魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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久しぶりの投稿。短めです
復帰用の慣らし。

内容は閑話な感じ。
今回は前半。
次回後半は力入れます。


前夜祭【前半】

 

 

 

 

豪華絢爛とはまさにこのこと。

匠によって装飾されたであろうシャンデリアは会場を明るく照らし、飾られる絵画は芸術に疎いものでさえ一度は足を止めるだろう。

 

会場の至る所で待機している者たちは髪型も服装もピシッと決め込まれており、立ち振る舞いは一流のそれであるとわかる。

 

出されている料理は庶民から見れば驚愕の一言であり、食して見ればそれは至福へと変わっていく。まさに目で楽しみ、味わうといっても過言ではないだろう。

 

 

『・・・』

 

そんなパーティー会場に場違いな様子で佇むものが数名。

 

方や男性は紅髪の主人の横で、方や女性は同僚に囲まれながら固まっていた。

 

 

「おいおい、いつまで固まってんだよ?」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

「…あ、わりぃ……」

 

そんな固まってる女性、ゼノヴィアの緊張を解こうと軽く肩を叩いた阿伏兎だったが、その瞬間あげられる声にならない悲鳴に忘れていたとばかりに謝罪を口にした。

 

ゼノヴィア・クァルタ

八幡眷属一同の特訓(デスマーチ)を乗り越えるも、過去にも未来にも、これ以上はないだろうと言うほどの痛みに襲われていた。

 

それを見たフリード・セルゼン(過去同じ体験をした者)は言った。

白昼夢(デイドリーム)悪夢(デイドリーム)。経験値やダメージが現実にフルバックするあれは、まさしく鬼畜の所業である…………と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、よく生きてた、ね」

 

もきゅもきゅと口に料理を運びながら痙攣するゼノヴィアを見ていたユウはポツリとそんな言葉を漏らした。

 

「……何度か手放しそうになったがね」

 

なにを、とは誰も聞けなかった。

否、聞く必要がなかったと言っていいだろう。ほとんどの新規加入者はこれを通ってきている。というか、冥界にいる眷属はほぼ毎日白昼夢(デイドリーム)内での戦闘訓練をしているのだから今更だろう。

 

「ま、あくまでレーティングゲームに出ても恥ずかしくないレベルだけどね」

 

「……辛口……もきゅもきゅ」

 

「恋、頬につけてるわよ」

 

「ん…….シノン……ありがと」

 

そんな彼女の言葉もリタによる辛口で両断されてしまう、が男性陣では、

 

「(リタの奴は相変わずだな)」

「(そう言ってやんな、女ってのは繊細なんだ。男の手にゃぁ余るもんなんだよ)」

「もきゅもきゅ、(メガドライブ、くらいが、ちょうどいいん、だっけ?)」

 

と慣れた対応である。

というか普段の八幡眷属の光景であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(相変わらずつまらない。権力だの、血統だの。擦り寄ってくる輩は限りを知らずってこと?掌返しの早いことで)」

 

一方壁に背をつけ周囲を見回していたクロメは会場の状況を冷静に分析していた。

 

パーティー会場にそぐわない、団欒としている眷属達とは対照的に八幡は儀礼的な挨拶回りをしていた。その横にヴィザ翁とユウキを供にして。

 

そして幼いながらも、そういった黒い感情には目敏い彼女は自身の主人が挨拶する相手がどのように主人を見ているか察していた。

 

 

「ほんにどーでもいいの」

 

呟かれたその言葉にスッと主人から発生源へと視線を移せばそこにはパーティー会場には似合わない、相変わらずの格好をしたマギルゥが腕を組みながら主人達を、正確には主人たちの相手を見ていた。

その瞳は暗く、光が宿っていない。

無関心という言葉が正しいだろう。

 

 

「不機嫌だね?」

 

「それはお主もじゃろうて。そもそも儀礼的なモノに何の意味がある?セラフォルーの女王という立場こそあれど、あのような輩ども、本来なら構う必要とてないじゃろう」

 

 

それに

 

 

「どーでもいいんじゃよ。あそこにいる奴らは八幡を見ているようで見ておらん。八幡を通してヴィザやニオ、セラフォルーを見ておるだけじゃ」

 

絶やしたくなる……

 

言葉にこそ出なかったが、その瞳にはその言葉がありありと浮かんでいる。

 

そしてそれはマギルゥだけではない。クロメ自身も感じていることだ。

 

他の眷属とてそれは知っているし、八幡自身もそれを知っている。

知っている上で無視しているのだ。

いちいち構うだけでも無駄であると。

それは理解できても納得はできない。

 

クロメはそう感じている。

マギルゥはそれ以上黒く感じているようだが。その心内を知っているのは彼女自身と八幡くらいだろう。

 

視線をマギルゥから八幡へと移した彼女はただ主人の背中を見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です」

「おつかれー」

 

「ああ」

 

手すりに腰をかけ、ベランダから外の風を浴びる自身の主人に2人は声をかければ、やる気のなさげな声がかえってくる。

 

 

「いやー、バレバレだよねぇ」

 

「そうだな」

 

挨拶回りで回った相手のことを思い出しながら、あははははと笑うユウキの言葉に同意しながら、八幡はヴィザから手渡されたグラスをあおり、視線を外へと移した。

 

 

「こういうのはやっぱりなれねぇな。ヴィザが後ろにいたからまだ良かったが」

 

「私がいたことで余計に気を使わせてしまったようですが…」

「いなければ余計面倒くさくなりそうだよねぇ」

 

 

そう言って2人は主人と同じく外へと視線を向けた。

 

 

【早い話がニオ達に口添えしろってことだからね。】

【あんな奴ら解体(バラ)せばいいのよ。】

 

一方うちにいる吸血鬼2人も不機嫌この上なかった。

 

『明日暴れる(休む)か』

 

八幡を除く関係者が心を揃えた。

新人達からすれば飛んだとばっちりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日…か」

 

拳を握った男性が1人静かに滾っていた。

彼は理解している。

彼らの強さを、理不尽さを。

新しく入った眷属も見かけた。

しかし、1ヶ月近く前の話だ。

それだけの時間があれば、実力なんて測れない。ましてやかの王の女王だ。

 

成長力など自分が想像できる範囲ではないだろう。だが、だからこそ……

 

 

「滾るというものだ」

 

ゴォッと炎をなびかせながら不死鳥は握りこぶしを開き視線をテーブルへと移す。

そこにある紙はニオ様へと提出した今回のレーティングゲームの参加メンバーの表である。

新人達の名前とそれぞれの眷属の名前が書かれる中1人異彩を放つ欄がある。

 

 

ライザー・フェニックス

眷属不参加

 

 

ただ1人。

眷属を伴わない参戦を希望した。

提出をした時、受け取ったニオは笑っていたが、ライザー本人は真面目そのものである。

 

 

 

「勝てぬとも挑ませてもらうぞ。鬼呪龍神皇!」

 

 

 

 

 

 






作者が皆を代表して言おう。

「なんでこうなった?!!」

このライザー誰??!!?!?

次回。あの姉現る!


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