軌跡の世界は、美食時代?   作:シャト6

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第一章
4話


特別オリエンテーリングからあっという間に2週間が過ぎた。あれ以降特に変わった様子はない。まあ、何人かは勉強についていくのに精いっぱいみたいだ。そして今日もいつものように授業が終わりHRの時間がやってきた。

 

サラ「お疲れさま。今日の授業も一通り終わりね♥」

 

教室にやって来たサラが、皆にそう言う。

 

サラ「前にも伝えたと思うけど、明日は《自由行動日》になるわ。厳密に言うと休日じゃないけど、授業はないし何をするのも生徒達の自由に任されているわ。帝都に遊びに行ったっていいし、何だったらあたしみたいに1日中寝てても構わないわよ?」

 

その言葉に全員が呆れた表情になる。

 

エマ「えっと、学院の各施設等は開放されるのでしょうか?」

 

マキアス「図書館の自習スペースが使えるとありがたいんですが…」

 

サラ「ええ、そのあたりは一通り使えるから安心なさい。それと、クラブ活動も自由行動日にやってる事が多いから、そちらの方で聞いてみるといいわね」

 

ガイウス「…なるほど」

 

ラウラ「ふむ、確認しておくか」

 

その説明に、クラブをやっている連中が理解する。

 

サラ「それと来週なんだけど…水曜日に《実技テスト》があるから」

 

リィン「《実技テスト》…」

 

今度は初めて聞かされる内容に、皆が疑問を抱く。

 

アリサ「それは一体どういう?」

 

サラ「ま、ちょっとした戦闘訓練の一環ってところね」

 

キョウ「本当に戦闘訓練の一環か?また何かありそうだな」

 

その言葉に、旧校舎での出来事を思い出す。

 

サラ「そんな心配はないわ。これは一応評価対象のテストだから、体調には気を付けておきなさい。鈍らない程度に身体を鍛えておくのもいいかもね」

 

ユーシス「…フン、面白い」

 

エリオット「ううっ…何か嫌な予感がするなぁ」

 

フィー「…ふぁぁ」

 

その言葉に、それぞれが反応する。

 

サラ「そして、その実技テストの後なんだけど…改めて《Ⅶ組》ならではの重要なカリキュラムを説明するわ」

 

その言葉に数名は『ついに来たか』と思っていた。

 

サラ「ま、そういう意味でも明日の自由行動日は有意義に過ごす事をお勧めするわ。HRは以上!副委員長、挨拶して」

 

マキアス「は、はい」

 

そう言われて、副委員長であるマキアスが号令をかける。因みに委員長はエマである。

 

マキアス「起立……礼」

 

こうしてHRは終了したのであった。そして何人かは教室を出て行って、各々自由に過ごす。教室にはリィン、キョウ、エリオット、ガイウスが残っていた。

 

エリオット「《実技テスト》かぁ…ちょっと憂鬱だなぁ。魔導杖もまだちゃんと使いこなせてないし」

 

どうやら、来週行われる実技テストの事を考えているようだ。

 

リィン「そんなに心配なら、一緒に稽古でもしておくか?修錬場(ギムナジウム)もあるみたいだし、よかったら付き合うぞ」

 

エリオット「あ、うん…ありがたいんだけど」

 

キョウ「何か予定でもあるのか?」

 

少し申し訳なさそうに話し出すエリオット。

 

エリオット「実はこの後、クラブの方に顔を出そうと思ってるんだ」

 

リィン「なんだ、もう決めたのか?」

 

キョウ「へ~、何のクラブにするんだ?」

 

クラブに顔を出すと聞いて、2人はどのクラブかを聞く。

 

エリオット「うん……吹奏楽部だよ。といっても、担当するのはバイオリンになりそうだけど」

 

リィン「へえ……バイオリンなんて弾けるのか。趣味でやってたのか?」

 

エリオット「えへへ、まあね」

 

リィンの言葉に、照れくさそうに答えるエリオットであった。

 

キョウ「ガイウスは、どの部に入るんだ?」

 

ガイウス「ああ、俺は美術部という所に入ろうかと思っている」

 

リィン「美術部……ちょっと意外だな」

 

その言葉にエリオットとキョウは頷く。

 

エリオット「ガイウス、絵とか描くんだ?」

 

ガイウス「故郷にいた頃にたまに趣味で描いていた。ほぼ我流だから、きちんとした技術を習えるのはありがたいと思ってな」

 

エリオット「そっかぁ……」

 

キョウ「見てみたい気もするな」

 

すると、教室にサラがやって来た。

 

サラ「よかった、まだ残ってたわね」

 

リィン「サラ教官」

 

エリオット「どうしたんですか?」

 

サラ「いや~、実は誰かに頼みたい事があったのよ。この学院の《生徒会》で受け取ってほしい物があってね」

 

その言葉に、キョウだけは嫌な反応をしていた。

 

エリオット「受け取ってほしい物……」

 

ガイウス「それは一体?」

 

サラ「ふふっ、学院生活を送る上で欠かせないアイテムって所かな?」

 

キョウ「何が『学院生活を送る上で欠かせないアイテム』だ。このクラスの《生徒手帳》だろ。さっきトワから連絡があったぞ。『サラ教官の事だから、誰かに任せると思うから』って」

 

サラ「グッ……」

 

キョウの言葉に、思わずたじろぐサラであった。それを見た3人は呆れていた。

 

サラ「そういえば……あんた生徒会長と知り合いだったわね」

 

キョウ「知り合った理由は偶々だけどな。ってか、本当に教官の仕事してるのか?たまにトワが愚痴ってるぞ。『サラ教官だし仕方ないけどね』って」

 

その言葉を聞いて、リィン達はジト目でサラを見るのであった。

 

サラ「そ、それじゃあよろしくね~」

 

逃げるように教室から出て行ったのであった。

 

『……』

 

エリオット「あはは……」

 

キョウ「図星を突かれて逃げたか」

 

リィン「仕方ない、俺が行ってくるよ。キョウはどうする?」

 

キョウ「悪いけど、俺も少し用事があってな」

 

リィン「分かった。それじゃあまた寮で」

 

そして4人は別れた。

 

キョウ「さて、またサラを探さないとな」

 

先程逃げた担当教官を探すキョウである。ひとまず教官室に行ってみる事にした。

 

キョウ「失礼します……」

 

中に入るとサラはいた。いたのだが……

 

「サラ教官!いつもいつも言っているでしょう!!なんなのだその恰好は!!君は教官なのだから、もっと生徒達のお手本になるようにだな……」

 

教官室では、ハインリッヒ教頭の説教が響いていた。

 

キョウ「えっと……なにかしたんですか?」

 

近くにいたマカロフに話しかける。

 

マカロフ「ああお前さんは確か……《Ⅶ組》のキサラギだったな。いや、いつも通りの事さ。サラ教官がサボってるのをハインリッヒ教頭が説教するってのは」

 

キョウ「あのバカ」

 

等々キョウは、サラが担任教官ということを無視して、普段通りの口調になってしまった。

 

キョウ「マカロフ教官、すみませんがあのバカを呼んでもらっていいですか?」

 

マカロフ「マジかよ」

 

物凄く嫌そうな顔になるマカロフ。

 

キョウ「流石に生徒が呼んでいると分かれば、ハインリッヒ教頭も無視しないでしょう」

 

マカロフ「確かにな。仕方ない……」

 

そして渋々マカロフは、教頭の所に行く。そしてキョウが呼んでいると知ったのか、サラを開放し向かわせた。

 

サラ「いや~ナイスタイミングよキョウ♪」

 

キョウ「別にお前にために呼んだんじゃね~よ」

 

素っ気なく答える。

 

キョウ「自業自得だ。それより、外出許可がほしいんだ」

 

サラ「別にいいけど……何処に行くのよ?」

 

キョウ「ああ、ミュヒトから情報を貰ってな。《虹の実》が実ったらしいから、取ってこようと思ってな。もしかしたら、俺の人生のフルコースメニューになるかもしれないからな」

 

その言葉を聞いて、サラは驚いた。

 

サラ「マジで言ってるの!?《虹の実》って、果汁を一滴垂らしただけで、二十五アージュプールの水が芳醇なジュースに変化するのよ!!」

 

キョウ「声がでけぇよ!!他の教官の迷惑になるだろ!!」

 

取り敢えず拳骨をして、サラを連れて教官室の外に出て行ったのであった。そして中庭にやって来た。

 

サラ「それが事実なら、許可してあげるわ」

 

キョウ「サンキュー」

 

サラ「ただし!!」

 

その言葉にキョウはサラの顔を見る。

 

サラ「あたしも連れて行きなさい!!」

 

キョウ「いや、普通に駄目だろ。さっきチラッと見えたが、お前の机に大量な書類があったぞ?」

 

サラ「ウグッ……」

 

またしても図星を突かれるサラである。

 

キョウ「今回はキチンと仕事を終わらせておけ。占いによれば、もうすぐもっと貴重な食材が出るからよ。その時は同行してくれ」

 

サラ「……分かったわよ。その代わり、絶対に虹の実採ってきなさいよ!!」

 

キョウ「当然だ!!」

 

こうしてキョウは、虹の実の捕獲に行くことになったのであった。


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