魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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お久しぶりです。

長らく待たせた上、今回も割と短めです。

閑話は今回で終了し次回から夏休み編に入りたいと思います。


では短いですがどうぞ。


閑話まとめ回

 

「それが僕たちの出会いだったよねー」

 

あたりが静まり返っている中、ユウキのその言葉が夏の夜風に流されていった。そんなユウキの言葉を八幡は語り合う中でユウキが出した酒を飲みながら、懐かしそうに目を細めた。あまり進んで酒を飲むほうでは無い2人だが、それ故に今この場は彼らにとって酒というアイテムを使うほどのシチュエーションであるともいえるだろう。

 

「まぁその後が大変だったんだけどな」

 

「うっ……」

 

彼のその一言にユウキは何処か申し訳なさげに顔を顰め、そんなユウキの表情に彼は思わずクスクスと笑ってしまう。

 

しかし、ユウキが顔を顰めるのも八幡が思わず笑ってしまうのも仕方のないことなのである。今のユウキは比較的明るく、会ってすぐの相手とも仲良くできるコミュ力の塊のような少女だが、当初は親の死や病気の本当の原因(・・・・・)を知った彼女は、少し前の木場とは比べ物にならないほどの憎悪と復讐心を抱えほとんどの者との交流を拒んでいた。

 

「しっかりと進めるようになったか?」

 

「うん、ハチのおかげでね」

 

残りの酒を流し込み一息ついた後、かつて一度は大きく立ち止まっていた少女は笑顔で答える。彼を呼ぶ名前も八幡からハチへと愛称に変わっていた。

 

かつての病、それを故意にばら撒いた諸悪の根源である悪魔は数年前、八幡とその眷属たちの手によって討伐された。それがきっかけで彼女は再び歩みを進めることができるようになったのだ。

 

「『復讐は決して何も生まない。けれどそれを成さなければ進めない人間はいる。大切なのはその過程で捕らわれず、それを成した先を見据えること』だよね」

 

「……そうだな」

 

ふと呟かれたユウキの一言に先ほどとは変わり八幡は何処か照れくさそうに頬を掻きながらそっぽを向く。それはかつて彼女に彼が投げかけた言葉である。彼はその身の上や経験からそういった数多くの名言ないしは迷言を残している。そういった点では彼は今も昔も黒歴史を作り続けていると言ってよいだろう。

 

その数々に彼の眷属の転生悪魔はもちろん、純血(・・)であるヴィザも救われてきた。

 

「お父さんもお母さんも、そしてお姉ちゃんも復讐なんて望んでなかったと思う。それでも復讐をやったのはほかでもない僕自身のため。その事実から目を背けちゃいけないし、その事実があるからこそ、僕はこの先進んでいける。僕のことを助けてくれたハチのために、僕の背中を押してくれたみんなのために、そして僕自身のために、僕は僕が選んだ道を進む」

 

そういう彼女の瞳に強い意志が宿り、話の途中離された手が再び彼の手を握りしめた。そんな彼女の言葉と行為を彼はまっすぐに受け止めた。

 

「おう」

 

ただの一言。

しかし、その中には確かにユウキのことを理解しているという意思が込められていた。

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ行こうか」

 

それからしばらく、言葉を発するでもなく、ただただ空を眺めていた二人の沈黙を破ったのはユウキの名残惜しそうな一言だった。

 

 

「そうだな」

 

あまり遅いと明日がつらいし、と付け足し立ち上がった彼は自宅へと足を向ける。

 

 

「うん」

 

ありがとう。

 

その後ろを追うように立ち上がった彼女が付け足した一言は、ただ風に流されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side八幡

 

翌朝も夏というにふさわしい日だった。燦々と降り注ぐ日の光に溶ける思いを味合わされながらも俺は夏休み前の休日を過ごしていた。数日後に終業式を控える中、俺が買い出しから帰ってくるとものの見事に家が占領されていた。

 

 

グレモリーの眷属とソーナの眷属に……

 

 

「お前らなんでいるんだよ」

 

「おかえりなさい八幡君。遅かったですね。実は夏休みの予定について話をしているのですが」

 

そういってソーナが説明をし始める。

 

要約すれば、夏に全員冥界に帰るので一緒に帰らないかってことか。

 

ソーナたちと帰るのに別に断る理由もないしいいか、そう思い返事をしようとしたとき、自宅に不法侵入するものの気配を感じ取った。

 

「別に構わねぇぞ。どうせそこのおっさんも一緒に来るんだろ?」

 

そういって俺が不審者(笑)の方に指をさしながら返事をすると全身が一斉にそちらへと視線を移した。

 

「かぁー、なんだなんだお前らは気が付かなかったのか?八幡の眷属は全員気が付いてたのに、まだまだだなぁ」

 

そういって入ってきたアザゼルは笑いながらリアスたちに話しかけるが、笑っていられるのも今のうちである。不法侵入者撃退に定評がある馬鹿、もとい狂人が現在この家に住んでいるのだから。

 

そんなことを思っているとアザゼルの頭上に何やら白い物体が現れた。アザゼルはそれに気が付いていないようだが、突如現れたそれは重力に従い自由落下していき、アザゼルの頭に当たり水のようにはじけた。

 

「うお!?なんだこりゃ?」

 

突然降っていき白い液体に驚くアザゼルだが次の瞬間その姿に明らかな変化が訪れた。

 

そしてその姿に場のほぼ全員が唖然としてしまう。

 

「ンン、ッタク。ナンナンダ……ヨ……」

 

いきなり頭部が濡れたことにより不愉快そうに舌打ちをするアザゼルだが、自身の体の変化に気が付いたのか言葉をとぎらせてしまった。

 

そんなアザゼルの姿にユウキ達は必死に笑いを堪えている。最近慣れてきたのかあのゼノヴィアも一緒になって。

 

「ぐひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」

 

そしてそれを行った当の本人、フリードは腹を抱えながらフローリングを転げまわっている。

 

そう、ゲームのポリゴン体のような姿に変わってしまったアザゼルを見ながら……

 

 

「ナンジャコリャァァァァァァァアアアアアアア⁉⁉⁉⁉」

 

終業式前のとある休みの日。

我が家ではアザゼルの絶叫が木霊した。

 

 

 

 

ちなみに30分後にアザゼルは元の姿にきちんと戻りました。

 

 

 

 

 





次回は9月上旬には投稿したいと考えています。
では。


次回こそ長文で仕上げたい……


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