SAOとダイスンスーン   作:人外牧場

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勧誘

 ザンとショーテルがプレーヤーの首をかき切る。ユルトは、昨日からタイタンズハンド残党狩りを開始していた。リーダーのロザリアが牢に入ったとの情報と共に、ロザリアを捕まえた人物の情報も流れていた。はげ頭に真っ黒のレザーの防具、背中に大盾とショートスピア、それと真っ黒で背中に剣を背負ったえらく強い少年。ユルトは両方に心覚えがあった。

 

「パッチめが。貴様もいようとはな、ラトリアでの屈辱は忘れぬぞ」

 

 ユルトは強くショーテルを握りしめ怒りに身を震わせる。ユルトがラトリアで捕らえられた原因はパッチの策略により、ユルトをラトリアに閉じ込めたからだ。ユルトの頭の中で、いやらしく笑うパッチの姿が浮かぶ。ブンとショーテルを一振りし、パッチの幻影を振り払う。

 咄嗟に気配を感じたユルトはスローイングダガーを素早く後ろに放つ。二投、三投し、気配の元を確実に自身の前におびき出す。気配の元は、ユルトの前に現れる。その姿は黒い布を全身に纏い、顔はまったく分からなかった。

 

「何者だ」

 

 ユルトは、目の前の人物に問う。

 

「我々はラフィン・コフィン」

 

「笑う棺桶か。悪趣味極まりないな、下郎」

 

 ラフィン・コフィンと名乗った男はゆっくりとユルトに歩み寄る。ユルトは、ショーテルを仕舞う。男は、ユルトを見て、歩みを止める。

 

「なぜ、武器を仕舞う。俺がいつお前を襲うと分からんぞ」

 

「雑魚に用は無い。所詮、貴様はPKギルド ラフィン・コフィンの使いっ走りであろう。さっさと、要件を伝え消えろ」

 

「・・・なら、しかたない。ユルト、お前にラフィン・コフィンの一員となってもらいたい」

 

「断ると言ったら」

 

「いや、お前は断らない。お前は殺人鬼だ。そんなお前が、人を殺す事を躊躇わないお前が、PKギルドの勧誘を断るはずがない」

 

 ユルトは、顎に手を当て思案する。男は、心の中で勧誘の成功を確信した。

 

「・・・へぇあ!?」

 

 男がユルトから一瞬目を離した時。それが男の命運を変える事となった。ユルトのダガーは深深と、男の左胸に突き刺さる。男は、薄れゆく意識の中、赤の跡を残し消えていく自身のHPと、鎧の奥で静かに笑うユルトを見て、消えた。

 

「これが返事だ。見ているのだろう、ドブネズミ共」

 

 ユルトの周りから一斉に笑い声が響く。周りの奴らは、男をユルトの反応を見るためにスケープゴートにしたのだ。次第に、笑い声は消え、奥から声が聞こえる。

 

「確かに、その返事受け取ったぞ」

 

 そして、ユルトの感じていた気配は突然消える。ユルトは、まるで何事の無かったかのようにサチの待つ自分の家に帰っていく。


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