軌跡の世界は、美食時代?   作:シャト6

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5話

誰かが言った…野生のハーブが黄金比で配合された天然のカレールーがこんこんと沸きだす奇跡の井戸、 カレ井戸 があると…バターミルクの甘い臭いがこんがりと香るスポンジに、キャラメル色のシロップがとろ~り溢れだす ホットケー木の実 があると…世はグルメ時代…いくなる味を求めて、探求する時代…自由行動日当日……キョウは始発列車に乗る為に公園で待っていた。

 

キョウ「ふあ~……午前6時か。始発までまだ余裕があるな」

 

大きな欠伸をしながら、公園のベンチに座っていると、同じクラスのエマとアリサがやって来た。

 

エマ「おはようございますキョウさん」

 

アリサ「随分と早いわね」

 

キョウ「オッス。ま~、早い理由は今から食材を捕りに行くからな」

 

その言葉に2人は顔を見合わせた。

 

エマ「食材ですか?」

 

アリサ「何の食材なの?」

 

意外と興味津々な2人であった。

 

キョウ「ああ、これから《虹の実》を捕獲しに行くんだ」

 

「「に、虹の実ですって/ですか!?」」

 

食材の名前を聞いて驚く2人。

 

キョウ「そうだ。もしかしたら、俺の人生のフルコースメニューになるかもしれないからな」

 

そしてキョウは立ち上がり、駅に向かって歩いていく。するとアリサとエマが声をかける。

 

エマ「あ、あの!」

 

キョウ「ん?」

 

アリサ「わ、私達もついて行っていいかしら」

 

アリサの言葉にキョウは黙っている。そして駅に向かって歩き出す。

 

エマ「えっと……」

 

キョウ「好きにしな。思い立ったが吉日、その日以降はすべて凶日だ!」

 

アリサ「あ、ありがとう!」

 

そして3人は、虹の実を捕獲しに出発した。列車に揺られる事数時間……目的の場所に到着した。

 

キョウ「ここだ」

 

アリサ「ここは?」

 

見ると、物凄く巨大な塀があった。

 

キョウ「全世界にある《ビオトープガーデン》だ。ここは、第8ビオトープだ」

 

エマ「ビオトープですか?」

 

聞きなれない言葉に首を傾げるエマ。

 

キョウ「ここ第8ビオトープは、エレボニア帝国が管理している。他にも第1~と色々とある」

 

アリサ「聞いたことがあるわ。エレボニア帝国には第1、第4、第8ビオトープがあるって」

 

エマ「思い出しました!他の国にもそれぞれビオトープをが存在します。その中に入るには、それぞれの国のトップが発行した証明書と、IGO会長直々の許可書が必要と聞いてます」

 

キョウ「正解だ。が、一部例外も認められている」

 

アリサ「例外?」

 

キョウの言葉に、今度はアリサが首を傾げる。

 

キョウ「俺はどの国のビオトープにも入る事ができる」

 

するとキョウは、1枚のカードを見せる。

 

アリサ「そ、それって!?」

 

キョウ「全ビオトープ入場許可書だ。俺は昔色々な国に新種の食材を寄付してきた。それが認められて許可書(これ)が発行されたんだ。裏には、全世界のトップの直筆サインが入っている」

 

裏を見ると、確かに全世界のトップのサインが記されていた。

 

エマ「す、凄いです……」

 

アリサ「この国の皇帝の《ユーゲント・ライゼ・アルノール3世》のサインが入ってるわね。それに、IGOが発行した証明書。絶対に偽造できない物…」

 

キョウ「そういうことだ」

 

そして、ビオトープゲートに立っていたIGOの警備兵に許可書を見せた。

 

「悪いが、今すぐに門を開ける事はできない」

 

キョウ「何でだ?」

 

「それは……」

 

すると“ドドドドン!!”という大きな音が響き渡る。

 

アリサ「な、なんなのこの音!?」

 

エマ「か、雷ですか!?」

 

「先程監視塔からの連絡で、既に1頭の“トロルコング”がゲート裏にいるそうだ」

 

その言葉にアリサとエマは驚く。

 

エマ「そ、それじゃあこの音は……」

 

アリサ「そのトロルコングが扉を叩いているの!?」

 

「いや、ゲート裏には深い堀がある。そこを超えてゲートを叩くのは不可能だ」

 

アリサ「じゃあ一体……」

 

すると後ろから、ゲートから聞こえる音より大きな音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドオン!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『!?』

 

振り返ると、キョウが自分の胸を思いっきり叩いていた。

 

エマ「ビ、ビックリしました……」

 

アリサ「急に大きな音を出さないでよ!!何なのよ今の音!?」

 

キョウ「()()()()()だ。ゴリラ特有の威嚇のポーズだ。さっきの音はトロルコングが胸を連打した音だ。この庭の王者が、俺達に入るなと忠告してるのさ」

 

「「……」」

 

その言葉に、2人は言葉を失ってしまった。

 

キョウ「まあいい。取り敢えずここ(ゲート)を開けてくれ」

 

「すまないが、それは無理だ。5km以内に猛獣がいたらゲートを開ける事は禁止されている」

 

キョウ「ったく、めんどくせぇルールだな。そんなルール破れよ」

 

そう言いながら、キョウはゲートの横の壁の前に立つ。

 

キョウ「……5km圏内にいなければいいんだろ?すなわち()()()()()()()()()()()()()()()いいワケだ」

 

「……は?」

 

キョウ「少し離れてな」

 

するとキョウは、右腕に力を溜める。

 

キョウ「3連……釘パンチ!!」

 

壁を殴ると、3回衝撃が加わり分厚い壁に穴をあけたのであった。

 

キョウ「お邪魔~♪」

 

そして中に入るのであった。

 

キョウ「……」

 

中に入ると、先程までドラミングをしていたトロルコングの姿はなかった。

 

キョウ(おかしい……さっきの奴はおそらく群れの下っ端だ。偵察に来ただけと思うが……)

 

アリサ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

エマ「ま、待ってくださいお2人とも」

 

キョウが壊した壁を通り2人がやって来る。

 

キョウ(この匂い……まさか!?)

 

すると塀の壁等に大量な蛇が現れた。

 

キョウ「来るな!!既に攻撃されている!!」

 

「「!?」」

 

次の瞬間、キョウの体は蛇に噛みつかれた。

 

「「キョウ(さん)!?」」

 

蛇に噛まれたキョウを見て、2人は焦る。

 

エマ「そ、その蛇はゾンビタイパン!?」

 

アリサ「猛毒の毒蛇よ!!」

 

キョウ「……チッ!!」

 

するとキョウは、近くにあった葉巻樹の枝を折り、口にくわえる。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチィン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指パッチンで葉巻樹に火を点けた。

 

キョウ「すうううううううう……はああああああ」

 

葉巻樹を目一杯吸って、体中に煙を巡らせる。

 

『グエッ!!』

 

すると蛇はキョウから離れて逃げて行った。

 

キョウ「ったく、むやみやたらになんでも投げるなよな」

 

そして橋を下す。

 

アリサ「ちょっと!!大丈夫なの!?」

 

エマ「急いで治療しないと危険ですよ!!」

 

キョウ「心配すんな。俺は既に抗体を持ってる」

 

「「えっ?」」

 

その言葉に2人は耳を疑った。

 

キョウ「さっさと行くぞ」

 

そして3人は出発した。暫くは特に猛獣や魔獣に出会うこともなく順調に進んでいった。

 

キョウ「一雨来そうだな……」

 

空を見上げると、曇っており遠くでゴロゴロと雷が鳴っていた。すると……

 

キョウ「!?落とし穴!!」

 

突然キョウの足元に落とし穴があらわれた。

 

「ゴアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

 

それと同時に4本の手に岩を持ったトロルコングが出てきた。

 

「バアアルア!!ゴアバルアア!!!!」

 

そして叫びながらキョウ目掛けて岩を投げつけた。

 

「「……」」

 

その光景を見て2人は1ミリも動かずに、自分の短い人生を走馬燈のように思い返していた。トロルコングは岩を投げ終えると、今度は2人の方に振り向く。

 

「ゴアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

2人は自分の人生はここまでと思った。しかし次の瞬間、どこからか物凄い殺気を感じた。それを感じた瞬間、トロルコングは2人を襲うのを止めた。

 

キョウ「ノッキング!!」

 

その瞬間を見逃さず、キョウはトロルコングにノッキングをしそのままトロルコングは倒れた。

 

キョウ「うわっ!?」

 

倒れたと同時に、トロルコングはキョウを舌で舐めたのであった。

 

キョウ「うげ~……唾液まみれだ」

 

アリサ「な、何が起きたの……」

 

キョウ「ノッキングだ。暫くは動けないが半日で解放される」

 

エマ「ノ、ノッキング?」

 

キョウ「さっさといくぞ」

 

エマの質問には答えず、先に進むキョウ達であった。更に進んでいくと、徐々に甘い匂いが漂って来た。

 

キョウ「虹の実は近いな」

 

アリサ「そうみたいね」

 

エマ「はい。甘くていい匂いがしてきました」

 

匂いを感じた2人。

 

アリサ「トロルコングもやっつけたし、これで安心して虹の実を捕獲できるわね」

 

エマ「はい」

 

安心しきっている2人にキョウが言う。

 

キョウ「言っとくが、さっきの奴は群れの一番下っ端だ。俺を舐めて唾液まみれにした理由がそこにある」

 

「「えっ?」」

 

キョウ「トロルコングはチンパンジー並に頭がいいからな。毒蛇を投げつけたり、落とし穴を掘るくらい普通にやるだろう……だが、小細工をやめた奴等が一番恐ろしい……!!」

 

話し終わり立ち止まると、目の前に広がる光景を見た2人はというと……

 

「「……!?」」

 

そこにいたのは、物凄い数のトロルコングがいたのであった。

 

キョウ「さあ、虹の実は目の前だ!!」

 

「「……」」

 

今日の言葉は2人には聞こえず、2度目の走馬燈中だった。


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