IS Striker   作:アーヴァレスト

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それはかつて戦った者同士の再戦。
当時は弱かった少年は、様々な経験を積んだ事で強くなっていった・・・
そして、この世界の主役たる彼らを見極め、見届けようと決意した者が、遂に動き出す


藍澤・カズマVS織斑・マドカ

「そこまでだ藍澤っ!!大人しく戻れ!!」

「断る、俺のエンプロイヤー(依頼主)からの命令なのでね」

 

シャルロットの故郷の国に向かう最中、俺はついにマドカと遭遇した

しかも黒騎士を纏っている

 

「どうしても敵に、なるのか・・・ならここでお前を倒すしかない!!」

「あぁ、本当に腐れ縁だな・・・故に加減はしない。元よりお前だけはこの俺が直に相手すると決めている」

 

そう、あの時から・・・彼女の記憶を奪った時から決めている

 

「予定とは異なっているかもしれない」

「つっ・・・!!」

 

全ての記憶を取り戻したわけではないマドカにとってそれは初めて聞く言葉なのだろう

 

「だが、そこまで辿り着き、このメッセージを聞いているのなら・・・」

「私の記憶を・・・知っているのか?」

「奪ったのはこの俺だ、知っていて当然だろう」

 

黒騎士に仕掛けた記憶再生システムを作動させ、彼女の記憶の最後・・・俺のメッセージを再生させる

ウイルスではなく、基幹システム内に組み込んだソレは簡単に解除できない構造になっている

 

「うあぁぁ!!」

「取り戻してくるといい、最後の記憶を」

 

<???、マドカ>

 

藍澤の声を聞いた瞬間、私はある光景を見ていた

暗闇に佇み、こちらを見る男・・・まだ敵だった頃の藍澤だ

 

「そう、何であれ君"達"は取り戻せる。あるいは、既にその手に抱いているのかもしれない・・・」

 

公開と自責の念のこもった悲壮な声・・・これが敵として再び立ちはだかる男の声だとは思えない

自分の記憶を見てるのに、そう感じる

 

「記憶喪失によって解放された自己解釈の広がり、あるいは個人の感覚の中では、それぞれの時間や空間の概念も異なり、時たまに曖昧だ。だから、鶏が先か卵が先か、私が誰であるのかもとりとめのないものなのだろう」

 

それが私の知る中での記憶喪失の総まとめだ、その上で不安で仕方が無かった

 

「君は私が誰か知っているかもしれないが、それを私に知る由もない。だが、手を尽くさねばならないことは知っている」

 

しかし、ただ心の底から私を心配し、身を案じてくれたのだと思っている

思うことで、ある意味で救われたのだ

 

「人が生み出した災厄は、人の手で刈り取らねばならない」

 

私と織斑千冬、更には一夏・・・一応兄のDNAは非常に酷似している。

人為的に細工されているのだ

 

「同様に、人類が生み出してしまった悲劇である君には、一つの世界すべてを賭けてでも、幸せになる権利と義務がある」

 

かつて自分もそうしたように、そうしてくれた人がいたから、自分もそうしようと

藍澤は罪を背負い、憎悪の泥に埋もれようとも前に進み続けているのだ

 

「しかし奴らは、再び君を犠牲にしようという。従ってそこに、一つの可能性を用意しなければならなかった・・・」

 

でも、残念な事に、ソレは賭けだった

 

「これは生涯唯一の賭け、私の我侭(エゴ)だ・・・」

 

だがそれが、今の状態を生み出したとしたらなんという皮肉だろうか・・・

 

「君にかつて運命づけられた在り方が、無慈悲な少年・少女兵だったとしても。いや、そうであるからこそ・・・」

 

自分が歩んできた運命を、この世界に生きる者に味あわせないために・・・

 

「君の見る空が、鳥籠や、戦火の中であってはならない」

 

限られた可能性や、絶望であって欲しくない。可能性がある限りどこまでも飛べる存在であってほしい・・・という希望を込めて

 

「その思いと、私が誰かに伝えられなかった言葉。そして確信を込めて、この計画(プラン)を設定する」

 

その時、彼の頬に流れていたのは、"だから、生きてくれ。どんな結果になろうと、誰かを泣かせるためでなく、守るために"・・・その意味の涙だと、今の私には分かっている

 

「おめでとう、織斑・マドカ。私の手を離れたこの先に、何があったとしても・・・君は必ず、運命に勝利する」

 

視線の先にあったのは、その計画の名前を書いた一枚の紙。それが捲られ、本来の名前を出された

 

Break(ブレイク) Destiny(ディスティニー)

 

その計画の名は、運命の破壊・・・という意味だった




次話、本作における(いろんな意味で)史上初の急展開!!


感想ください、作者がいい意味でも悪い意味でも暴走します

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