軌跡の世界は、美食時代?   作:シャト6

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19話

誰かが言った。ハチミツの甘い樹液を滴わせる樹の密林“ハチ密林”があると…

四枚合わせると美味なるハンバーガーになる“四葉のクローバーガー”があり、バターの香りが香ばしいフライドポテトの蝶“バターフライドポテト”を引き寄せて、天然のバーガーセットになると。

世はグルメ時代…未知なる味を求めて、探求する時代…

別の美食屋に拐われたトワを無事救出したキョウ。サラとアンゼリカも、なんとかデビル大蛇を倒す事に成功し、トワとキョウと合流した。そして一行は、洞窟を進みようやくフグ鯨がいる砂浜に到着したのだった。

 

キョウ「ようやく到着したか」

 

トワ「うわ~!綺麗だねアンちゃん」

 

アンゼリカ「ああ。これ程美しいとは思わなかったな」

 

サラ「早くフグ鯨を捕まえましょうよ」

 

サラは、早く捕まえてフグ鯨のヒレ酒を飲みたいらしい。

 

キョウ「そうだな。なら、さっさと捕まえに行くか」

 

するとキョウは、上半身裸になる。

 

トワ「あわわ!///」

 

それを見たトワが、慌てて手で顔を覆い隠した。

 

キョウ「ん?どうした」

 

トワ「い、いきなり脱がないでよキョウ君!ビックリするじゃん!」

 

キョウ「…ああっ!悪い悪い。俺、そういうのあんまり気にしないからよ」

 

トワ「も、もぅ…」

 

笑いながら謝るキョウに、トワはプリプリと怒っていた。

 

サラ「ほらキョウ、さっさと行くわよ」

 

サラは既に、上半身をシャツに着替えており、潜る準備は万端であった。

 

キョウ「ホントお前は、酒が絡んだ時の行動力には頭が下がるぜ」

 

サラ「フフッ、ヒレ酒ヒレ酒~♪」

 

キョウ「ダメだこりゃ。アイツの頭の中は、もうヒレ酒の事しかねぇわ」

 

トワ「あ、あはは…」

 

アンゼリカ「ま、まぁ…サラ教官の気持ちも分からなくはないが」

 

サラを見て、キョウは呆れトワとアンゼリカは苦笑いをしていた。

 

キョウ「そんじゃ、改めて行くか。お前らはどうする?」

 

トワ「私はここで待ってるよ。水着もないし、サラ教官みたいにシャツや着替えも用意してないからさ」

 

アンゼリカ「私も遠慮しておこう。それに、トワを1人にするわけにもいかないだろう」

 

キョウ「分かった。なら少し待っててくれ」

 

そう言い残し、キョウとサラは海に入っていった。暫く泳いでいると、目の前の巨大なフグ鯨がいた。

 

サラ(ちょ、ちょっと!いくらなんでも大きすぎでしょ!?)

 

キョウ(いや、んな訳ないだろ。よく見てみろ)

 

キョウは指でジャスチャーして、サラにフグ鯨をよく見るように指示する。

 

サラ(よく見ろって…あら?)

 

よく見てみると、巨大なフグ鯨ではなく、普通サイズのフグ鯨が、群れになって巨大なフグ鯨に見せていた。

 

キョウ(さて、早速捕獲するか)

 

キョウは気配を殺して、自分の体を海と同化させていく。

 

キョウ(…ここだ!)

 

フグ鯨に感付かれず、素早くノッキングする。

 

キョウ(ノッキング完了だ。ほら、同じ様にお前もしてみろ)

 

キョウは、先程フグ鯨に使ったノッキングガンをサラに渡す。

 

サラ(ノッキングって、私ノッキングなんて今までしたことないわよ!)

 

キョウ(安心しろ。俺がキチンとレクチャーしてやるからよ)

 

サラ(…分かったわよ)

 

サラは渋々だが、キョウからノッキングガンを受け取る。キョウもサラの背後につき、ノッキングガンの操作を教える。

 

キョウ(フグ鯨は、一匹事に毒袋の位置が違う。だが、お前くらいの実力があれば、しっかりと見れば位置が分かるさ)

 

サラ(……)

 

サラは、目の前のフグ鯨をジッと見つめる。

 

サラ(…そこっ!)

 

そして素早くノッキングする。フグ鯨は動かなくなる。

 

サラ(やったわ!)

 

だが、喜んだのも束の間。すぐにフグ鯨は毒化してしまった。

 

サラ(なんで!?やっぱりダメだったの?)

 

キョウ(いや、ノッキングは完璧だった。だが、運悪くノッキングした場所に毒袋があったみたいだな)

 

サラ(そんな~!)

 

キョウは首を振り、サラの失敗を否定したが、サラ本人はショックだったらしく、少し沈んでいた。それから何匹か同じ要領で捕まえていく。

 

「「プハ~!」」

 

トワ「あ、キョウ君にサラ教官!」

 

アンゼリカ「2人共お疲れ」

 

キョウ「あぁ。合計10匹くらいか」

 

サラ「残念だけど、もういないからね」

 

捕まえてきたフグ鯨を前に置く。

 

サラ「さて、それじゃあキョウ、さっさとフグ鯨を捌いちゃってよ♪」

 

キョウ「ん~…」

 

キョウは顎に手を当てて何かを考えていた。

 

キョウ「俺がやれば簡単だがサラ、ヒレ酒を飲みたいなら自分で捌いてみろ」

 

サラ「ええええええ!!!!」

 

キョウ「前から言ってるだろ。自分が食べたい飲みたいんなら、自分で捌いて調理できるようのなれって」

 

サラ「うぐ…」

 

キョウに図星を言われ、サラはグゥの音も出なかった。

 

キョウ「まさか、俺が言った事してなかったのか」

 

サラ「…はい」

 

キョウ「やれやれ。どうするかな」

 

キョウは考えていると、トワが手を挙げた。

 

キョウ「ん?どうしたトワ」

 

トワ「キョウ君…私がしてみてもいいかな?」

 

キョウ「トワがか?」

 

トワ「うん!」

 

キョウ本人も、まさか自分から言ってくるとは思っていなかったようだ。

 

トワ「いいかな?」

 

キョウ「…よし!やってみろトワ!」

 

サラ「ちょっとキョウ!本当にやらせるの!?」

 

キョウ「お前は黙ってなさい」

 

そう言われ、シュンと悄気るサラだった。そして、トワは持ってきた包丁を取り出した。

 

キョウ「ほう…しっかりと手入れがしてあって、素晴らしい包丁だな」

 

トワ「えへへ。ありがとう。昔からお母さんに、自分が使う調理器具はキチンと手入れしておきなさいって言われててね」

 

キョウ「なるほど。さて、なら早速始めるか」

 

トワ「う、うん」

 

トワはエプロンを着けて、包丁を持つ。

 

キョウ「このフグ鯨は、浮き袋の真下に毒袋がある。まずは、尾びれの付け根から3枚にオロス要領で、10cm包丁を入れろ」

 

トワ「……」

 

トワは、キョウの指示通り尾びれの付け根から10cmの所で包丁を止める。

 

キョウ(やるな。ピタリ10cmの所で止めたな)

 

トワ(凄い…身がズッシリと重いよ。これがフグ鯨本来の重量感なんだ)

 

キョウ「次はエラから入れて、下顎の骨を切断しろ」

 

トワ「う、うん」

 

そして再びキョウの指示通りに捌くトワ。

 

キョウ(上手い!)

 

トワ(む、難しいよ。1mmでも包丁の入れ方を間違えられないなんて。まるで…爆弾を処理してる気分だよ)

 

緊張しているトワ。そのせいで手元が狂い、1mmズレてしまった。

 

トワ「ああっ!」

 

キョウ「(惜しいな。コンマ1mmズレたか)気にするな。まだ9匹残ってるよ。失敗を次に活かせばいいんだよ」

 

トワ「う、うん…」

 

涙目のトワをキョウは優しく撫でてあげた。果たして、トワは無事にフグ鯨を捌く事が出来るのだろうか。


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