魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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ヤベェ(^◇^;)
なんだかんだで今回も駄文ってる気がする……

申し訳ないと思いながらも第4話どうぞ(-。-;


眷属と少女は彼に何を思うか………

イッセーside in

 

 

「うんめぇぇぇえええええええ⁉︎」

「これは確かに……」

「モグモグ……美味しいです」

「シノンさんってお料理上手なんですね」

「これは心惹かれますね……」

「ええ、そうね………」

「これって………」

「うん、ゆきのんのより美味しいかも……」

 

八幡を除いた全員が宿に帰った瞬間、全員が何処からともなく漂う匂いに魅了され、本能のままに向かっていくと、そこにはシノンと彼女により作られた料理が並んでいた。

その料理はまるで漫画やアニメの世界でよくある大食いたちが集う酒場で出てくる料理。男子が1度は夢見る漫画メシと言われる物の数々だった。それは匂いや見た目だけではなく味もまたしかり。それはまさにレジェンド級だった。

 

「相変わらずシノン殿が作る料理は美味しいですね」

 

「うん、すっごく美味しいよ‼︎」

 

そういうのは俺の対面に座っているヴィザさんとユウキだ。この人達は毎日と言っていいほどシノンの料理を食べているのだろうか?羨ましい。とそういえば…………

 

「八幡の奴は来ないのか?」

 

ピシリと空間にヒビが入るような音が聞こえた。聞いた後で俺自身もやってしまったと後悔する。他の部員達は俺の方をジト目で見ているし、隣に座る小猫ちゃんに関しては俺のことをつねってきている……やめてまじで痛いから⁉︎

 

「心配せずともみなさんが思っているような理由でこの場にいないのではありませんよ」

 

俺たちが固まってしまっている中、ヴィザさんから発せられたのは否定の声だった。

 

「そうだねー、八幡は自分のことに関してそこまで気にはしないよ」

 

「そうね。もう少し気にした方がいいとは思うけど……」

 

ユウキとシノンにもヴィザさんの言葉を肯定するように述べる。

 

「そうなんですか」

 

「ええ、ですので大丈夫ですよ。あなた方が暗くなる必要はありません。安心なさい」

 

「「ごちそうさまでした」」

 

ほぼ同時だった。

ヴィザが俺らに対してそう言った後、由比ヶ浜と雪ノ下がメシを食べ終わりそそくさとその場を後にした。

その2人のことをシノンとユウキが横目で見ていたのに気づいた俺はやはり失敗だったと後悔する。彼女らは八幡の眷属だ。少し考えればわかることなのに浅はかな発言をしてしまった自分が憎い………

 

「イッセー君、本当に大丈夫だよ?八幡は本当にそんなこと気にしてないだろうし」

 

そう言いながらユウキは自身の近くに置いてある竹の皮の包みを撫でる。

 

「それは?」

 

「ああ、これは八幡の夕食。いつもは一緒に夕飯食べるんだけど、書類とかやらなきゃいけないことが多い日はいつも食べれないんだ。後は眷属の子とかの特訓に付き合った時とか。そういう時は自分のその日のトレーニングができないから、大抵みんなが夕食を食べてる時にトレーニングしてるんだよ」

 

俺の質問にユウキはここに八幡がいない理由も添えて答えてくれた。

 

「トレーニング?八幡君はヴィザさん達の主なのだろう?それだけの強さなのにまだ強さを求めているのかい?」

 

木場が思っていた疑問を素直にぶつけてきた。

確かに俺もそう思う。

実際にやりあったからこそ、八幡の底が知れないことがわかった。なのに、それだけの力があるのに、何故まだトレーニングを続けるのだろう。

 

「多くの人が間違える点ね」

 

「間違い?」

 

「ええ。あなた達の言う強さは本当の強さではないわ。それはただの技術よ。強さとはただそこに至るまでの過程の中にこそあるものなの。」

私はそれを彼から学んだ……

とシノンは付け加えながら何処か懐かしむように窓の外を見る。その瞳に映るものが何か、俺には到底わかるわけがなかった。

 

「ええ、我々は八幡殿と出会い多くのことを学びました。八幡殿の眷属は規格外な者が多いですが、一癖も二癖もあり、皆何かしらの過去を抱えているものなのですよ」

 

シノンの言葉にヴィザが追うように付け加える。2人が居なくなったからか、彼女らは少しずつではあるが、多くのことを話してくれている気がする。

 

「ただその過程の中に……でも、なんで八幡君はそんなに強さを?僕たちの言う強さとは違っていても八幡君が強いのには変わりないだろう?」

 

強さ、という言葉に反応する木場は、説明を聞いて尚問いてくる。

 

「それは私にも詳しくはわかりません。殆どが推測になってしまいますので………」

 

そういうとヴィザは飲みかけのスープを一口飲み一息つく。

 

「ごちそうさまでした」

 

「あら?小猫もういいの?」

 

「はい。失礼します」

 

いつもはもっと食べている小猫ちゃんが席を立つ。俺の後ろを回り、ヴィザさん達の後ろにあるドアへと向かい、そして消えていった。

 

「どうしたんだろう?小猫ちゃん」

 

「さぁ?」

木場の問いに俺も首をかしげる。

 

目の前にいるヴィザさんは何故か微笑している。

 

 

「しかし、推測でいいのならばお教えしますよ?」

 

「本当ですか⁉︎」

 

小猫ちゃんが去った後、ヴィザさんの発言に俺たち眷属一同は反応した。

 

「ええ、あのお嬢様方2人に言わないと約束していただけるのであれば」

 

2人とはおそらくこの場を真っ先に出て行った2人だろう。八幡との関係を知っているならば当然である。

 

「ええ、約束するわ。みんなもいいわね?」

 

ヴィザの言葉に即座に答える部長の声に俺たちもうなずく。

 

「ヴィザ~?」

ヴィザさんの隣ではユウキがいいの?とばかりにヴィザさんへ視線を向けている。

 

「あの2人でなければ構わないでしょう。八幡殿も隠しているわけではないですし。それにこれはあくまで私の推測ですので」

 

ヴィザさんの答えにユウキはシノンへと視線を向けると、シノンはいいんじゃない?と軽く返す。2人がokを出したことにより、やれやれとユウキも渋々了承した。

 

「恐らく八幡殿は護りたいんでしょうね。自分の大切なもの達を」

 

「護る?」

 

「ええ、八幡殿は優秀です。それこそ、悪魔の歴史に名を残せるほど。しかし、同時に敵も多いですがね。」

 

「敵、ですか?」

 

ヴィザの話に時折俺や部長は質問を入れていく。ヴィザさんはそれを特に気にすることなく答えていってくれた。

 

「はい。元人間だから……ではありません。八幡殿の場合はもはや体質と言っても良いでしょうね」

 

「体質?」

 

「そう、体質です。言ってしまえば八幡殿は目をつけられやすいのですよ。良い意味でも、悪い意味でもです。」

 

「どういうことですの?」

 

「そのままの意味です。殆どの場合は悪い意味で目をつけられますね。それの代表的な例が敵意です。多くの人は彼を劣った存在だとその外面と雰囲気から決めつけ彼を虐げるのですよ」

 

そういうヴィザの顔は何処か悲しげだった。

その両脇に座るユウキとシノンの顔にも同じようなものが浮かんでいる。

 

「それゆえに八幡殿の良さを気づかない者が大半なのですよ。しかし、中には気づく方もいるのですが……」

 

「ヴィザさん?」

 

「それに気づいた奴が取る行動は2択よ。八幡の良さに惹きつけられて共に歩もうとする者達。その集まりが私達眷属。でも、それとは全く真逆の行動をする奴らもいるのよ」

 

言い淀んだヴィザの変わりにシノンが、そしてユウキが答えていく。答える2人の拳は強く握られていた。

 

「逆、つまりは八幡の良さに気づいても、それを認めず今まで以上に八幡を虐げる奴らだよ」

 

そう答えたユウキの目には明らかに憤怒の色が見えている。

 

「だからこそ八幡殿は強さを求めるのでしょう。ですがそれは決して自分のためではないのですよ。」

 

「自分のためじゃないんですか?」

 

「ええ。それは恐らく、彼の良さに気づき歩み寄ってきた者達を護るためでしょう。彼を虐げる者の敵意が彼を慕うものたちへと向いた時、それを護るために」

 

言い終えたヴィザはふぅ、と溜息を吐く。

 

俺はここまで話してもらいようやく少しだけわかった気がした。強さが過程の中にある。それは結果なんかじゃないんだ。もしも、結果だけで見ていれば八幡がただ単に規格外なだけでしか思えない。でもそうではない。彼が強いのはそこに至るまでの過程の中でそれを手にしたからだ。その中でどれほどの苦痛があったのか………

恐らく雪ノ下達とのことですら、八幡にとってはその過程の1つでしかないのだろう。だからこそ、彼は今も尚歩き続けているのだ。彼にとって今もまた過程の1ページを刻んでいる途中なのだろう。その終着点にあるのは、自身の大切なものを護れるようになるまで。

 

俺も部長を護りたいと思ってる。

でもそれは今回のライザー戦に向けてだ。

でも彼は違う。

彼の目指す先は俺とは違いもっとずっと先にある。それがどれほど大変なことなのか……今の俺の実力では想像すらできなかった。

 

 

 

「彼は優しすぎるのです」

 

しばしの沈黙の後ヴィザさんがふと呟いた。

 

「自分と似た境遇にある者。苦しみから必死に脱しようとしている者。絶望に飲まれそうになる者。そんな者達を見ると、自分が傷つくことさえ忘れ助けようとしてしまう」

 

「そうね……八幡はそういう奴だもの」

 

「僕たちのことは大切に扱ってくるくせに自分のこととなるとすぐ犠牲にしても良いって思ってるからね……」

 

3人は目を伏せながら呟いている。

そこには3人のたくさんの想いが込められているのだろう。

 

その様子を見れば、俺にもたくさんの思いが溢れてくる。俺とてあいつとはクラスメイトであり親友だ。何も思わないわけがない……

 

「それを支えるのが我々の役目です」

 

ヴィザさんのその言葉は俺の中にも響いて行った。親友だからこそ支えられることがある。そんな思いが俺の中には生まれていた。

部長達も今の話を聞き、眷属に想われている八幡のことに感動したのか感極まったような雰囲気だ。

 

 

「そうだね、それじゃあ早速夕食ぉぉおお?」

 

そんな雰囲気をユウキさんの声がぶち壊した。

 

「どうしたのよ?」

 

「八幡の夕食がないよ⁉︎」

 

「え⁉︎」

 

突然の声にシノンが反応するもユウキ同様、八幡の夕食のおにぎりが消えていることに気づくと声をあげた。

 

あれ?そういえば竹の皮で包まれたおにぎりが消えてるな。

 

「ああ、それなら先ほど小猫嬢に持って行って貰いましたよ」

 

『はい⁉︎』

 

ヴィザさんのカミングアウトに俺たちは全員が声をあげ、同時にヴィザさん達の話が終わる前、小猫ちゃんが席を立ったところから脳内再生を始める。

 

 

 

 

 

『はい、失礼します』

 

そういった小猫ちゃんは俺の後ろを通り、ヴィザさんたちの後ろにあるドアを向かう。そうしてヴィザさんの後ろを通ろうとしたその時……

 

 

 

カシャ

ヴィザさんが何気なく竹の皮の包みを手に取っている

 

カシャ

それを持ち、手をテーブルの下まで持って行っている。

 

カシャ

小猫ちゃんが通る瞬間その手に持つモノを小猫ちゃんへとパス

 

カシャ

小猫ちゃんはそれを素早く受け取ると背中を俺らに向け手を胸の前に持ってくる。

これだと確かに俺らには見えないが……………

 

 

「あの時かぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁああ」

 

あまりの手際の良さに声をもう一度上げる。

 

「「なんでヴィザ⁉︎」」

 

自分たちが持って行こうとしていたユウキとシノンは当然でヴィザさんへと問い詰める。

 

「小猫嬢が不安そうな顔をしていましたのでね。恐らく八幡殿絡みのことだと思い渡しておいたのですよ」

 

ふぉふぉふぉ

と初老の男性特有の笑い方をしながらヴィザさんは湯呑みを手にする。

 

「ぐぅ~まさか八幡また………」

「ライバルが増えたかしら………」

 

ユウキとシノンが揃って爪を噛みながらぶつぶつと言っている様子を見て俺は心の中で叫ぶ。

 

(やっぱりハーレムじゃねぇか⁉︎)と…………

 

 

 

イッセーside out

 

小猫side in

 

 

 

私は今かすかに聞こえる戦闘音を頼りに森の中を歩いています。何故戦闘音が聞こえるのかと最初は不思議でしたが、八幡先輩はトレーニングをしているそうなのでそこにいるのかな?と思い、音のする方へと歩いています。

 

「八幡先輩……」

ふと呟かれた言葉を風に流されすぐに聞こえなくなってしまいます。手には手際よくヴィザさんから渡された先輩の夕食があります。ただのおにぎりのはずなのにすごく良い匂いがして、正直お腹がなりそうです。どうしたらこんな良い匂いのするおにぎりがつくれるのでしょう?

 

シノンさん恐るべし。

それにユウキさんも先輩に抱きついてました。

もしかしたら眷属に他にもいるかもしれませんし、なかなかの強敵です。

先輩が爵位持ちの悪魔だと知っていたら先輩の眷属になったのに………

 

とそんなどうしようもないことを考えていると聞こえていた戦闘音が止んでしまいました。

もう終わったのかな?

そう思いさっきまで音がしていた方へと走っていきます。

 

「先輩?」

 

そこで私が目にしたのは身体中傷だらけになりながら倒れている先輩とその先輩の前に突き刺さっている日本の刀。一本は前にも見たことのある緑色の装飾の刀でその上には黒髪の少女が乗っている。もう一刀は初めて見るが緑の装飾の部分が紅色のものだ。

 

「先輩⁉︎」

 

何が起きているかわかりませんでしたが、先輩が危ないと思った私は思わず先輩へと近寄って行きます。

 

 

「っつ、て小猫か?」

 

「せ、先輩大丈夫ですか⁉︎」

 

あまりにも気の抜けた声出す先輩ですがこちらとしてはそんなこと気にしてられません。

先輩の服は血に染まってますし………

 

《今日はこのくらいにする?ハチ》

 

「ああ、さんきゅーな。」

 

ふと、剣の上に座っていた少女が話しかけ、先輩がお礼を言うと、その少女は乗ってた剣に吸い込まれるように消えて行きました。

すると剣はまるで生きているかのように光り、そして先輩の下まで寄ってくると霧散して消えてしまいます。先輩は立ち上がると目の前にあったもう一刀を手にします。するとその刀の紅色の部分が一瞬光った後先ほどと同様に霧散して消えてしまいました。

 

「せ、先輩、今のは?」

 

状況についていけてない私に先輩は笑いながら答えてくれました。

 

「ん?ああ。心配かけて悪かったな。今のは、んんー、まぁ、俺の仲間だよ」

 

「使い魔のようなものですか?」

 

「んんまぁ、そんなもんだ。いつも手合わせしてもらってるんだよ。」

 

そう言う先輩ですが怪我しすぎではないですか?いくらトレーニングでも………私たちがユウキさんにやられたのとは比較にならないほどの重症ですよ。なんだかんだでユウキさんは致命傷になる攻撃はしてきませんでしたし……

 

そう思ったのもつかの間で、先輩につけられた全身の傷は気づいたら消えてました。残ったのは血に染まった服だけです…………相変わらずの治癒能力ですね………でも、それでも……………

 

 

 

 

「なんで、先輩はそこまでするんですか?」

 

「ん?」

 

私は聞かずにはいられませんでした。

 

「なんでそんなになるまでやり続けられるんですか⁉︎」

気がつけば私は声を張っていた。大声を出す私が珍しいからか先輩は目を鳩が豆鉄砲を食ったような風になっているが私は止まらない……

 

「どうして自分のことをそんなに酷使するんですか⁉︎」

私は自分の叫びを止められなかった……

 

 

「確かに先輩の神器なら直ぐに怪我は消えます。でも痛みがなかったことになるわけじゃないですよね……なんで、先輩はそこまで傷ついてまでやれるんですか……どうして自分のことを簡単に犠牲にできるんですか⁉︎私は……私は嫌です……先輩が傷つくのは……たとえ先輩が痛みに慣れてるとしても、それでも私は……嫌なんです………」

 

気づけば私の瞳からは涙が流れていた。

酷い子だと自分でも思う。

眷属でもなんでもない自分が、突然現れたと思ったら、相手に自分勝手な意見を言ったあげく泣いてしまっている。

それでも私は嫌だった。

 

 

 

 

 

八幡先輩と私はそこまで深い関係はない。

お互い甘い物好きで、とある事情で出会ってから、2人で甘いもの巡りをしていたくらいだ。

先輩にとってはなんてことはない出会いだったかもしれない。それでも私にとっては、大切な忘れられない出会いだった。

 

グレモリー眷属になってある程度経ったある日。その日も私はいつものように仕事を終え家に帰ろうとしていた。長引いたため、少し遅くなってしまったが、悪魔である私には問題ない……そう思っていた。

そんな私は、とあるはぐれ悪魔と遭遇し死にかけてしまった……それを助けてくれたのが先輩だったんです。

 

その時。私を庇い先輩は身体中を貫かれました。先輩は魔力を使っていなかったですし、何よりも魔力を隠していたみたいなので私は先輩が神器持ちの人間だと思ってました。

だからこそ、巻き込んでしまったとショックを受けたのですが………その気持ちは直ぐに消えました。貫かれたはずの先輩は次の瞬間何事もなかったかのように立ち上がると一撃ではぐれ悪魔を倒してしまったからです。

 

その日からです。私が先輩に少しずつ惹かれて行ったのは。会うたびに、一緒に甘いもの巡りをする度に、私は先輩の優しさに触れていきました。

 

 

 

 

 

先日、先輩が悪魔で、部長達の護衛の任についていることを知り、私は初めて理解しました。あれが偶然ではなかったことに。任についていたからこそ先輩は私を助けてくれたんです。グレモリー眷属である私を………

 

 

でも、それでも構わなかったんです。

それでも先輩が私を助けてくれたことに変わりはなく、先輩が優しいことに変わりはないんですから………でも、だからこそ私は……

 

 

 

 

 

「小猫……」

そんな私の名前呼び、先輩は優しく頭を撫でてくれました。

 

「私はあの2人のことが許せません。他の人のことならまだ、嘘つきとだけ思えたかもしれないのに。先輩の優しさに……先輩の良さに漬け込んで、利用するだけ利用して、傷つけて、先輩を苦しめ、最後は捨てて……その後も自分達の都合の良いように事実を塗り替えていった2人のことが………」

 

心の声だった。

自分が心の底から思っていること。

それを私は次々とさらけ出していきました。

 

「あの2人は元々イッセー先輩の知り合いでした。どこで出会ったのか、イッセー先輩とアーシア先輩の知り合いだったんです。そこまで深い関係とは言えなかったです。でも、あの2人はイッセー先輩にいろいろ話してました。先輩のことを改悪して………それが先輩のことだと知らなくて、イッセー先輩はひどく怒ってましたが。」

そう呟く私の手は自然と先輩の服を握りしめてました。

 

「そんなある日、とあるホテルで行われたパーティーをはぐれ悪魔が襲ったんです。そのパーティーにはイッセー先輩とアーシア先輩も行っていたみたいで……部長が異変に気付いてみんなで向かった時には、既にほとんどの人が死んでました。イッセー先輩も傷ついていて……はぐれは部長が倒したんですが、そこで微かにですが息があったのがイッセー先輩とアーシア先輩に守られていたあの2人だけでした。そこでイッセー先輩たちが部長に頼み込んで2人を転生させたんです……」

 

そういう私は一言一言に怒りが込められていた。

 

「あの2人は嘘で塗り固めた事実をイッセー先輩たちに話して、そうして同情を誘っていたから…だからあの人達は生き延びたんです……なのに……なのに、本当は2人は……」

 

そう言って私は歯を食い縛る。

思い返せば思い返すほど、悔しさと憤怒で心が満ち溢れてくる。知っていたならばあの2人を転生などさせなかった……

 

「先日、先輩がいなくなった後、結局後日詳しい処分を下すとのことになりました。でも、部長は一時とはいえ仲間だった人達を無下にはしないでしょう」

 

それが本当に悔しいとばかりに私は拳を握る。

 

 

 

 

 

そんな黒くなっていく私の心だったが次の瞬間太陽の陽が差し込むように晴れていく……

 

「ありがとな」

 

トクンと私の耳に私以外の心臓の音が聞こえてきました。それが先輩の心音だと気づき、そして今自分が抱き寄せられていることに気づいた私は急速に身体が熱くなっていくのを感じました。

 

 

「にゃ、せ、せせせせせ、せんぱい⁉︎」

しばらく抱き寄せた後、慌てふためく私を解放した先輩は私の目を見ながら話かけてくれました。

 

 

「ありがとな小猫、俺のことをそんなに思っててくれて」

 

そういうと先輩はまた私の頭を撫で始めますが….

 

「知ってたよ、あいつらが眷属になった経緯なんて」

 

ピクンと今度は私の身体が先輩の言葉に反応してしまう。

 

「ずっとリアス・グレモリーとソーナ・シトリーを見てたんだ。そいつらの眷属が眷属になった経緯くらい知ってるよ」

 

そういう先輩は、とても傷つけられた人間がするようなものではない笑顔を私に向けてきます。先輩はどうしてそんなに………

 

 

「俺がなんでそこまでするのかって言ったよな」

 

「っ、は、はい」

私がまた悲しみそうになったところで、先輩の今まで見た中で1番真剣な声に私はスパッと体制を立て直し聞く体制をとります。

 

 

「それをしっかりと説明するにはさ、俺が悪魔になった理由を話さなきゃならないんだよ」

 

「先輩が悪魔になった理由……ですか?」

 

「ああ、ってもこれ知ってるのは本当に少ないし、俺の眷属ですら知らない奴もいる」

 

その言葉に私は俯いてしまいます。

先輩の眷属でも知らないことを私が聞けるわけがありません………

 

「知ってるのは眷属内ではユウキやシノンと複数人。ヴィザは知らない。後はソーナと四大魔王様達、それにグレイフィアと他数名だけだ」

 

さらにがっくりきてしまいます………

 

「なぁ、小猫」

 

「なんでしょう?」

 

すっかりと項垂れてしまった私に八幡先輩はいつもの優しい口調で話しかけてきます。

 

「知りたいか?」

 

「…………へ?」

 

あれ?今の流れ的に聞けないと思ったんですけども、あれー?おかしいな。

 

「ん?知りたくないならいいけども」

 

「し、知りたいです‼︎」

 

珍しく意地の悪そうに聞いてくる先輩に私は慌てて飛びつきました。

 

「そっか、ならこっからはとある少年の話だ。」

 

そのとある少年とはおそらく先輩のことなのだろう……先輩はいつもそうだ。自分のことを話す時はいつも友達の話とか、とある人間とか、誰かに置き換えて話す。

 

その話は大抵残念なエピソードだが、

今回の話は大真面目なのだと、先輩の雰囲気が物語っていた……………

 

 

 

小猫side out

 

八幡side in

 

 

「なんで、先輩はそこまでするんですか?」

 

俺の相棒が消えた後、小猫が何か呟いてきた。

 

「なんでそんなになるまでやり続けられるんですか⁉︎」

そう思ったら今度は声を張ってくる。

彼女が声を張っているのを初めて見たため俺は目を見開いてしまう。

 

「どうして自分のことをそんなに酷使するんですか⁉︎」

その言葉が俺の胸に刺さる。

自分自身オーバーワークとはわかっている。

それでも俺はやめていない。

かつて主から言われた言葉を今、目の前にいる少女に言われ固まってしまう。

 

「確かに先輩の神器なら直ぐに怪我は消えます。でも痛みがなかったことになるわけじゃないですよね……なんで、先輩はそこまで傷ついてまでやれるんですか……どうして自分のことを簡単に犠牲にできるんですか⁉︎私は……私は嫌です……先輩が傷つくのは……たとえ先輩が痛みに慣れてるとしても、それでも私は……嫌なんです………」

 

気がつけば小猫は涙を流していた……

やってしまった、と後悔する。

雪ノ下や由比ヶ浜とは違う。

本気で護ってやりたいと思った相手を泣かしてしまった………

 

 

「小猫……」

 

「私はあの2人が許せません……」

 

名前も呼ぶも、彼女から返されたのは怒りの声だった。それは自分に対するものではない。自分のことを利用し、傷つけ、そうして最後は捨てたあの2人に対する罵倒。

俺はただ静かに彼女の言葉を聞き続ける。

 

彼女が話し終える頃には彼女がどれだけ自分のことを想っていてくれたのかがわかった。

ただ、それだけで……嬉しかった。

 

「ありがとな」

 

そう言葉に出した頃には俺は彼女のことをそっと抱きしめていた。ユウキとやりあっていた姿からは想像ができないほど細い身体は震え、今にも折れてしまいそうなほどだ。

 

「にゃ、せ、せせせせせ、せんぱい⁉︎」

慌てふためく小猫の身体を抱きしめ続け、意を決したように離すと、俺は更に言葉を紡ぎ出す。

 

 

「知ってたよ、あいつらが眷属になった経緯なんて」

 

その言葉に目の前の少女の身体は揺れた。

でも、知っていて当然なのだ。

任務でグレモリーとシトリーのことはよく観察していたから………

 

小猫が更に言葉をひねりだしてくるがそれを遮るように俺は口を開く。

彼女になら話してもいいだろう……

そう思えた。

特に隠しているわけではない。

ただ、気恥ずかしいという意味で俺は自分の過去を隠している。知っている奴らは少ないし。

 

でも、彼女には伝えよう……

俺のために、ここまで考え、心を痛め、涙を流したこの少女に対しては教えよう……と。

 

 

「こっからはとある少年の話だ……」

 

 

そう言って俺は自身の過去について語り始めた………

 

 

 

 

 

 




じ、次回こそは駄文じゃないのを書いてみせる‼︎

が、頑張ってみせます(-。-;

誤字脱字などありましたら感想欄で言っていただけるとありがたいですm(__)m

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