魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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今回も4000字程度。

そろそろ大学が始まるから貯めなくちゃな(^◇^;)


ではとりあえずどうぞ(´・Д・)」





協力者も変わらず主を信頼す

コツコツコツと靴と石畳により響くその音が教会の廃墟にこだましていた。そこには10代前半の少女がフンフーンと鼻歌交じりに座りながらリズミカルに座っている石を蹴っていた。お菓子を食べながら、誰かを待っている彼女の揺れる短髪は黒く、その傍らには日本刀の形をした神器が置かれている。

 

 

「遅いなぁ」

 

そう言いながら彼女はまた1つお菓子を手に取り口に運ぶ。その仕草は子供らしいものの、その瞳には年不相応の実力を垣間見させるほどのものがあった。

 

 

「ひゃひゃひゃ、そりぁあいつは忙しいからなぁ。今度3大勢力会議にも出席しなきゃいけないみてぇだし……なによりここの管理を任されてるクソ悪魔達はそれほど優秀じゃないしな……あ、それよりーーーちゃんそのお菓子を 頂戴♪」

 

そんな彼女の呟きに答えたのは長椅子に座る青年だった。パッと見では何も持っていないように思えるが、よく見ればその服の中には幾つもの武器が隠されている。そしてその立ち振る舞いはやはり強者のものだった。

 

「やだ。これは八幡から貰ったやつ。絶対にあげない」

 

「ケチくせぇな」

 

そんな彼の言葉を少女は強く拒絶した。

 

「おいおい。久々に会ってみりゃお前さんは相変わらずだなぁ……つーか、お前も近いうちにそのクソ悪魔になるんだろうが、このすっとこどっこい。それに嬢ちゃんも菓子ばっか食ってると太るぞ?」

 

そんな2人に呆れながら中年の男性が深いため息を吐く。ハチのやつ早く来てくれ、とぼそりと呟く彼は頭を掻きながら胡座をかいていた。

そんなやる気のなさが滲み出している彼だがその実、この3名の中では頭一つ飛び抜けている実力を持っていた。

 

 

「ひゃひゃひゃ。そりゃそうか……ちっ、どうも長いことこのキャラを続けてたから抜けきれねぇな」

 

 

「ーーーはもともとそんな感じ。むしろそれがノーマル。今でもこっちの仲間かどうか疑わしいくらい」

 

 

「おやおや、ーーーちゃんがそんな風に分析できるほど俺のことを見てくれてたなんて僕ちん感激で涙の海に沈みそうですわ」

 

 

「……そのまま浮かんで来なければいいのに…」

 

 

「なーんでお前さん方は会うと毎回互いを挑発し合うんだよ……」

 

巫山戯て言い合っている2人にめんどくせぇと再度溜息を零しながら中年の男は2人を眺める。当人たちが巫山戯合っているつもりでも、この2人のレベルが本当にお巫山戯を始めればこの教会なんて一瞬で消し飛ぶだろう。

 

 

「ーーーが悪い。いつもこっちに突っかかってくるから」

 

「いやいや、ーーーちゃんが弄りやすいからだよ」

 

「……斬るよ?」

 

「やれるもんならやってみるかい?」

 

互いの瞳から光が消え少女は傍らにあった刀に手を添え、青年は一歩身を引き臨戦態勢に入る。とても知り合い同士に放つものとは思えない殺気を互いに放ちながら睨み合い、少女が刀を抜きかけた瞬間、ようやく待ち人が訪れた。

 

 

「そこまでにしとけ」

 

ただ一言。

その一言で2人から殺気は消え、少女はまるで子犬のようにその人物へと駆け寄り、青年はダンナァと身構えていたのを解いた。

 

「八幡久しぶり‼︎」

 

「おぅ、こうやって会うのは3ヶ月ぶりか」

 

八幡もその飛びついてきた少女を受け入れるとワシャワシャとユウにやるように頭を撫でた。

 

「旦那お疲れさん」

 

「おぅ、ーーーもお疲れ。ってかお前よくあいつから逃げてこれたな。最悪誰かを送ろうかと思ってたんだが……」

 

「天才っ子の人工神器のおかげだっちゃ」

 

「……そんだけ巫山戯られてたら心配もねぇか」

 

 

先ほどまで殺気立っていたとは思えないほどの変わり身の早さを見せた2人に苦笑いしながら最後の中年へと視線を向ける。

 

 

「ようやく来てくれたからハチ……まったくこいつら2人揃える時はヴィザかシノンどちらかを付けろって言ってんだろぉ」

 

「そうしたかったがヴィザは忙しいしな。シノンはこっちに滞在中だからやろうと思えばできるんだろうが……あいつにもいろいろ準備してもらってるからなぁ」

 

「ったく、だからって俺をつけるかねぇ……それよりもその顔の傷どうした?お前さんが傷を負うなんて普通じゃねぇだろ?」

 

「シノンとユウに手痛くやられた……」

 

「お前さん……なにしたんだよ……」

 

「いろいろあったんだよ……」

 

 

はぁ、と八幡が息を吐く。

大丈夫?とばかりに抱きついている少女がこちらを見上げてきたのに大丈夫だと答えると、撫でる手をより気持ちよくなるように動かす。

 

 

 

「相変わらずだねぇ……まぁ、女ってのは手にあまるくらいが丁度いい」

 

「そりぁ、DSくらいですかぁい?」

 

「いんや、メガドライブくらいだ」

 

八幡の傷に呆れながらも話し続ける中年の言葉に青年が質問し、どーでもいい解答をわりかし真剣に彼は答える。

 

 

 

「まぁ、アホ話はその辺にしといて今日呼んだ理由を話すぞ?」

 

 

語り始める2人を現実に戻すべく、八幡は少女の頭から手を離し軽くパンパンと叩くと本題を述べ始めた……

 

 

〜〜〜〜〜

 

〜〜〜〜〜

 

 

「つーわけで頼めるか?」

 

小一時間ほど続いた話に区切りをつけると彼らに確認を取った。

 

「ひゃひゃひゃ。問題なしだぜぇ。ようやくクソめんどくせぇ裏方から表に出れるんだ。寧ろ問題があるわけがねぇ」

 

これまで常に裏方として動いてきた青年はその顔に歓喜を浮かべ両手を広げながら答える。

 

 

「姉が死んで、1人だった私を助けてくれたのは八幡です。なにもなかった私に居場所や家族を与えてくれたのは他でもない八幡なんです。だから八幡が望むなら私はそれを叶えます。ただ粛々と任につくのみ。それが私のやりたいことだから。だから問題ないです」

 

刀を取った少女は固い決意を持って言葉を述べる。

 

 

「俺は別に問題ねぇぞ。今も昔もやるこたぁ変わりない。ほぼ絶滅した種族の生き残りであるはみ出し者の俺の手を、無理矢理引っ張り上げたのはお前さんと同族であるユウだ。ならこの引っ張られた手、命尽きるその時までお前さんらのために使う。戦に生き戦に死ぬ。それが俺たちの種族だよ」

 

そう言う中年の男性は最初と変わらずあっけらかんとしている。しかし、言っていることとは裏腹に決して死ぬ気などない強い光がその瞳にはあった。

 

 

「そうか……ありがとな……お前ら」

 

八幡はそんな自身の眷属達に感謝の念を述べる。

 

「よせやい。感謝なんてされる程でもねぇ。むしろ、してもしきれないのはこっちの方だっての」

 

「ひゃひゃひゃ、そうだぜ旦那。旦那の眷属がどういう集まりか……旦那だってわかってるだろう?」

 

「うん。だから八幡は私達に自信を持って命令すればいい。たとえどんな命令でも……私たちはそれに従う」

 

 

そんな恥ずかしい台詞を平然と言う3人に目頭が熱くなるのを感じながら俺は言う。

 

 

「頼むぞーーー、ーーー、ーーー」

 

「「「了解(あいよ)」」」

 

 

そうして最後の確認を取った後八幡はその場を後にしようとするが、青年に止められる。

 

 

 

「あ、それよりも旦那。ヴァーリはいいのか?」

 

「ああ。ーーーの方から聞いてたがお前も知ってたのか」

 

「まぁな。なんたって俺っちの前でヴァーリを誘ってたしな」

 

「問題ねぇよ。会議には俺とシノン、ユウが出るし、遅れながらだがお前らも来る」

 

「りょーかい。それともう1つ。堕天使側からはーーーちゃんを、元天使側として俺を戻すわけだが……問題にならねぇか?」

 

「まぁ、普通ならなるだろうな。そもそも間者が入ってたなんてなにを言われるかわからない。だが……その間者以上のネタを出せば薄まるだろう?」

 

 

そう言う八幡の顔には黒いものがあった。

 

 

「おいおい。どんなサプライズ用意してんだ?」

 

 

「お前達も知らないようなことだよ」

 

「ひゃひゃひゃ、マジでか。そりぁ会議が楽しみになっちまうなぁ」

 

そう言って彼は笑いながらその場を後にした。

 

 

まぁ、あいつなら笑えるだろうな……他のやつは笑えないようなネタになるだろうが……あいつのぶっ飛んだ感性なら爆笑するだろう。

 

 

そんなことを思いながら八幡は今度こそその場を後にした。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

「それじゃあ、ギャスパーと小猫はここに居てね」

 

会議当日。

オカ研の部室でダンボールに入ったギャスパーとソファに座る小猫にグレモリーが告げた。

 

 

「連れてかないのか?」

 

ギャスパーはここ数日でかなり伸びた。

バロールが力を貸しているからか、感情的になってもそう簡単に暴発はしないようにはなってきている。

 

「ええ。制御できつつはあるけれど、まだ時々暴発することがあるから連れてかない方がいいと思って」

 

そう言う彼女は暗い顔をしてしまう。

まぁ、本音としては眷属として全員連れて行ってやりたいのだろう。数日前俺が少しだけ怒ったのが効いたのか、彼女なりにもう一度ギャスパーとやり直すべく話し合ったらしい。

 

結果としてまぁ、悪くはない方向に行った。

ギャスパーの中の奴のことは知らないが……

 

仲がいい方向に行ったのがあってか……或いは俺やクルル達にあってか……もしくはバロールが起きたからかは定かではないが、ギャスパー自身も変わってきているしな。

 

 

まぁ、問題があるとすれば……

バロールの変わりようだが……

 

 

そんなことを思いながら八幡は疲れた顔になってしまう。

 

あの日……ギャスパーを目覚めさせてから1週間ちょいが経つが、バロールの変わりようが衝撃すぎた。

 

 

昨日会ったのだが……なんというかその俗世に染まってしまった。主にギャスパーのやるパソコンの所為で。暇な時はギャスパーと一緒にニコ◯を徘徊しているとバロールが言った時は俺も阿朱羅丸もクルルも耳を疑った。それに一人称が威厳のありそうだった私からギャスパーと同じボクになってたのも中々衝撃的だったし。

 

一昨日あいつらと夜に小一時間も話してたとはいえ、精神世界を途中強制中断したのだからどれほど衝撃的だったかはわかって貰えるだろう。正直あのバロールは相手にしたくない。なんかすっごい疲れるから……

 

 

 

「にぃ?大丈夫?」

 

「あんた、また目が凄い勢いで腐ってるわよ?」

 

「八幡なにがあったんだ⁉︎」

 

そんな俺を心配して声をかけたのは俺の眷属達だった。

 

 

「ああ、ちょっと疲れてるだけだから心配すんな」

 

そう言って笑うと八幡は会議室へと足を運ぶ。

 

切り替えだ切り替えと自身の思考を整えていく。これから始まるのは大事な会議なのだからと魔王の女王に相応しい佇まいを作っていく。

 

 

「痛⁉︎」

 

バンッとそんな八幡の背を突如強く叩く奴がいた。

 

「シノン?」

 

八幡はその叩いた人物に視線を移す。

 

 

「大丈夫よ。そんな気張らなくても。素のあんたでも充分女王に……私たちの主に相応しいんだから」

 

そう言って彼女は微笑んでくる。

 

「おう……」

 

そんな彼女の気遣いに感謝しながら八幡は前を向く。

 

 

 

 

 

 

 

これから起こる大仕事を前に彼の覚悟は決まっていた。

 

いや、彼だけではない恐らく多くのものがなんらかの覚悟を持ってこの会議に臨むだろう。

 

 

 

ある者は自身のことについての覚悟を。

 

ある者はこれから変わりゆくであろう世界に対しての覚悟を。

 

ある者は何処までも主についていく覚悟を。

 

ある者は自身の理想のための覚悟を。

 

そしてある者は……自身を肯定するため……自分が自分であるが為に行うことの覚悟を決めていた。

 

 

多くの覚悟が交差するまで残り……1時間……

 

 

 

to be continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?感想お待ちしております。

そして次回はようやく会議に入れる。


ではお楽しみに(=゚ω゚)ノ



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