軌跡の世界は、美食時代?   作:シャト6

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16話

誰かが言った…虹の橋のたもとには七つの味の飴を降らせる綿菓子の甘い雲、 甘雲 が浮かんでいると…

最も早く朝日が昇るパンの高山 クロワッ山 、輝く太陽の恩恵を受けポタージュの樹液が染み出る コーンポター樹 、朝日を浴びて葉が開く ハムエッ草 と、朝食のメニューが揃う島、 ブレックファース島 があると…

世はグルメ時代…いくなる味を求めて、探求する時代…

キョウ、サラ、トワ、アンゼリカの4人は、フグ鯨が産卵に来る洞窟の砂浜入口にやって来た。

 

キョウ「お~!既に美食屋が何人も来てるな」

 

トワ「す、凄い…こんなに美食屋を見たの初めてだよ」

 

アンゼリカ「恥ずかしながら私もだ」

 

サラ「けど、ここで待ってるって事は…」

 

キョウ「大方、洞窟でフグ鯨を捕獲した美食屋を狙うつもりなんだろう」

 

その言葉にトワが驚く。

 

トワ「そ、そうなの!?」

 

キョウ「そりゃ当然だろ。フグ鯨は10年に1度しか来ない。だから、一匹の値段も高値で取引される」

 

トワ「へ~」

 

サラ「確か遊撃士の頃だったけど、闇市に潜入した時、一匹800万で取引された事もあるらしいわよ。毒化してたけどね」

 

トワ「は、800万…」

 

あまりの金額に、言葉を失うトワである。

 

キョウ「だがそのお陰で、多い年では10万人の中毒死者が出たこともあるけどな」

 

そんな話をしながら、キョウ達は洞窟の中に入っていく。

 

アンゼリカ「ふむ。中は案外広いんだね」

 

トワ「そうだね」

 

キョウ「最初の内はな。ライトつけとけよ。すぐに暗闇で何も見えなくなるぞ」

 

サラ「2人とも、私達から離れるんじゃないわよ」

 

キョウ「……」

 

サラがそう言う中、キョウは何かを考えていた。

 

トワ「キョウ君?」

 

キョウ「…ん?どうした?」

 

トワ「途中で黙ってたけど、どうかしたの?」

 

キョウ「ああ、考え事だ。気にすんな」

 

そして洞窟の奥を目指していく。

 

キョウ(さっきの美食屋達、全員に死相が見えていた。一体何でだ?)

 

先程待ち伏せしてる、美食屋達全員に死相が見えた事に、キョウは嫌な予感がしていた。

 

トワ「うわ~!アンちゃん見て!天然の『ポキポキキノコ』だよ!!」

 

アンゼリカ「へ~。市場等では見たことはあるが、生えている物は初めてだね」

 

キョウ「おっ!旨そう♪いただきます」

 

キョウはすぐにつまみ、ポキポキと音をたてて食べた。更に進んでいくと、道が2つに分かれている。

 

トワ「道が分かれてるね」

 

キョウ「…サラはどっちだと思う」

 

サラ「そうねぇ…」

 

するとサラは、分かれ道の入口に近づき気配を探る。

 

サラ「う~ん…どっちのあなからも嫌な気配がするわね」

 

キョウ「なるほど。確かに両方の穴からも死臭が半端ない。だが!右の穴からは《ヤデス》特有の()()とする匂いがする」

 

サラ「なら、右は《巨大ヤデス》の巣があるわね」

 

キョウ「正解だ。で、左の穴からはほんのわずかだが潮の香りがする。左だ」

 

2人はそう言う。そしてキョウが決めた左に進んでいく。

 

トワ「あ、相変わらずだね。キョウ君の嗅覚」

 

サラ「まぁね。コイツの嗅覚は犬の10万倍だからね」

 

トワ「じゅ、10万!!」

 

アンゼリカ「そ、それは驚いたね」

 

そんな話をしながら進んでいく。最初と比べて、辺りは真っ暗でトワ達が着けてるヘルメットの明かりだけが頼りだ。

 

サラ「ここ滑りやすくなってるわね。アンタ達!ここ滑るから気を付けなさい」

 

トワ「わ、分かりました~」

 

アンゼリカ「だけど、キョウとサラ教官はよく暗い中をスイスイと進んでいけるね」

 

キョウとサラが、暗闇の中を問題なく進んでる事に疑問を抱くアンゼリカ。

 

キョウ「ああ、俺とサラは電磁波で辺りを確認してるんだよ」

 

アンゼリカ「電磁波?」

 

キョウ「この世には、何かしらの電磁波が出ている。俺はそうだが、本来この電磁波を見るのは努力じゃどうにもならねぇ。生まれ持った才能だ」

 

トワ「なら、サラ教官は…」

 

キョウ「お前が思ってる通りだ。サラは電磁波を見る才能があった。後は、俺が多少鍛えてやったおかげで、自分のものにしたってわけだ」

 

アンゼリカ「なるほど」

 

キョウの説明に納得する2人。

 

キョウ「俺もだが、サラの奴もこの中でも昼間みたいに見えるんだよ」

 

トワ「凄いね」

 

キョウ「だから、お前らは俺かサラから絶対に離れるなよ」

 

そして更に奥に進んでいく。

 

キョウ「…止まれ」

 

キョウがストップをかける。見ると、その先は崖だった。

 

アンゼリカ「崖か」

 

キョウが言わなければ危なかった2人。すると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カサカサカサ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが這う音が聞こえる。

 

トワ「こ、この音って…」

 

アンゼリカ「まさか…」

 

サラ「うわっ…」

 

サラ達女3人は、顔を青くさせる。

 

キョウ「ああ、お前らが思ってるモンだ。下を照らしてみな」

 

そう言われ、トワとアンゼリカは恐る恐る崖下をライトで照らした。すると、そこで見えたのは大量のゴキブリだった。

 

「「「きゃあああああああ!!!!」」」

 

当然、この世で9割は苦手とするゴキブリが、これだけ大量にいれば、いくら遊撃士A級であるサラも叫びたくなる。

 

キョウ「サソリゴキブリか。普段から群れで行動するからな。こんだけいて当然か」

 

崖下は、サソリゴキブリで埋め尽くされていた。そんな光景を見れば、誰でも鳥肌が立つ。

 

サラ「うわ~…何回か遠くで見たことはあったけど、ここまで集まってると流石に気持ち悪いわね」

 

キョウ「だろうな。一部のゲテモノ透きには堪らない食材だけどな」

 

トワ「も、もしかしてあれ食べるの…」

 

トワは顔を引きつらせながらキョウに聞く。

 

キョウ「俺は食わねぇが、ゲテモノ料理が好きな連中には、格別らしいぞ」

 

アンゼリカ「私も聞いたことはあったが…実物を見ると、食べる気にはなれないのだが」

 

キョウ「それが普通だ。本来ならな、食材にならないものだからな」

 

その言葉に、トワとアンゼリカは世の中は広いなと思ったそうだ。

 

アンゼリカ「しかし、これだけいると簡単には進めないな」

 

キョウ「そうだな」

 

そんな話をしていると…

 

「うわあああああああ!!!!」

 

別の穴から男が滑り落ちてきた。そのままサソリゴキブリがいる下まで男は落ちてしまった。

 

サラ「まずいわ!」

 

キョウ「ああ、下はサソリゴキブリの巣だ。これはもう…」

 

サラ「そうね…」

 

2人は、悔しい表情をする。トワとアンゼリカは、理解できていなかったが、すぐにその意味を知った。

 

トワ「!?ア、アンちゃん!」

 

アンゼリカ「ああ。2人の表情の意味が理解できたよ」

 

下を見ると、先程落ちたら男は、サソリゴキブリの毒により溶かされ骨だけになっていたのだ。

 

キョウ「対策がなけりゃ、巣穴に落ちたら最後、ああなるんだよ。サソリゴキブリは溶かしてそれを養分にするからな」

 

トワ「…ウッ」

 

初めて目の当たりにする、人の死。それも白骨としてだ。トワは気分を悪くする。

 

アンゼリカ「大丈夫かいトワ」

 

トワ「う、うん…ゴメンねアンちゃん」

 

サラ「ま、仕方ないわね」

 

キョウ「そうだな。トワ、無理なら一度戻るか?」

 

キョウの言葉に首を振る。

 

トワ「大丈夫…折角無理言って来たんだもん」

 

キョウ「そうか」

 

キョウはそれ以上何も言わなかった。

 

キョウ「サラ、俺が先に降りる」

 

サラ「分かったわ」

 

そう言うと、キョウは持ってた荷物をサラに預け下に飛び降りた。

 

トワ「キョ、キョウ君!!?」

 

アンゼリカ「何を!!」

 

サラ「安心なさい」

 

驚く2人に、サラは冷静にそう言う。恐る恐る下を見ると、サソリゴキブリ達はキョウから離れていた。

 

アンゼリカ「何故だ?」

 

サラ「アイツはね、色々な毒を作り出せるのよ。それも、世の中に出ていない毒なんかもね」

 

トワ「そ、そうなんですか?」

 

サラ「ま、そのお陰でアイツは昔、色んな国の連中に狙われてたけどね」

 

アンゼリカ「それは何故です?」

 

サラの言葉に、アンゼリカが質問する。

 

サラ「簡単な事よ。アイツを捕まえて、調べてワクチンとかを作るためよ」

 

トワ「そっか。キョウ君にしかない毒、万が一かかったときにワクチンがないと対処できないですもんね」

 

サラ「その通りよ。今でこそ、アイツはIGOに入ってるから、どの国の連中も追うことは止めたけどね。まだ続いてたら、今頃この大陸無くなってるかもね♪」

 

サラは笑いながらそんな話をした。そしてロープを垂らし、キョウを先頭にしてなんとかサソリゴキブリの群れの中を通過したのだった。


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