誰かが言った。
天然の火口のオーブンで、グラグラと煮えたつグラタンのマグマ、“マグマーカロニグラタン”があると。
とろりと甘く、まるでプリンのような味わいのカボチャ、“パンプリン”があると。
世はグルメ時代…未知なる味を求めて、探求する時代…
あれからトワは、フグ鯨を一生懸命捌いているが、やはりデリケートなだけあって、毒化になってしまい残り最後の1匹となった。
トワ「これが最後の1匹…」
キョウ「落ち着けば大丈夫だ。少しずついい感じになってるんだ。次も落ち着いてやればいい」
アンゼリカ「大丈夫だトワ。君ならやれるさ」
サラ「頼むわよトワ!ヒレ酒かかかっているんだから!」
キョウ「お前はもう少しトワの気持ちを考えろ!」
キョウに怒られ、サラの頭に大きなタンコブができていた。そしてトワは遂に、フグ鯨の毒袋が見える場所まで捌ききっていた。
キョウ「よし、後はその毒袋の回りにある粘膜を慎重に取っていくんだ」
トワ「慎重に…慎重に…」
トワはゆっくりと、毒袋の回りにある粘膜を剥がしていく。そして遂に毒袋を完全に取り除いた。その瞬間、フグ鯨は金色に輝きだした。
トワ「やった…やったよキョウ君!」
キョウ「よくやったなトワ!」
トワは嬉しさのあまり、泣きながらキョウに抱き付いた。
アンゼリカ「おめでとうトワ。だが…羨ましいぞキョウ!」
サラ「よくやったわトワ!これでヒレ酒が飲めるわ~♪」
この2人は、トワとは別の意味で泣いていた。
キョウ「それじゃあ早速、フグ鯨を食おうぜ!」
「「「賛成!」」」
そしてキョウとトワは、フグ鯨の身を刺身にしていき、サラは早速採ったヒレでヒレ酒を作っている。
トワ「出来た!」
サラ「此方も完成よ!」
そしてキョウ達の前には、フグ鯨の刺身とヒレ酒が用意された。
キョウ「んじゃ、この世の全ての食材に感謝を込めて…いただきます!」
「「「いただきます!」」」
果たして、フグ鯨のお味は如何に!
キョウ「……」
「「「……」」」
キョウ「う……うめぇぇぇぇぇぇ!!」
「「「美味しいぃぃぃぃぃぃ!!」」」
やはり旨さは格別なようだ。
「プリプリなのに、物凄く噛みごたえのある身!何時までも噛んでいられる…」
トワ「凄く美味しい。私フグ鯨生まれて初めて食べたけど、こんなに美味しいんだね」
アンゼリカ「ああ。私の父は、若い時に母と食べたことがあるらしいが…なるほど。これは娘の私に自慢したくなる筈だ」
サラ「んく…んく…プハァ!ヒレ酒も格別だわ♪体がポカポカするわね」
「ああ」
二十歳を過ぎてる2人は、ヒレ酒を旨そうに飲んでいる。
トワ「なんだか…あれだけ美味しそうに飲んでると」
アンゼリカ「飲んでみたいと思ってしまうな」
だがそれでも、2人は二十歳を越えていない為我慢した。
「安心しろ。2人が二十歳むかえたら、俺がフグ鯨捕獲してやるからよ」
トワ「ホント、キョウ君!」
「ああ、約束を破るようなふざけた真似はしねぇぜ」
アンゼリカ「フフッ、ならば楽しみにしておこう」
そして、4人はフグ鯨を食べ終わった。
「ご馳走さまでした」
サラ「しかし、グルメ細胞ってホント便利よね。いいものを食べたら体力とか回復するなんて」
「確かにそうだが、グルメ細胞が適応しないと死に至るデメリットもあるがな」
サラ「そうなのよね。私もグルメ細胞が適応するか知りたいわ」
そんな話をしていると、海側から物凄い気配を感じた。
「「「!!?」」」
サラとアンゼリカは、すぐに戦闘体勢にはいる。トワだけは感じなかったが、被害が出ないようにキョウが自分の後ろに隠れさせる。
「……」
海から出てきた生物?らしき物体は、キョウ達の方を見つめていた。
サラ(なんなのよ…こんな不気味な気配を感じたの、遊撃時代でも中々なかったわよ)
アンゼリカ(まずい…今の私では、全くと言っていいほど勝てるイメージが湧かない)
「……」
サラとアンゼリカは、未だに警戒いているが、キョウだけは違っていた。
(ありゃ…生物じゃねぇな。チタン合金の臭いがする)
そう。キョウの思った通り、あれは生き物ではなかった。だが、キョウ以外はそんなこと知る筈もなかった。そしてそれは、サラ達を無視して洞窟に消えていったのだった。
「「ッ…ハァ!…ハァ!!」」
姿が見えなくなると、サラとアンゼリカは地面に座り込んだ。
サラ「な、なんだったのよあれ」
アンゼリカ「あんな生物、今まで会った事ない」
「アイツは生物じゃねぇ」
「「えっ!?」」
トワ「そ、そうなのキョウ君!?」
キョウの言葉に3人は驚く。何処からどう見ても、生物にしか見えなかったからだ。
「僅かだが、チタン合金の臭いがしたんだよ」
サラ「チタン合金…」
アンゼリカ「先程の聞いてはいたが、驚くほどの嗅覚だね」
「まぁな(だが、どう考えてもただの機械にあれだけの殺気は出せねぇ。となると、あれを誰かが着込んでいるのか、もしくは…)」
先程の殺気を感じ、キョウは色々と考えていた。
サラ「まぁ、今ここであれこれ言っても始まらないわ。ひとまずトリスタに戻りましょう」
「そうだな」
サラの言葉に、キョウ達は頷きトールズがあるトリスタに戻るのだった。だが、キョウだけは、砂浜での出来事をずっと考えていた。
(…何かが動き出してるな。またウチの連中に調べさせるか)
そして無事にトリスタに戻ったのであった。因みに、フグ鯨の身はかなりな噛みごたえがあったため、キョウ達は1週間顎が痛かったそうだ。
トワ「ううっ…顎が痛くてご飯が食べれないよ」
アンゼリカ「フグ鯨…旨かったが、顎があれほど痛くなるとは…」
サラ「ヒレ酒だけにしておけばよかったわ」
「流石の俺も、久々に食ったから顎がイテェな」