魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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お待たせしました(=゚ω゚)
おそらく今月最後の投稿。


これで会議編終了。
次回は閑話を挟んで冥界編に行きます(`_´)ゞ
そして案の定複数人同時進行はムズイ……
誰かいい書き方を教えてくれよと作者は弱気になってみたり♪

うん……気持ち悪いな。やはりあのキャラはミサカがやるからいいのか……

では本編へどうぞ。





《会議後編》チートな眷属

 

こんなはずではなかった。

白龍皇からもたらされた情報により相手のことを把握していたカテレアたちが立てた計画は完璧なものだと彼女たちは自負していた。

 

魔法使いたちを使い停止世界の邪眼を暴発させ3大勢力の戦力を大幅に削った上で白龍皇に加え、合成獣やオーフィスの蛇による強化で充分制圧できる見積もりだった。その上で噂の女王を不意打ちで殺す。仮にこれらの事が出来なくともそのまま暴発させ続ければ自分達もろとも3大勢力全員を停止させられるため、その後に後詰めの部隊が来ることで完全に勝利できる。

 

その筈だった。

 

 

しかし今その計画は次々に瓦解していく。

 

そのたった1人の女王が企てた策略によって彼女達の勝ち筋は次々に潰されて行ったのだ。

 

ギャスパーの迅速な奪還。

後詰めの事前の処理。

不意打ちすら意味を為さなかった。

 

加えて現在のこの状況にカテレアは酷く焦っていた。自分の魔王の末裔としての血とオーフィスの蛇により得た力に多大な自信を持っている彼女でさえ目の前で起きている事はとても受け入れがたいことだったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ん……シノンの料理の方が美味しい」

 

「弱いねぇ、まぁさっきやった木っ端悪魔よりはマシだが正直2人がかりでやるほどのことじゃない。まぁ退屈しのぎにぁなるか」

 

「ならユウが全部食べていい?」

 

「おぅいいぞ。食い過ぎて腹壊すんじゃねぇぞ?」

 

「ん、大丈夫」

 

そう言って阿伏兎の注意に答えたユウは周りにいる合成獣に向けて腕を振り下ろす。ただ腕を振り下ろしただけ。ただそれだけのことで合成獣たちは吹き飛んでしまう。そうして奇声をあげながら吹き飛んで行った合成獣の一匹の喉元を目掛けてユウは喰らい付く。

 

「ゴジュリ」

 

嫌な音と共に鮮血が彼の可愛らしい顔に飛び散る。そんな血を気にもせず彼はジュルジュルと捕食を続ける。

 

大きかったそれは瞬く間に小さくなっていき全てが彼の胃の中へと消えていった。

 

「つぎ……」

 

捕食を終えた彼が次の獲物へと視線を向けた途端周囲の合成獣達は彼から出た威圧に怯え逃亡を図ろうとする。しかし、彼らがそれをすることは叶わなかった。それを許すほど彼らの目の前にいる存在は甘くない。

 

 

「オォォォォオオオーーーーン」

 

その小さな身体から出るとは思えないほどの咆哮を彼があげると周囲が激しく揺れ逃亡を図ろうとした合成獣達はビクンと体を揺らすと地に伏してしまう。辛うじて立ち上がり尚を逃げようとする数匹には捕食者が更に襲いかかってくる。

 

 

「ガルル‼︎」

 

そう言って跳躍しまず1匹目に踵落としを喰らわす。落とされた合成獣はその圧力に潰され、更にそれで止まらず彼を中心に巨大なクレーターが生まれる。

 

そんなことには光景に目もくれず逃げる残り2匹だが突如現れた炎の壁が行く手を阻んだ。

 

「ん‼︎」

 

そうしてその壁を作った本人は素早く2匹の懐に入ると拳と蹴りで撃ち抜く。その一撃に2匹の身体に大穴が開けられた。

 

 

「ふぅ」

 

 

 

合成獣達が全て動けなくなったのを確認し一息ついたユウは手を合わせ、先ほどの摘み喰いでは発しなかった言葉を発する。

 

 

「いただきます」

 

その一言を最後にユウは次々と合成獣を喰べていく。その様を見て真っ先に言葉を発したのはアーシアだった

 

 

「イッセーさん、私……」

「ア、アーシアは見ないほうがいい」

 

その言葉にイッセーが慌てて動きアーシアの目を押さえた。確かに今の光景は気の弱いアーシアにはとても耐えられるものじゃないだろう。

 

 

「お、おい八幡⁉︎あいつはなにをやってんだ……」

 

堪らずイッセーがユウの主である八幡へと問いかける。ユウのことをあまり知らない他の面々もイッセー同様に俺の方へと視線を移した。

 

 

「ただの食事だよ」

 

「しょ、食事ってだってあいつが食ってるのは「食物連鎖(イーター)」え?」

 

「それがユウの神器だよ。あいつは飯を食えば食うほど強くなる。そしてその食材がより強ければ強いほどそれを食べたユウ自身の力が上がっていくんだよ」

 

 

「そ、そんな神器があるのかよ……」

 

「それじゃあ、彼のあの強さは神器による強化によるものなのかい?」

 

イッセーの問いに答えると次は木場が質問を続けてくる。

 

 

「いんや、違うぞ?」

 

「え?」

 

しかしその問いを彼は否定した。

 

「あれはユウ自身の素の力だ。なんなら駒の性能も使ってねぇよ」

 

『は⁉︎』

 

その言葉に反応したのは彼らだけではなく疲れ切っていたアザゼルとミカエルも反応してしまう。

 

 

「ユウはそもそも悪魔になってなかった頃でも並の悪魔や天使、堕天使を圧倒する力を持っていたからな」

 

 

「そんなことあり得るのかよ……」

 

「あり得るさ」

 

イッセーの言葉に即答し更に続ける。

 

 

「なんたってあいつは今は絶滅したと言ってもいい二大傭兵部族、夜兎族と仙狼族。その二部族のハーフなんだからな」

 

 

「はぁぁぁぁああああ⁉︎」

 

その俺の言葉に一目散にアザゼルが叫んだ。他はミカエル以外頭にハテナマークを浮かべている。

 

 

「冗談じゃねぇぞ⁉︎夜兎と仙狼のハーフだと⁉︎方や異常なまでの身体能力を持つ種族と方や高度な仙術を自由自在に扱う種族じゃねぇか⁉︎ありえねぇだろ⁉︎それにその二部族はもう完全に絶滅したはずじゃ……」

 

「だから、ユウはその生き残りなんだよ。その上仙狼族の長が死ぬ前に抜き取ることで代々継承してきた神器、食物連鎖(イーター)もしっかりその身に宿してるしな。ついでに言えば阿伏兎は純粋な夜兎の生き残りだよ」

 

 

「もう、お前もお前の眷属もなんなんだよ」

 

 

興奮しながら早口に喋っていくアザゼルに八幡は極めて冷静に話していく。一方のアザゼルは彼の最後に加えられたついでの一言にクロメが転生した時同様に頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの‼︎」

 

そんな空気を無視して今まで絶句するだけでずっとミカエルの側に控えていたイリナが声を上げた。

 

「ん?なんだ?」

 

「あの、なんでゼノヴィアはあんなに……」

 

そこまで言うと彼女は言い止め下を向いてしまう。彼女が言っていたゼノヴィアの方角を見るとクロメと2人で魔法使い達を相手にしているのだが、ゼノヴィアの動きが前とは明らかに違っていた。

 

イリナにとって何よりも1番気になることはやはりかつての同僚なのだろう。みんながユウの行動に注目してる中1人ゼノヴィアの方を見ていた。

 

 

 

「別にただ起きている間は俺が、寝てる時は阿朱羅丸が特訓についてただけだよ」

 

イリナの疑問に軽く答えた彼はジッと視線の先にいる彼の女王の成長した姿を見る。

 

「さすが、阿朱羅丸……先見の目じゃ勝てねぇな」

 

「まぁ、色んな奴の血を吸ってるだけあってそういう力も備わったんでしょ?ハチも鬼呪龍神皇といってもあくまであいつの一部だけを取り込んだ形になるから、そりゃ敵わないわよ」

 

ぼそりと漏らした彼の発言を側にいたクルルが拾った。

 

そんな2人の視線の先でゼノヴィアはデュランダルを自在に振り回していた。

 

 

「はぁぁぁああああ‼︎」

 

その動きには一月程前まであった無駄が明らかに消えていた。

 

「へぇ、意外。新しく眷属が入ったとは聞いてたけど現時点ではそんなに強くないって聞いてたのに」

 

その様子を間近で見ていたクロメが動き回りながらゼノヴィアに話しかける。

 

 

「一月前、八幡と阿朱羅丸に言われた。お前のそれは剣の性能に頼って振り下ろすだけのチャンバラだとね。それからずっと八幡に基礎を叩き込まれ、阿朱羅丸とは実践をやり続けていたんだ。それなのに成果が出なくては眷属の名折れだ‼︎」

 

そう言って魔法使いを薙ぎ払うとゼノヴィアは後退しクロメと互いに背をくっつけ合う。

 

 

「いいなぁ、私基本的な剣術はほとんどヴィザ翁に習ってて八幡は偶にアドバイスしてくれただけだから羨ましい」

 

「そうなのか、私もヴィザ翁とは通信では話したが実際には会っていなくてね。是非ヴィザ翁にも剣の指導を頼みたいものだ」

 

「なら今度冥界に行った時みんなで剣術の模擬戦やろうよ」

 

「それはいいアイデアだ、なっと‼︎」

 

 

早くも打ち解け合っている2人は話しながらも攻撃を続ける。そして魔法使いが半分ほど消えた時クロメがゼノヴィアに告げた。

 

 

「ゼノヴィア、何かやろうとしてるのはわかるけど今回は譲ってもらってもいい?」

 

「……そんなにわかりやすかったかい?」

 

「ううん。でも阿朱羅丸や八幡に修行をつけてもらってるならたぶん、もっとすごい手を持ってるんだろうなって思っただけ」

 

「……わかったよ。今回は譲ろう」

 

「ありがと♪」

 

ゼノヴィアの言葉に一言礼を済ますと彼女は剣を強く握り不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「じゃあ行くよ?死者行軍八房」

 

彼女がそう言うと先ほど彼女が切り捨てた魔法使い達が不意に立ち上がりかつての仲間であった者達襲い始めた。

 

 

「っな⁉︎」

 

 

その様子に怯えた魔法使い達はソレに攻撃をするが、焼かれようが切り裂かれようがソレは止まることなく彼らに近づいていき、そうして彼らを襲っていった。

 

 

 

「相変わらずエグい光景ね」

 

「まぁエグいが禁手の方が更にエグいからな」

 

 

その光景を見ながらなんでも無いように八幡とクルルは喋っているが、その後ろにいるイッセー達は先ほど以上に顔を青くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「死者行軍八房。倒した相手を一時的に操る神器。相変わらずの強さだねぇ。まぁ、倒した相手が弱すぎだな。もっと強ければロリっ子も禁手を使ってたかもしれないが」

 

 

「よそ見をするな‼︎」

 

「いやいやいや、おばさん弱すぎよ?」

 

ガキンッと飛ばされてきた魔弾を剣で軽く弾くフリードにカテレアは唇を噛み締める。

 

本当にこんなはずではなかったと……

 

「んじゃまぁ、俺っちもそろそろ真面目にやりますか」

 

そう言うと彼はゴソゴソと懐を探り始める。

 

その間もなくてカテレアは攻撃を続けているが何故かその全てはフリードを避けるように飛んで行った。

 

「お、あったあった」

 

ようやくお目当の物を見つけたのかフリードはその顔をニヤリと歪ませカテレアを見据えると声だかに叫び始めた。

 

 

「さぁ、始めましょうかね‼︎これから始まる俺っちの俺っちによる俺っちのための戦い、名づけてフリード劇場。今から叔母さんをご招待するぜ?」

 

そう言って彼が取り出したのは水風船だった。

 

 

「っこの何処までも巫山戯て……⁉︎」

 

 

その意味不明な言動と取り出したものに怒りを露わにするカテレアだが次の瞬間その顔は驚愕の色に染まった。

 

 

 

「これは⁉︎」

 

その戦いを見ていたサーゼクス達もまた驚きの声を上げる。それもそのはずだ。一瞬にして学園全体に彼の持っていた水風船が何百、何千と浮かんでいるのだから。

 

 

「ひゃひゃひゃ、これが天才っ子が作った俺っち専用の人工神器幼子の悪戯(チャイルドトリック)だよ。ガキの悪戯の怖いところはいつどこでどんな悪戯を仕掛けたかわからないことだ。そしてそれがいつ作動するかもな。この神器はいわば備えあれば憂いなしとでもいうべきものでねぁ。あらかじめ別の場所に仕掛けた悪戯を自由に移動させられるんだよ。例えば今回のこの悪戯は阿伏兎の部屋に仕掛けた水風船トラップをこちらに持ってきただけだしな。」

 

「おいてめぇいつ俺の部屋にそんなもんやりやがった⁉︎」

 

「ひゃひゃひゃ、知ってんだろ。この神器は悪戯してる最中は姿や気配、匂いすら消せるんだよ。相手の意識をそらしてるって言うべきか」

 

 

「そういうことじゃねぇ⁉︎つか何勝手に仕掛けてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ⁉︎」

 

そんな阿伏兎の声が校庭にこだました瞬間水風船が一斉にカテレアに向かっていく。序盤は交わしたり迎撃したりしていたが、そのあまりの数に飲まれ、次第に水風船が当たっていくが問題はその中身だった。

 

ビチャ

「ぐぼっ……⁉︎ゲッホゲホ、な、なんだこれ⁉︎舌が痺れる⁉︎」

 

ビチャ

「い、痛い、は肌が焼ける⁉︎」

 

ビチャ

「臭いぞこれ⁉︎」

 

ビチャ

「っあぁぁぁああああ頭がぁぁぁああ」

 

「ひゃひゃひゃ、いい気味だ‼︎それこれも喰らいやがれぇぇぇええええええ‼︎‼︎」

 

次々とあたり、その中身のものに苦しめられるカテレアにむかい手に持っていた水風船を投擲した。

 

ビチャ

「なんだこれ⁉︎何故服が溶け……」

 

 

「いいね、いいね‼︎やっぱり水を使った攻撃はこれが1ば…ズガガガンッ……え?」

 

 

 

「お前さん、俺にこんなのやろうとしてたのか?」

 

「フリード遊びすぎ……」

 

「あまり、こういう行為は感心しないな」

 

「禁手"ひゃっ……"「まてぇい⁉︎禁手はやめろロリっごぉぉぉぉおおおおお」いい気味」

 

 

カテレアに対しある種セクハラのような攻撃を続けていたフリードは既に戦闘を終えた眷属達により地面にめり込まされた。

 

 

「っくっぞぉ……ごのぉぉおおおお‼︎」

 

未だ苦しむカテレアは溶けた服を抑えながら咆哮する。すると彼女の背後に魔法陣が展開されそこから飛び出てきたものに多くのものが目を丸くした。

 

蒼い鱗に鋭い爪、そして水を纏いながら現れたそれはまさに……

 

「へぇ、リヴァイアサンね……そう言えばレヴィアタンの家系は代々当主になったらリヴァイアサンを調伏するって聞いたことがあるけど、あれって本当だったのね」

 

「まぁ、一部の人間にはレヴィアタンとリヴァイアサンは一緒って見られることもあるからな。しゃーねぇ。あいつらがやったらここら辺吹き飛びかねないし俺が「私が行くわよ?」クルル?」

 

 

「結局誰も敵わないんだから防御の意味ないでしょ?それに私が直々に出るわけじゃないわよ」

 

 

そう言ってクルルは目の前のリヴァイアサンを見据えるとつぶやいた。

 

 

「上位吸血鬼(ヴァンパイア)生成、"ヴコドラク"、"ウピオル"」

 

そう彼女が呟いた瞬間2つの黒い靄が生まれその中から牙を生やした2匹の吸血鬼が現れた。

 

 

「行きなさい」

 

その彼女の言葉に従い知性なきその吸血鬼はリヴァイアサンへと向かって疾走していく。

 

 

 

「グルァァァァアアア‼︎」

 

 

「っぁぁぁああああああ⁉︎」

 

 

しかしそのリヴァイアサンは、咆哮を上げると突如カテレアを食いちぎりその場には彼女の絶叫が響き渡った。

 

 

「おいおい、逆に食われてるじゃねぇか」

 

「ああ。当主になって調伏する。けど彼女は出来てなかったのね……ただ当主ではあったから呼べただけで」

 

「いや、それでセラフォルー様達に勝とうとしてたのかよ」

 

「夢物語もいいとこよね」

 

 

 

「な、なんでお前らはそんな冷静でいられるんだよ⁉︎」

 

いつもと変わりないように話している八幡達にイッセーが堪らず声を上げた。

 

 

「逆に聞くぞ?カテレアは今回のテロを引き起こした上に間接的とはいえグレモリーの眷属を、お前の同僚を殺したんだぞ?そんな相手に何か思うところがあると思うか?」

 

 

「そ、それは……」

 

「覚えとけ。殺す覚悟も殺される覚悟もましてや失う覚悟もないなら力を振るおうとするな」

 

 

そういうと彼はリヴァイアサンの方を見る。そちらでは2匹の吸血鬼がリヴァイアサンを蹂躙していた。リヴァイアサンの水撃を避け、鱗を削り、肉を切り裂く2匹は何処か愉悦に満ちた顔をしていた。

 

 

 

 

「にぃ、あれなに?」

 

「ん?クルルが作った吸血鬼だよ」

 

「作ったぁ⁉︎」

 

「クルルは吸血の始祖だ。今いる吸血鬼の祖先はクルルが作った最上位吸血鬼達が交配して生まれた存在なんだよ」

 

「クルルって阿朱羅丸より強かったりするの?」

 

「んー、まぁ同じくらいの強さなんだが、阿朱羅丸がクルルに勝てたことはないな……」

 

「あの阿朱羅丸が勝てないのか……」

 

「当然俺も勝てねぇしな」

 

「っぁぁぁ……ぞれっでどんなヂード?」

 

「お前大丈夫か?」

 

「げっごうぎづい……」

 

「死ぬなよ?フリード」

 

 

その怪物達の戦いを見ていたユウ達はクルルの作った吸血鬼に興味津々とばかりに八幡に聞いてくる。話を聞いていたクルルは何処か得意げに胸を張っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「っ⁉︎どうして⁉︎」

 

そしてこのテロがそろそろ幕が引きになりそうになり始めた頃その声は響いた。

 

「どうしてもなにも。あんたの魔法じゃ私には傷すらつけられないそれだけよ。たとえ、身体に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しててもね」

 

「っ⁉︎どうしてそれを⁉︎」

 

「そんだけ魔力を使ってれば分かるわよ。あんたからあそこにいるリヴァイアサンと似たような感じが漏れ出てるんだから。まぁ、その因子のおかげでオーフィスの蛇にも耐えられてるみたいだけど、その程度じゃねぇ?」

 

「っ」

 

そのシノンの言葉とともに発せられた威圧に雪ノ下は舌打ちをしながらもすこしだけ後退する。

 

 

「まぁ、慌てないでよ。あっちの戦いが終わるまで大人しくしててくれるとありがたいから」

 

そう言って彼女はこの場における最大の戦いを繰り広げ始めた2人へと視線を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははは♪いいね白龍皇。ハチやクルルに比べたら全然だけど、まぁゼノヴィアやサタンとかに比べたら楽しめる方だよ♪」

 

「っ⁉︎強いね……すごいや。これが鬼呪龍神皇か……世界は広いや」

 

《ヴァーリ気をつけろ‼︎何かくるぞ》

 

「わかってるよ」

 

 

アルビオンの声を受け防御の体制に入るがそれは全く意味をなさなかった。ヴァーリの防御をまるですり抜けるように阿朱羅丸の攻撃はヴァーリの腹部に直撃する。

 

 

「ゴホゴホッ……半減させてるのにこの威力なの⁉︎それにすり抜けてきた⁉︎」

 

「あはははは。昔のハチみたいなこと言うね♪懐かしいなぁ、ハチも昔似たようなこと言ってたね。そのネタが分かった時はチートじゃねぇかって叫んでたし。最近じゃそんな泣き言のようなことを言わなくなってすこしだけ楽しみ減っちゃったけど」チラッ

 

「へぇ……八幡くん泣き言言ってたんだ」チラッ

 

「そうそう。泣きべそかいてた時もあったよ。まぁ、今は今で頼もしいからいいんだけど」チラッ

 

 

 

「ですってよハチ」チラッ

 

 

「お前らなに?俺のこと好きなの?戦闘中にまで俺の精神をガリガリ削ってきて」

 

 

「「大好きだよ(よ)?」」

 

「うーん。嫌いじゃないかな」

 

 

「ああ、そう」

 

そんな彼女達の突然の精神攻撃に八幡はため息を吐く。

 

 

「まぁハチいじりは今度にして……そろそろ幕を引こうかな?」

 

「っ⁉︎そう簡単には終わらないよ⁉︎」

 

そう言った阿朱羅丸の雰囲気の変化を感じてか、ヴァーリはより一層警戒の色を強めた。

 

「まぁ、これは授業料だと思っておきなよ?ついでにハチの件でムカついたから諸共で喰らいなよ‼︎」

 

そう言うと阿朱羅丸は手を掲げた。

それに呼応するように大地が、空間が激しく揺れ始めた。

 

 

「あんの馬鹿⁉︎」

「完全に調子のったわね……」

 

阿朱羅丸がやろうとしていることにいち早く気がついた八幡とクルルは思わず声を上げた。

 

 

「クルル‼︎シノン‼︎ユウ‼︎それにグレイフィアも‼︎俺たちでできる限りの防御を俺らの周囲とこの土地に張れ‼︎‼︎阿伏兎とフリード、ゼノヴィア、クロメは念のためにできる限りの防御を‼︎」

 

 

そう八幡が声を張ると眷属達が一斉に動き出す。疑問はあるだろう。なにが起きてるのか聞きたいだろう。だがその欲求よりも先にある彼らは動いた。自身の想いよりも主人である八幡の言葉に本能が先に従ったのだ。

 

グレイフィアも一瞬だけ間があったが、八幡の言葉に素早く反応したあたり、彼への信頼がうかがえる。

 

 

 

「お、おい⁉︎これはなんなんだよ⁉︎」

「物凄く嫌な予感がするね⁉︎」

「これは……デタラメですね……」

「これって大丈夫なの⁉︎」

 

各首脳陣も驚く中、八幡が周囲の全員や他の天使や堕天使、悪魔達も近くに転移させると同時に防御を張り始める。

 

 

そんな俺の指示と行動を見たからか、或いは自身の本能が告げたのか、さすがのヴァーリも表情を強張らせていた。

 

「ちょっ、ちょっと⁉︎これってかなりやばいんじゃないの⁉︎」

 

《ああ、非常にマズイぞ⁉︎というかこいつはここら一帯を焦土にでもする気か⁉︎》

 

そして2人が焦る中雪ノ下が空を見上げ呟いた

 

「これって……」

 

それを見た彼女も遅れながらヴァーリに近づくと結界を張る。雪ノ下が突然近くに来たことになに?と振り向いたヴァーリだが、雪ノ下の視線を追った結果、視界に入ったその者に目を見開くと慌てて全力で防御に回った。

 

 

 

 

「ほれ、来たぞ‼︎」

 

「なんじゃありぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ⁉︎」

 

 

八幡の声を聞き真っ先に声を上げたのはイッセーだった。いや、寧ろ声を上げれただけ立派と言ってもいいかもしれない。

 

イッセー以外のグレモリー眷属やソーナ達はもはや絶句していたのだから。

 

 

そうして俺たちは全力を持って防御の質を高める。自分だけならば食らってもいいが、あれの余波すら逃さず押さえなければ周囲の被害がでかすぎる。

 

 

「さぁ‼︎喰らいなよ‼︎災害豪雨‼︎」

 

そう言って阿朱羅丸は笑いながら空から落ちてきた巨大な隕石群をヴァーリ達へと軌道修正する。

 

 

 

「あいつは馬鹿なのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ‼︎‼︎‼︎⁇⁇⁇⁇⁇⁇」

 

 

 

隕石群が衝突する直前アザゼルの絶叫が上がったがそれは隕石群の轟音によりかき消されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、一丁上がりってね」

 

 

「「一丁上がりじゃねぇ(ないわよ)⁉︎」」

 

「ゴヘッ⁉︎」

 

 

隕石群が全て落ち終え僅かだが守りきれなかった衝撃の余波が校舎を半壊させ、土地を荒らした。先ほどまで戦っていたヴァーリ達はおろか離れたところで戦っていたリヴァイアサンやヴァンパイア達も消えている。そんな中、それを起こした当の本人は一息つくが、そんな本人を八幡とクルルが全力で地面に叩きつけた。

 

「お前はアホか⁉︎危うく周囲が吹き飛ぶところだったわ‼︎ってかヴァーリのやつが半減させてなかったら校舎は跡形もなく消えてたわ⁉︎」

 

「あなた馬鹿なの⁉︎あんなの撃つ必要なんてなかったでしょ⁉︎地球が壊れるような威力の技を平然と使うなんて⁉︎」

 

「い、いや威力は弱めたよ?」

 

「「どのくらい?」」

 

「え、えっと……神が放つ全力の一撃くらい……」

 

 

「「手加減してねぇだろ(ないでしょ)‼︎」」

 

「ムギュゥ」

 

八幡とクルルの一撃が今度は見事に頭にクリーンヒットすると阿朱羅丸から変な声が漏れると彼女の身体が緑色に光り出し光の粒子となり八幡の中へと戻っていった。

 

 

「良いのが入ったな」

 

「後であっちでもしばいとくわ」

 

「頼む」

 

 

はぁと彼は今日1番の大きなため息を吐き全員がいる方へと視線を移す。その視線の先では多くの者が口をパクパクとしている。眷属やグレイフィアに至っては地面に膝をついていた。

 

しかし、それも当然だ。地球を壊す程の技を校舎が半壊するレベルにまで抑え込んだのだから、八幡やクルルはともかく他の奴らはほぼ魔力切れしているだろう。

 

 

「な、なんつー技使ってくれるのよ⁉︎」

「おいおい、こいつぁ洒落になんねぇだろ」

「ってかよくあれを此処まで抑え込めたな⁉︎」

「にぃ、もうくたくた」

「八幡はなんで平気なの?」

「今のは凄かったな……」

 

そんな膝をつきながら声を上げる眷属の横ではグレイフィアが八幡を睨んできていた。

 

 

「八幡……これでこの前のお嬢様の分の貸しはチャラですよ………」

 

 

「ああ、悪かったな」

 

そう言うと彼女も睨むのをやめる。

 

 

「そ、それよりも白龍皇達は⁉︎」

 

「いやぁ、危なかったよぅ」

 

思い出したようにソーナが声を上げるとそれに応えるように黒い靄からヴァーリと雪ノ下を担いだ男が現れた。

 

「闘戦勝の末裔……美猴か……」

 

「っお、俺っちのこと知ってんのかい?レヴィアタンの女王くん」

 

 

「ああ、お前んとこのジジイに会ったら代わりにぶん殴っといてくれって言われてる」

 

「うへぇ、マジかい。ってかお前さんの今のなんなん?ギリ逃れたからよかったけど余波だけでもヴァーリ達がボロボロよ」

 

 

「ああ、ありがとね美猴くん。おかげで助かったよ」

 

「いいってことよ。それよりもこいつはどうする?」

 

ヴァーリに礼を受け取った悟空はもう片方に担いでいる雪ノ下を見て言った。

 

「ああ、連れて帰るよ。リヴァイアサンの因子と適合できてるから研究材料として連れ帰ってこいって言われてるからね」

 

「だがよ、やっこさんが逃がしてくれるとはとても思えねぇんだが?」

 

そう言うと悟空の先にいるのは八幡の眷属達。

 

しかし、意外なことに彼らに助け舟を渡したのは八幡だった。

 

 

「やめとけ。お前らもう魔力もねぇだろ」

 

 

「私はあるけどなぁ」

 

しかし、その八幡の静止の声に抗うようにセラフォルーが告げた。

 

 

「ハチくんにあんなことしといて逃すわけないでしょ?」

 

「やめてください、セラフォルー様。いくら俺でもユウ達を庇いながらでは勝てる気がしないんで」

 

「何言ってるのハチくん?あんなのに負けるわけ……」

 

「こいつらじゃなくて、こいつらを戦力的に仲間だと思ってる奴の話ですよ」

 

 

そう言って八幡は遥か遠くの上空を見つめる。

 

「ハチくん?」

 

「ああ、やっぱりハチも気がついてたのね。そうね、眷属達がほぼ全員魔力切れの上、阿朱羅丸が寝てるから今やり合うのは得策じゃないわね。まったく阿朱羅丸があんなのやるから様子でも見に来たのかしら?」

 

「さぁな。だがクルルの言う通り今はやり合いたくねぇな」

 

 

「にぃ、誰のこと言ってるの?」

 

「気がついてねぇのか?まぁ魔力切れしてるから仕方ないか。此処からは少し離れたところでこいつらの……禍の団の親玉がこっちの様子見をしてんだよ」

 

 

『なっ⁉︎』

 

 

八幡のその言葉に全員が一斉に彼とクルルの視線を追った。当然、彼らの目では捉えることはできないが、確かに嫌な感じだけは感じ取れる。

 

 

 

「まぁ、何はともあれ逃してくれるならありがてぇよい」

 

 

「1つそこの横のやつが目を覚めたら伝えといてくれねぇか?」

 

逃げられることを確信した悟空は安堵の息を吐くがそんな彼に八幡は話しかける。

 

「なんだい?」

 

「お前がどうなろうが勝手だ、俺を殺しに来ようと好きにすればいい。だが、お前が俺の眷属に……大切な奴らに傷をつけるようなら……」

 

 

そこまで区切ると八幡の纏う雰囲気が変わった。先ほどまでの休んでいるものではなく、殺意と威圧をまるでコートを羽織るように纏いながら彼は言葉を続ける。

 

 

「殺す」

 

その一言は静寂の中校庭にこだました。

声量もいつもと変わらないはずなのに。

此処にいる誰1人としてその言葉を聞き逃す者はいなかった。

 

 

「あ、ああわかったよい……」

 

その言葉に悟空は冷や汗を流しながら黒い靄の中へと沈んでいく。

 

 

「……負けたけど、今度は八幡くんが相手してね」

 

沈む寸前、ヴァーリはその言葉を残した。

 

彼らが消えた後、こちらを見ていた存在が消えたのを確認し終えた八幡は盛大に息を吐きながら尻餅をつく。

 

 

そんな彼の元に身体を引きずりながら近寄って行った彼の眷属達はしばらくの間彼の側に居続けた。

 

 

 

 

 

 

その後校舎を修復し再開された会議では幾つかの決まりができた。

 

 

1つ、3大勢力は今日この時点を持って協力関係を結ぶ。故にこれ以後の許可のない種族間の戦闘を禁ずる。

 

1つ、各勢力の非常時、3大勢力間でその助力をし合うこと。

 

1つ、各勢力の今後については、この後さらに協議を重ね決めていくこと。

 

1つ、鬼呪龍神皇は3大勢力の最大戦力とし神皇の身内に手を出さない限り3大勢力に対する敵対行動を禁ずる。神皇は現在の各勢力に紛れている協力者を各勢力のトップである天使長、堕天使長、魔王に報告すること。

 

1つ、上記の事項のその代償とし3大勢力は基本、鬼呪龍神皇が出す要求を常に受け入れるものとする。

 

 

 

 

 

これを決めた際、特に最後の2つの条項を決める際に大揉めしたのは言うまでもないことだが、天使側、堕天使側は今回の阿朱羅丸の戦いを目の当たりにして其処だけは譲らなかった。

 

それはひとえに決して敵に回したくないという彼らの想いの現れだった。

 

 

 

そして今回、謀反者を出した堕天使側と悪魔側に対しての罰は特に設けられはしなかった。

 

これにはリアス・グレモリーが1番安堵の息を吐いていた。

 

 

 

かくして、第1回3大勢力会議は終幕した。

 

 

 

 

 

 




ふぅ(=゚ω゚)疲れた……


次回閑話です。

感想お待ちしてます。


とりあえず寝よう……ではでは


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