Fate/Rage   作:ぽk

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第三回戦(前)

 

 

 

 

 

死を悼め。

 

 

 

失ったものへの追悼は恥ずべきものではない。

 

死は不可避であり、争いがそれを助長するのなら、死を悼み、戦いを憎み。

 

 

 

死を認め、戦いを治めるがいい。

 

 

 

 

3.disillusion/coma baby

 

 

 

 

遠くから声が聞こえる。

誰かと話をしているみたいだ。

 

何の話をしているかは分からない。

 

だけど、その声は良く知った人間のものだと分かる。

何故なら、目を開ければ、目の前に居るからだ。

 

そう…とても、とても愛おしいと思う、彼女が……

 

 

「………起きたようね。」

 

 

だが、目覚めて己の目の前に居たのは、彼女では無く、彼女の知り合いの女だった。

名は…遠坂凛。

地上では、確か反レジスタンスに所属している。

何処かの娘とは違い、この女は多少腕が立つ。

 

まだ、生かしておいて損は無い(殺さない)

 

それに……

 

 

君が泣いてしまうからね。

 

 

「白野」

 

 

———————————————————

 

 

 

「白野」

 

 

 

名を呼ばれただけだと言うのに、何故かサモナーに恐怖を抱いた。

だから、思いっきりコートの襟を掴んでやった。

心臓で無いだけましと思って欲しい。

 

 

「ぐぉおおぉ!それはあんまりだよマスター。首が、首が絞まってる…」

 

 

当り前だ。

結構本気で絞めているのだから。

 

さあ、このまま絞められて死ぬか、洗いざらいお前が知っている事を吐いて死ぬか、どっちか選んでほしいな。

 

 

「そ、それって、結局は僕死ぬじゃないか…ぐぇ」

 

「はいはい。じゃれてる場合じゃないでしょう。このサーヴァントが何を知っているのか聞くんでしょう。」

 

 

甘いよ遠坂。

このサーヴァントはちょっと殺す気で行かないと何も喋らないよ。

 

だから、こうして…キュッと軽く絞めてやればいいんだよ。

 

 

「すいません。話しますんで、命だけは勘弁して下さい。」

 

 

サモナーの顔が真っ赤、では無く真っ青に近い。

どうせ、私がこいつを殺したところで此奴は死なない。

 

私といる限りは。

 

 

「本当に死ぬかと思った...それと、離すのはいいけど...どうして遠坂のお嬢さんも居るのか聞いても良いかな。君は白野の敵だろう。マスターの情報を、態々敵に暴露するのは好きじゃないな。」

 

「心配せずとも、もう行くわ。あんたのマスターが余りにも無知だから、少し気にかかっただけよ。」

 

「それは如何も。これからも、僕のマスターと仲良くしてやってね。」

 

「……考えておくわ。それじゃ」

 

 

そう言った遠坂は、振り返りもせず行ってしまった。

遠坂はああ言ったが、何か困ったとこがあれば、彼女に相談してみよう。

 

さて、この場は私とサモナーのみ、何をするかは分かっているよね?

 

 

「はいはい、分かってるよ。君に話す事は沢山あるけど…そうだな。まずは、地上の体制について話をしよう。」

 

 

地上って事は、地球の事かな。

今現在、地球がどうなってるのか、サモナー分かるの?

 

 

「勿論。僕は地上からやって来たサーヴァントだ。そんなの容易いよ。」

 

 

流石、と言いそうになった。

先ほど遠坂が言っていたが、サーヴァントは本来ならば、死ななければ英雄の座に着く事は無く、死んで初めて召喚できるのだ。

 

サモナーは地上からやって来た…

 

有り得ない。そんな事は有り得ない。

だが...理解が飲み込めない。

 

嘘かもしれないし、本当かもしれない。

 

有り得ないと分かってはいるが、何故か納得が出来ない。

このサーヴァントは...生きている(・・・・)としか思えない。

 

 

「今の地球は昔と比べて見れば酷いものだよ。西暦では2032年ってところか。随分と物騒で、退屈なものになってしまった。」

 

 

物騒?

戦争でもやっているの?

 

 

「戦争って程の規模ではないけど、小さな紛争は多く勃発しているんだ。それに、地上で体制をとっている組織があってね。君はそのトップに会っているよ。」

 

 

それってもしかして…レオの事かな。

遠坂の嫌悪っぷりがすさまじかったから、よく覚えているし…

何故か、場違いな雰囲気だっからね。

 

 

「そりゃお坊ちゃん中のお坊ちゃんだしね。地上の約半分以上の力と富を持っている組織でね、レオナルド・B・ハーウェイは、その次期当主だ。」

 

 

成程…それで、あんなにも自信と眩しいオーラに包まれていたのか。

サーヴァントも、円卓の騎士が一人である、あのガウェイン卿。

きっと彼らとも戦うのだろうか…

 

 

「戦うだろうよ。でもね、白野。西欧財閥と呼ばれる組織は、人間を人間として管理しているだけのつまらない組織なんだ。」

 

 

サモナーはポケットから1枚カードを取り出し、映像を見せてくれる。

それは、今の地上の映像だった。

 

内戦、紛争、飢餓、反乱、そして未知の病原菌。

 

そんな中でも、目立つ集団はある。

 

喧嘩や争い事は無いが…何も見えない。

生きてはいるが、ただ動いているだけ。

 

抑圧されているようには見えないが…ここには何も見えない。

 

 

「西欧財閥は複数の組織が集まって構成されている巨大な組織だ。軍事や資源を多く有し、その力を持って管轄内に居る人間を管理していんだ。でもね、管理されるのはとても楽だ。いう事さえ聞けば生きて居られるし、痛い思いなどしなくていいのだから。」

 

 

だけど、それじゃあ…

 

 

「ああ、正直生きているだけの生き物だ。人間が人間を管理するなんてお笑い草だ。其処に進化も無ければ退化も無い。ただ留まっているだけで、つまらない。」

 

 

でも、どうしてそんな組織が月の聖杯を求めるのだろうか。

其れほどまでに力と富があれば、何でも出来るのではないだろうか。

 

サモナーは首を振る。

 

 

「いいや、願いを叶える願望機。その実は、光をも超える観測機。そんなものが西欧財閥以外の手に渡ってしまえばどうなるか知った者じゃないけど、奴らは宇宙開発を切り捨て、技術革新を抑え込んだ。」

 

 

それじゃあ、西欧財閥は…

 

 

「時間がそこで止まっているんだよ。人間は進化し続ける生き物の頂点に立っていると言うのに、自ら抑え込むなんて馬鹿馬鹿しいにも程がある。」

 

 

サモナーはそう言ってカードを握りつぶす。

潰されたカードはそのまま塵となってデータの泡となる。

 

サモナーは西欧財閥が嫌いなのか。

 

 

「嫌い…かな。あんなつまらない管理をされるんだ、嫌いに決まってる。」

 

 

まあ、そうだよね。

サモナーを管理しようとしたらきっと噛みつかれるどころか、殴られそうだね。

 

 

「マスターになら…管理されても良いかな。」

 

 

それで、続きはどうなったんだ。

西欧財閥は、その後どういった経緯で聖杯を欲しがるんだ。

 

 

「…………………クッ」

 

 

サモナーどうしたんだ。

目元なんて抑えて。もしかして、麻婆豆腐が目に染みたのか。

 

 

「い、いやなんでも無い。何でもないから…えっと、西欧財閥は自分たちが管理してきた平和を壊す力を持つ月の聖杯を手中に収めることにしたんだ。だから、次期当主ともう一人の人間を送り込んだんだ。」

 

 

ちょっと待て。

もう一人いるのか?!

ハーウェイの人間が、もう一人居るって言うのか?!

 

 

サモナーの心臓があるであろう場所を正面から鷲掴む様に、力を入れる。

 

 

「い゛っだだだだだだだ!!!ちょ、し、心臓!白野っ!」

 

 

何でそんな大事な話をしなかったんだよお前!?

それに、私の身体に何をした!

意味不明な箱があるって言うし、プロテクトがかかってるって言うし、全部お前がやったんだろ?!

証拠は無いが、お前が犯人何だろう。いいや、お前が絶対に犯人に決まっている!

 

さあ言え!今すぐ楽にしてやるぞ!

 

 

「お、落ち着いてッででででででで!!!」

 

 

痛みから逃れようとするサモナーに馬乗りし、更に力を込める。

残念だが、サモナーは此処で…

 

 

「あ、お姉ちゃん見つけた!」

 

 

そう…あと少しでサモナーが天寿を全うすると言う時に、あの子はやって来た。

新しい玩具を見つけたように、懐かしい人と合えたように、あの子たちはやって来た。

 

 

「それじゃあ、今度はお姉ちゃんが鬼ね。」

 

「遊びましょう…お姉ちゃん。」

 

 

その瞬間、

白と黒の色に私は包まれた。

 

 

 

 







寒くて指が動かない

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