(´・∀・`)……できた。
とりあえず八幡の領地に到着した。
さぁ、どうぞどうぞ。
パタリと自身の身体をベットへと投げ出せば自然と身体の力が抜けていった。
まるで自分の身体が自分のものでないような感覚。ただ単に完全な脱力をしているだけなのだが、そんな風に感じれてしまう。
《まぁ、あんたは昔阿朱羅丸に身体を取られてた時もあったからその感覚と完全脱力の感覚が似ているんでしょ?》
《むー、確かに昔はやってたけど、今はもうやってないよ!》
そうして瞼を閉じ、この何処と無く心地良い感覚に浸っているとクルルと阿朱羅丸が話しかけてくる。そういえば、今日はあまり話をしていなかったな。
《まぁ、話せるような感じじゃなかったからね》
《そうね。今日はお疲れ様》
そういって2人の労いの声を聞きながら瞼を開けば、天井から降り注ぐ灯の優しい光が視界に広がる。
「本当に疲れたな」
ポツリと声が漏れ出てくる。
リタと小猫の再会
タンニーンとゼノヴィアの戦い
恋とはぐれ悪魔の乱入
温泉での新たな黒歴史
そして予想外すぎるミリキャス
ここ最近でも最も濃い1日だったと断言できた。身体こそさほど疲れていないものの精神的な疲労がピークに来ていた。
特に最後のミリキャスで残りのMPをごっそり持っていかれた感じである。
あの後、俺が悪魔になってからの軽い流れや、俺たちが領内で行なっていること、更には俺でなく阿朱羅丸がかつて起こした伝説まで聞かれて来た俺は社交儀礼よろしくと言った感じで淡々と応えていった。
そんな俺の応えにもミリキャスは終始目を光らせ、挙げ句の果てにその後の食卓でヴェネラナさんやグレモリー卿にまで興奮した様子で話すほどご満悦だったようだ。
その時のグレモリー卿やヴェネラナさんは笑いながらよかったなと言っていたのがせめてもの救いだった。
いや、本当に。他の貴族ならこんな風にはいかない。他の貴族達からのヘイトはすごいから。メイン盾はれるくらい……
そんな心労たまる時間を過ごした俺は食後真っ先に部屋へと帰って来た。
帰る前にグレモリー卿達からは娘の婚姻の時はありがとうと礼は貰っているので、即部屋へ向かってもモーマンタイなのである。
そして現在。
1日を振り返ると疲れを思い出してしまい、開いた瞼を再び閉じるのであった………
「動けねぇ……」
目が覚めれば付いていたはずの灯りが夕焼けのような薄暗い灯へと変わっており、何よりも身体が動けない状態になっていた。とはいえ感覚的にそこまで長く寝ていないはずである。
疲れていた俺に気遣ってか珍しく阿朱羅丸やクルルは俺の夢には出て来ていなかったなぁなどと思いながら周囲を確認すれば動かない理由が直ぐに解けた。
「ん……にぃ……」
「んん……おにぃちゃん…」
「すぅ……すぅ……」
「んん……むにゃ……」
「すー……すー……」
「くぅ……くぅ…」
「んん…………」
「………ん………」
眷属や小猫が人の身体をホールドしていた。
いやおいお前ら、このベットのサイズでこの人数いるのはおかしいだろ……
はぁ、とため息を漏らしながらも気配を探れば、ベットの真横でベットを背もたれに眠る阿伏兎やフリードの気配も感じれた。
お前ら、用意された自分の部屋で眠れや…
ってか風邪引くぞ……
思わず突っ込む俺の言葉に応えるものはいない。当然だ。みんな寝ているのだから。
ホールドされている腕をなんとか起こさずに外し腕を解放されたところでふと気がつく。
「んん……んんん……ん……」
右隣で俺の右腕をホールドしていたゼノヴィアがうなされていることに。
「うう……ブレス………あああ……」
あれだけあった日なのに阿朱羅丸に修行でもつけてもらっているのかと思ったが、それは彼女のうなされている言葉から否定される。阿朱羅丸がブレスを使うなんてことはほとんどない。ならばあり得るとすれば今日のタンニーンとの戦闘に関連することだろうか。
うなされている彼女をみながらそんなことを考察しているとふと彼女の瞳から雫が垂れ始める。
「わた……しは………まって……みんな……」
その言葉を聞いた瞬間、俺は自然と解放された手を彼女の頭へと置きゆっくりと撫でた。優しく、赤子を触るかのように、ゆっくり、ゆっくりと自身の指を青髪の合間に通していく。
不安だったのだろう。
自身の立場が。
他人からどう思われているのかが。
俺自身もかつてはそうだった。
阿朱羅丸やクルルのおかげでだいぶ落ち着いたとはいえ、それでもまだ夢に出てくるほど彼女は悩んでいたのだ。それに気付きながらも、早急に手を打つことができなかったのは俺としても歯がゆかった。
何よりも、俺自身も苦しかった。
それでも、彼女は進んだのだ。
進み自ら道を切り開いてみせた。
そんな彼女は、あの時の彼女は、誰よりも輝いていたと断言できる。
通していく手が次第にただ撫でるだけからゆっくりと彼女を包み込むような魔力を帯びた撫で方へと変わっていく。
そして薄い魔力の幕が彼女を包み込むと、先ほどまでの苦しみから解放されたように、彼女の表情に笑みが浮かび始める。
これもまた鬼呪龍神皇として得た力の一つ。夢魔の血を得た際に夢に干渉できるようになったのである。自分に今できるのはこれだけ、ゼノヴィアに彼女が望むような幸せな夢を見させることだけだった。
はぁ、と再び息を吐くと共に彼女の頭から手を引いていく。
が、不意にその手を彼女に掴まれた。
ドキッとしながら彼女へと視線を戻せば
「えへへへへ……八幡………」
もうキャラ崩壊とか言えないほど顔をにやけさせながら眠るゼノヴィアが俺の手を自身の頬へと擦り寄せていた。
「っ!!?」
思わず顔だけでもそらした俺だが手から感じる感覚のせいで今見た彼女の顔が背けてもなお思い浮かんでくる。
そんな俺の気持ちなど知らず寝ている彼女はなおも頬ずりをし続けて来ていた。
「本当に……心臓に悪いな……」
自身の体温が上がるのを感じながら俺は目を瞑った。
───────────────────
「……ちまん。起きなさい、八幡!」
ボォーとした意識の中、自身を呼ぶ声が聞こえ徐々に視界がクリアになっていくにつれてその声は大きく聞こえ始めた。
「おはよ……おやすみシノン」
「二度寝しない!」
「ぴゃぁ!?」
朝の挨拶を済ませ再び夢の世界へと旅立とうとしていた俺の首元に突如キンキンに冷えた冷気が入り込み思わず変な声を上げながら飛び起きてしまった。
「まったく……ほら阿伏兎!フリードあんたらもさっさと起きなさい!」
ふぉぉおおお!?
ぬにぁぁああ!?
何やら向こうでも俺と同じような現象が起きている。さすがオカン。慣れた様子で全員を起こしていっている。フリードは掛け布団を握りしめて抵抗しているけども……
クイクイ
シノンたちのことを見ながらそんなことを思っていると不意に袖を引っ張られた。
「おにぃちゃん……」
見れば櫛を持ちながら上目遣いで恋がこちらを見ている。
………ぐはぁ!?
八幡の80000のダメージ。
やったね。クリティカルだ。
《ハチ………》
《はぁ、あんたは……》
なにやらうちの吸血鬼姉妹が呆れているような気がしたが気にしない。気にしたら負けだ。
「おー、こいこい」
「♪♪♪」
持っていた櫛を受け取り彼女を膝の上へと乗せ、紅蓮の髪を櫛でといていく。
サラサラとした髪は櫛でつかえることはなく整っていき……
ピョン!
アホ毛が元気を取り戻したかのように立ち上がれば、あっという間にピッカピカのいつものヘアスタイルへと変わった。
「ほれ、終わったぞ」
「ん……」
返事をする恋は何処か名残惜しそうに立ち上がると数歩移動した場所で座り、こちらを見てくる。
そうして入れ替わるように膝の上へと着地して来たユウの髪を俺はといていった。
「ほれ、できたぞ」
「ん、にぃ、ありがと」
ぴょこんと出した獣耳を動かしながらユウが膝から降りると俺も立ち上がり軽く伸びをする。
「やぁ、おはよう八幡」
「ん、もう大丈夫なのか?」
「ああ、疲れも取れたしそれに……いい夢を観れたおかげかスッキリしてるよ」
「よかったな」
そんな俺にゼノヴィアが挨拶をしてくる。その顔には夜に見た色は無い。解消出来たようでなによりだ。
「今日はうちに帰るけど、あんま気張るなよ」
「ああ、わかってるとも」
そういってポンと彼女の肩を叩き、未だに断固として起きることを拒み続けているフリードの元へと向かう。
「いーやーだぁぁぁあああ」
「お前さんも粘るねぃ。いい加減諦めろってんだ」
「阿伏兎の言う通りだ、さっさと起きろ」
シノンからの眠気覚ましにも必死に抵抗し、掛け布団を断固として離そうとしないフリードに呆れながら俺や阿伏兎も声をかける。あたりを見回せばリタはなにやらイジっており小猫はその様子を食い入るように見ていた。クロメに関してはフリードの抵抗する様を冷たい視線で見ているし、ユウキはその様子を見ながら苦笑いしている。
「……起きろ」
「あ、はい……」
刹那、部屋が絶対零度まで一気に室温が下がったのでは無いかと思える程冷たい声が呟かれる。
見ればパキパキと足元を僅かに凍らせているシノンがいる。絶対零度とまではいかなくとも室温が下がったのはあながち間違いではなかった。
その様子を見たからか先ほどまで抵抗していたフリードは自身の意見を180°変えてみせ布団から飛び出して来て……
「……遅いわよ」
「はい……本当にすみません姉御。この通りですお許しください」
土下座である。
そりゃもう見事なまでな土下座。
洗練されたかのようにも見えるそれは元日本人の俺から見ても美しいものがあった。
「ここが自宅ならなにも言わないわ、けど此処はグレモリー邸なの。この後予定も入ってるの。だから手間取らせないでくれるかしらだいたい……」
「それくらいにしてやんな。さっさといかねぇとグレモリー達にどやされる」
「……わかったわ……」
そんな彼に阿伏兎が助け舟を出せばようやく下がった部屋の温度が戻っていくように感じた。
「……シ、シノンさんはあんなにこ、怖いのか?」
「ん、シノネェ怒らせると怖い。魔王も裸足で逃げ出す」
「ユーウなにか言ったかしら??」
「……」フルフル
部屋の端ではゼノヴィアとユウがヒソヒソと話しており、その声を拾ったシノンの笑顔に高速で首を振るユウがいた。
───────────────────
「そんで、なんでお前らまで?」
朝食をグレモリー邸で済ませ、いざ領へと出発しようとした矢先グレモリーたちが門の前で待ち構えていた。その手には昨日とは違うバックが握られている。
なに?どこかに旅行でもいくのか?
そうか、なら良い旅行をな。
「馬鹿、現実見なさい。付いてくる気満々でしょ明らかに」
えー、なんで俺の心の声に反応するんですかね?リタさん。
プライバシーって知ってます?重要なことですよ?
「あんたに必要なの?」
あ、いつものパターンですね、はい。
もはや慣れた眷属の読心術に諦めながらグレモリー達へと向きなおり
「いや、お前らなんで付いて来ようとしてんだよ?」
「いいじゃない。あなたの領地見てみたいのよ。私は知らなかったけど、結構有名みたいだし」
疑問をぶつければ、それがなにか?とばかりに返してくる。
「はぁ……別にいいが馬車とかないぞ?」
「え!?ねぇのか!!?」
「ないわ」
「ないわよ」
「ないね」
「ないよ」
「……」
「ないみたいだぞ」
「ないな」
「ないぞ」
「ない」
俺の言葉に驚きの声をあげるイッセーだが、それに反応するように眷属一同が俺に同調した。
「あー、列車でいくとか?」
「行かないな」
そうか!とばかりにイッセーが再び声をあげるがそれを俺はバッサリと切り捨てた。
「列車でいけないのかしら?」
そんな俺たちに対し彼女自身も予想外だったのかやや汗をかきながらグレモリーが訊ねてくる。
「いけないこともないけど、今日切符を取ってないもの」
「切符?」
応えたシノンの言葉に再び疑問の声があがる。まぁ、自家用列車があれば関係ないと思っているのだろう。しかし、それは甘い。
「ええ、うちの領地……というよりはもう都市といったほうがいいわね。人が来すぎて大変だから1日にこれる人数を制限しているから、列車で来ようとしたら半年待ちくらいになるわよ?」
『は!?』
その言葉にグレモリー眷属一同が固まった。
最近お前ら固まりすぎじゃね?
「だから行くなら走って行くか飛んでくかのどちらかだ」
「え、えっとここからあなたの領地は……」
「こことシトリー領くらいの距離があるな」
「………」
その言葉にグレモリーは白くなり始める。まぁ、こいつらにその距離を移動しろってのがキツイか……
「……先輩……なんとかなりませんか?」
そんな中小猫がこちらへと歩み寄り人の袖を引きながら頼み込んできた。
「……まぁ、なんとかなるっちゃなるが…」
そう応えればグレモリーに色が戻って行く。
「ならお願いするわ!」
「お願いします」
「お願いしますわ」
「お、お願いですぅ」
「頼む!」
「えっと……よろしくね」
「よろしくです」
はぁ、とため息をつきながら俺は片手を横に出す。
正直これは嫌いだ。これを通るの自体はいいんだが、あいつが作ったこれを通るのと違い、これを自分で作り出すのは好きではない。なんというか、すごく酔うのだ。通った後気持ち悪くなるし、だから本当は走って行きたかったんだけどな……
ぶぅん、と黒い穴ができると同時に船酔いしたかのような気分の悪さに襲われた。
「……いくぞ」
そういって自分が率先して入って行き、俺の後ろに他の面々は続いていった。
昨今、年間観光者数が数千万人にまで登った領地があった。そこは悪魔やドラゴン、妖怪といった多種多様な種族が暮らしている冥界でも珍しい都市である。
冥界のほとんどの領地では悪魔のみが生活しており、それも一部で多くが何も手を施していない無法地帯である。そんな領地がほとんどである中その領地はまさに異例中の異例と言えよう。いや、もはやそれは領地ではなく都市と呼んだほうが良いのかもしれない。
転生悪魔が主流となる中そんな都市があれば上流貴族達の格好の的になるのではと思うかもしれないが決してそんなことはない。街に敷かれた警備は些細な諍いにも目を光らせ、また領民達や領主達との間でも信頼関係が強いせいか過去幾度かそのような事態が起きた時にも逆にそのような輩を撃退し、二度とできないように反撃までした始末である。
冥界随一の安全な都市。
そして、冥界随一の観光名所でもあるのがこの都市である。領主達の手により改造に改造を重ねた都市は何処か御伽噺の世界のような雰囲気を醸し出し、更には都市に入る前に見えるその風景は多くのものを魅了させた。
人は……んん。
その都市を知る悪魔やドラゴン、妖怪達はその地をこう呼ぶ。
幻想都市ナザリック
と。
「な、な、な、なんじゃこりぁぁぁあああああああああああああああああああ!!?」
気分が大変優れない中、隣にいるイッセーがかつてないほどの声をあげた。
うるせぇよ。てめぇの顔に向けて吐くぞ…
未だ船酔い感覚が続く身体に鞭を打ち立ち上がれば自身の故郷とも呼べる都市が目に入る。側ではグレモリー眷属達やゼノヴィアが口をポカンと開けながらナザリックを見ていた。
俺がワープで来たのはナザリックから少し離れた場所にある丘である。ここはよくユウや恋と昼寝をするのに訪れるのだが、ここからはナザリックを一望することができた。
まず最初に目に入るのは何と言っても
悪魔やドラゴンなどの飛べる種族はそのまま飛んで行き、そうでない種族は従業員に声をかけることによりそこまで運んでもらうシステムである。
作った理由は一つ。
恋とユウが某天空の城を見て作りたいと言ったのがきっかけである。
ちなみにバ○スといっても落ちない。
落ちたら領民への被害半端ないしな。
落ちなかった光景を見てユウと恋がひっそりと「おちない……」「鯖、よくたえる」などと言っていたが気にしては負けだろう……
ってか落とす気だったのかよ。
次に目に入るのは都市の中心に位置する
元は阿朱羅丸が持っていたモノであり、それをかつて俺に憑依した阿朱羅丸が勝手に隠し場所から持って来たのだ。
ちなみに名は"宝樹アダム"らしい。
……名前からして持って来ちゃいけなそうなモノだったが聞かなかったことにしたのは懐かしい思い出である……
そしてそれらを見た後に目にとどまるは都市の外壁だろう。もはや芸術品とまで言っても良いような作りである。都市を囲うように建てられている外壁はこの都市の名前の由来となった某大墳墓のそれと似ていた。違うのはそれよりも更に巨大だという点だ。
ちなみにこの外壁。
発案者は俺であり、この外壁を思いついた際眷属一同から俺の癖に良いセンスと言われたのだが、実際に考えたのはクルルである。
そして最後に目に入ってくるのがそんな都市を飛び交う多種多様な種族達、現在主に飛んでいるのはうちのペットであるドラゴンや鳥達なのだが、それ以外にも多くのもの達が都市の周辺を飛び交っている。そしてそれは都市中央の宝樹アダムの根から溢れ出るライトブルーの光と葉から溢れ出るライトグリーンの光。この2つの薄っすらとした光と空中の建物と相まってまさにこの都市の由来である幻想的な風景をさらに引き立てていた。
これこそが幻想都市ナザリック。
ちなみに名前は阿朱羅丸がティン!と来たからこの名前にしたとか……よくわからんが。
そんな都市を目の当たりにしたからかグレモリー眷属一同は先ほどからミリも動いていない。本当に石像になったからのよう固まったままである。
「ゼノヴィア?大丈夫?」
「……っは!?こ、これが八幡の領地なのか!?」
「ん、まぁそうだな。うちは基本領地を全部有効活用しようって考えでやってるから気がついたらこんだけでかくなってた」
あとは家族間でのフザケで開発してたらこんな風になっちまったんだが……
「す、すごいな。聞いてはいたが……これは想像以上だ!!!!」
固まりから解けたゼノヴィアはその瞳をキラキラと輝かせながら都市を見つめる。
その瞳……できればやめて……昨日のミリキャスを思い出す。
「……っと、さっさと行くぞ」
気分の悪さからだいたい復活した俺はそう言って都市の方へと歩いて行く。それにつられるようにようやく現実へと戻って来たグレモリー達がその後に続いていった。
「なぁ、なんであっちの大門から入らないんだ?」
都市の間近まで迫った中大門から逸れた場所に向かう俺たちに対しイッセーがおもむろに疑問の声をあげた。
「忘れたか、グレモリー領でのあの騒ぎ」
「あ……」
「うちの領民ならすぐに収まるが観光客が近くに寄って来たらめんどくさいだろう」
「なるほど」
先日のあの様子を思い出したのかイッセーも苦笑いしながら納得している。
グレモリーや姫島先輩達は歩きながら塀の作りを興味深そうに見ている。
「はぁ、ついたぞ」
大門から離れた場所にある認識阻害のかかった塀をすり抜け都市内部に入り、都市の端にある倉庫の中を抜けていきようやく出口のドアの前まで来ると一息つく。
「この先が都市内部か!」
「まぁ、実際はすでに都市内部なんだけどね」
「倉庫の中だからね」
そういうと俺と眷属達は魔法陣からフードを取り出しそれをかぶる。
「それも変装ですか?」
「まぁ、家に着くまでのな」
その様子を見た小猫が首を傾げてきた。
「んじゃ、行くぞー。パパッと家に帰るぞ」
そういってドアを開け放った。
【領主様おかえりなさいませ!!!!!】
瞬間、グレモリーの時が可愛いと思えてしまうほどの大音量の歓声が俺たちを迎えた。
『は?』
俺や眷属一同呆然である。
いや、マジで。なんでバレてるし。
というか、なんで領民達が待ち構えているのだ?この抜け道は俺たちしか使えないし、そもそも俺たちしか知らないはずである。
なのにどうして……と大歓声の中思考を巡らせているとその原因がわかった。
というよりも原因が見えてきた。
「ほぉーれ、儂のゆうた通りじゃろ?我らが領主様のお帰りじゃ♪さぁさぁ、皆々様盛大な拍手でお出迎えじゃ」
あ、参加費はここに入れてのー、と領民から金を取りながら手から鳩やら風船やら手品感覚で出している者がいた。
膝下まで伸びているブロンドの髪をなびかせながら二又のとんがり帽子をかぶった彼女はまるで悪戯が成功したかのようにニヤニヤしながらこちらを眺めている。
ピンクや黒、紫の色合いをふんだんに使ったピエロのような服装と腰回りにつけた大量の本によってできたスカートの様に見えるその姿は一度見ればなかなか忘れることはないだろう。ってか忘れません。そもそも俺の眷属だし。
「久しぶりじゃのぅハチ。元気にしておったかの?」
ニシシシと笑いを浮かべる彼女の足元には独特な帽子をかぶった珍妙な彼女の使い魔がおり、こちらを見ながら申し訳なさそうな顔をしていた。
とりあえずヴィザ、ヴィザは何処だ!?
なんでこんなことになってやがる!!?
「ヴィザならあの坊の特訓中じゃよー」
ガッデム!!!!!!!!
着ていたローブを投げ捨てた瞬間であった。
見てくれてありがとうございます。
新しい眷属出ましたね。
さぁ、当ててみよ!
……でも見てくれている人たち感のいい人多いからまたバレるんだろうな(確信)
まぁ、次回になればわかるのですけどねw
そしてヴィザが特訓している坊も次回出ます。
ではでは感想お待ちしております。