軌跡の世界は、美食時代?   作:シャト6

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20話

誰かが言った。

天然の火口のオーブンで、グラグラと煮えたつグラタンのマグマ、“マグマーカロニグラタン”があると。

とろりと甘く、まるでプリンのような味わいのカボチャ、“パンプリン”があると。

世はグルメ時代…未知なる味を求めて、探求する時代…

あれからトワは、フグ鯨を一生懸命捌いているが、やはりデリケートなだけあって、毒化になってしまい残り最後の1匹となった。

 

トワ「これが最後の1匹…」

 

キョウ「落ち着けば大丈夫だ。少しずついい感じになってるんだ。次も落ち着いてやればいい」

 

アンゼリカ「大丈夫だトワ。君ならやれるさ」

 

サラ「頼むわよトワ!ヒレ酒かかかっているんだから!」

 

キョウ「お前はもう少しトワの気持ちを考えろ!」

 

キョウに怒られ、サラの頭に大きなタンコブができていた。そしてトワは遂に、フグ鯨の毒袋が見える場所まで捌ききっていた。

 

キョウ「よし、後はその毒袋の回りにある粘膜を慎重に取っていくんだ」

 

トワ「慎重に…慎重に…」

 

トワはゆっくりと、毒袋の回りにある粘膜を剥がしていく。そして遂に毒袋を完全に取り除いた。その瞬間、フグ鯨は金色に輝きだした。

 

トワ「やった…やったよキョウ君!

 

キョウ「よくやったなトワ!

 

トワは嬉しさのあまり、泣きながらキョウに抱き付いた。

 

アンゼリカ「おめでとうトワ。だが…羨ましいぞキョウ!

 

サラ「よくやったわトワ!これでヒレ酒が飲めるわ~♪」

 

この2人は、トワとは別の意味で泣いていた。

 

キョウ「それじゃあ早速、フグ鯨を食おうぜ!」

 

「「「賛成!」」」

 

そしてキョウとトワは、フグ鯨の身を刺身にしていき、サラは早速採ったヒレでヒレ酒を作っている。

 

トワ「出来た!」

 

サラ「此方も完成よ!」

 

そしてキョウ達の前には、フグ鯨の刺身とヒレ酒が用意された。

 

キョウ「んじゃ、この世の全ての食材に感謝を込めて…いただきます!」

 

「「「いただきます!」」」

 

果たして、フグ鯨のお味は如何に!

 

キョウ「……」

 

「「「……」」」

 

キョウ「う……うめぇぇぇぇぇぇ!!

 

「「「美味しいぃぃぃぃぃぃ!!」」」

 

やはり旨さは格別なようだ。

 

「プリプリなのに、物凄く噛みごたえのある身!何時までも噛んでいられる…」

 

トワ「凄く美味しい。私フグ鯨生まれて初めて食べたけど、こんなに美味しいんだね」

 

アンゼリカ「ああ。私の父は、若い時に母と食べたことがあるらしいが…なるほど。これは娘の私に自慢したくなる筈だ」

 

サラ「んく…んく…プハァ!ヒレ酒も格別だわ♪体がポカポカするわね」

 

「ああ」

 

二十歳を過ぎてる2人は、ヒレ酒を旨そうに飲んでいる。

 

トワ「なんだか…あれだけ美味しそうに飲んでると」

 

アンゼリカ「飲んでみたいと思ってしまうな」

 

だがそれでも、2人は二十歳を越えていない為我慢した。

 

「安心しろ。2人が二十歳むかえたら、俺がフグ鯨捕獲してやるからよ」

 

トワ「ホント、キョウ君!」

 

「ああ、約束を破るようなふざけた真似はしねぇぜ」

 

アンゼリカ「フフッ、ならば楽しみにしておこう」

 

そして、4人はフグ鯨を食べ終わった。

 

「ご馳走さまでした」

 

サラ「しかし、グルメ細胞ってホント便利よね。いいものを食べたら体力とか回復するなんて」

 

「確かにそうだが、グルメ細胞が適応しないと死に至るデメリットもあるがな」

 

サラ「そうなのよね。私もグルメ細胞が適応するか知りたいわ」

 

そんな話をしていると、海側から物凄い気配を感じた。

 

「「「!!?」」」

 

サラとアンゼリカは、すぐに戦闘体勢にはいる。トワだけは感じなかったが、被害が出ないようにキョウが自分の後ろに隠れさせる。

 

「……」

 

海から出てきた生物?らしき物体は、キョウ達の方を見つめていた。

 

サラ(なんなのよ…こんな不気味な気配を感じたの、遊撃時代でも中々なかったわよ)

 

アンゼリカ(まずい…今の私では、全くと言っていいほど勝てるイメージが湧かない)

 

「……」

 

サラとアンゼリカは、未だに警戒いているが、キョウだけは違っていた。

 

(ありゃ…生物じゃねぇな。チタン合金の臭いがする)

 

そう。キョウの思った通り、あれは生き物ではなかった。だが、キョウ以外はそんなこと知る筈もなかった。そしてそれは、サラ達を無視して洞窟に消えていったのだった。

 

「「ッ…ハァ!…ハァ!!」」

 

姿が見えなくなると、サラとアンゼリカは地面に座り込んだ。

 

サラ「な、なんだったのよあれ」

 

アンゼリカ「あんな生物、今まで会った事ない」

 

「アイツは生物じゃねぇ」

 

「「えっ!?」」

 

トワ「そ、そうなのキョウ君!?」

 

キョウの言葉に3人は驚く。何処からどう見ても、生物にしか見えなかったからだ。

 

「僅かだが、チタン合金の臭いがしたんだよ」

 

サラ「チタン合金…」

 

アンゼリカ「先程の聞いてはいたが、驚くほどの嗅覚だね」

 

「まぁな(だが、どう考えてもただの機械にあれだけの殺気は出せねぇ。となると、あれを誰かが着込んでいるのか、もしくは…)」

 

先程の殺気を感じ、キョウは色々と考えていた。

 

サラ「まぁ、今ここであれこれ言っても始まらないわ。ひとまずトリスタに戻りましょう」

 

「そうだな」

 

サラの言葉に、キョウ達は頷きトールズがあるトリスタに戻るのだった。だが、キョウだけは、砂浜での出来事をずっと考えていた。

 

(…何かが動き出してるな。またウチの連中に調べさせるか)

 

そして無事にトリスタに戻ったのであった。因みに、フグ鯨の身はかなりな噛みごたえがあったため、キョウ達は1週間顎が痛かったそうだ。

 

トワ「ううっ…顎が痛くてご飯が食べれないよ」

 

アンゼリカ「フグ鯨…旨かったが、顎があれほど痛くなるとは…」

 

サラ「ヒレ酒だけにしておけばよかったわ」

 

「流石の俺も、久々に食ったから顎がイテェな」


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