軌跡の世界は、美食時代?   作:シャト6

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13話

奥から表れたのは、自然公園のヌシであろう巨大なヒヒだった。

 

野盗「ひいいいいい!!」

 

エリオット「巨大なヒヒ!?」

 

アリサ「な、なんて大きさ!!」

 

ラウラ「この自然公園のヌシといったところか!どうする、リィン!?」

 

リィン「くっ、流石に彼らを放り出す訳にもいかない!」

 

キョウ「なら、そいつらは俺に任せろ」

 

『!?』

 

キョウが野盗達の前に立つ。

 

キョウ「俺がこいつら(野盗達)を見ておく。お前らは存分にそいつと戦え!」

 

アリサ「キョウ…」

 

リィン「…分かった。そっちは頼んだぞ、キョウ!」

 

キョウ「任せとけ!」

 

そしてキョウを除いた4人で、巨大なヒヒと戦うのだった。最初は苦戦していたが、リィンが上手く戦術リンクを使い始め、ヒヒを押していく。

 

キョウ(へぇ…中々なもんだな。ま、あいつが選んだ連中だ。当然か)

 

リィン「焔よ…我が剣に集え。はあぁぁぁ!斬!!」

 

そしてリィンが止めをさした。

 

リィン「はあっ…はあっ…」

 

アリサ「と、とんでもなかったわね…」

 

エリオット「さ、流石にもうダメかと思ったよ…」

 

ラウラ「だが、何とか撃退できたようだ」

 

キョウ「お疲れ」

 

戦い終わった皆に声をかけるキョウ。

 

リィン「キョウ…」

 

キョウ「リィン、さっきの技見事だったな」

 

リィン「ああ。修行の賜物さ」

 

エリオット「何はともあれ…」

 

そこまで言うと、倒れていたヒヒが起き上がる。

 

エリオット「ええっ!?」

 

アリサ「ま、まだ動けるの!?」

 

リィン「くっ!」

 

キョウ「やれやれ…」

 

するとキョウは、ヒヒとリィン達の間に立つ。

 

アリサ「キョ、キョウ!?」

 

ラウラ「何をしてる!」

 

キョウ「煩いぞ。猿が」

 

キョウはヒヒに向かってそう言う。すると、その言葉を理解したのか、ヒヒが怒り出す。

 

キョウ「ふぅ…アリサかラウラ、悪いが上着持っててくれるか?」

 

アリサ「え、ええ…」

 

ラウラ「それはよいが…」

 

脱いだ上着を渡し、キョウは取り出した物を自分の体に打ち込んだ。

 

キョウ「…はぁっ!」

 

すると、キョウの体はドンドン大きくなっていき、ヒヒと同じくらいの大きさになる。

 

エリオット「え…ええぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

リィン「バ、バカな!?」

 

アリサ「……」

 

ラウラ「……」

 

4人は驚き、アリサに限っては口を魚のようにパクパクさせていた。

 

キョウ「大人しく帰るがいい」

 

ヒヒ「ウキャアァァァァァァァァァ!!!!」

 

キョウが親切にそう言うが、ヒヒが聞くはずもなく襲いかかろうとする。

 

キョウ「…やっかましい!!」

 

目を思いっきり開き光らせる。それを見たヒヒは、そのまま公園の奥へと消えていった。

 

キョウ「威嚇ノッキング…ってとこか」

 

アリサ「あ、あははは…」

 

エリオット「僕…腰が抜けちゃったよ」

 

ラウラ「不覚にも震えてしまったな」

 

リィン「いや…俺もだ」

 

4人はキョウの威嚇にビビっていた。

 

野盗「な、なんなんだよこいつら」

 

野盗2「こんな奴等がいるなんて聞いてないぞ!」

 

キョウ「ああ?」

 

まだ巨大化したまま、キョウは野盗達の方を見る。

 

「ひいいいいい!!」

 

キョウ「んなビビるなよ」

 

するとキョウは、先程と同じ様に体にノッキングを打ち込み解除する。そして元の大きさに戻った。

 

キョウ「ふぅ…上着ありがとな」

 

アリサ「え、ええ…」

 

アリサから預けた上着を受け取り着る。すると、丁度領邦軍が到着した。

 

「一体何事だ!」

 

キョウ「ちっ!面倒な奴等が来やがったか」

 

すると、今頃になって領邦軍がやって来た。そして、野党達を囲まずキョウ達を囲む。

 

「手を上げろ!」

 

「抵抗は無駄だぞ!」

 

ラウラ「何故、そこの彼らではなく我らを取り囲むのかな?」

 

「口答えするな!」

 

ラウラの質問に答えず、銃を突き付ける領邦軍兵士。

 

キョウ「……」

 

野党「頑張ったみたいだが、ここまでみたいだな」

 

エリオット「か、完全にグルじゃないか…」

 

アリサ「…呆れ果てたわね」

 

領邦軍の行動に、呆れるキョウ達。

 

隊長「何の事かな?確かに、盗品もあるようだが彼らがやった証拠はなかろう。可能性で言うならば…“君達”の仕業ということもあり得るのではないか?」

 

エリオット「ええっ!?」

 

ラウラ「…そこまで我らを愚弄するか」

 

リィン「本気でそんな事がまかり通るとでも?」

 

領邦軍隊長の、メチャクチャな言い分に驚く。

 

隊長「(わきま)えろと言っている。ここは公爵家が治めるクロイツェン州の領土だ。これ以上、学生ごときに引っ掻き回されるわけにはいかん手を引かぬというならば…このまま容疑者として拘束し、バリアハート市に送ってもいいが?」

 

キョウ「ああ?」

 

その言葉に、キョウはキレる一歩手前である。だが…

 

「―――その必要はありません」

 

隊長「なんだ……!!?」

 

すると、グレーの制服を着た連中がやって来た。

 

「あ、あれは…」

 

「て、鉄道憲兵隊…」

 

ラウラ「この者達は?」

 

エリオット「間違いない!《鉄道憲兵隊(T・M・P)》だ!」

 

アリサ「帝国正規軍の中でも、最精鋭と言われてる…」

 

すると奥から、水色の髪の女性が出てくる。

 

「ア、氷の乙女(アイス・メイデン)…」

 

「鉄血の子飼いがどうして…」

 

キョウ「やれやれ。また懐かしい顔だな」

 

彼女を見て、兵士達は驚くがキョウは懐かしそうな顔をする。

 

隊長「…どういうつもりだ。この地は我らクロイツェン州領邦軍が治安維持を行う場所…貴公ら正規軍に介入される謂れはないぞ」

 

キョウ「何が治安維持だよ。テメェらも貴族の犬だろうが」

 

アリサ「ちょ、ちょっとキョウ!」

 

キョウの言葉に焦るアリサ。

 

「お言葉ですが、ケルディックは鉄道網の中継地点でもあります。そこで起きた事件については、我々にも捜査権が発生する…その事はご存知ですよね?」

 

隊長「くっ…」

 

そう言われ、悔しそうな顔をする領邦軍隊長。

 

「そして元締めの方達を始め、関係者の証言から判断するに…こちらの学生さん達が犯人である可能性はあり得ません。何か異議はおありでしょうか?」

 

隊長「………フン、特にない」

 

「ならば、後は我々鉄道憲兵隊にお任せください。盗品の返却も含めて、処理させていただきますので」

 

隊長「ぐっ……撤収!」

 

ついに、領邦軍はその場から撤退することにした。

 

野党「おいおい!話が違うじゃねぇか!!」

 

「拘束して下さい」

 

そして、鉄道憲兵隊が野党達を拘束する。

 

隊長「…鉄血の狗が」

 

そう言い残し、隊長はその場を去ろうとする。が…

 

キョウ「そうは問屋が卸さないってな。待ちな、領邦軍隊長さん」

 

キョウが隊長に話しかける。

 

隊長「…なんだ」

 

キョウ「俺達を犯人扱いにしたんだ。このまま“サヨナラ”って訳にはいかないぜ?」

 

隊長「……」

 

キョウ「確か、バリアハートはIGO(国際グルメ機関)に加入してるよな?」

 

隊長「それがどうした」

 

キョウ「なら話は早い。今回は、バリアハートの領邦軍にこれだけの額を請求する」

 

そう言い、キョウは紙を隊長に渡す。それを受け取り金額を見ると、隊長の顔は真っ赤になる。

 

隊長「ふ、ふざけるな!なんだこの金額は!!」

 

キョウ「ふざけるもなにも、俺達5人の賠償の合計額だ」

 

隊長「何が賠償額だ!何故賠償額が5000万ミラなんだ!!」

 

『!?』

 

その額を聞いて、リィン達も驚く。

 

リィン「なっ!?」

 

エリオット「ご、5000万ミラ…」

 

アリサ「い、いくらなんでもあり得ないでしょ!!」

 

キョウ「そうか?これでもかなり低くしたんだぞ?」

 

隊長「ふざけるな!こんな額払わんぞ!!」

 

そう言い、紙を地面に放り投げ踏み潰す。

 

キョウ「そうか…なら、IGOに言って今後一切バリアハートに食材を配給しないようにするか」

 

『!!?』

 

更にキョウが爆弾発言をする。各州は、IGOに加盟し税金を治める代わりに、IGO独自の食材や、美食屋に頼まないと手に入らない食材が配給される。勿論、加盟などしたくない国や州等もある。そんな場所は、当然独自に食材を手にいれなければいけない美食屋を雇うにも金がいるのだ。

 

隊長「き、貴様にそんな権限があるのか!」

 

キョウ「権限もなにも…なぁ」

 

キョウは隊長に近づき、隊長の耳元でこう呟く。

 

キョウ「あんたも知ってるだろ?IGOの会長の名前」

 

隊長「と、当然だ!知らぬはずないだろ!キサラギ会長だ!!」

 

キョウ「正解。で、俺の名前は…キョウ・()()()()

 

隊長「!!ま、まさか…」

 

名前を聞いて、隊長の顔色はどんどん青くなる。

 

キョウ「大正解♪世間には顔を出してないが、俺がIGOの会長だ」

 

隊長「バ、バかな…」

 

キョウ「ま、別に信じなくてもいいぞ?後日公爵家にあんたの事を載せて、手紙を送るからよ」

 

そして隊長は、その場に座り込んだのだった。

 

キョウ「んじゃ、きちんと支払いよろしく。後…さっきの事、言えば分かってんな?」

 

その言葉に、隊長は壊れた人形みたいに首を縦に振るのだった。

 

キョウ「さてと…久々だな。クレア」

 

クレア「ええ、お久し振りですキョウさん。ですが…」

 

挨拶もそこそこに、クレア達は未だに震えてる隊長を見る。

 

クレア「あの方に何を言ったんですか?」

 

キョウ「ん?まぁ色々だ♪」

 

キョウはクレアに、笑顔でそう言うのだった。


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