思えばそう...懐かしいものだ。
私は生まれ墜ちた瞬間から消えてしまう。否、封じられてしまう。
祝福を受けることもなく、愛も、自我も、意志さえもなく。
けれど...だからこそ私は求めた。
その愛を、その手を、その心を。
欲したものを望めば、欲したものが朽ちて消える。
何故だ。
愛したものから、壊れていく。
どうして。
近づいてみれば、狂っていく。
嫌だ。
生まれ墜ちた瞬間から一緒なのに、なぜ私が置いて行かれる。
何故私だけが取り残される。
如何して私だけが欲してはならないのか。
私達は変わらない筈なのに。私たちは同じく愛される筈なのに。
何故私は何も掴めないのだ。何も望めない。何も愛せない。何も求めれない。何もない...生まれ墜ちた瞬間から、私は全てを殺された。
意志も自由も祝福も。
唯一私が出来る事はただ深く、眠るのみ。
私が起きてしまわない様に。私が見つけてはいけない様に。
深い深い、何も見えない黒へと。
成らば私は私を愛そう。
私の元へと近づく者へ祝福を、愛を、そして私を捧げよう。
私と一緒に永遠の世界を共に行こう。
生まれ出、全ての命。愛おしき命。輝く光。祝福、恩恵、加護。ああ愛しい。愛しい。私と共に生まれたものよ。私は愛す。例え、私が全ての▬▬だとしても。私は私を愛する。
生きとし生けるものの全てに『 私の 』愛を...
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その光景はまさに赤い流星群。
赤き尾を残し描く光。
アレに触れたらこの
こんな絶望的な状況だというのに、隣に立つ彼女は酷く冷静だ。
何故彼女に拘るのか未だに理解できていない。
どこにでもいる平均的な能力だというのに、何故彼女は前に進むのか。
分からないけれど、彼女は私の愛を受けた者。
成らばこそ、此処に居る誰よりも愛を捧げよう。
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あの時。
いつもの様に私は微睡んでいた。
眠ればいいものの、私は眠るのが嫌だった。いや怖かった。
だって寝てしまえば傍に居る事さえもできず、愛を囁くことも出来ない。
ましてや手を握る事さえも不可能。
ずっと隣にいるのに。
ずっと後ろに居るのに。
ずっと愛しているのに。
だからこそ、眠ってしまえば終わりなのだ。
そんな時だ。
私が微睡んでいるときに彼女は、私に触れた。
私は恐ろしかった。
私に触れてしまったら消滅か狂気に呑まれるどちらかだ。
なのに...。
それなのに彼女だけは壊れなかった。
初めてだった。
初めて、触れた。
彼女はとても暖かかった。
初めて命の暖かさに触れた。
嬉しい。幸せ。喜び。笑い。祝福。光栄。
ああ、愛おしいものに触れることが出来たのがとても嬉しかった。
ようやく愛し合うことが出来るのだと、そう思ったのに...
何故、何故、何故何故何故何故...
彼女を連れて行くのか。
どうして私の元から連れ出すのか。
幾度となく繰り返される選択の中、彼女は眩しい笑顔で笑っている。
その隣にいる過去の英霊と共に、幸せを分かち合っている。
どうして。どうして気が付いてくれるのだろうか。
こんなにも近くに居るのに。
こんなにも傍で見ているのに。
私は生まれた時から一緒だというのに。
なぜ、彼女の隣には私が居ない?
私がいなければならないのだ。
彼女には私が。
私には彼女が。
そうだ。いつだって私達は久遠の時を共に居た。
そうだ。いつだって私達は対等であれた。
いつの日か、対立する日が来ようとも。
私達は同じ存在。
なのになぜ、彼女の隣には私が居ない。
そうだ。
私は彼女を知らない。だから彼女も私を知らないのだ。
ならば私が彼女を知り、彼女が私を知ればいい。
私はようやく愛する事が出来るのだと、彼女を抱えながら思うのだった。