魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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今月ラスト分。

ただ注意として、今回は少し……ちょっと……かなり無理矢理感があるかもしれないです。

それとギャスパー・バロールが結局どんな感じか詳しくはわからなかったので半分オリキャラ化してる様な感じになってると思います。

そして、協力者この話で出せなかった………
でも次回は出しますのでご了承下さい。

いろいろごめんなさい……


では本編へどうぞ……





乗り越える少女

突如起こった爆音と共に先ほどまで俺とギャスパーが立っていた場所を中心に巨大なクレーターが出来上がる。

 

すんでのところでギャスパーを抱えその場を離脱した俺は一定の距離をとり、状況の整理がついていない少女を背後に庇いながらその中心を見る。少し離れたところではクルルもその様子を静観していた。

 

 

《へぇ……見た感じ神性が失われてるのにまだこれだけの力が出せるなんて……さすがといったところかな?》

 

そこでは不敵な笑みを浮かべながら話をしている阿朱羅丸と腕から血を流しながらもその血を舐める肌から何まで黒く染まっているギャスパーが立っていた。

 

 

【……ナゼカオキレタトオモッタラ……ナルホド……キュウケツノシマイドノタチカ……それに………】

 

見た目はギャスパーのそれでも声は幾分も低く、口調も大きく異なるそれは何やら納得したと思うと俺の方を見つめ笑った。

 

 

【オモシロイモノガイタモノダ。ソコニイルノハ……ニンゲンカ?イナ……アクマカ?ソレモイナ……ナニモノデモナイニモカカワラズナニモノニモナレル……スウキナソンザイガイタモノダ………】

 

 

それは愉快げにその笑みを深めた。

その顔は声に似合わずまるで子供が興味を示すかのような何処か無邪気なものだったが、常人ならばその似合わなさに逆に恐怖を抱くだろう。

 

 

《随分と余裕だね?》

 

そんなそれに阿朱羅丸は臨戦態勢に入りながら声をかける。しかし、そんな好戦的な阿朱羅丸とは裏腹にそれは掌を阿朱羅丸に向けて話す。

 

【タタカウリユウガナイ……ホンライナラバ、カンケイナクタタカウトコロダガ、メザメサセテモラッタノダ。ナニヨリモ……オマエタチサンニンハギャスパー・ヴラディニトッテ、トクベツナソンザイダ。ナラバタタカイタクハナイ……カナウトモオモワナイシナ】

 

そう言ってそれら腕を下ろす。

その反応に面白くないとばかりに口を尖らせながらも阿朱羅丸は拳を引いた。

 

 

「え……えっと……」

 

そんな中俺の背後にいるギャスパーは1人訳も分からず混乱していた。

 

 

取り敢えず大きな戦いにならずに済んだことに緊張を僅かに緩め彼女に説明していく。

 

 

「こいつはギャスパー・バロール。お前の停止世界の邪眼に宿る者……いや、その言い方は正確じゃないか……元々こいつは赤ん坊でまだ母親の中にいたギャスパーに宿った魔神バロールの断片化された意識の一部が宿った存在で、むしろ停止世界の邪眼はこいつに引き寄せられた副次的な物なんだよ」

 

「………え?」

 

俺の言葉に彼女は何を言ってるのかわからない……そんな表情になってしまう。

 

 

《つーまーり。ギャスパーの出生時のあの事件の大元はこのバロールってことだよ》

 

俺に続ける様に阿朱羅丸が話すとギャスパーの瞳が揺れた。俺は今にも崩れそうな彼女の身体を支え気を強く持つ様に背を摩る。

 

 

《でも、だからこそ今の会話で聞きたいことができたわ。貴方はギャスパーにとって有害なことをしようとはしていない。にも関わらず、どうしてギャスパー出生時にあんなことを?》

 

 

そして、目の前に立つバロールに吸血の始祖であるクルルが問いかける。如何にクルルと言えど眷属の行動の動機などはわからない。故に今ここで問い正す。あの日何故バロールがあの様なことをしたのか……

 

【フ……ハナシテモイイガ……ソレヨリモマズタダシテオカネバナラナイコトガアル】

 

そう言ってバロールはその場に座す。

 

 

【ヒトツメハ、スデニシュウチノコトヤモシレヌガ、コノミハモウシンセイヲオビテイナイ。ユエニマジンバロールデハナク、コノミハオマエタチノイッタトオリ、ギャスパー・バロールデアルトイウコト】

 

それは予想できていた。

だからこそ俺たちは予めそう呼んだのだ。

 

 

【フタツメハワタシハコレマデズットネムッテイタ。ユエニコイニチカラヲツカウコトハデキナカッタトイウコトダ】

 

 

《それはつまり……》

 

いち早くバロールの言葉に反応し、答えを導き出したのはクルルだった。そして、未だ答えのわからない俺たちに対しバロールはあの日の本当の真実を話す。しかしそれはあまりにも呆気なく呟かれた。

 

 

【タダノフウンナジコサ】

 

『は?』

 

 

その紡がれた言葉にクルルを除いた俺たちに3人は思わず声を漏らした。

 

 

【ギャスパー・ヴラディガウマレタアノヒ……タマタマチカクニイタツェペシュノムスメガ……ムイシキニカノジョノジンギヲハツドウサセ……ワタシヲフカンゼンナガラモオコシタ。ソノケッカ、モレデタチカラニヨッテ…ギャスパー・ヴラディノシンゾクガマキコマレ、シンデイッタ……タダソレダケダ。ワタシガコロソウトオモイ……ヤッタノデハナイ】

 

 

そして今度こそ俺たちは絶句する。

 

狙ってやったわけではない。

目覚めようと目覚めたのではない。

ただ……多くの偶然が重なり……ギャスパーの出生の事件が起きたのだ……

 

だからこそ思わず脱力してしまいそうになるがそれを必死にこらえる……ここで脱離してしまってはそれこそギャスパーが持たない。

そう思ったからだ。

 

 

「っ…………」

 

見ればギャスパーは震えながら自身の唇を噛んでいた。震える身体を必死に抑えようと腕を掴む彼女の瞳の様は目まぐるしく変わっていく。

 

そこには恐怖だけでなく、悔しさや遣る瀬無さといった数多の感情が写っていた。

 

 

「ギャスパー⁉︎」

 

そんな今にも消えてしまいそうなギャスパーの手を上からそっと握り締める。

 

「っあ…………」

 

俺に握られ一瞬ビクンと身体を揺らした彼女だがその口から一言漏れると、まるでその漏れた言葉に先程迄の感情が乗り移り出て行ってしまったかの様に震えが止まっていく。

 

 

そんな手を握られたまま俺の顔を見てくる彼女の顔は、蒼白く変化していたのが嘘の様に治り仄かに紅色に染まっていた。

 

すると先程とは何処か違う様に震え始めたと思うと彼女は握られているその手に自らの額を置く。

 

ほんの数秒のはずが数十分にも感じられたのはここが精神世界だからではないだろう。

 

 

数秒の後顔を上げた彼女は何かを決意したかの様に頷くとバロールに向き直り、声をかける。

 

 

「バロールさんは……僕の身体を乗っ取ろうとしたりしますか?」

 

その声は弱々しくも確かに呟かれた。

 

【ソモソモ、スデニワタシハオマエダ。チカラヲカスコトハアレドキガイヲクワエルキハナイ】

 

 

「バロールさんは……始祖様達をどう思ってますか?」

 

その意のわからぬ質問に怪訝そうに眉を潜ませる俺たちを他所にバロールは答える。

 

 

【ギャスパー・ヴラディガオモッテイルノトオナジダ。ワタシハオマエナノダカラナ】

 

 

そして次に紡がれた言葉で俺たちは理解する。本来ならば俺たちがバロールに頼もうとしていたことを彼女本人が頼もうとしていることに。

 

 

「バロールさんは……僕が神器を扱う時の補佐などはできますか?」

 

 

 

【ギャスパー・ヴラディガソレヲノゾムノナラバヤブサカデハナイ】

 

 

そして彼女は大きな一歩を踏み出した。

 

 

「なら……僕に協力してください。僕は……臆病です。1人じゃあなにも出来やしない。でも……それでも始祖様達は僕を信じてくれた。僕を認めてくれた。だから僕はそれに応えたい。始祖様達に守られるだけじゃなくて、始祖様達と一緒に戦えるくらい強くなりたい‼︎だから……僕は望みます。バロールさんの事はまだ怖いです……でも、バロールさんがいなければ始祖様達に会うことはなかった。だからこそバロールさんに対して感謝の気持ちもあります。始祖様達に会えたことは僕にとってこの上ない幸運だから……そしてバロールさんは僕よりもこの力を使いなれているから……だから……力を貸してください」

 

 

【カマワナイガ、イチゾクノオオクヲコロシタワタシヲオマエハシンジラレルノカ?】

 

 

「は……はい……その……怖いですけど……悪い人ではないと……思うので……」

 

 

勇気を振り絞り発したのか、震えを止めてる様に見えて彼女は拳だけ震えていた。

 

その拳を俺は再び握る。

今度は強く。

それに応える様にギャスパーも強く握ってくる。

 

 

 

 

【フ、フフフ、ハハハハハ……ワタシガワルイヒトデハナイ……カ……ソンナコトヲイウノハオマエクライダロウサ。マァイイサ。チョクチョクハテツダッテヤルヨ】

 

 

その言葉を最後にバロールは黒い霧となって霧散した。その瞬間ギャスパーの身体が僅かに黒くぼやけた。

 

 

《戻ったみたいだねー》

 

《そうね》

 

《伝承で聞いてた感じとは結構違ったね?》

 

《伝承なんてよくねじれるものでしょ?》

 

見守り続けた2人の吸血鬼はバロールが消えると地べたに座りこむ。

 

 

「ギャスパー……大丈夫か?」

 

「……始祖様……」

 

「悪かったな……怖い思いをさせて」

 

「い、いえ……いいんです。確かに怖かったです。僕の中にいるバロールさんのことも……僕の神器の事も……それでも……知れてよかったです」

 

そう言うとギャスパーはペタリとへたり込んでしまう。

 

「あ……あれ?足の力が………」

 

力がうまく入らず立てなくなったギャスパーを見て、俺はその頭をそっと撫でた。

 

 

「お疲れ様、ギャスパー………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから1時間後。

ギャスパーを撫で続けた俺はふと呟く。

 

 

「そろそろ帰るか?」

 

流石に精神世界にこれだけいると疲労が大きくたまる可能性がある。

 

精神世界は現実の時が進まないという意味では便利だが、その分精神は疲労する。

 

故に居すぎると戻った時に大きな精神疲労に見舞われるのだ。

 

 

「あ、はい‼︎」

 

 

元気を完全に取り戻したギャスパーは元気よく声を上げる。

 

 

《また来なねギャスパー》

 

《まぁ、今度は私達が行くことになりそうだけど》

 

 

「はい‼︎クルル様、アシェラ様。あっち(現実)でもお2人に会うのを楽しみにしています。」

 

そう言ってギャスパーは頭をさげる。

 

 

「んじゃ、行くぞ?」

 

そう言って俺は戻ろうとした時何か柔らかいものが俺の頬に触れた。

 

 

《あ⁉︎》

《んな⁉︎》

 

 

 

クルルと阿朱羅丸の声が聞こえると同時に俺たちは現実へと戻る。

 

 

現実に戻り、まとわりついていた影を払った俺は右手で頬を押さえていた。

 

その俺の隣では右手の人差し指と中指で自身の唇を軽く押さえるギャスパーが"えへへへ"と、ただ微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この後明らかに様子のおかしかった俺たちに気づいたゼノヴィアを筆頭に今夜の寝れない夜の会議は更に凄惨なモノにグレードアップしたのはまた別の話である。

 

 

 

 




どうでしたでしょう?

ギャスパーが立ち直るシーンは無理矢理でしたかね(^◇^;)?
あと、バロールを受け入れるシーンも……


個人的には確かに思うところはあれど八幡達に会うきっかけとも言っていいこの事件を作ってくれたバロールに対する僅かな感謝があり……それがきっかけで………

という感じを強く出したかったのですが……うまく出せなかったかも……


次回……ホントの本当に協力者登場。


感想お待ちしております……




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