魔法少女リリカルなのはStrikerS ENEMY Side   作:トータス

12 / 52
えー、シリアス展開に直行いたします。

暫くの間は、シリアスな展開が続きます。

これは原作を見ず、他の方のSSを見てこうなったのでは? などと想像の上で創られています。

私の中ではこうなったかと・・・


第十一話   来るべき時

来るべき時

 

 

 その日は、朝から頭が痛む。

ただ、ズキズキするだけだと思い、何も伝えなかった。

 

 それが、こんな事になるなんて・・・

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 最初に気付き、見付けたのは、ヴィヴィオだった。

 

「デュ、オ? 如何、したの?」

 

 返事は無い、動いてもいない・・・

力なく倒れたまま、ピクリともしなかった・・・

 

 

 直に、大人が呼ばれ、搬送された。

 

 

 特に異常は見られないが、意識が無い。

デュオはそれ以上の変化・悪化が起こらないか、確かめる為の機械に繋がれた。

 

 

 機動六課・医務室のソファーにて、

「わ、私、お姉ちゃんなのに。気、気付いて、あげられなかった!

だ、大、丈夫、だよね! 直、元気になる、よね!」

 

 そう言いながら、なのはに縋りついた。

なのははヴィヴィオを、ギュッと力強く抱き返す。

返す言葉は見付からない。だが、言うべき事は、あった。

 

「ヴィヴィオの所為じゃないの。

・・・何時か、こうなる事は、判ってたの。

それが、何時かは、判らなかっただけで。

・・・こんなに早くなるなんて、思っても居なかったの!」

 

 さらに、フェイトも抱きしめ、付け加える。

 

「・・・ヴィヴィオの所為じゃないのは、確かだよ。

私も、忘れ掛けてた。

・・・あんなに、元気だから。ずっと、先の事だとばっかり!」

 

 ハヤテはそんな三人を前に、時間が来た事を告げた。

 

「う、うん! 分かってる!」

「・・・分かった! じゃあ、ヴィヴィオ。

一寸、ママ達行って来るから、デュオと一緒に、居て貰っても、良いかな?」

「デュオの事、守ってあげてね・・・」

 

 戸惑いながら、その事を真剣に受け止めるヴィヴィオ。

 

「う、うん! 任せて! 私、絶対に守るから!」

 

 二人に心配を掛けまいと、気丈に答える。

それを見て、少し安心したのか、二人の足取りもしっかりとしたモノとなった。

 

「じゃあ、行ってきます!」

「行って来るね!」

「行ってらっしゃい!」

 

 そう言い残し、その場を後にする。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 ある連絡が入った。

 

「な、に? それは・・・

・・・分かった。直に手配しよう。・・・ウーノ!」

「はい!」

 

 何時にない、緊迫した雰囲気のドクターに、気押されながらも応える。

 

「計画を・・・実行に移すぞ!」

「・・・ですが!」

「一刻の猶予もない! ・・・実行に、移すんだ!」

「・・・はい。ですが、急に何故?」

 

 訝りながら、何故、早めるかを聞いた。

 

「・・・時間が無い」

「!・・・それは」

 

 それだけで、察した。

それだけ急ぐと言う事は、あの子に何かが有った!

 

「そう言う事だ、全員に通達しろ。至急、奪還せよと!」

「はい!」

 

 そうこうする内に、何人かが、ドクターに詰めよった!

 

「おい! 大丈夫なのか!?」

「落ち付け!」

 

 詰め寄るノーヴェに、制止に入るチンク。

 

「こんな時に! 落ち着いていられるか!」

 

 バン!

ウェンディに突き飛ばされ、一瞬何をされたのか判らなかったノーヴェ。

 

「・・・こんな時だからこそッス! 暴れてどうにかなる位なら、私が!」

「・・・そうだね、どうにもならない。だから、私はドクターを信じる!」

 

 セインは、何時ものチャラ付いた態度で無く、一貫した態度を見せた。

 

「セイン、お前。・・・判った、ドクター、指示をくれ。

私達は、何をすればいいのか、如何したら良いのかを、示してくれ!」

 

 トーレの言葉に、皆が一丸となった!

 

「・・・分かった。ならば、計画はこうだ・・・」

 

 

 そうして、役割が振られ、それぞれが持ち場へと付いた。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

六課宿舎

 

 外では、大規模な戦闘が起こり。度々、宿舎そのものが、揺れている。

 

「!・・・大丈夫! お姉ちゃんが、ついてるから!」

 

 ベッドの傍には、ヴィヴィオがしがみ付いている。

少しでも、揺れない様に、抱き締めて居れば大丈夫だと信じ、片時も離れようとはしない。

 

「皆も、頑張ってるんだから。・・・ここは、大丈夫!」

 

 震動が治まり。外が、静かになった。

 

「・・・終わった、のかな?」

 

 その時だった。外から、緊迫した声が聞こえたのは。

 

『だ、誰ですか! 貴方達は! キャァア!』  ダン!

 

 何かが、叩き付けられる音がして、静まり返った。

 

 ギッギッギィイィィ!

 

 震動により、扉が歪んだのか、軋む様な音を上げながら、扉が開かれた。

そこには、見知らぬ長身の女性《=トーレ》が現れた。

 

「お、お姉ちゃん、誰!?」

「ん? 私はその子の叔母に当たる。

・・・その子は、我々が連れていく」

「だ、ダメ! デュオは! 病気なの! だから、連れて行かないで!」

 

 そう言いつつ、立ち塞がった!

 

「・・・だが、ココでは、助ける事は出来ない。だから強引にでも、連れて行かせて貰おう」

 

 その静かな剣幕に圧されるヴィヴィオ!

それでも、負けじと退かない!

 

 それを見て取って、関心を示す。

 

「お前は、その子の、何だ?」

「わ、私は。ヴィヴィオは、デュオの、お姉ちゃんだから。

ママ達の分も、守らなきゃ、いけないの!」

「・・・そうか、この子は恵まれているな。

こんなに、思って貰える相手が居るなんて・・・

だが、それだけではこの子は、デュオは、助からない。

連れて行くぞ」

 

 そう言うと、軽く手を振り、押し退けた。

 

 軽く振った様な、たったそれだけで、弾かれ、叩きつけられた。

 

「かはっ!」

 

 肺から空気が押し出され、息が詰まる!

 

 それでもう良いとばかりに、ヴィヴィオを無視してベッドへと近付く。

その眠ったままの小さな体を、そっとシーツで包み。大事そうに抱きあげる。

 

 ヴィヴィオは叩きつけられたものの。それでも立ち上がり、その足を縋りつく様に掴む。

 

「・・・駄目! 連れて行かないで!」

「・・・なら、一緒に来るか?」

 

 そんな事を言われるとは、考えもしなかった。

 

「え? ・・・良いの?」

「その代り、お前には、やって貰う事が有るが、良いのか?」

 

 戸惑いながら。その事と、一緒に居る約束を守れない事とを、天秤にかけた。

・・・そして、答えを出した。

 

「う、うん! デュオが治るんだったら、行く!」

 

 その答えを聞き、その決意を目にし、トーレは言葉を繋いだ。

 

「・・・辛いぞ」

 

 ヴィヴィオはその言葉にたじろぐが、

 

「で、でも! ・・・それでも!」 

 

 その目に、確固たる意志を見出したトーレ。

その目は、自分達姉妹の目と似た、意志の硬さと同じに見えた。

 

「・・・分かった、連れて行くからには、後戻りは出来ないが、良いんだな?」

「・・・うん!」

「ならば、この子を抱いていてくれ」

「え? わっ!」

 

 強引に押し付け、もう一枚シーツを持って来ると、有無を言わさず纏めて包んだ!

 

「わっ! え?」

 

 蓑虫の様にされ、軽々と担がれる。

 

「・・・では、行くぞ!」

「わっわっ!」

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

「・・・と言う訳で、一緒くたに連れて来た」

「・・・だからって、これは・・・」

 

 そのヴィヴィオとデュオを見て、一寸呆れた様子で妹を窘(たしな)めるウーノ。

 

「どうしてこうなったんだ?」

 

 結果的には万々歳なのだが、なぜこうなったのか、その経過が判らないスカリエッティ。

 

「だから・・・」

「・・・判った! それはそれで良いから、デュオを」

「はい」

 

 そう言って蓑虫状から解き放ったデュオを、診察台に寝かせる。

 

「・・・状態は? ウーノ」

 

 直に簡易検査に掛けられ、その結果を問い質した。

 

「・・・良くは、ありません。

・・・脳が、圧迫されています。

内部の異物が、活動し始めている様です」

 

 スカリエッティはその事を確認し、結論を出す。

 

「・・・だとすると。せめて、圧迫を緩め。それが外に出る様に、調整を・・・

クアットロ、用意していた物を!」

「はい!」

 

 ヴィヴィオはその様子を心配そうに見守る。

 

「おじちゃん、デュオは、助かる?」

「ああ、助けて見せるさ。この欲望が尽きぬ限りは、な」

「さ、こちらへ。ココでは、邪魔になってしまう」

「うん」

 

 チンクに促され、一緒に退出するヴィヴィオ。

そうして連れ出され、座らされると。緊張していたせいか、眠ってしまった。

 

「何だ、寝てしまったのか」

「ああ、そっとして置いてやろう」

 

 トーレが退出し、ソファを見ると、眠って居るヴィヴィオが見えた。

それにそっと、毛布を掛けてやるチンク。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

「クソ! この私の頭脳を以てしても、これは!」

「ドクター!」

 

 声を荒げるドクターに、ウーノは心配そうに、声を掛ける。

イラつきながらも、それをどうするか、どうすればいいのかを考え続ける。

 

「・・・大丈夫だ。手はある!」

 

 それでも、最悪の結果が頭をチラつく。

そうしていると、クアットロが有るモノを手に、戻って来た。

 

「ドクター、用意が出来ました!

何時でも行けます!」

「! 間に有ったか!

良し! 術式を開始する!」

「「はい!」」

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

「・・・え! もう、大丈夫なの?」

「ああ、峠は越えた。会うだけなら、良いだろう」

「う、うん! ありがとう! おじちゃん!」

 

 そう言うと、一目散に居る場所へと走るヴィヴィオ。

 

「・・・良いのですか?」

「ああ、知っておいた方が、良いだろう」

「・・・そうですね。こちらにも、協力して貰う事になりますし」

 

 その事を思うと、少し気が咎めるが、こちらの事情からもそう成らざるを得ない事は承知している。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 シリンダーの前で、クアットロが何やら、端末に打ち込んでいる。

 

「あら? アナタは・・・」

「あ! お姉さん! デュオは!?」

「ああ、ココに居るわよ」

「ど、ドコに?」

「だから、ここ」

 

 そう言って、指し示した。

そこには、シリンダーに入った、黝い巨躯。

 

「え? ドコ? 居ないよ?」

「・・・だから、ココよ。ココ、この中で眠っているのが、そう」

「な、何で、そんな事、言うの?」

 

 状況が呑み込めないヴィヴィオ。

その事に特に頓着せず、事実のみを端的に伝えるクアットロ。

 

「こうでもしないと、この子の中の異物は落ち着かないの。

こうしなかったら。多分、明日には死んでしまうわね」

「何で? そういう風に、言うの?」

 

 ヴィヴィオには、淡々と事実のみを伝えて来るクアットロが冷酷に見える。

 

「・・・この子は、そうなる事が前提だったから。

それをどうにか出来ただけでも、良い方ね」

「で、でも!」

 

 それでも、納得が出来ない。

 

「黙りなさい」

 

 当たり前に、自然に心配出来る相手が居る事に、ついイラつきを隠せない。

 

「! ・・・でも!」

 

 バチン!  頬を引っ叩かれた!

ヴィヴィオは頬を抑え、見上げる。

 

「この子は、私達の子。だれにも、渡さない」

 

 何処か遠くを見る様に、陶然とした様子で話し続ける。

 

「で、でも!」

 

 バチン!  更に反対側も叩かれる!

 

「黙りなさい!」

 

 それでもなお、気にする相手が気に食わなくなってきた。

そして、クアットロは暫し考え、言った。

 

「・・・だったら、貴女も、コッチ側に来る?」

「え?」

 

 一瞬、何を言われたのか、判らなかった。

 

「貴女なら、コッチに来る事は出来るわよ?」

 

 ヴィヴィオはその事が、何を意味するのか判らないまま、ただ反射的に答えを出した。

 

「う、うん! 行く! だから!」

「・・・そう」

 

 クアットロは、にぃっと、両の口の端を釣り上げ、ニンマリ笑った。

悪い笑みを浮かべていた。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 痛みが、薄れた。

 

 前が、見える?

 

 クー姉、悪い顔、してる?

 

 ビビオ姉、何か、言ってる?

 

 ・・・眠い。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 台の上に載せられ、上を見上げて居た。

誰かが、こちらを覗き込んでいる。

 

「気分は、如何だい?」

【・・・ドクタ?】

「ああ、思い出せたかい?」

【・・・ココハ?】

 

 ユックリと、体を起こし、周囲を確認する。

 

「君は捕まって、暫くの間は、向こうで生活していたんだ。

それから、色々あってね。

急遽、こっちに戻って来て貰った」

【・・・頭痛クテ、タオレテ、ワカンナクナッテ】

「ふむ、記憶は、元に戻ったか」

【・・・誰?】

 

 ドクターの隣には、見覚えのない、大人の女性。

 

「・・・デュオ、私は・・・」

「デュオ。こちらは、聖王ヴィヴィオ陛下だ」

【オー、陛下・・・ヨロシ、ク?】

 

 挨拶して見たが、何となく違和感が拭えない。

 

「デュオ? 覚えて、いないのか?」

「陛下、デュオは貴女が知っているデュオで在り。貴女を知らないデュオでも在る」

「・・・それは?」

「記憶を喪っている」

「! 何故!?」

 

 ドクターの襟首を掴み、持ち上げる!

 

「・・・こちらには、記憶を喪う前の、バックアップが有ったが、それ以後の物は、存在していない。

だから、曖昧な事しか、思い出す事が出来て居ない、可能性が高い」

「・・・だったら! どうにか出来ないのか!?」

 

 さらに掴みあげるが、太い腕に阻まれる。

 

【ヘーカ、ダメ!】

「放せ! こんな事になると、判っていたら!」

 

 前世の記憶も、こんな力も、求めはしなかった!

今の自分を知る者が居なくなる事、その事が怖かった。

自分と言うモノを保てる、縁(よすが)が欲しかったのに・・・

 

【ビビオ姉!】

 

 咄嗟に呼ばれたその名前、それは自分を呼ぶ物であり。

自分自身を含めた呼び方。

 

「! な! その名で、呼んで、くれるのか?

こんな、この姿であっても・・・」

 

 大人の姿になってしまった自分。

自分がどう言う存在だったのか、それすらも呑み込んで尚、自分をそう呼んで貰えた。

 

 自分が何者か、それがゆえに、人は態度を一変させる。

親しくしていた者も、その名によって、それまでの自分とは違うモノを見る様に接して来る。

 

 その記憶は、かつての、過去の、生前の記憶。

その記憶と、今の記憶が入り混じった自分。

自分がどちらなのか、オリヴィエなのか、ヴィヴィオなのか・・・

 

 立場や姿、そんな事は関係なく、自分を自分として見てくれる事・・・

 

 自身を肯定された気がした。

 

【???】

 

 読んだ本人は何故、その名前で呼んだか、判ってはいない様だ。

 

「ふむ。多少は、思い出せるようだな?」

「・・・デュオ、お前は、その名で、呼んでくれるのだな?」

 

 薄らと涙を浮かべ、こちらを見ている。

 

【・・・ナンデ?】

「イヤ、良い。お前には、そのままで、居てくれないか?」

【・・・ビビオ姉?】

 

 何となく、そう呼ぶ事が正しいと思った。

 

「そうだ、お前になら、そう呼ばれたい」

【オー、ワカッタ!】

 

 話が着いたと見るや、ドクターから忠告を受けた。

 

「デュオ。一応、言っておくが、当分の間。ブリアレオスから出てはいけない。

まだまだ安定したとは、言えない。何時どうなるか、判らないから。極力そのままで居なさい。

もし、外したいのであれば。私か、クアットロの元でだけにしておきなさい」

【・・・ハズレタラ?】

「・・・どうなるか、判らないな」

【ワカッタ!】

 

 

   ・・・   ・・・




まぁ、ヴィヴィオはイキナリ大人となりました。

レリックを埋め込まれた時点で、大人モードとなり、前生の記憶とが入り混じり、自身がどういった存在だったのかで不安な様です。

それを肯定する存在として、終始変わらない態度を見せる存在は支えになるかと・・・


次回 箱船襲来です。

話しとしては飛んでしまいますが、ご了承を・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。