魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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履歴書量産の合間にできた一品。

どうぞご覧くださいませ(*´∀`*)






ファンだそうですよ

 

 

 

 

「ふわぁーーー、あーーねむ」

 

列車に乗り直した後、わりと早めにソーナの領に着き彼女達と別れをすませると、直ぐに眠りについていた俺は、ようやく着いた目的地の駅へと降り立つと盛大なあくびをかく。

 

「んーー」

「んん、にぃ、おはよう」

 

その両サイドでは俺と共に眠りについていた恋とユウが伸びをしながらアホ毛と獣耳をピクピクと動かしていた。

 

 

「行くわよ」

 

魔王領に向かうアザゼルと別れたグレモリーは自身の故郷に来たからか、普段よりも落ち着き余裕を持っており、荷物を片手に駅の外に向けて歩き始めた。その後を俺たちも続いて行く。

 

 

そして、グレモリーやその眷属達が駅から出たその瞬間

 

『リアスお嬢様お帰りなさいませ』

 

外に待機していたメイドを筆頭に、領民達が多数集まっており一斉に声を上げ始める。

 

湧かんばかりの声に臆病なギャスパーやアーシア、そしてこういう場が初めてのゼノヴィアがビクンと身体を揺らした。

 

 

「こ、これって部長の送り迎えですか!?」

 

俺たちの前方ではその視線と声を直に受けたイッセーが目を白黒させながらグレモリーへと問いかける。

 

 

「ええ、そうよ。馬車が用意してあるはずだから早く乗りましょう」

 

そんな視線に慣れているのか、混乱するイッセー達を他所にリアスは荷物をメイドに持たせ、笑顔で馬車へと向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセー達もできる限り粗相はすまいと、彼女の後を追うように歩いて行くがそれは俺達が駅から出た瞬間止まることとなった。

 

 

 

 

 

 

『っえ!?』

 

 

 

 

それは誰の声だったのだろう。少なくとも俺たちが来ることを知っていたメイド達からではないだろう。

 

しかし、その声が上がると共に先ほどまでの割れんばかりの歓声が時が止まったかのように止んでしまった。

 

 

「……え?な、なんだ???」

 

 

いきなりのことに先ほど以上に混乱するイッセーが周囲をぐるぐると見回す。しかし、それはイッセーだけではない。グレモリー眷属や先ほどまで慣れている様子だったグレモリー本人も戸惑っていた。

 

こちらでもゼノヴィアが俺たちと周囲の領民を何度も見ている。

 

そうしてたっぷりと静寂の期間が生まれた後に…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『キャーーーーーー!!』』』

 

悲鳴……ではなく歓声が上がった。

 

それも先ほどのグレモリーとは比にならないくらいの声量でだ。

 

君たちグレモリー領の領民だよね?

 

 

「あれ、八幡様じゃない!!?」

「ええ、八幡様ね!!!!?」

「シノン様もいる!?お姉様!!!」

「ユウ様も!可愛いーー!!!」

「恋様もよ!」

「阿伏兎様もいるわ渋い!!!」

「あそこにいるのはリタ様じゃない!?」

「ユウキ様も!!?どうして!?」

 

「見たことない方もいるけど新しい眷属かしら!?」

「黒髪の女の子も可愛い!」

「青髪の子はクール系ね!!」

「あの白髪の人、かっこよくない??」

 

 

 

 

『『『キァァァアアア』』』

 

 

 

うるさい……

寝起きの俺にこの声量はかなり来るものがあり、隣では聴力の高いユウが自身の獣耳を伏せていた。

 

「こ、これは?」

 

俺の眷属一同が苦笑いする中、この現象について全く心当たりのないゼノヴィアは眷属内で唯一戸惑っていた。

 

 

「ああ、まぁ、少し前のレーティングゲームでな……ちょっとワケあって魔界全土で放送してたんだよ。これはその反動だ」

 

「は、反動????」

 

説明を受けてもまだ理解しきれないゼノヴィアだが、ここにいてはいつまで経っても進まないので後でなと耳打ちすると俺たちは歓声の中を突き進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

俺たち全員が乗れるほどの大型の馬車へと乗り込み、湧き出る歓声から遠ざかって行くと思わず息を漏らしてしまう。

 

「他の領でこれは予想外だったわね」

 

少し離れたところに座るシノンも頬を掻きながら苦笑いし、俺の眷属達は皆それに同意するようにうなづく。

 

 

「あれってどういうことなのかしら?」

 

そんな中状況を飲み込めなかった組の代表としてグレモリーが先ほどの歓声について問いかけてくる。知らないメンバーの視線が俺へと一斉に集まり、俺が口を開くのを待っていた。

 

 

「ああ、あれはな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

……この事のきっかけは今年の初めの頃まで遡る。実のところ、その頃の俺は王としてのレーティングゲームには参加していなかった。

 

加えて言うならばそれまでもセラフォルー様の女王としてたまに出るくらいの出場経験しかない。本当にたまにくらいの頻度でしかレーティングゲームには参加していない。

 

 

当然である。

セラフォルー様は魔王であり、そんなに気軽にレーティングゲームをする事なんてできない。それでもセラフォルー様の僧侶であり、俺の先生でもある2人からレーティングゲームでの立ち回りや戦略などは常に教えてもらっていたし、セラフォルー眷属内でわかれてプチレーティングゲームを非公式に行なっていたこともあった。

 

 

そんな俺が王となり駒を持ってから数年が経ち遂にその機会が訪れた。

 

王として公式で初めて戦ったのだ……

 

 

しかしそれは……

 

 

 

 

 

 

ソーナの婚約をかけたゲームだった。

 

 

貴族において政略結婚は珍しくない。それはグレモリーも経験しているし、当然ソーナもまた同様に政略結婚を組まれていた。

 

当時の彼女はこれまたグレモリー同様にそれを拒み続けていたのだ。しかし、そんな彼女の相手もまたしつこかった。

 

最初はのらりくらりとかわしていたソーナだったが時が経つにつれて次第に迫ってくる相手に嫌気が差し始め……

 

結果、彼女から衝撃の一言が飛び出るまでにことは発展する。

 

 

 

 

『私は強い人としか夫として認めません!少なくとも、お姉様の女王である八幡よりも強い方でないとお断りです!』

 

俺が巻き込まれた瞬間である。

 

 

そしてそこから婚約者の動きは早かった……

 

 

ならば彼に勝てばいいのだろうと婚約者は俺に迫り始め、俺は俺でソーナやセラフォルー様からその婚約者を叩きのめしてくれと頼まれた。

2人の頼みを断れるわけもなく俺はレーティングゲームを行うことになったのだが……

 

 

 

レーティングゲームでやりすぎたのだ。

しかしそれは仕方のないことなのである。

 

それはレーティングゲーム直前。

 

 

これでソーナを俺の妻にできるだの

ピーーーするだの

ピーーー、ピーーー、ピーーー

 

 

などと、俺に高々と宣言してきた相手に対して、俺はキレてしまった。

いや、キャラではないのはわかっていたが、それでも相手のソーナに対する言い分はひどかった。それこそグレモリーの時のライザーが可愛く見えるほどである。

 

 

そうしてキレた俺は、眷属そっちのけで1人で無双した。刀に鬼呪を込め敵をなぎ払うだけでなく、今まで相対してきた相手の能力をフルで使い、挙げ句の果てにはミニサイズのものではあったが災害豪雨を振りまき、敵をフルボッコにした。それはもうボッコボコに。

 

その間、わずか2分である。

 

 

 

当然、反感をかった。

相手は貴族。

俺は転生悪魔。

 

 

ただでさえ元老院の者達は純血を好む傾向が強い。結果が気に食わなかったのか、元老院の爺達は俺を批判し始めた。特に相手家が俺を強くディスり始めたのだ。

 

 

当然その批判される俺の背後には俺の眷属達がいるわけで…………

 

 

今度は眷属達がキレた。

 

 

そこからは互いに売り言葉に買い言葉。

 

気がつけば俺たち対その時いた5人のうち4人の元老院の爺とその眷属とのレーティングゲームが即日開催。

 

普段口だけでろくに動こうとしない元老院の爺達と現役バリバリ且つチート達の集まりである俺たちとの戦い。

 

結果は考えなくてもわかるだろう。

 

 

元老院の爺達はボロクソにされた。

 

 

それも今度は俺が動かず眷属達にである。

 

シノンがゲーム盤全体を凍らし、ユウキとヴィザが敵が認識するよりも早く斬り刻み、ユウとリタが特大の仙術と魔法をゲーム盤に降り注がせ、最後に恋と阿伏兎の一振りで敵が吹き飛んでいった。それのループ。

 

 

数では圧倒的に有利であった元老院達に対しそんなの数などモノともせずに進んで行った俺の眷属達は徹底的に元老院の爺達を叩きのめしたのだ。

 

 

そこまでは、まだ良かったのだ。

いや、よくはないのだろうが、まだ大丈夫な範囲ではあったのだ。

 

これらのゲームは非公式。

非公開のものである。

故にそれで終わり元老院とは仲が悪くなりながらも俺は何事もなく今後も過ごすはずだった。

 

 

 

 

なのに、なのに……

 

 

その時唯一レーティングゲームに参加しなかった元老院のロリ婆と4大魔王様方。

 

 

彼ら、彼女ら5人のせいでそれが大事へと変わってしまった。

 

 

 

 

 

事はその翌日。

レーティングゲームが終わり人間界に帰る前に1週間だけ休暇をと自宅で自堕落に怠惰を貪っていた時である。

 

 

 

 

 

『昨日、4大魔王様立ち会いのもと大規模なレーティングゲームが行われました』

 

 

 

飲んでいたマッカンを吹き出した瞬間であった。非公式のはずのゲームが何故かテレビに出ている。というか、セラフォルー様は知ってたけど、サーゼクス様やアジュカ様、ファルビウム様が見てたのは初耳である。

 

そして、

 

 

『本日はゲストとして4大魔王様の皆様がお越しくださいました』

 

「「「「何やってんだーーーーーッ!」」」」

 

我が家で眷属一同声をあげた瞬間でもあった。

 

 

しかし、その勢いはとどまることを知らず。

 

 

『更には、昨日のレーティングゲームを魔王様方と共に見ていたこのお方にも来ていただきました』

 

 

『ふむ、怠惰を司る悪魔ニオ・ベルフェゴールここに顕現なり!』

 

 

それは元老院が1人。

エメラルドグリーン色の髪をなびかせ、着飾る服は大胆にも腹や脚が大きくはだけている。若く、その姿は見る者を魅了する美しさがあるが……忘れてはいけない、彼女は元老院の一員であると。

つまりリアルロリ婆である。

 

 

そこからは出るわ出るわ俺たちと元老院4人とのレーティングゲームの映像。

更にはあの婚約者との試合まで放送された。

 

魔界全土にである。

 

 

何やっちゃってるのあの人たち?

魔王と元老院ただでさえウマが合わないのに余計こじらせにかかったのか?というかなんでその元老院の奴と仲良さげに出てんだ!?

 

それにファルビウム様は昔の俺と同じで働いたら負け精神なのになんで珍しくやる気出してテレビに出てるんだ!!?やる気出す場所ちげぇだろ!?

 

そしてロリ婆!!!!

テメェが何より、なんで魔王様達と一緒にいやがる!!!!

 

 

 

 

そんな俺の心の声も虚しく……

 

 

俺たちの試合は冥界全ての民達へと広がっていき……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、あの歓声……ということね」

 

 

「まぁ、おおまかにはな」

 

俺が話を終えればグレモリーは頭を痛そうに抑える。

 

圧倒的な数の有利にあった相手を

純潔悪魔である元老院の者達を

 

数で劣る俺らが倒したのだ。

 

当然そんなものを見れば、領民達は彼らに惹きつけられていく。

 

 

でも、でもだグレモリー。

俺も頭を抑えたいのだ。

 

 

正直あのロリ婆……ニオ様が元老院の中でも珍しい親転生悪魔派とは思わなかった。マジで……

 

ちなみに負けた元老院達のその後は知らない。というか行方がわからない。ニオ様曰く、若いうちは知らない方が良いこともあるのだぞ?、だそうだ。何それこわい……

 

ベルフェゴールってかなり権力的にも高いお家だから、余計怖さに箔がつく。

 

 

「なんというか……」

「八幡さん達すごいですぅ……」

「相変わらずだね」

「さすがに凄すぎますわね……」

「先輩達相変わらず鬼畜です……」

「お前……容赦ねぇな……」

 

「そんなことがあったのか……」

 

 

 

この話を知らなかったグレモリー眷属達やゼノヴィアが口々に感想を述べる中俺らは終始苦笑いである。

 

それもそうだ。

あのレーティングゲームのせいか出場した俺たちには領民の間で二つ名の様なものが生まれ密かにその名で呼ばれているというのを俺たちは知っている。その中には正直恥ずかしいようなものもあり、苦笑いしてしまうのは仕方のないことなのである。

 

 

まぁ……アレがあったおかげでというべきかアレのせいでというべきか、元老院であるニオ様との繋がりができたのはありがたかった。あのテレビを許すかどうかは別として。しかし、許すかは置いといて感謝はしている。あの映像はある種俺への手助けだったのだろう。あれのおかげで今まで向けられていたヘイトはいくらか軽減された。貴族達からのヘイトは増えたが………

 

 

 

尚もこの話で盛り上がる俺の眷属達とグレモリー達を他所に俺は外の景色へと視線を逸らしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「で、でっけぇぇぇぇええええ」

目の前の城を見上げながらイッセーが感嘆の声を上げる。

 

 

 

 

 

とまぁ、そんなこんなで漸くグレモリー邸についた。なんか長かったな……体感的に4ヶ月くらいかかった気がする。

 

ん?気のせいか?気のせいだなうん。

 

 

「そうよ。ここが私の家よ」

 

 

その言葉に絶句するイッセー、アーシア、ゼノヴィアの3名。

 

「まぁ、こんなものじゃない?うちだと諸事情でこの2倍くらいの大きさになるけど」

 

 

「「「はぁぁぁあああ!?」」」

 

グレモリー邸を見て呟いたシノンの言葉に3人は思わず声を上げてしまう。アーシア。お前そんな声出すんだな……

 

 

「まぁ、うちは人も家族も多いからねぇ」

 

うん。本当に多いんだよな。

ユウキの言葉に俺もうんうんと共感する。

 

使用人にメイドだけでもそこそこいるんだが、それに加えて動物が多い。使い魔が家にいるというのがあるがそれでも多い。それも普通の犬猫からドラゴンまでとピンからキリまでである。

 

まぁ、一番の原因は恋がしょっちゅう拾ってくるからなのだが。

 

その度にシノンやヴィザが誰かの使い魔ではないかとか、誰かの間者ではないかと魔法を使い検査しているのはうちでは見慣れた光景であった。

 

 

そんなことを知らない3人……というかグレモリーの眷属達も口を開けっぱなしにしてしまっている。

 

 

「入らなくていいのか?」

 

そんな俺の言葉に現実へと戻った一行はグレモリー邸のドアを開け放った。

 

 

「おかえりなさいませお嬢様」

 

 

まず目に入ってきたのは駅でも見たようなメイド達とその先頭に立つグレイフィアである。今日はグレモリー邸にいるのか。

 

 

「皆様もようこそおいでくださいました。では、ご案内いたします」

 

そういうとグレイフィアは歩き始める。その後ろをついていく俺たち。

 

 

 

「リアスお姉様!!!!!」

 

 

と、そこで俺たちの歩みを止めたのはものすごいスピードで走ってきた紅髮の少年である。

 

少年はその勢いのまま走ってくる。

見た目に反してかなりのスピードだ。

 

キューッと音を立てながらブレーキをかけた少年はちょうどグレモリーの手前で止まると嬉しそうにグレモリーの顔を見上げた。

 

「ミリキャスじゃない。大きくなったわね。でも廊下を走っては駄目じゃない」

 

「あ、うっ……す、すみません。で、でもリアスお姉様に久々に会えて嬉しくなってしまい……それにお姉様は益々美しくなられていたので!」

 

「あらあら、その歳なのに上手ね。さすがにお兄様の子だわ」

 

「はい!」

 

 

「あ、あの……部長……この子は?」

 

その様子にたまらずイッセーが訊くと、リアスはその少年の背を軽く俺たちの方へと押しながら応えた。

 

「この子はミリキャス・グレモリー。お兄様の子供よ。私からすれば甥……ということになるわね」

 

ああ、もちろん俺たちは知ってますよ……会ったことはなかったけども。

 

「ほら、ミリキャス挨拶なさい。この2人が私の新しい眷属よ」

 

そういうとグレモリーはアーシアとイッセーの方へと視線を向けた。

 

 

「初めまして。ミリキャス・グレモリーと申します」

 

「あ、は、初めまして。お、おれ……わ、わたしくはの名前は兵藤一誠とも、もうします」

 

「わわわわわわたしは、アーシア・アルジェントとももももうします」

 

ガチガチだなこいつら……

 

 

「イッセー、アーシア……そんなに固まらなくて大丈夫よ。この子はお兄様の子だけれどグレモリーの人間でもある。お兄様は魔王だけれど、だからと言ってこの子が次期魔王というわけではないわ」

 

ああ、なるほど。だからイッセー達は緊張したのか。相手が魔王の子供って考えれば緊張もするか。

 

「そ、そうなんですか……」

 

「よ、よかったですぅ」

 

 

「あ、それと、お姉様そちらの方々がおっしゃっていたお客様なので………す……か…」

 

 

ふと、こちらに気がついたミリキャスがこちらを見ながらリアスに尋ねるが何やら固まっている。

 

 

「ええ、そうよ。彼がセラフォルー様の女王の……ってミリキャス?」

 

グレモリーもミリキャスが固まっているのに気がついたのか首を傾げながらミリキャスの方を向く。

 

 

「は」

 

「は?」

 

ミリキャスの呟かれた一言を復唱するようにグレモリーも呟く。

 

あ、嫌な予感してきたわこれ……

俺の第六感(アホ毛)がそれを告げている。

 

 

「ははははは、八幡様!!!!????」

 

廊下に響く声。

おおよそ貴族が出すようなものではないそれが廊下を通り越し、城へと響き渡った。

 

「ははは、八幡様が、()()()()()()様がどうして!!?まさか、お姉様がおっしゃっていたお客様って!!?」

 

グフゥ………

 

思わぬところで二つ名が飛んできたことにより心の中でではあるが吐血する。

 

「ち、血染めの鬼神???」

 

「八幡の二つ名だよー。前のレーティングゲームで、敵の返り血を浴びながら相手をなぎ倒していく姿はまさに鬼神。領民達が勝手に考えた二つ名だけど、意外と広まってるんだね」

 

「ああ!絶剣様に氷獄の射手様!?それに小さき獣王様に紅蓮の破壊者様、ああ!深淵の探求者様に災禍の拳王様まで!!!」

 

グフゥ

ゴフゥ

ガフゥ

ゲフゥ

ゴハァ

グバハァ

 

俺に引き続きユウキにシノン、ユウに恋、リタ、阿伏兎の6人が吐血する(心の中で)

 

ユウキはまだマシである。

俺らのは酷い。

領民よ……二つ名とか痛いからやめよう…

 

意外とこういうのが心にくるから。

見ろ。普段動じないユウや恋でも、思うところあるのか吐血している(心の中)

純血悪魔とかはそういうな気にしないみたいだが、元人間視点からいえば、二つ名とかは厨二っぽさが全開である。

 

 

 

そしてミリキャス……影響されんな。

 

 

「え、絶……氷…え?え?」

 

そんなミリキャスの言葉に戸惑っているグレモリーを他所に、ミリキャスは俺たちの前へとくると

 

「みみ、ミリキャス・グレモリーと申します。は、八幡様のことはテレビで拝見させていただきました。あ、あの、よろしければ、さささ、サインください!」

 

 

それはもう大きな声で俺たちに対して腰を90°に曲げて頼み込んだ。

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

「………」キラキラ

 

 

心にわずかにだが傷を負った俺や眷属は今、用意された俺の部屋に集まっていた。

 

そこには俺らだけではなく、先ほど俺たちの心を抉ったミリキャスもいる。

 

故意で抉ったわけでないぶん怒るに怒れない。隣を見れば、回復はしつつも未だダメージの残る眷属達とノーダメージの眷属達がいた。

 

 

あの後、夕飯の時間までは自由行動とのことでそれぞれの部屋に案内されたのだが、ミリキャスがどうしてもとのことで、グレモリーからも頼まれたので俺の部屋に集合した次第である。

 

というか、グレモリーもミリキャスの食いつき具合に若干引いていた気がしなくもない。

 

 

 

「ほれよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

ここにいる全員分。

それこそ、あのレーティングゲームに出ていないゼノヴィア達の分を含め色紙を持ってきたミリキャスに対し、俺たちはアイドルになりきった気持ちでサインを書くと彼にそれを渡した。

 

いや、正直なりきらないとなんで書いてるんだろって悲しくなってくるんだよ……

 

 

「あ、あの!宜しければ皆さまのお話をお聞きしたいのですが!」

 

そんな俺たちの気持ちなど知らず、尚もキラキラと目を輝かせながらミリキャスは俺に詰め寄ってきた。

 

 

「あ、ああ。まぁ……いいぞ。何が聞きたいんだ?」

 

他の奴らにSOS信号を目で送るも全員が視線をそらす。おい、主を助けろよ…こういう時だけ主を主張するなって?馬鹿野郎。こういう時以外でいつ主張するんだ、などとやりとりをするも結局俺が折れる形となりミリキャスの言葉に応えた。

 

 

「あの、お父様から八幡様は鬼呪龍神皇でもあると伺ったのですが、本当でしょうか!?」

 

 

おぃぃぃいいいいい!

 

あのシスコンなにばらしてんだぁぁぁああ!

 

 

心の絶叫である。

いや、まぁあの場で言ったから三大勢力の上層部にバレてるのはわかるよ?うん。

 

でもまだ年端もいかない子供に言うなよ!?

 

 

「あ、ああ。まぁ、そうなる……な」

 

「やっぱりそうなのですね!お母様から鬼呪龍神皇の伝説を数多く聞いていたのですがお聞きしてもよろしいでしょうか!?」

 

 

グレイフィアさんぇ……

 

あの夫婦……

 

 

「別にいいけど……どうして聞きたいんだ?」

 

 

できる限り冷静に。

そう。ステイクールである。

 

こう言う時こそ落ち着いて……

 

「鬼呪龍神皇はあのムゲンにすら並びうる存在だとお伺いしました。それに鬼呪龍神皇が普通の吸血鬼から強くなっていったことも。そのお話が、僕大好きで!なので実際の話をお聞きしたいのです!」

 

「いったいどんな話しやがったぁぁあああ!?」

 

 

無理だった。

 

まるで人間の子供が英雄譚の話に憧れるような、そしてそこに描かれる英雄にあったかのような反応をするミリキャスに対し、俺は思わずこえをあげてしまうのであった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?

今回はオリキャラがやや入りました。

原作を読んでいないのでベルフェゴールが実際に出てきていたらごめんなさいm(__)m


ちなみにこのベルフェゴール、モデルは携帯ゲームアプリ"カコタマ"に出てくるベルフェゴールをモデルにしております。見ていただければ少しはイメージしやすいかと。またニオという名前は適当に持ってきて引っ付けただけなのでそれほど深い意味はありませんのでm(__)m


次回、八幡の領にまでいけたらいいなと思っています。


ではでは感想お待ちしております。


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