これから少しの間閑話が続きますのでご了承くださいm(__)m
【閑話】最初の眷属
夏休み。
それは学生にとってまさに夢の時間と言えよう。学校公認のこの長期休暇は学生が自由きままに過ごせる最大の時である。部活に勤しむ者たちはこれを機にと自身の目標に向かってより濃密な時間を過ごそうとする。そうでない者も友人との遊ぶ時間を大切にしたり、恋人との甘い時間を過ごしたり、或いは友人も恋人もいないボッチsは自宅にこもりPCやゲームのデバイスをいじり倒すことだろう。
つまりだ。
何が言いたいかというとだ。
夏休みとは休みなのだから休むものである。
海外のフリーダムな方々だけでなく、日本の立派な社畜の皆様でさえ自分の好きなように時間を費やす時間があるだろう。(たとえ少しであろうと)
つまり、つまりだよ。
「夏休みが始まる前に、既に俺の予定表に休みの文字が無くなっているのは間違っている‼︎」
あぁ……専業主夫になりたい…………
「まぁた始まったわね。あんたのその変な理論」
「おいおい今年もか?お前さんはこの時期になると毎年同じこと言ってねぇか?」
「毎年こんな感じなのかい?」
「にぃヒモがいいの?」
「なら八幡のこと私が養う」
「旦那、なら有給とか獲りゃいいんじゃねぇか?旦那なら溜まってるだろ?」
「ほとんどない。ほとんどセラフォルー様がなにか私事に取り組む度に俺が呼ばれて有給が消えていく。あれは一応休みってことでやってるから。」
「それはもうブラックだろ……」
はぁ、と縁側で溜息を吐きながら空を見上げると夕陽が目に沁みた。手で瞳を少しだけ隠した後視線を庭へと移すと風流のある池と木々が、風に揺れる度に波紋と木々のせせらぎを視覚と聴覚で感じさせた。そこで茶を飲もうものならシノンからジジ臭いと言われそうだが、正直心はもうジジイです。
なんせあの日の会議の後は尋問コースまっしぐらで根掘り葉掘り聞かれた。そして答えざるを得なかった。もともと言おうと思っていたとはいえ、阿朱羅丸のあの技の所為で予想以上に周りの食い付きが強かった。
具体的に言うと1週間ほどそれ関係で寝られなかったくらい。
まず尋問が2日間ノンストップで行われたのだ。無論、尋問の前に学校は元どおりにしておいたが、その所為で俺はずっとオカ研の部室に3大勢力の首脳陣達と共にいた。
そんなことがあれば心労が凄くなるのは想像に難くないが、会議が終わった後は当然眷属が待っていた。そこから通信で冥界にいる眷属達とディスプレイ越しに話し合いが始まり、結果として終わったのが翌日の夜。
しかし、それが終わったからといってそこで全てが終わったわけではない。
その後他のところにも行っている協力者と
そうして全ての説明が終わった時俺は倒れるように眠りにつき起きたのが翌日の夜。いや、寝すぎだろ俺……
次の日に学校に行けばイッセーに何故1週間も学校を休んだんだと聞かれたので過労だと答えるとバツの悪そうな顔で俯いてしまった。
リアス・グレモリーの方はと言えば俺が休んでいる間に、サーゼクス様の計らいにより失われた駒、騎士の駒を補充していた。どうやって補充してきたのかは知らんが……
とはいえ、戦力になっていなかった奴らだがメンバーを2人失ったのはまぁ、少なくない損害だろう。今後の彼女の課題は眷属集めが主になってくるかもしれない。
そんな彼女達をよそに小猫経由で知っていたことだがアザゼルがオカ研の顧問となり学校にも来ていたのだが、正直だる絡みがウザかった。なんならあいつの家に豪雨落とすレベルで。あ、もちろん災害の……
そんなウザ絡みやリアス・グレモリーやその眷属のメンタルケアなど細かいところに気を使っていたからか思いっきり寝た分も無駄になるくらい疲れてしまったわけで………
「いいなぁ、草木や雲は……自由で……」
現在俺は枯れていると言ってもいい状況だ。
『だめだこれ……』
後ろで仲の良い眷属達が俺を見ながら何か言っているが気にしない。気にするほどの心の余裕がなかった。
そんなわけで深夜、眷属達が寝静まったのを確認した後、俺は1人夜道を歩いていた。
マジの1人で。
というのも阿朱羅丸はクルルの説教で多大なダメージを心身共に負った後暫くは動けなくなっていたがそれが治ると共にクルルと共にみんなの夢に駆り出されていた。2人の存在を知り、ゼノヴィアの特訓を知ったシノン達の、特訓をつけてほしいという願いを元に……
というわけで俺は1人だ。
2人の本体は俺の中にあるが2人の意識が彼方に行っているため1人と言っていいだろう。
そんなガチボッチの俺が何故夜道を歩いているかというと例の如くはぐれを狩るため……ではない。
夜風を受けながら歩を進めること数十分。
街のはずれ……駒王町の最端にある高層ビルの前で歩みを止めここにいる俺の
保持している神器が神器なだけにずっと待機してもらっている眷属だったが先の会議で決めた内容があるが故にもう公にしてもいいだろうと今日ここに訪れたのだ。それとある種心労の回復のため。
「閉じ込めてるとは言わんが、こんな所に待機してくれなんて……リアス・グレモリーのギャスパーに対することを偉く言えた身分じゃねぇな」
そんな自分に対する毒を吐きながらビルへと入って行く。こんな毒を彼女が聴けば、"私が望んでやっているから貴方が気にすることではない"とか言いそうだが……
ビルの入り口入り、インターホンで彼女の部屋へと呼び出しを押す。
ガチャっと機械音が聞こえると共に声が聞こえるでもなくドアが速攻で開いた。
無口なところは相変わらずのようだ……
ふっ、と思わず苦笑いをするとドアを抜けエレベーターへと乗り込んでいく。
目指す場所は最上階。
今ビルの最上階の全ての部屋が彼女の家となっているのだからそこ以外行く理由はない。
「あいつらにまだ秘密にしてることがあったなんて言ったらキレられるかな……」
彼女のことを知る眷属は皆が言うところの天才っ子ともう1人の2人だけだ。その2人だけは彼女を知っている。というよりは他の奴らはおそらくあの天才っ子を最初の眷属だと思っている。はずだ……
そんなことを考えているとチンッと目的の階へと到着した音が鳴る。
カツカツと足音を立てながらドアの数歩前まで来るとギギギッとドアが開く。
下でインターホンを押したからくるのは分かっているとして、こうもタイミングがいいとまたしても苦笑いが出てしまう。
そうして俺はドアからぴょんと顔だけ出した少女へと声をかけた。
「久しぶりだな」
「……………」
俺の言葉に対しコクリと頷き返事をした彼女に促され部屋へと入って行く。案内されたリビングにはほとんどと言っていいほど何もなかった。生活に必要とされるもの以外が置いてないのだ。まぁ、それもまた彼女らしいところだが……
「なぁ、なんでその格好なんだ?」
とりあえずそれを突っ込もう。
魔女っ子か?魔女っ子なのか?と言いたくなるような姿を彼女はしているのだから。さすがに帽子はかぶっていないが夏というこの時期を考慮すればそれは見てるだけで暑い格好だ。
「……貴方がくれたものだから」
そんな俺の疑問に何故聞いてくるの?とでも言うように彼女は答えた。
ちくしょう可愛いじゃねぇか……
リビングにある机の前で胡座をかくと瞬時にお茶が出されてきたのでそれをまず一口だけ飲む。シノンに勝るとも劣らない味である。
「…………ここにきたのはそういうこと?」
「ん?」
対面に腰を下ろした彼女が不意に問いかけてきた。
「私はこれについて理解している」
そういうと彼女の目の前に一冊の本が現れる。
鎖が巻かれているそれは本来悪魔が持てるような代物ではない。溢れ出る聖の力がそれを如実に物語っている。しかし、それを彼女は持つことができているのだ。俺同様に自身の身体の情報を操作することによって……
「あの2人の鬼を貴方は公にした。そしてこのタイミングで貴方はここに訪れた。なら来た理由は容易に想像できる」
「…………私の事も公にするつもり」
「しかし、そうすれば天使側が動く」
「だろうな。だからこそ先の会議で取り決めたんだ。"鬼呪龍神皇は3大勢力の最大戦力とし神皇の身内に手を出さない限り3大勢力に対する敵対行動を禁ずる"ってな」
「裏を返せばこれは俺の身内に手を出した場合は敵対行動を起こすってことだ」
「…………そう」
そこまで話すと彼女は一口お茶を飲み次の言葉を続けた。
「貴方は初めからそのつもりだった?」
「さぁな、あいつらが頼むって言って決めたことだ」
「……そう」
「ああ、そうだ」
「………ユニーク」
そこまで言い終えると彼女は立ち上がり此方へと近寄ってくる。そして俺の膝の上へと降り立った。
「……おい?」
「私は貴方に情報収集という面で多大な貢献をした」
「まぁ、そうだな……」
突然変わった話に戸惑いながらも肯定する。
実際こいつのおかげでだいぶ助かっている。ここには何もないが隣の部屋には部屋一面にディスプレイが設置されており、大量の情報をこいつは集めてくれている。
「働いたものに褒美を与えるのは主の役目」
「……それで?」
「私は貴方に対してそれ相応の褒美を受け取る権利が……」
「回りくどい。端的に言うと?」
「撫でることを推奨する」
「初めからそう言え」
回りくどく要求してきた彼女の頭を俺は撫で始めた。ショートカットの短い髪だか、その髪はサラサラとしていて指の間を抜ける感覚は気持ちの良いものだった。
「そろそろいいか?」
「………」
フルフルと首を横に振る彼女が満足したのはそれから30分も経過した時だった。
「なぁ」
「………?」
暫くの間撫でていた手を止め俺はふと彼女へと声をかける。彼女は俺へと視線を向けてくる。
「いろいろ、すまんな。情報収集についてもそうだが、ここに押し入れるような形になっちまって」
「かまわない」
俺の謝罪に彼女はなんとも思っていないように答えてきた。やっぱりそういうかと俺の中で何か悪いような気持ちが増え続ける中彼女は続けて言葉を発する。
「私の立場を私は知っている。貴方がこうするのは当然。またわたし自身この待遇は貴方のわたしを気遣う気持ちと信頼から来ていると思われる。故に謝罪は不要」
「……」
「貴方は数ある駒の中から
「……」
「そしてなによりも……貴方は私に感情を芽生えさせた。だから私は貴方を裏切らない。そして私は貴方が決して裏切らないことを知ってる。それだけで信じる理由は十分」
「そうか……」
「……そう」
彼女の言葉を聞き俺はゆっくりと彼女を抱きしめた。
彼女はただ前に回されたオレの手をギュッと握りしめていた。
「んじゃまた日曜の夜にくるわ」
時間もかなり遅くなった頃名残惜しいが帰宅することにした。
「………」
コクリと彼女は頷く。
彼女の元にはほぼ毎週来れるようにはしている。それが俺のできる唯一の彼女を寂しくさせない方法だからだ。
まぁ、それも近いうち終わりを迎えるだろうが……
「………また……」
ポツリと呟かれたその言葉に俺は笑いながら返した。
「ああ、またな有希」
そう言って俺は家に向かって歩き出す。
終わったばかりだが近いうちにまた世界が荒れることは想像に難くない。それほどの物を長門有希という少女は持っているのだ。
ビルを降りて地上から見上げると強化されている異常な視力が彼女の姿を捉えた。
彼女もこっちがみえているからか軽く手を振っていた。
そんな彼女に手を振り返し俺はその場を離れる。その手に残った彼女に触れた感触が疲れた心を少しだけだが癒してくれた気がした。
「はぁ、もう少し頑張るか」
呟かれた言葉が夜風に流れていく中俺は1人夜道歩いていた。
newキャラ登場(=゚ω゚)
涼宮ハルヒの憂鬱の長門有希さんでした(´・Д・)
感想お待ちしてます(できればいい方で´д` ;)
ではでは