結果にならんのが世の常だ、ここで有る意味セーブしとかんとな」
言い方こそアヤナを思っての事だが、その裏には大切な人が傷ついて欲しくないという、俺と同じエゴがある
だから・・・
「お前こそ、言い得て妙だな?」
「お前と同じ理由だと言っているのは分かっているな?」
「当然だとも」
「カズマ」
そこに一夏が入ってきた、どうやら話したい事があるようだ
「なんだ、一夏」
「マドカも残していいか?」
「理由は?」
「ストリートに言うとお前達と同じで大切な人に傷ついて欲しくないからだ」
ドストレートに言いやがった、驚きにしばらく息が止まる
「私は行きたいぞ、一夏」
「駄目だ、マドカも残れ」
「なっ・・・!?」
俺の判断はマドカを残すことに決まった、理由はセリアも気づいている
「万が一の可能性として、新生ファントムタスクが学園を強襲する可能性もないわけではない。それに即応できる能力を持つのはマドカ、お前だ。だから今回の作戦では学園に残れ」
「・・・了解。一夏・・・」
「なんだよ、マドカ」
「・・・なんでもない」
そう言ってマドカは去っていった、顔を真っ赤にしながら。意外にもマドカは引っ込み思案で、今回のように押しが弱いことがある
「なんなんだ・・・一体」
「心配で言葉を掛けようと思ったけど、出なかったんじゃないかな」
会議場に茶と飯を出しながらイセリアは一夏に告げる、それは正鵠を射ている言葉で、俺が言うまいと思っていたことだった
「そうか・・・」
「大切にしろよ?」
「ニヤニヤしながら言うことかよ!?」
おや、そうだったか?楽しくてついつい顔に出ていたようだ
「頑張れよ?お・に・い・ちゃ・ん?」
「からかってるのか!?」
「そうだよ?」
「やっぱりかよ!?」
それはそれは楽しいからかいのネタだ、スゴイまでのいいネタキャラぶりに恐ろしいくらいだよ
「さぁ、作戦まで鋭気を養うついでに勉強していこうかぁ・・・」
「やる気ないねぇ・・・」
「あるよ、やる気」
「それよりも眠気が勝っているな・・・この男は・・・はぁ」
由宇もどうやら俺の指示に不満があるらしい。それでも理由はわかっているのかうまく言えないでいる
「由宇、君の気持ちも分かるけど。我慢してくれよ?」
「終わったら、いっぱい甘えてやる・・・」
「そうねぇ、いっぱい甘えましょう、だから絶対に帰ってきてね?」
「おうとも、誰にものを言っている」
そう言って二人の頭を撫でて、俺はメシを食う。全員が同じタイミングで食べている
この日常が永久に続けばいいのに・・・と、強く思いながら今日という日を謳歌するのだった
主人公の判断は一般人と同じはず、きっとそう・・・問題は新生した亡国機業の目的
次話から、謎を呼んで新たに新生したファントムタスクとの戦いが始まるようです
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