魔法少女リリカルなのはStrikerS ENEMY Side 作:トータス
行き違う思い
本体に意識を引き戻された。
何かを、思い出せそうな気もしたのだが。
クー姉から、こっちが忙しいから、こっちを優先する為に言われた。
侵入して来た敵の迎撃。
今はそれを優先する!
・・・ ・・・
今度は、出来れば捕獲する様に言われた。
だったら、何が良いのか?
射出系(ランチャー)? 投網(レテ)? = ・・・ネット・ランチャー?
でも、相手は速過ぎる・・・
・・・ポン! 仕掛罠(トラップ)!
・・・餌は? ・・・ポン! ドクター!
だったら、準備しないと!
・・・ ・・・
一番の玩具箱? =スクラップ置き場でゴソゴソと、使えそうなモノを漁る。
・・・確かココに・・・有った!
・・・それと、コレと・・・コレ!
十分後
ガサゴソと、あり合せのソレを組み合わせて行く。
・・・出来た! 即席だけど、良い考え!
これなら、ドクター。大満足な・・・筈!
・・・ ・・・
【ドクタ! コレ!】
「・・・何だい? ・・・それは」
防弾チョッキの様なそれ。ボディ・アーマーにも見える。
【捕マエル! 作ッタ! 着ケテ!】
何を言われているのか、今一判らないが、言われるがまま、白衣を脱ぎ、それを身に着ける《注!=極一部に対し》心優しいスカリエッティ。
その上から白衣を着る。
見た目、そんなに変わらない。
【・・・OK】
そんな様子を微笑ましく思いつつ、スカリエッティは優しく諭す。
「・・・何をするのか判らないが、お前は気を付けていなさい。
病み上がりなのだからな」
【ハァイ!】
「フ、返事は良いな。だが、当てにしているぞ」
【オー!! ・・・オ?】
後ろに何かが、見えた!
・・・ ・・・
フェイトはスカリエッティを補足した。
居た、相手は百目鬼(ドウメキ)。向こうには、死角が無い。
こちらが見付けたと言う事は、既にこちらの場所も捉えられている筈。
だったら、一瞬で回り込んで、仕留める!
ヴェロッサや、シャッハと逸れたのは、不味かった。
せめて二手からなら、何とか、確実に仕留められるのに・・・
もう、不意を突いてどうこうと言う訳にも、行かない。
再度確かめると、スカリエッティと同行している。
・・・ならば、スカリエッティに、止めさせるまで!
【ソニック・ムーヴ】
相手の不意を突き、スカリエッティの後ろを取り、バルディッシュを突き付ける!
「・・・オヤ、随分と手荒い侵入者だね」
驚きはしても、まだまだ余裕を見せるスカリエッティ。
直に落ち着き払い、泰然とした態度を崩さない。
「貴方を、世界規模のテロリズム・違法医学の実行。その他多数で、逮捕します!
・・・あと、それに動かない様に命令しなさい!」
「オヤオヤ、随分と警戒されているね。
だが、あの子は下がらせて貰うよ?」
その言葉に眉を顰(ひそ)めつつ、平然としながら、そんな事を言うスカリエッティ。
「! ・・・それは、どう言う事かしら?」
「なに、あの子は病み上がりでね。アレが壊れたら、一日と持たずに死んでしまうだろう。
そんな事になったとしたら。私は娘達に嫌われてしまうからね。
それだけは避けねばならないし。アレは、私の可愛い孫だからさ」
そう言いながらデュオの方へ顔を向け、落ち着き払った様子で、
「ココは危ないから、向こうに下がっていなさい」
【・・・イイノ?】
咄嗟に動く事が出来なかったが、如何にか出来る手は残っている。
ただ、そう言うのであれば、もう暫くしてからの方が良いのだろうか?
「今は私の身より。お前の身に何かが有った方が、心配だからな。
だから、下がらせても良いだろうか?」
フェイトは逆に問われ、逡巡する。だが、出せる答えは決まっていた。
自分も、親である事から・・・
そんな姿を見せたくは無い、と言うのであれば、聞いてやっても良いのではないかと考えた。
「判ったわ、その代り。見える範囲で端によって、座っていなさい」
「言われたとおりにしなさい。
そうすれば、暫くは大丈夫なはずだから」
言われたとおり、部屋の隅に身を寄せ、蹲(うずくま)る。
スカリエッティを椅子に座らせ、その辺りのコードを引き抜き、縛り付ける。
それから、尋問した。
「・・・随分、良く言う事を聞くのね」
「・・・そりゃ、私の可愛い孫だからさ」
それを無視し、その巨躯に問いかけた。
「・・・名前は?」
【・・・】
帰って来たのは、沈黙。
「答えて上げなさい」
スカリエッティの一言で答えた。
【・・・デュオ・J・スカリエッティ】
「! ・・・幾つ、なのかな?」
何となく、幼子に問う様に声を掛けるフェイト。
「さぁな、そればかりは、私にも判り兼ねる。多分・・・3~4歳かな?
判っているのはそれ位だ」
それを聞き、思い浮かべる。では、この、中身は?
顔をきつく引き締め、さらに問うた!
「・・・じゃぁ、この間の襲撃で、貴方達が攫って行った、ヴィヴィオとデュオは・・・何処?」
「・・・ヴィヴィオ陛下に関しては、揺り籠だ」
「デュオは!?」
「目の前に、居るが?」
そう言い、指し示した。
「そ、そんな!」
「あー、間違っていたらアレだが、デュオに関してはあのままであれば、死を免れなかった。
だから、連れ帰った。
今は、アレで症状を抑え込んでいるに過ぎない」
そう言われ、最後に別れた時の事が、浮かんだ。
「・・・デュ・・オ?」
【ナァニ?】
「私の事、覚えて無い?」
【・・・敵! 夜叉! ロシュツキョー! 鬼!】
グッサリ! バッサリ! ハキハキと答えられた!
「ハッハッハッ・・・! イダダダァア!」
その答えにスカリエッティは大受けし、大笑いするが、フェイトにバルディッシュでゴリゴリと、コメカミを抉られた!
「・・・どう言う事か。応えて、貰えるかしら?」
凄味が五割増しになった!
【・・・オオウ! オッカナイ!】
更に倍に!
「! イダダダ! タンマ! タンマ!」
更にゴリッ! ガリッ! と、抉らんとするフェイトに待ったを持ちかける。
「おう・・・イツツ! これは結果としては、まだ良い方だ!
そのままであれば、全てを喪い、戻らなかったはずだからな。
だが、此方には記憶のバックアップが有り、その分の記憶だけは取り戻せたんだ!」
「じゃぁ、それ以後は?」
「・・・多少であれば、思い出せるだろうが・・・
全てを思い出せるかは、判らない。
・・・それに、まだ予断を許さない状況でもある」
「そう、でも、あなたを捕まえておけるのであれば、それは防げるかもしれないと言う事でもあるわね」
「そう、上手くいくかな?」
「それは? ・・・!」
目前に迫って来た巨大なブーメラン!
フェイトは咄嗟に避けた事で大事は無いが、デュオが居ない!
「こう言う事だ!」《トーレ》
声がする方を見ると、離れた所で、抱き抱えられられた姿。逆の方が似合うだろう姿が、目に飛び込んできた!
俗に言う、お姫様抱っこされて離れて行くデュオ!
トーレに抱えられ、満更でもなさそう。《=楽が出来るから!》
「あ! 待ちなさい!」
「・・・おぉい、私は如何なるんだ?」
置いてけぼりを食らうスカリエッティは、そんな事を小声で言う。
「そうだった!」
フェイトは、スカリエッティをそのままにする事も出来ず、椅子ごと引き摺ってでも追おうとする!
「ギャヤアアァァァァァア!」
後ろ向きに、猛スピードで椅子の足が削られて行く!
その事に、ある種の恐怖を覚えるスカリエッティ。
そのまま、引き摺られてしまうのではないか!?
そして、擦り下ろされてしまう!?
だが、そうはならなかった。
代わりに椅子がバラけ、猛スピードで壁に激突!
ドゴンッ!
後頭部を抑え、ゴロゴロと転がるスカリエッティ。
頭部だけが痛み、体は痛くは無かった!
孫から貰った初めてのプレゼント《?》に感謝していた。
だが、それも長くは続かない!
「ああ、有った有った!」《物扱い?》
鬼《フェイト》が、還って来た!
「ふ! そんな事で、私をどうにか出来るのか?」
そんな風に、一寸だけ強がって見た。
「してみせるわ! 私は、あの子の為なら、鬼にでも成って見せる!」(すでに鬼!)
流石に頭部を強打した事もあり、直には動けないスカリエッティ。
傍まで来て掴み上げ、引き摺ろうとするフェイト。
そこへ、小さな声が聞こえて来た。
【・・・ポチットナ!】
突如、スカリエッティの白衣が、ブッ飛んだ!
周囲にネットが張り巡らされ、スカリエッティを中心とした、クモの巣の様なモノが、形成された!
それを真近で浴びた為、簀巻きにされたフェイト!
・・・ ・・・
それを、離れた所で確認したセッテ。
ドクターは・・・無事そうだ。
怪我が無いと言う意味では・・・
「・・・それは?」
そう、傍に居た甥っ子に尋ねた。
【敵サン・ホイホイ!】
「スゴイナ、それは・・・」
棒読みになるトーレ。
流石に置き去りにする位で、ドクターがどうにかなるとは思わなかったが。
ドクターは自分を餌にする孫を、どう思うのかが心配になった。
イザと言う時には、自分たちが離反してでも守ろうと決めたとか、決定したとか?
頼もしく、末恐ろしい甥っ子を撫でながら。
セッテは決めた、敵には回すまいと・・・
ウーノは全てを見届け。そして、見なかった事にした!
ドクターは、始めて貰ったプレゼントが爆発した時には、意識がぶっ飛んでいた!
・・・何も、覚えてはいなかった!
ただ、孫のプレゼントが自分を救ってくれた事だけを、事実として受け止めた。
どんな方法で有ったかは、思い出せないし、思い出したくなかった?
・・・ ・・・
まぁ、こんな感じにフェイトは捕まり、ある程度の真相を知る事に・・・
次回 送迎