IS Striker   作:アーヴァレスト

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それは主人公の右腕にして最強の剣士、牧瀬・セリアの戦い
最強たらしめる所以をここに解放する
彼が持つのは罪を裁く剣、断罪の剣であり、誇り高き輝きである


最強の近接戦闘者(ショートレンジバトラー)

「あ・・・あぁぁ!!」

「ふむ、この程度になるか。やはり再現は難しいな」

 

剣を鞘に戻しながら俺はため息をついた

皮膚一枚を掠った程度になってしまったが、それでも重症であるのだけは間違いない

 

「っつ!!よくも!!」

「来るか?」

 

フォルテの行動に対して再び剣を構える、今回は抜刀居合で終わらせようと思ったが・・・

 

「お前はそろそろ限界だろうが、休めよカズマ」

 

そこにセリアがやってきた

 

<IS学園校舎屋上、セリア>

 

「というか、この程度であれば俺だけでも十分だ。副作用が来る前に部屋に帰れ」

 

既にその兆候が出始めているカズマに対して俺は優しく諭した

走り始めるとどこまでも自分の力で行こうとするのは相変わらずだ、反省もしているようで改善もされているがまだまだ、だな・・・

 

「すまんな、既に限界だ」

「承知している。休んでいろ」

 

カズマを俺の後ろにある出入り口に座らせ、フォルテと相対する

 

「そこをどいてくれっス」

「是が非だろうと断る、奴に勝ちたいのならば、その爪牙である俺を超えてみろ」

 

ビームサーベルを二本同時に構え、利き手である左手に持つ方の切っ先を突きつける

 

「お前に格の差というものを教えてやろう」

 

一気に本気状態に差し替え、目線を鋭くする

本気で戦う必要は俺にはない、だが俺はカズマの爪牙、彼の手先となり戦う者だ

それなりに本気でやらねばならない

 

「殺す・・・!!」

「やってみろよ、小娘」

 

その言葉と同時にビームサーベルの出力上限を従来のものに切り替える

IS学園での運用では余りにも出力が高すぎるために制限する必要があるのだが、今回、それをする必要はないだろう

 

「さっきカズマが発動したワンオフアビリティで、レイン・ミューゼルと同じ目に合わせてやろう」

「そんなことが出来るはずないっスよ!!」

「出来るのさ、それがな」

 

戦闘をしながらの会話は真剣なもの、"負けるか!!"という意地でフォルテは食いついてくる

 

「どうしても邪魔するんスか!!」

「あぁそうだとも、俺はやつの腹心であり忠臣だからな」

 

俺はそう告げる、本気の一端を見せてやろう・・・全力ではないが

 

「もはや、人を忘れてるっスね!!」

「忘れてなど、いないさ」

 

そう、俺は一人の人間として奴に仕えているのだ。同時にそれを誇りとしている

 

「そういうのであればよろしい、格の違いというものを教えてやる」

 

俺の機体、ブルーフレームのワンオフアビリティ、天霆の轟く地平に、闇はなく(Gamma・ray Keraunos)を使用すると決めた

ついさきほどカズマが発動したものはソレを"ある能力"で利用したものだ

 

「俺の振るう死の閃光にて、全ての穢れと全ての不浄を祓い清めると誓いを立てよう!!その名は・・・」

「つっ・・・!!」

天霆の轟く地平に、闇はなく(Gamma・ray Keraunos)!!」

 

実は俺自身、生得的な才能は劣等なのだ。でも、驚異的な精神力、常軌を逸する鍛錬で会得した戦闘力は、如何なる者をも凌駕した域へと達して他の追随を許さないと自負している

 

「フォルテ、お前には先ほどレインがカズマに質問した言葉の答えを示してやろう」

「つっ!?」

「聞きたいか?」

 

攻撃を先よりも過激に、綿密に、周到にしながらも俺は彼女に告げる

これは俺の答えであり、カズマとは違うが、とても良く似ていると思う

 

「勝利とは・・・気付くこと。今まで生きた過去を、あるがままに受け止めること」

「・・・!?」

 

フォルテが驚いたのは、俺の言葉が正論だからだ

恐らくレインは"勝利"や"栄光"を手にすることが必ずしも幸せに通じるとは思っていなかったのだろう

それは間違いなのだと分かっていたから、最後まで逃げようとしなかった事だけは認められることではないだろうか?

 

「勝利からは逃げられない・・・なぜなら、常に消え去らない過去(おもいで)として、己の中にずっと存在しているものなのだから」

「痛みはどこまで行っても自分の物・・・ってことスか?」

「そうだ、そして過去は減るものではない。どれだけ振り払おうとしても、降り注ぐ雨のように内へ溜まって増えていくものだから」

 

それが俺の答え、悟りに至った境地だ。何故ならその俺こそが、勝利から逃げ出した(・・・・・・・・・)事のある人間だから

フォルテが言ったように、痛みはどこまで行っても自分の物だ。それを肯定できなければ、他者をどれだけ屈服させて新たな勝利を得ようとも、過去(きず)は幻肢痛のようにいつまでも疼き続ける。

 

「なら、なんでこれまで黙っていたんスか!?知っていたスよね!?」

「あぁ、知っていたとも、だからこそ黙っていたのだ。自分でその錯覚から解き放たれたいならば、たった一つ、気づくしかないからな」

 

それが俺をカズマと出会わせた因果、悟って軍に戻り、初めて下についた男がカズマだった

腐れていた母国に革命をもたらし、膿を出し切ることで新生の息吹を起こそうと奮闘し、実際にやってのけた勇者(バカ)を知っているから

 

「自分の重ねてきた時間が生きてきただけで価値を秘めているものなのだと、思えたその時、人は何処へだって飛び立てる。かつての俺がそうだったように、君やダリルもそうできる」

「それでも、私は・・・!!」

「いい加減に分かれよ!!」

 

それでも反対しようとするフォルテに俺は叫んでいた

理解しているはずなのに、それが分かっているはずなのに認めようとしない事にキレかけたのだ

 

「悲しいことも、苦しいこともあったとしても、だからといって嘆かなければならない理由(・・・・・・・・・・・・)なんてどこにもない!!目をそらさなければならない理由も、逆に見つめなければならない義務さえ同時にないんだ!!そして、悲しめと命令するものなどおらず、また涙を流しながら笑うことさえ否定されていない!!」

 

激情と共に叩きつけるように連撃を仕掛けながら俺は更に叫ぶ

この想いが届くまで何度でもやってやると、体現しながら

 

「自虐に走り、気づくことを遠ざけることもそうなんだ!!どんな辛い記憶でも空っぽじゃない限り、人は気づけば簡単に救われてしまえる生き物(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)なのだから!!」

「つっ・・・!!」

「いい加減に気づけよ!!お前達の事を誰よりも思っているからこそ、カズマは自分が嫌われていいと思っているだぞ!?」

 

そう、気づかせるためなら自分がその相手に嫌われてもいいとカズマは思っている

俺もそうだ、誰よりも人間の可能性を知る俺達だからこそ、迷っている子達を見ると無性に救いたくなる、導こうと思う

 

「そうだ、大きな理想を形にしたり、誰かに対して勝ったり負けなかったり・・・そんなことをしなければ得られないものでも、決して重たいものでもない」

「お前は寝てろよカズマ!!これ以上出張るな、苦しむ事になるぞ!!」

 

気が付けばカズマが俺の後ろに立っていた、フラフラの状態で女性化していることに気がついていないようだ

 

「フォルテ、俺の話を心して訊け、これは悟った者からの答えだ」

「一応、聞くっスよ」

「ある日ふと、過去うしろを向いたその時に・・・こういうこともあったなぁ(・・・・・・・・・・・・)って。それだけで、もう十分なんだ」

 

カズマが先に言い、俺に話を促してきた

俺はそれに答え、言葉を紡ぐ

 

「微笑みながら、はにかみながら、そんな言葉を口にできること。それが命の意味であり・・・」

 

そこで声を出したのは、カズマに俺のワンオフアビリティを使った攻撃を受けて甚大なダメージを負ったダリルだった

 

「ずっと共にいてくれた、"勝利"を()るということだから・・・かよ。ちっくしょう・・・負けるわけだ」

「ダリル・・・!!」

「それで、お前達が悟ったのは、そういうことなんだろ?」

「あぁ、その通りだ、ダリル」

 

ダリルの問いかけに、カズマはそう答える。それだけに俺は心配になる、限界まで自分を追い込む癖があるのだから

 

「俺の運命を、引き裂いてくれるのか?」

「自分でやれそんなもの、自分で抗ってゆっくり答えを出せばいい」

「あ、そう。なんとしてもお前をいつか超えてやるからな!!」

 

気絶する寸前に、彼女は啖呵を切った。素晴らしいまでの不屈の精神だ、思わず感心してしまった

 

「ここで戦う意味、あったんスかね?」

「冷静になればどうでもいいことって、たくさんあるぜ、フォルテ」

 

そうして救急隊が来るまで屋上で処置を続けるのだった

今回の戦闘に意味があったかといえば・・・ある意味であったのかもしれない




近接最強のセリア君でした。実は主人公、それぞれの得意なレンジで攻められれば負ける事もありえます。
主人公が主人公してない話は本作では珍しい構成です




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