その日の放課後、私はクラスの友人から部長が呼んでいる事を聞いた。
私の部活は新聞部。
部長はその新聞部の部長だ。
「おーう我らの期待の星!来てくれて嬉しいぞ!」
いえいえ。其れよりも部長、また何かの記事を作るんですか?
「そうだ。来週の月海原学園の学園新聞でな、ここの七不思議を書こうと思う。それで岸波にはその調査をお願いしたい。」
なるほど...
して、自分に調べて欲しい七不思議とは一体何ですか?
「調べて欲しい不思議は3つ。1つは学校の弓道場に現れる不審な影、2つ目は学校の教会で聞こえる音、最後に玄関付近に現れる白衣を来た幽霊、だ。」
ふむふむ。どれも聞いたことのある不思議だが、面白そうなので調べて見よう。
「そうか!引き受けてくれるか!!!流石我らの期待の星!もしも場所が分からなくなったら私の元に来るといい。」
分かりました。
最初は弓道場に現れる不審な影だったな...
行って見ないと分からないので早速行って見るとしよう。
確か弓道場は玄関を出て左側にあったな。
階段を下り、靴箱へと足を進める。
だがその時、走り去る誰かの姿を見た気がする。
....それが少し頭の片隅に違和感を残す。
そうだ。
自分はこんな所に居る人間ではない。
私は......
って、何を考えていたんだ?
さっさと弓道場に行かなければならないと言うのに...
弓道場に着き、中を覗き見ると.......
「あら?岸波さんじゃないの。」
其処に居たのはタイガーもとい藤村先生だった。
藤村先生が何故弓道場に?
「何言ってるのよ岸波さん。私は弓道部の顧問よ」
そ、そうだったのか...!?
全く知らなかった...
と言うか放課後の弓道場で何を?
「何って・・・何か見落としが無いかのチェック。最後は私がチェックする決まりなの」
成程・・・
では弓道場に現れる不審な影は藤村先生だったのか・・・
一応メモをしておこう。
それじゃあ藤村先生失礼します。
「はい。岸波さんも早く帰るのよ?最近この辺り物騒だから」
残り2つ調べ終えたらさっさと帰りますから大丈夫ですよ。
藤村先生こそ気を付けて下さいね。
「ありがとう。それじゃあまた明日」
・・・弓道場を後にした私は次の目的地でもある教会に行こうと空を見上げた。
空は――――――――――――0と1で構成された数字が空を埋め尽くしていた。
驚いて目をこすって見たら、奇妙な空ではなく普通の空が広がっている。
・・・先ほどの光景は何だったのだろうか?
白昼夢でも見ていたのだろうか?
でも・・・なんだか違和感が先ほどよりも大きくなった気がする。
一体何だというのだろう?
次第に大きくなっていく違和感を抱えながら私は学校の敷地内にある教会へと足を進める。
此処の教会は独特の雰囲気を出しており、中々生徒が進んで近づこうとはしない教会だが・・・
「――――――――g・・・・」
ん?何だ?
何か微かな音が聞こえた。
「―――――――――jn・・・」
目を閉じて聴覚に意識を向けると、確かに何か聞こえる。
何を言っているのかは全く持って分からない。
それでも何かの・・・何か詠唱しているような教会の中から声が聞こえる。
まるで何かに誘われているかのように身体が意思とは関係なく引き寄せられる。
フラフラと光に誘われる蛾のように・・・
「ちょっとそこの貴女!NPCは此処から先立ち入り禁止よ」
ハッ!?
な、なんだ?強烈な何かによって意識がハッキリしたぞ。
何が起こった?
「はぁ・・・・・・・まだ調整が終わってないのかしら?自分の
後ろに振り返れば、其処に居るのは確か・・・月海原のマドンナ。
遠坂凛・・・
何故彼女が此処に?
それよりも何か意味の分からない事言ってなかったか?
「ん?変ね・・・貴女NPCじゃないの?」
すいません・・・あの、NPCと言う名ではありませんので・・・
失礼しま~す!!!
「あ?!ちょっと待ちなさいよ!!!」
待てと言われて待つ人間が何処に居よう?
助けて?もらった事には感謝するが、これ以上彼女の話を聞いてはいけないと警報が鳴っている。
教会の声の正体は月海原のマドンナ遠坂凛、と部長に伝えよう!
きっとそれが最善で最良に違いない!!!
颯爽に教会から離れ、最後の調査として白衣を着た幽霊を調べねば・・・
今日は色々と疲れる事が多くて早く家に帰りたいものだ。
そう・・・家・・・・・・に?
立ち止まって必死に思い出そうとする。
だが・・・思い出せない?!
家も、家族も、何もかもが思い出せない!
どういう事だ?何故思い出せない?
帰り道すらも分からない・・・
そもそも・・・帰る道などあるものか・・・?
違和感と言う名の頭痛に酷く悩まされても、何とか玄関まで帰って来れた。
帰って来れたのはいいが、先ほどよりも頭痛は痛みを増している。
まるで気づくなと言うように・・・
痛みで意識が薄れる中、何かを見た。
それは白衣を着た男で興味深そうにこちらを伺っている。
そうか・・・この男が噂の幽霊か・・・
ああ。これで部長に報告することが出来る・・・
でも・・・凄く眠たいんだ・・・
おやすみ、と誰かに言われた気がする。
また後で、とも言われた気がする。
君が此方へ来るのが楽しみだ、と聞こえた気がする。