魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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あけましておめでとうございます
(ものすごく今更).

今年の第一弾更新となります。

今年一年で何話出せるのか、或いは最終話まで行くのかわかりませんが見てくださる方々、温かく見守っていただけると幸いです。

では今年の第一弾更新どぞどぞ、
尚原作と異なる点が今後多く出てくるのでご了承ください



【狂人の壁】と【仙狼の霊薬】

 

 

その者狂人である。

 

苛烈な年少期を過ごした少年の心は荒んでいた。眼に映る者は全て敵である。

その日その日を生きるため、なりを潜め、人を殺し、その血肉すら自らの糧へと変えてきた。

 

そんな少年は青年へ変わるかどうかという頃、その先の人生を変える出会いを果たした。

 

それこそが未来、彼の主となる存在である。

さして自分とは変わらぬ年の子が、自分以上の力と、自分以上の濁った眼を持っていた。

にもかかわらず、その者の眼には光があったのだ。不思議だった。

ただ、ただ、第一印象はそれである。

 

濁りきった瞳の奥に宿る光、それが彼を動かし、未来を決めた最大の要因だった。

 

 

その後青年は、天使陣営のエクソシストとして名を挙げることとなる。

しかし、名を挙げた彼はそれから数年後はぐれとなり、教会をあとにした。

それでも、そんなことをしていたにもかかわらず、彼は今も生きている。狂気的な笑い声をあげながら。

 

それはひとえに、彼の強さゆえである。

人の身でありながら、あらゆるクズ悪魔を倒し、あらゆる天界からの刺客を退けてきた。

 

悪魔となりさらに上がったその実力は普段の彼の周囲によって埋もれがちである。眷属内ではそういうキャラ故に軽視されがちであるが忘れるなかれ。

 

彼は遊びながら、ふざけながら、上級悪魔であるカテレア・レヴィアタンを無傷で圧倒していたということを。

 

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃ、おいおい、どうしたよ?その程度かゼノたん。そんなんじゃ草が生えちまうぜ」wwwww

 

そういう青年は、フリードはおおよそ人に見せられないような狂気的な笑いを見せている。その足元にいる倒れ伏しているゼノヴィアに対して。

 

「っぐ……こんなに……っがぁ!?」

 

所々から流血しながら目の前のフリードを睨む彼女は立ち上がろうとすれば、蹴りをその身に叩き込まれ吹き飛ばされていった。

 

「ッゴホ、…はぁ、はぁ」

 

なんとか受け身をとった彼女はその勢いを利用し立ち上がるが、その姿はボロボロである。対するフリードは所々服が切れてはいるものの、その身に刃が届いた形跡はない。

 

 

「たりねぇ、たりねぇ。そんなんじゃ俺っちは倒せねぇぜゼノたん」

 

そう言って片手に持つ銃で肩をトントンと叩く。一見隙だらけである。しかし、明確な一撃は未だいれられていない。

 

「意外か?俺っちに一撃すら入らないのが?」

 

彼女の考えを読みとったのか彼はさらにその笑みを深めた。

 

「舐めてたんだろ?普段のリタにやられてる俺が、シノンの姉御に遊ばれてる俺が、そういう立ち位置にいる俺なら倒せると。そう思ってたんだろ?」

 

そういう彼から狂気的な笑みが消えていった。

 

「あめぇよ。あめぇんだよ!そういう表面しか見ないとこも、こっちを殺そうとする気概も、勝利に対する渇望も!」

 

そこにいたのは1人の戦士である。

 

「俺は!俺たちは!旦那の家族であるとともに旦那の手足だ!旦那を守る盾であり、仇なすものと戦う剣だ!その俺たちが、その筆頭となる眷属達が弱いわけがねぇだろうが!」

 

普段の彼とはまるで違うそれに呆然とゼノヴィアは彼を見つめる。

眼に宿るのは強い意志。

そこに普段のふざけたものは一切混じっていなかった。

 

「来いよゼノヴィア!俺を倒すってノルマで鍛えられるのは腕っ節だけじゃねぇ。心の強さ、想いの強さを徹底的に鍛えてやる!」

 

それは彼だからこそ出た言葉。

眷属内において様々な勢力の元に間者として紛れ、その度にその勢力から逃げてきたからこそ、それでもなお主の為に動いていた彼だからこその言葉だった。

 

「うぉぉぉおおおおおお!!!」

 

その言葉に呼応するように彼女は再び走り出す。呆然としていたが、持ち直し剣を取る。じわり、と聖なる輝きを放っていたデュランダルに黒い気配が現れ始めれば、先の打ち合いとはまるで別格の威力を放ち始めた。

 

ギャリンギャリンと金属同士が激しく触れ合う音が鳴り響き、周囲に火花が散っていく。

 

力ではゼノヴィアに分がある。

しかし、速度ではフリードに分があった。

 

互いが互いの得意な分野に相手を引きずり込もうと動き出す。先ほどまでと同じ流れである。しかし、先程はついていけなかったゼノヴィアがフリードの速度に徐々にだが付いて行き始めていた。

 

緩急を使いゼノヴィアを翻弄していたフリードの剣を彼女は捉え始める。

 

それに驚いたのは他でもない打ち込んでいたフリードである。

 

(やれやれ、相変わらず嫌だねぇ、天然の天才型ってやつは)

 

心中で悪態をつきながらフリードは次の手を考えていく。

彼は彼女のような天然の天才でない。

彼の強さの秘訣はその人生における数多の経験と積み重ねてきた修練にある。

それを戦闘の中で積み重ねた手札を切っているのだ。

しかし、ゼノヴィアは違う。

成長しているのだ。この戦闘の中で。

それは稀に見る天然の天才型。

戦いの中で新しい力を、技を、戦法を編み出し、それを瞬時に使っていく。

眷属内で言えばユウキや恋に近い存在である。それは堅実に修練を積むフリードにとっては天敵の部類に入る。

 

 

(っち、どこまで上がるか読めねぇ)

 

堅実故に相手の動きを読み、堅実故に相手の弱点を突いていく。普段おちゃらけ、ふざけているキャラとは裏腹に戦闘での根幹に堅実さを持つ彼にとって戦闘中に相手の強さが激しく変わるなど厄介以外の何者でもない。

 

(これが阿伏兎やユウキなら楽しいっていうところだろうがな)

 

ふと、同僚の考えが頭によぎるがそれを振り払う。

結果の見えない勝負ではふざけない。

 

それが彼の信条とするところだ。

勝てるとわかればとことんふざけるが、そうでなければどこまでも真面目に。

それが彼の強さの一面でもある。

頭が硬いわけでもなく、柔らかすぎるわけでもない。

それ故に不測の事態でも瞬時に行動できる。

それ故に彼は今まで幾度となく生き延びてきたのだ。

 

 

(負けれねぇ!)

 

自分が負けるまでこの戦いは続くがそれでも彼は微塵も負ける気は無かった。

 

 

 

「そぉぉおおらぁぁああああ!」

 

 

剣戟の合間に銃弾を撃ち込み始める。

ここからが彼の本領である。

神器を使用不可であろうともその力は最上級悪魔にすら引けは取らないのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ代わり修練堂では……

 

 

「にゃ、にゃああああああ」

 

尻尾と猫耳を生やした1匹の猫娘が生まれていた。その顔は真っ赤になっており、甘えるように八幡にその身を擦り付けている。その横では彼女を撫でる八幡とユウが嘆息を吐くという珍妙な光景が広がり、2人してやり方を間違えたかな、とやや後悔の念が生まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 

 

搭城小猫はずっと悩んでいた。

自分だけが八幡と繋がりが薄いことに。

他の面々である彼の眷属はもちろんのこと、昔からの付き合いである会長は彼と確固たる繋がりがあった。それが羨ましくもあり、悩ましくもあった。

それをさらに助長させたのが彼の女王、ゼノヴィアである。

 

自分よりも付き合いは短いのにずっと彼の側に彼女はいた。

彼や彼の関係者に良くしてもらっていた。

 

それが堪らなく、羨ましかった。

 

そして怖かったのだ。

彼女の成長が。

彼女の成長が伸びていくたびに、その分自分と彼らとの関係もまた遠ざかっていくようで。

 

駒王協定の際自分はどうだった?

 

敵に捕まっていた。

しかしゼノヴィアはどうだろうか?

 

彼女は他の眷属と共に見事に禍の団を殲滅してみせた。

 

その頃からだろうか。

力を求め始めたのは。

 

だが、その時はまだ仙術を学ぼうとは思っていなかった。当然だ。リタが、八幡がいたとはいえ小猫にとってそれはトラウマであるのだから。

 

 

だが、その考えを打ち砕いたのがタンニーンとゼノヴィアとの戦いである。

あの戦いにおいて、おそらく小猫が最も衝撃を受けていただろう。

 

こんなにも遠くなっていたのかと。

 

今の自分がタンニーンに傷を負わせられただろうか?

否。絶対に負わせることなどできはしない。

 

だが、彼女は。

数ヶ月前まで自分と大差なかったはずの彼女はそれを成し得たのだ。

そして、彼女を囲うように集った主やその眷属達を見た時、小猫の中で決意は決まった。

 

おいていかれたくないと。

この先も共に歩みたいと。

自分もあの場にいたいと。

 

 

故に彼女は今回の修行期間で八幡に頼んだ。

自身に仙術を教えて欲しい……と

 

 

 

 

 

その結果彼ら2人が持って来たのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マ、マタタビ……ですか?」

 

猫に、特に猫妖怪に絶対渡してはいけないものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、単なるマタタビ、違う」

 

顔を引きつらせながら声を出した小猫の言葉を訂正するようにユウが持って来た壺をポンポンと叩きながら続ける。

 

「これ、仙狼に伝わる仙術修行の際に使う霊薬、通称"魔堕々尾(マタタビ)"」

 

なにその名前、と小猫は後ずさりしてしまう。

 

「仙術、一番怖いの、負の気に呑まれること。でも、この魔堕々尾(マタタビ)飲めば、大丈夫。先にこれに、呑まれてる、から」

 

どんな荒療法だと心の中で叫んだ小猫は悪くないだろう。しかしそんな小猫も

 

「これ、動物系の力を持ってるなら、誰でも有効。仙狼族の、みんな、これで10の時には、みんな、仙術使えるように、なる」

 

その荒療法とは裏腹の効果に目を見開く。

 

「仙狼の里に、伝わる、霊薬。だから、本当は、あまり使わないけど、今回は、小猫の、ため、だから」

 

ケモノ仲間だし。

 

と、付け加えるように呟いたユウを見た後思わず八幡の方にも視線を移せば、コクリと彼も頷いている。

 

彼らなりに小猫に対する優しさがそこにはあった。

 

 

「取り敢えず、これ、少し飲んでみる。飲んだ量に、応じて、無意識下に、空気中の気を、取り込むから、最初は、飲むだけで、やることない。まず、慣れから」

 

 

完璧なプランである。

小猫自身、まさかそんな便利アイテムがあるとは思っていなかっただろう。

 

 

これならできる。

そう思い決意を更に深めた小猫だが、ユウがその手元の瓶の蓋を開けた瞬間。

 

彼女の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

そして現在……

 

「にゃ、にゃああああああ」

 

「うん、最初は、こうなる」

 

「先に言っておいてくれユウ」

 

 

一匹の発情猫が出来上がった。

ただ、その身に僅かながらだが、仙術の気を内包していたことに気がついた八幡は、ただただ、苦笑いするしかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか?

個人的に何故か最終話だけはこういう形で締める!
というのが完璧に決まってしまった今日この頃ですw

その最終話を今年中にお届けできるのかどうか
わかりませんが更新頑張ります!w


次回もよろしくなのです!ノシ



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