魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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ちょっとだけまきで。




シノクニ

 

「そろそろかなぁ」

 

そう呟いた少女は地面へと突き刺した剣を引き抜く。

 

既に機は熟した。

同僚達もその任を全うしている。

 

一部落ちた者も居るがさしたる影響はない。

 

 

クロメとフリードはしっかりとグレモリー達の足止めを行なった。

 

黒歌は未だ決着していないが、もう待つ義理はないだろう。そう自分の直感が告げている。

 

 

他の面々に関しても、もう十分に落とした。

 

 

であれば、自分の手にてトリガーを引こう。

 

 

 

「本当につまらないゲームだったよ。小猫ちゃんがあれだけ伸びてたから、君にも期待してたのに」

 

 

そう言ってボロ雑巾のように地面へと放り出された木場に歩み寄っていく。

 

侮蔑の目線を向けられた木場には、もはや抗う術も、異論を唱える余力も残っていなかった。

 

 

「努力するのは当たり前。生物にとって停滞は退化そのものだ。君は、君達は強くなった気になっているけど、いったいどんな努力をしたの?」

 

 

その声は普段の明るい彼女とは打って変わり非常につめたい。

 

 

 

「聖魔剣に頼って、剣術がおざなり。幕末の天才剣士に師事していたとは思えないほどにね。天才剣士に師事したから強くなったと思った?禁手に至ったから少しは対抗できると思った?甘いよ」

 

 

そう言って彼女は剣を掲げ

 

 

「君は君達は何をしてるの?ライザーは恐ろしい速度で成長してる。小猫ちゃんは過去を乗り越え長い強者坂を駆け上がろうとしてる。僕ら相手には神器が効かないから使ってないみたいだけど、ギャスパーも歩み始めた。なのに君は、君達は何をしているんだよ」

 

 

 

終わりの始まりたる引き金を引いた。

 

 

 

 

 

『リアス・グレモリー様の騎士1名リタイア』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まっだかなぁ、まっだかなぁ」

 

「完全に遊ばれてるわね」

「ええ」

 

 

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」

 

「ひ、人の言葉を喋ってくださぁい」

「ひ、ひぅぅううう」

 

 

時は遡り、グレモリーは遊ばれていた。

相手が攻撃を当ててこないのだ。

 

してくるのはひたすら行動の制限。

まるでこの場から逃さないように移動制限をかけられていた。

それはギャスパー達も同様だった。

 

 

相手の意図が読めない上に行動の制限。

そして自身達の赤龍帝(切り札)の脱落。

 

それが彼女を焦らせていた。

 

 

 

「っ、このままじゃ不味いわね」

 

勝てるとは思ってはいなかった。

 

それでもあちらの王に会うこともできず終わると思ってはいなかった。

自分達なら赤龍帝(最愛の人)となら成せる。そう思っていた。

 

 

 

このまま(・・・・)じゃ?もしかしてまだ何かできると思ってるの?」

 

ふとしたつぶやきだった。

しかしそれを聞いたクロメはまるで言っている意味が理解できないとばかりに首をかしげる。

 

 

「どういう意味かしら?」

 

その言動に彼女は眉をひそめた。

その側にいる姫島も同様である。

 

 

「別に。ただ、聞いていた通りだと思っただけ。本当とは思わなかったけど」

 

 

 

無能王

それが彼女が下された評価だった。

厳しく、つめたい評価だ。

八幡達はレーティングゲーム前、どんな者が相手であろうと分析を行う。

彼らは決してリアス・グレモリーという悪魔が嫌いではない。しかし、彼女を知り合い、友人としてではなく、1人の王として評価した結果がこれである。

 

赤龍帝の変態性(眷属の暴走)を止められず、ギャスパー(有能な眷属)を放置し続け、あまつさえ本人は女王と共に赤龍帝(愛する人)と情事にふけようとする。

 

確かに全体的に見ればかなりの粒揃いだ。

神器持ちだけで見ても

赤龍帝の籠手

聖母の微笑

魔剣創造

停止世界の邪眼

と規格外のものが多い。

加えて悪魔への特攻攻撃である雷光を使える姫島に仙術を身につけた小猫だ。

本人も消滅を使えるのだ。

 

(八幡達を除けば)間違いなく最も才が揃っている。にも関わらず、それを全て台無しにしているのは、間違いなく王の責任だろう。

 

 

分析の際真っ先にシノン(・・・)が言い放った評価。オカンのような暖かさと永久凍土のような冷たさを持つ彼女だからこそ。

手心も遠慮もなく言い放ったのだ。

 

 

 

あの無能は落とすな、私が落とす。と

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを知り得ないグレモリーだが、彼女を見るクロメはシノンの言を理解する。

 

確かに、あまりにも『王』として未熟である……と。

 

 

 

 

そうしてクロメが理解した時

 

 

『リアス・グレモリー様の騎士1名リタイア』

 

 

引き金が引かれた。

 

 

 

「祐斗!」

 

そのアナウンスを聞き思わず名前を叫ぶ彼女だがそんなことはもはやどうでもよくなった。

 

 

「きひゃひゃひゃひゃ、きたきたきたぁ!!お勤めごくろっさん!バイビー」

 

「うるさい」

 

刹那、彼女達はその場から離脱した。

彼女達だけではない。

現在戦っている全ての戦場から八幡の眷属は離脱したのだ。

 

 

「な、なに!?消えた?」

 

 

突然消えた敵に周囲を見回すグレモリーだがそれは各戦場でも同じであった。

 

黒猫は決着がつかなかったことを悔しそうにしながら

夜兎は名残惜しそうに

翁は不敵な笑みを浮かべながら

戦闘が終わっているもの達は漸くかといった具合にその場から消えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各陣営がなにが起こっているのかわからずただ周囲を見直している中、その異変に真っ先に気がついたのは、急激な成長を遂げている者達(小猫とライザー)だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだあれは!!?!?」

 

「っ?!」

 

 

2人は悪寒が止まらなかった。

急激に膨大な魔力を感じたかと思えばフィールドの端から天へと一筋の白い煙のようなモノが立ち上がる。

そうして煙が天へと昇りつめると、まるでシャボン玉に閉じ込めていたかのように一気に煙が霧となり広がり始める。

 

 

 

2人は見てしまう。

霧が触れた瞬間、建物が植物が水が大気すら凍って行っていることに。

 

 

2人は理解してしまう。

あれに触れてはいけないと。

触れれば最後仮死状態なんて生ぬるい。

瞬時に体表どころか心臓まで凍りかねないモノであると。

それはまさに世界が死んでいた。

無機物も有機物も等しく凍りつきその時を止めている。

 

 

 

「っ、リアスの戦車!」

 

「!、ありがとうございます」

 

 

理解すれば早かった。

ライザーは自身の持つフェニックスの涙を小猫へと投げ当て回復させると、全力で駆けた。彼女も礼を述べるとそれに続くように駆け出していく。

 

 

 

 

「あれは、なんなんですか!」

 

「俺が知るか!わかるのは俺の炎すら瞬時に凍らせられるようなバグ技ってだけだ」

 

「いくらなんでも反則でしょう!!!」

 

「俺にいうな!というか無駄口たたく暇があったら駆けろ!」

 

「もう駆けてますよ!!というかどこに逃げるんですか!逃げ場なんてあるんですか!!」

 

「ことここに至ればできることは王への特攻だけだ。恐らくそこにあの黒猫や他の眷属もいるはずだ」

 

「詰んでるじゃないですか!」

 

「そんなことはわかっとるわ!」

 

 

まるでコントのようなやり取りをしながら2人はかける。

敵の王(八幡)が居るであろう位置へ向かって最短で最速で一直線に。

その速度故に霧とはかなりの距離を取れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、会長俺は置いて行ってください!このままじゃ会長まで!」

 

「駄目です、眷属を置いてなんていけません。何より彼らに対抗するには貴方の力が必要です!」

 

「っでもこのままじゃ本当に」

 

 

 

不幸なことに霧の発生源に比較的近かったソーナと匙は霧にジリジリと迫られていた。

 

負傷している匙を持ちながら移動するソーナだが、霧の方が僅かに早い。

 

 

 

「まだ、フェニックスに塔城達が残ってます。ここで俺のせいで落ちるよりもそちらに合流した方が遥かにいいです」

 

待機室にいる時から感じていた、自分達以上の強者の名を上げながら匙は懇願する。

自分を置いて行ってくれと。

 

 

「ですが!」

 

それでも、とソーナは言い淀む。

頭では理解している。匙を連れて逃げ切るのは現実的ではないことなど。

それでも彼女は知っている。

あの霧の恐ろしさを。

それ故において行けなかった

例えグレイフィア様の判定の元死にはしないとわかっていても。

あの霧に触れることがどれ程危険かということに。

 

 

「最後まで足を引っ張ってすみません。でも、最後の最後に一矢報いて下さい。まだゲームは終わってないんで」

 

 

刹那自分の身体にかかる負荷が消えた。

 

 

「っ匙!!」

 

彼自身がソーナの腕から抜けだしたのだ。

 

その行為に目を見開きながら戻ろうとするがすぐそばまで来た霧と匙の言葉に阻まれる。

 

 

「あとはお願いします」

 

 

 

 

 

 

『シトリー様の兵士1名リタイア』

 

 

匙の姿は消え、リタイアのアナウンスが流れるが彼女は見てしまった。

 

 

匙が転送される刹那、氷ついていた姿を。

 

 

 

 

「っやりすぎですよ。シノンさん!」

 

意図は理解はできる。

実に有効な手段だ。

自分達がここからの行動を試されているのも十全にわかっている。

 

 

だからこそ、彼女は向かう。

眷属達の思いを背負って。

 

王としての責務を果たすために。

この試練にも乗り越えてみせようと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、来たようじゃの」

 

 

語尾に音符がつきそうなほど軽い言葉が飛ばされる。飛ばした本人は実に愉快そうに笑っているが、受け取った者達にはそんな余裕はなかった。

 

 

「退いてください」

「そこを通してもらうぞ」

 

後方には迫りつつある死があるのだ。

一刻でも早く行かねばならないのだ。

 

 

「かー、焦るでないわ。よいか、物事とはじっくりゆっくりと考えてからうご…っと危ないのぉ!いきなり何をするんじゃ!」

 

「全く危うげなく避けておいてよく言う」

「当たってください」

 

そんな彼らはのらりくらりとしたマギルゥに対して不意を突くもやすやすと避けられてしまう。

 

 

 

「ん?おやおや、他の団体様もご到着のようじゃな」

 

 

その言葉通り2人が警戒しながらも後ろへ視線を向ければ見知った面々がやってきた。

 

 

「小猫!無事でよかったわ!それにライザー?!!」

 

途中で合流をしたのかリアス達のそばにはソーナやサイラオーグが立っている。

 

しかし

 

「およ?お主はよくまぁその怪我で立って居れるの。阿伏兎のやつは余程楽しんだとみれる」

 

サイラオーグの傷を見て同僚の名を羨ましそうに呟くがそんな彼女に対して

 

「余裕ね。1人でこの人数を?」

 

どこにそんな余裕があるのか

 

こんな状態でもそんな問いかけを出すグレモリー。

その問いにマギルゥは不敵に笑った。

 

 

 

「勿論わし1人で十分なんじゃが、あいにくとこれまで何もしていなかったんでの。わしら2人が相手じゃよ」

 

腕を組みながら見下すようにこちらを見るマギルゥだが、刹那大地が凍りついた。

 

 

その光景に彼女達に悪寒が走るが、霧とは違い自分達が凍ることはない。

 

しかし白い氷の粒子が流れるようにマギルゥの側へと寄って行けば、その隣で渦を巻き始める。

 

 

パキリパキリと音を立てながら粒子は集って行き人型を形成し始めれば、彼女達の知る人物へと変わっていく。

 

その光景を彼女達は目を見開きながら言葉を失った。

 

 

 

 

「ふぅ。間に合ったわね。思いのほか小猫達が早かったからもう始まってるかと思ったわ」

 

 

「よく言うわ。先に始めていればおんしは怒るじゃろうに」

 

 

氷の粒子から元の姿へと戻ったシノンの軽口にマギルゥは苦笑いしながら応える。

 

 

 

「さて、始めましょうか?」

 

 

周囲の凍りついた光景を作った少女(シノン)

腹黒い魔法使い(マギルゥ)

 

 

生き残った若手連合の前には絶望が立ちはだかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回!
レーティングゲーム最終と観戦者視点、終了後の話を少し盛り込んでレーティングゲーム編は終了っす

じっくり書いて欲しい場面

  • コント面
  • 戦闘面
  • シリアス面
  • 質より更新速度
  • どうでもいい

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