教会の外、ウルベインを取り囲むように5人が輪になってニヤニヤとしている。
「神父さん、このゲームに魔法は無いからな」
「あ~あ、ホントにいいのかよ。坊さん、死ねば教会のガキども全員売り物だぜ?部屋の隅で震えてればいいんじゃないのか?」
「ホイミ!!」
「ケアル!!」
それぞれに武器を取り出し肩に担ぐ。それとは正反対に、ウルベインはタリスマンを手に持ち相手を睨みつけている。
「怖いねぇ。おっさん、強盗やった方がキャラにあってるよ」
「しゃべる余裕があるのなら、かかってきたらどうだ。私はたかが5人の賊に遅れなどとらん」
「くそ坊主が、そうとう死に急ぎたいみたいだな。やるぞ!」
「「「「おう!!」」」」
こうして始まった一方的な虐殺は物の4分で決着がついた。行動不能に追いやられた賊が倒れ、人数は3人になっていた。ウルベインは、うつ伏せに倒れている賊を起こし馬乗りに跨り顔を掴み地面に叩きつける。少しずつHPメーターが減っていく。賊が泣きわめきながら命乞いをする。しかし、ウルベインは無表情のままやり続けそして賊は霧散した。
少し疲労が溜まったのか大きく息をして、アイテム欄から剣を取り出す。その数25本。それも攻撃力最低の錆びた直剣。そして、今度はその剣を賊に突き刺していく。何本刺さろうと錆びた剣では、HPは削りきれない。ウルベインは25本全て刺し終わると作業の手を止める。助かった。体中に剣が刺さったまま賊は安堵する。しかし、目の前に新たに25本の剣が現れる。
そして、絶叫が響いた。
「お俺が悪かった。だから頼む!見逃してくれ!もうこんなことはしない、だから、な、な」
無様に地面を這いつくばりながらリーダーの男は哀願する。男の顔の前でウルベインは笑顔を作る。そして、男の顎を蹴り飛ばし、右手でリーダーの左足を持ち、足で右足を踏みつけ両側に引っ張る。
「う、嘘だろ、まさかそんなの冗だ
ウルベインの前にウィナ―の表示が現れ、ウルベインは教会へと帰る。そして、終始決闘を見ていたキリトとアスナに気が付き。二コリと笑いながら会釈をした。
「さあ、皆。悪い奴はもういないから、お昼寝をしなさい。ほらマーベラ駄々をこねない」
不安がる子供たちを寝かしつけウルベインは、キリト達とお茶を飲む。ウルベインはすぐに二人の様子がおかしい事に気が付く。どこか怯えている様な。
「お二人ともいかがされましたかな。具合が悪いのでしたら部屋を用意しますが」
「いえ、け結構です」
「・・・・ウルベインさんは人が死ぬのをどう考えてるんですか」
「キ、キリトくん。そそんな事聞いちゃ」
「・・・私はどうとも。そもそも私の生まれた世界は、人がいくら死のうが構わない人達ばかりでしたので。物を盗まなければ明日の糧すらない、酷い世界で私は生まれ教会に入るまで強盗で生計を立てていました。そう彼女と出会うまでは」
教会近隣の町
「お美しい修道女様、有り金と金目の物よこしな。それと、裸になってひと稼ぎしてもらおうか」
「・・・・・・」
「おい、本当に出すのかよ。ちったあ抵抗とかしねえのか」
「私のお金であなたが今日のパンを買えるのならいつでも出しましょう」
「いかれてんじゃねえのか。てめえ」
「私には、力がありません。祈りで救う事もできません。なら私に出来る事は、自分を呈して救済するしかありません」
「・・・・・・・アンタ、名前は」
「アストラエアと言います」
「アストラエア様、あんたは危なっかしいからな。俺がアンタの傍にいて守ってやるよ」
「私からお願いします。腐れ谷には、恐らくアストラエア様と護衛のヴィンランド兄弟がいるはずです。どうか彼女らを救ってください。彼女は十分人を救いました。これ以上救済の道で彼女が崩れていくのを見たくない」