SAOとダイスンスーン   作:人外牧場

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恥を捨てに来たか

「この通りだ。少しの間だけでいい、俺に協力してくれ!」

 

「ユルトさん。私からもこの通りお願いします」

 

 爽やかな仮想の夜明けの風と共にユルトの家の前に立っていたキリトとアスナは、サチを見るなり頭を下げ懇願する。サチは自分は寝ぼけているのかと一瞬、思ってしまったがそんな訳ないと自分につっこみを入れ今の状況を確認する。

 

「え~、っと。ユルト様なら、鍛錬に出かけましたけど」

 

 言葉を選びながらおずおずとサチは言う。キリトとアスナはそれを聞くとサチに礼だけ言ってさっさといなくなった。

 

「・・・どこにいるかは、言ってないんだけど」

 

 一人残されたサチはどういった状況か理解できなかったが、とりあえずご主人様の為の朝食を作るためサチは、最近凝っている菜園に向かうのだった。

 

 

「・・・・・・」

 

 小さな小川の隣で鎧姿のユルトが黙々と一人ダガーとショーテルを振るう。その小川を挟んでキリトとアスナは話しかける機会をうかがっていた。

 

「何か言ったらどうだ・・・・」

 

 ユルトは左手に持ったダガーで攻撃を受け流す動作をしながら二人に言う。二人は最初うろたえていたがすぐにサチに話しかけた時の様な剣幕でユルトに詰め寄る。

 

「正直、俺はアンタが嫌いだ。でも、アンタの実力は認めてる。恥も外聞も捨ててアンタに頼む、俺達と協力してくれ」

 

「断る」

 

 キリトの話など聞いた事ではないと、切り捨てる。しかし、キリトは諦めずユルトの前まで来るとキリトは土下座をする。これにはさすがのユルトも鍛錬を止める。

 

「何のつもりだ貴様」

 

 ユルトはダガーを仕舞いショーテルをキリトの首に当てる。しかし、キリトは首のショーテルなど眼中に入らずユルトに頼み込む。

 

「俺とアスナには、子供がいるんだ。ユイって言う女の子なんだけど、俺達が75層攻略に出ていた時血盟騎士団に預けてたんだけどユイが誰かに攫われたんだ。俺達、探したんだけど何も手がかりが見つからない。だから、アンタの情報網を借りたいんだ。頼む!」

 

 土下座のままキリトはしゃべるがユルトの返答は無い。気になったキリトが頭を上げようとした時アスナの小さな悲鳴が聞こえる。それと同時にキリトの顔は地面に叩き付けられる。後頭部に靴の感覚がある。

 

「散々私の事を外道だ、殺人鬼だと罵っておきながら頭を下げたぐらいで要求が通ると思っているのか」

 

 ぐりぐりとキリトを踏みつける足に力が入る。横からアスナがユルトに抱きついてキリトを踏む足をどけようとする。しかし、キリトはアスナを止める。

 

「アスナ、止めないでくれ。俺が体を張らないといけないんだ」

 

「そのとおりだ。私は、こいつに何度も仕事の邪魔をされた。本当ならばその首、撥ねてもよいのだがな。知らない仲ではないため、こいつを辱めるだけで勘弁してやろうと言うのだ。ずいぶん良心的だと思わないか?キリトよ」

 

「ああ。俺もそう思うよ」

 

「そうかなら。心行くまでお前を嬲るとしよう」

 

 キリトを踏みつけていた右足を上げ何のためらいも無く下ろす。何度も繰り返し、その度キリトの顔は地面に打ち付けられる。ガス、ゴスと鈍い音と共にキリトのHPメーターが僅かに減っていくが、キリトには精神的ダメージが入っていた。騎士団の実力者であり、副団長のアスナと結婚しだれら見ても高潔で、それでいて強い羨望の眼差しの的であったキリトは今、情けなく土下座のままふまれ続けている。肉体的ダメージは皆無だが、見る側も受ける側もその精神に受ける負担は計り知れなかった。

 

「貴様を嬲るのはここまでにしよう」

 

 結局キリトは土下座を崩さないままユルトの執拗な攻撃を受け続け顔は泥に汚れていた。ユルトは息一つ崩さず目線をキリトからアスナに移す。

 

「今度は若奥様にも一肌脱いでもらおう」

 

 約束が違うとユルトに食い掛かるキリトを組み伏せたユルトはフェイスカバーの奥からアスナを睨む。

 

「聞いただろうアスナ。貴公にも一肌脱いでもうぞ」

 

「・・・・ハイ。何をすればいいんでしょう」

 

「男を悦ばせる方法は知ってるだろう。まずは服を全て脱げ、まずはそれからだ」

 

「・・・・ごめんね。キリトくん。・・・・私、頑張るから」

 

 そう言ってキリトの目の前で下着を残し裸になるアスナを見ながらキリトにマヒ毒を打つ。すぐにキリトの体は痺れて自由が利かなくなる。そして、指一本動けなくなった時。キリトの前に下腹部を布で隠しただけのアスナが現れる。何を言うでもなくユルトは、アスナの胸部を触る。二度三度触るとすぐに手を離し、アスナの肩にコートを掛ける。

 

「良くも悪くもまだ子供だな。その麻痺毒は10分もすれば解除される。夫でも満足させるんだな」

 

 そう言ってユルトは帰路につく。その場に残された二人は静かに涙を流し、得も言われぬ安心感に唇を合わせるのだった。

 

 

「恥を捨てに来たか」


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