IS Striker   作:アーヴァレスト

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ブラックフレームVS白式
男二人の勝負
一人の少女を守る盾であり剣の騎士と家族を守るために強くなろうという決意をする少年
主役のなった少年に先人が教える事とは?


黒VS白

「休憩に戻らなくていいんですか?」

「問題ない、このまま継続する」

 

セシリア戦終了後、山田・真耶先生から休憩をするか聞かれたのでそのまま連戦可能だと端的に伝える

 

「数分ほど待っていてください、直ぐにこちらは終わります」

「了解です、ゆっくり待っています」

 

それから丁度3分後、織斑・一夏は白式を駆って来た

 

「よぉ、待ってたぜ」

「待たせちまったな」

「気にするな、これから戦うのだから」

 

相対しながら俺と織斑・一夏は会話を続ける

 

「装備品を出せ、それくらいの事が出来んとなす術なく落ちるぞ」

「あぁ、わかった」

 

そう言って出てきたのは一つの剣だった

 

「一個しかないんだが・・・」

「俺に聞くな」

 

武装が一つしかないのにはきちんとした理由があるのだろう、おそらくはそれの性能が高すぎるがゆえのことだ。俺のブラックフレームにもかつて似たような現象が起きたことがある

 

「行くぞ、ついてこい、一夏っ!!」

「あぁ、行くぜ!!」

 

空中で近接戦をするのは久しぶりだが、それでも俺の動きは簡単に捉えることはできない、それでも一生懸命についてくる一夏に俺は

 

「おらぁ!!」

「うぉ!?」

 

振り返りざまに近接防御機関砲で蜂の巣にする、と言ってもISのシールドバリアー残量が減るだけだし、一発一発のダメージは極微だが

 

「くっ!!」

 

距離を取るにはちょうどいい、現に逃げ出すために一夏は離脱した

 

「どうした!!それでは俺に攻撃を与えることはできんぞ!?」

「うおぉぉぉ!!」

 

それでいい、全力で向かって来い、勝機を感じてるのなら!!

 

「はあぁぁぁ!!」

「つっ!!」

 

鍔迫り合いで互いの視線が交差する、純粋に隙をつこうと俺の行動の穴を探す真剣な眼差しに俺は少し笑う

 

「おかしいかよ?」

「いいや、俺もかつてお前のような事があったからな、少し感慨に耽っただけだ。気分を害したなら謝る」

 

ビームライフルと両腰、両肩の武装を使用不能にしてビームサーベルと近接防御機関砲だけを使える状態にする。ついでに盾に仕掛けを施して会話する

 

「そうなのか!?どんな気分だった!?」

「最悪だ、小間使いにはされるわいい様に弄られるわ、本当なら二度と味わいたくない」

 

戦闘中にこんなことを言えるのは経験者とこれから経験する人間だけだ、俺達の中にははっきり言ってその程度のことでしかない

でも決着は付けないといけないわけで

 

「さて、これで終わらせるぞ、一夏!!」

「おうよ!!行くぜ!!」

 

俺が放ったのは、左手に持っていた盾、それを一夏の持つ剣の先が触れた瞬間・・・爆発した

これが俺の仕込み、盾の中にある空洞に、信管と一緒に爆弾を仕掛け、剣先からの振動が与えられた瞬間に爆発するような仕掛けにしたのだ

 

「さぁ、一次移行(ファーストシフト)は済んだかい?」

「あぁ・・・」

 

煙が晴れ、そこから現れたのは滑らかな曲線とシャープなラインが特徴的な、どこか中世の鎧を思わせるデザインに変わった白式だった

俺が先ほどまで戦っていたのは初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)中だった物だ

 

「俺は世界で最高の姉さんを持ったよ」

「だろうな」

 

最高?いやいや、最強でしょうよ。というツッコミはしない、今の織斑・一夏は純粋に思っている事があるのだから、それにチャチャを入れることなんてしてはいけない

 

「俺も、俺の家族を守る」

「そうか」

 

先程展開した剣の名は雪片弐型(ゆきひらにがた)、それでつくづく思い知ったのだろう

 

「とりあえずは、千冬姉の名前を守るさ!!」

「ならば魅せろ新鋭・・・主役を気取りたいんだろうが!!」

 

最高速度で加速し再び鍔迫り合いに持ち込む

 

「その何たるか、先人(オレ)が教えてやるから掛かって来い!!」

「うおぉぉぉぉ!!」

 

猛烈な剣戟と空間機動、それについてこれている織斑・一夏

なぁ、気がついているか?俺たちは今、通常じゃあ考えられない速度で動いているんだぜ?

 

「どんなに困難でも諦めるな!!その先には無限の可能性が待っているのだから!!」

「おぉぉぉ!!」

 

一気に接近してきた織斑・一夏は逆袈裟払いで切ろうとする、その瞬間に

 

「試合終了、勝者・・・藍澤・カズマ」

「はっ・・・?」

「あれ・・・?」

 

なんで俺が何もしてないのに勝てたか分からないし、一夏は何が起こったかわからないまま試合が終わった

 

「遅いぞ、ここで待ち合わせさせたの、お前だろ?」

「すまんな」

 

それから数時間後、夕暮れどきに俺は一夏を寮の屋上に呼び出した、少し遅れたが

 

「単刀直入に聞きたい、お前がISを使う理由のもう一つはなんだ?」

「つっ!?」

 

一夏が白式を使う理由を知りたい、先程のではなく、もう一つの理由を

 

「俺は前に、誘拐された事がある、千冬姉に助けられた」

「だからなのか?」

「・・・?」

 

だからなのか、という意味が彼にはわかっていなようだ

 

「その時、自身に力があれば、力を手に入れさえすれば・・・と」

 

本人すら自覚していないだろう後悔はきっとそれだ、だからこそあえて自覚させる必要がある

 

「なんで、そんなことを言うんだ?」

 

冷静にだが、怒りそうな表情で俺に問いかけてくる一夏から視線を外しながら俺は少しだけ過去を思い出す

自分の目の前で仲間が死に、何も出来ずにいた自分が、どういうことをしたのか

 

「自分の非力さに泣いた事のある者は、誰でもそう思うさ・・・たぶん」

 

仲間の敵を討とうと力を欲し、たくさんの人間を殺そうとした、自分も深い怪我を負いながら

その結果、確かに勝った、それで失ったものがどれほど大きかったか今でも後悔しきれない

 

「けれど・・・」

 

守ることがどれほど難しいか、普通に生きるために、日常を守ることがどれほどキツく、難しいか俺はよく知っている、だからこそ

 

「その力を手にしたその瞬間から、今度は自分が誰かを泣かせる者となる。それだけは忘れるな」

 

彼に伝えることは、自分にとって選びたかった道、自分のようになってほしくはない

 

「ISは戦争の抑止力だ、もしかしたら俺もお前も軍に入るかも知れないし、そうならなければいいと思っている」

「なりたくはねぇよ、軍人なんて」

「選べなかった者が、目の前にいるがな」

 

俺は選べなかった、選べるはずだったのに

 

「もし、軍人になって戦場に出る事になって、その時にそのことを忘れて、勝手な理屈と正義でただ闇雲に力を振るえば、それはただの破壊者だ」

「・・・」

 

一夏が押し黙る、だから俺は質問することにした

 

「そうじゃないんだろう?お前はさ」

「あぁ・・・」

 

その真剣な眼差しに俺は期待して一夏に最後の注意をする

 

「俺たちの持つ物は、喧嘩のためのものじゃないんだからな」

「わかってるよ、それは」

 

そうだな、そんな軽い気持ちでここに来るわけがない

 

「ならいいさ、ソレを忘れさえしなければお前はきっと、今よりずっと強くなれる」

「お、おう・・・」

「でなければ、筋金入りの馬鹿だがな」

 

そう言って俺は、自室に戻ることにした




試合後に聞くことってバラバラだよね。
主人公は後悔(?)している事を乗り越え、それからどうしていきたいのか聞きました

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