Fate/Rage   作:ぽk

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二回戦 本戦(前)

 

 

さぁ、狩の時間がやって来た。

獲物は森の狩人。

 

主人との差は空くばかりだが、落胆することはない。

 

何故なら、此方には、

 

狩人を狩る、狩人がいるのだから...

 

 

———————————————————

 

 

一回戦のあの時のように、私は用具室の前にいる言峰に、話しかける。

七日間かけて、私とサモナーはダン・ブラックモアのサーヴァント対策を練り上げた。

 

迷っていないのか、と問われれば、迷っていると私は答える。

 

けれど、立ち止まる事は出来ない。

迷いながら私は行く。

 

誇りや、信念を持った老騎士に、私は立ち向かうんだ。

 

 

「ほお。一回戦の頃に比べると、随分と顔つきが変わっているな。何か心境の変化でもあったのかね?」

 

 

其処はまだわからない。

なんせ、私もどうして戦っているのか分かってはいないのだから。

 

 

「クックック・・・さぁ、死地へと赴く準備は良いのかね?」

 

 

当然の事のように頷けば、言峰は道を譲る。

前回同様、エレベーターにキートリガー差し込む。

 

厳重なロックが外され、道は開かれた。

 

 

「迷える戦士よ、存分に殺し合え・・・」

 

 

その常葉が最後のように、エレベーターの扉は閉まる。

 

そして、そのエレベータの中には・・・

 

 

「・・・・・・。」

 

 

シンジのように、相手を見下している事もせず、ただジッとこちらを見るダン卿。

暖かい眼差しでは無く、殺意や敵意こそないが、それは獲物を捕らえた眼差しだ。

 

 

「ははっ。やっと旦那がやる気を出してくれたもんだ。お嬢さんには感謝してるぜ。」

 

 

緑衣のアーチャーが此方に話しかけて来る。

ダン卿のやる気?

 

 

「まあ、色々と事情があってな、あんたに毒使おうとしたら旦那が絶対に使うなとか言い出すから、俺も最初は呆れたが・・・結構楽しいもんだ。」

 

「はっ。森の狩人風情が何言ってんだよ。アリーナに顔のない王(・・・)使ったり、イチイの木の結界(・・・・・)を張ろうとした野郎が良く言うもんだ。」

 

「それあんたも言える義理かよ。流星を降らせる馬鹿のお陰でこっちも危機一髪だったんだけど?」

 

「知るか。そんなもん、お前の自業自得だろうが。お前が僕の白野を毒矢使って殺そうとしてきたのが悪い。あー・・・思い出したらイライラしてきた、ちょっと一回死んでくれよ。」

 

 

サモナーが手を伸ばし、目の前の壁に触れると、毒に溶かされていく。

 

ちょ、サモナー何してんの?!

 

 

「?...何って、ちょっとムカついたから殺してやろうかと。」

 

 

もう少しで着くと思うから抑えて。

と言うか、この壁溶かせたの?!

 

 

「ああ、溶かせるよ。何なら今すぐ溶かしてあいつ等殺す?僕は大賛成だな。」

 

 

私は大反対だからやめなさい。

 

なんだかサモナーの様子がおかしい。

いやおかしいのはいつもの事だが・・・死に飢えていると言うべきか・・・。

 

サモナー、今日はなんだか急いでない?

 

 

「・・・いや、急いでる訳じゃないんだけど・・・」

 

 

壁を溶かす手を下し、複雑な表情を浮かべる。

 

あれ...なんだか嫌な予感がする。

こんな事前にもあった気がするような・・・。

 

 

「ちょっと・・・その、魔力が足りないと言うか・・・ね。僕たち、正式な契約を交わしていないから、パスが繋がってないんだよね。今までは普通にいけたんだけど・・・遊び過ぎて、そろそろ僕自身の魔力が尽きそう。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

「このまま戦闘しても良いんだけど、やっぱりお腹sぐはぁあ!!!?」

 

 

サモナーの口に思いっきり力を込めて、激辛麻婆豆腐を突っ込んでやった。

麻婆豆腐を食べることが出来てサモナーは感動しているのか、そのまま静かに倒れた。

 

 

「いやいやいや、お嬢さんよく見て見なって、そいつ白目向いてるぜ?!」

 

 

え、白目?

そんな訳ないだろう。

 

サモナーは言峰がくれる泰山の麻婆豆腐が大好物なんだよ。

 

な。サモナー?

 

 

「・・・・・・・・・ガクッ。」

 

「し、失神するレベルの麻婆豆腐なんて食い物じゃねえ!戦う前に俺らじゃなくて、そっちのサーヴァントが死んでどうすんだよ?!」

 

 

心配ない。

 

此奴は何があっても立ち上がるさ。

何てったってサモナーだからね。

 

サモナー起きないともう一杯、麻婆豆腐食べたいの?

 

 

「ご、ごはぁっ!!!げっほげごげおぇ......た、立つからもう無理。お腹、いっぱいです。」

 

 

どうだ、うちのサモナーは凄いだろう!

 

 

「そんなドヤ顔してもねぇ...そいつに同情するぜ。」

 

 

緑衣のアーチャーに哀れみの眼差しで見つめられるサモナー。

 

そんな時に、エレベーターは大きな音を立てて止まった。

どうやら、決闘場に着いたらしい。

 

もうすぐ、命を懸けた戦いが始まるのだ。

 

 

「行くぞアーチャー。」

 

「はいよ、旦那。」

 

 

ダン卿がエレベーターから降り、その後に続いて緑のマントを翻して行くアーチャー。

 

 

「...麻婆豆腐で死ぬかと思った。」

 

 

サモナーはそんなんじゃ死なないでしょ。

さあ、私達も行こう。

 

 

「分かったよ。麻婆豆腐でどこまで行けるんだろ...。」

 

 

サモナー何か言った?

 

後半が聞こえなかった。

 

 

「何でもないよ。行けるところまで行こうか。」

 

 

サモナーと一緒にエレベーターから降りる。

 

 

シンジの時は船の墓場の様な場所だったが、今回は違う。

 

ここは森に飲まれた街。

 

大自然に飲み込まれた人工物の成れの果て。

 

 

「もう本気で殺しに言っていいんでしょ旦那?」

 

「ああ、遠慮はいらん。宝具の開帳を許そう。」

 

 

ニヤリと笑う緑衣のアーチャー。

いいや、彼の名は...

 

 

「王殺し・・・ロビン・フッド。」

 

 

いや、彼は複数存在するロビン・フッドと言う英霊の一人。

本物のロビン・フッドは出血多量で死亡。

 

彼は・・・

 

 

「若い頃に弓なんか選んだからこうなったんだよね。今思えば馬鹿馬鹿しい選択をしたと思ってるよ。あんな集落、消えても良かったんじゃないのか。」

 

「俺の人生におたくは関係してねぇ・・・って言えればどんなに楽な事か。」

 

「僕は忘れてないよ。君に殺された日を。」

 

「俺だって忘れてねえよ。おたくに殺された事を。」

 

 

お互いがお互いに殺された。

 

毒で体を弱らせ、矢で撃ち殺さた。

軍によって侵略され、銃によって撃ち殺された。

 

 

「何の因果か、またおたくと殺し合うなんてな。二度目の毒は優しくないぜ。」

 

「喧しい。僕だって、もうお前の敵だ。優しいと思ったらすぐに死ぬよ。」

 

 

木々が騒めき、木の葉が舞う。

 

殺気がこのアリーナに満ち溢れる。

一発即発の空気だが、先に動いたのは...

 

 

「我が墓地はこの矢の先に……森の恵みよ……圧政者への毒となれ。(なばり)の賢人、ドルイドの秘蹟を知れ…」

 

 

「————祈りの弓(イー・バウ)!!!」

 

 

 

 

 

 


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