軌跡の世界は、美食時代?   作:シャト6

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閃の軌跡 序章
1話


誰かが言った…全身の肉が下の上でとろける霜降り状態の獣がいると…

濃厚で芳醇なマスクメロンや完熟マンゴーの高級果物のジュースや、甘みのある泡がとめどなく踊る爽快な喉越しの飲み物が沸き出る泉があると。世はグルメ時代。いくなる味を求めて探求する時代…から時は流れて1204年。男は旅をしながら修行や食材を捕獲していた。

 

「うんめ~!!」

 

そして今日も、捕獲した獲物を食べていた。赤い制服を着て・・・

 

「さすがは“フライアダック”だ!肉がジューシーで美味い!!」

 

丸ごと揚げた鳥を1人で食べていた。

 

「ふぅ~!骨は油で揚げれば、軟骨みたいな歯応えがあって美味いんだよな♪普通の鳥は食えないが、フライアダックだけは違う」

 

そして…1羽丸ごと食べきったのであった。すると、通信機に着信が入る。

 

「ん?」

 

男は、上着のポケットからそれを取り出す。

 

「ポリポリ…もしもし?」

 

フライアダックの骨を食べながら通信に出る。

 

『もしもし?キョウ君?』

 

「その声は…トワか?久し振りだな♪」

 

通信の相手は、旅をしている時に知り合った《トワ・ハーシェル》という女の子だ。

 

トワ『『トワか?』じゃないよ!もう入学式始まってるんだよ!!』

 

「マジか!?」

 

そう言われれば、トリスタにある《トールズ士官学院》に入学するんだったと思い出すキョウであった。

 

キョウ「いや~ワリィな。トリスタに向かう途中で、美味そうな鳥に出会ってな。さっきまで食ってた!」

 

トワ『も、も~!相変わらずだねキョウ君は…』

 

思っていた通りの答えが返ってき、トワは呆れるしかなかった。

 

トワ『取り敢えず、早く来てよね。君が入る《Ⅶ組》は、特別なカリキュラムがあるんだから』

 

キョウ「分かったよ。また一緒に食おうぜ♪」

 

そう言い残して、キョウはトワと通信を切るのであった。

 

「ふ~…ご馳走様でした!さて、出発するか」

 

上着を羽織って荷物を背負い、士官学院に向かうのであった。到着すると、門の前で女の子とポッチャリとした男が立っていた。

 

「もう遅いよ~!」

 

キョウ「悪いなトワ。連絡くれなかったら、ここに来る事すら忘れるとこだったぜ!」

 

豪快に笑いながら、トワにそう言うキョウであった。

 

トワ「全く…昔と全然変わらないね」

 

キョウ「まぁな。トワも全然変わってないな?」

 

そう言いながらトワの頭を撫でるキョウ。

 

トワ「も、もう!キョウ君!!私は上級生なんだよ?」

 

顔を赤くしながら文句を言うトワ。

 

キョウ「と言われてもな…今更敬語で話すのもさ。それに、俺敬語苦手だし」

 

それを悪びれる様子もなく、何時も通りに対応するキョウであった。

 

「えっと…トワ。そろそろ彼を旧校舎に案内しないと」

 

作業服を着た男にそう言われて、トワは“ハッ”と気が付く。

 

トワ「そ、そうだねジョルジュ君!キョウ君、入学案内に使いやすい武器の申請があったと思うんだけど」

 

キョウ「そう言えばあったな。けど、俺は基本素手で戦うからな。あるとしたら、これくらいだ」

 

そう言われて、持っていたノッキングガンをトワに渡す。

 

トワ「わわっ!!」

 

受け取ったトワは、以外に重かったため体がよろめく。それを後ろにいたジョルジュが支えた。

 

ジョルジュ「大丈夫かいトワ?僕が預かるよ」

 

トワ「ううっ…ごめんねジョルジュ君」

 

申し訳なさそうに、キョウから受け取った銃を渡すのであった。

 

ジョルジュ「さて、これは預からせてもらうよ?すぐに返されると思うけど」

 

キョウ「なら頼むわ」

 

トワ「キョ、キョウ君!」

 

ジョルジュ「別にいいよトワ。僕は《ジョルジュ・ノーム》だよ。トワとは同い年だけど、僕にも気軽に話しかけてくれていいよ。敬語苦手って言ってたし」

 

タメ口で話すキョウに、トワはハラハラしてたが、ジョルジュがそう言うのでホッとした。

 

キョウ「あんがとな。で、その旧校舎ってどこにあんだ?」

 

トワ「途中まで案内するよ。それじゃあジョルジュ君、私はキョウ君を案内してくるから」

 

そして、トワはキョウを案内するのであった。

 

トワ「この先の行くと旧校舎があるよ。既に君の担任教官には連絡してあるから」

 

キョウ「色々サンキューな♪今度手料理ご馳走するからよ」

 

頭を撫でると、キョウは旧校舎へと向かったのであった。

 

キョウ「ここか?確かに古いな…」

 

するとキョウは、旧校舎から気配を感じた。

 

キョウ(中に数人の気配がするが、そいつは気にしなくていいだろう。だが、獣や魔獣の気配がするな)

 

そんな事を思いながら、旧校舎に入る。中に入ると、自分と同じ制服を着た数名の男女がいた。

 

キョウ「へ~、俺以外にもいたんだな」

 

「遅いわよキョウ。どうせその辺で何か食べてたんでしょ?」

 

声をかけられたので、そちらを見るとワインレッド色の髪をした女性がいた。

 

キョウ「ん?お前は…サラじゃね~か!ここで教官やってんだな」

 

サラ「去年からね。それより、アンタもさっさとそこに行きなさい。遅刻した事は多目に見るわ」

 

そう言われてキョウは、同じ年齢であろう男女の間に立つ。

 

サラ「さて、ようやく全員揃ったわね。それじゃあ早速だけど、オリエンテーション始めるわよ♪」

 

そう言うと、柱の中にあるボタンを押した。それと同時に、キョウ達が立っていた床が傾く。

 

「しまった!?」

 

「なっ…!?」

 

「うわわっ…!!」

 

「きゃあっ…!!」

 

突然傾きだした事に、それぞれ焦る。しかし踏ん張ることも出来ずそのまま落ちていく。

 

キョウ「スプーン!!」

 

そう叫ぶと、先に落ちた男子生徒達は捕まえられなかったが、女子生徒達は無事にスプーンですくわれていた。

 

「えっ・・・」

 

「これは・・・?」

 

キョウ「無事みたいだな」

 

「これは、そなたが?」

 

宙に浮いてる自分達が信じられず、確信犯であるキョウに聞くのであった。

 

キョウ「そうだ。先に落ちた連中は無理だったが、お前らはなんとかなった。そこの馬鹿が馬鹿な事しなきゃ、俺もこんな事せずにすんだけどな」

 

傾いてる床に手を刺しながら文句を言うキョウ。

 

サラ「バカバカうるさい!!」

 

キョウ「事実だろ?そんな性格だから、未だに彼氏の1人もできねぇ上に、他の連中に先越されんだよ」

 

気にしていることを言われて、三角座りをしながら床にのの字を書くサラであった。

 

「キョウ、流石に言い過ぎだよ」

 

上から声が聞こえたので見上げると、天井にワイヤーを打ち込みぶら下がっている女の子がいた。

 

キョウ「フィーじゃね~か!お前もここにいたんだな」

 

フィー「ん・・・久しぶりだねキョウ」

 

キョウ「だな。少しは背伸びたんじゃね~か?」

 

そう言いながらフィーの頭を撫でるキョウ。フィーも嬉しそうにその行為に甘える。

 

サラ「いいからあんた達もさっさと下りなさい!」

 

キョウ「わ~ったよ。お前らはそのままで下りるぞ」

 

スプーンのまま、キョウを含めた6人は下りていくのであった。地下に下りると、先に落ちていた男子連中と合流する。

 

「無事だったんだな」

 

キョウ「こいつらは俺が助けたからな」

 

そう言うと、眼鏡を掛けた男子が話しかける。

 

「だったら、僕達も助けてくれてもよかっただろう!」

 

キョウ「男だったら、あれくらい自分でどうにかしろよ・・・」

 

少し呆れながら答えるキョウに、男は口をパクパクさせていた。すると、持っていたARCUSに通信が入る。

 

「入学案内書と一緒に送られてきた・・・」

 

「携帯用の動力器か」

 

『それは特注の《戦術オーブメント》よ』

 

『!?』

 

その言葉にキョウ以外の全員が驚く。

 

「この機械から?」

 

「つ、通信機能を内蔵しているのか?」

 

「ま、まさかこれって・・・!?」

 

男子2人はARCUSを見ながらそう言い、金髪の女性何やら心当たりがありそうな言い方をする。

 

サラ『ええ、エプスタイン財団とラインフォルト社が共同開発した次世代の戦術オーブメントの1つ。第五世代戦術オーブメント《ARCUS(アークス)》よ』

 

「ARCUS・・・」

 

「戦術オーブメント・・・魔法(アーツ)が使えるという、特別な動力器の事ですね」

 

眼鏡をかけた女子がそう答える。

 

サラ『そう、結晶回路(クオーツ)をセットする事で、魔法(アーツ)が使えるようになるわ。というわけで、各自受け取りなさい』

 

そう言い終わると、自分達がいた部屋に明かりが灯る。周りを確認すると、門の所で預けた荷物が台座の上に置かれていた。

 

サラ『君達から預かっていた武具と、特別なクオーツを用意したわ。それぞれ確認した上で、クオーツをARCUSにセットしなさい』

 

「ふむ・・・とにかくやってみるか」

 

「まったく・・・一体何のつもりだ」

 

そしてそれぞれが、自分が預けた荷物の場所に向かった。

 

「これは・・・」

 

自分達が預けた武具以外に、何かが置かれている事に気が付く。

 

サラ『それは《マスタークオーツ》よ。ARCUSの中心に嵌めれば、魔法(アーツ)が使えるようになるわ。さあ、セットしてみなさい』

 

そう言われ、皆それぞれ置かれていたマスタークオーツをARCUSに嵌めるのであった。嵌めると、全員のARCUSが光りだす。

 

「これは・・・」

 

サラ『君達自身とARCUSが共鳴・同期した証拠よ。これでめでたく魔法(アーツ)が使用可能になったわ。他にも、面白い機能が隠されているんだけど・・・ま、それは追々って所ね♪・・・それじゃ、早速始めるとしますか』

 

そう言うと、部屋の扉が開かれる。

 

サラ『そこから先のエリアは、ダンジョン区画になってるわ。割と広めで入り組んでいるから少し迷うかもしれないけど・・・無事終点まで辿り着ければ、旧校舎1階に戻ることが出来るわ。ま、ちょっとした魔獣なんかも徘徊してるんだけどね♪』

 

無性に楽しそうに言うサラであった。

 

サラ『それではこれより、士官学院・特科クラス《Ⅶ組》の特別オリエンテーリングを開始する。各自ダンジョン区画を抜けて、1階旧校舎まで戻ってくること。文句があったら、その後に受け付けてあげるわ。何だったらご褒美にホッペにチューしてあげるわよ♥』

 

キョウ「んなのより、俺は食い物の方がいいけどな」

 

サラ『んなのってなによ!!普通は嬉しがるとこ・・・』

 

それ以上聞く気はないので、キョウは強制的に通信を切ったのである。それにフィー以外の全員は苦笑いしたのであった。


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