魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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お約束通り長めです。

どうぞご覧下さい。


ふぅε-(´∀`; )ホットミルク飲んで寝よ……


各々は想いを握り動き出す

今俺の目の前には1人の悪魔がいた。

その悪魔の瞳はまだ揺れている。

彼は恐らく過去と現在との葛藤を抱えているのだろう。その迷いは俺がどれだけ言おうと拭えはしない。それを拭うには自分で割り切る以外手段はない。でも、それでも彼は……そんな状態でも彼は何かを想い、何かを成し遂げようと俺の前に現れたのだ。

 

ならば俺はそれに応えなければならない。

これから彼がどんな解を出すのかは俺でもわからない。それでも彼自身が考え、そしてそれを実行しようとしているのだ。だから俺もそれを受け止める。

 

 

「それで、木場……お前はどんな答えを出したんだ?」

 

「僕は……」

 

俺の言葉に木場は暫しの間俯くも意を決したように発する。

 

 

「僕はどうしてもエクスカリバーを壊したい」

 

わかりきっていた言葉。

しかし、これが彼の解では無いだろう……

 

 

「八幡君は僕の過去のことも知ってるんだよね?」

 

「ああ」

 

彼の本音でありそして解である部分を語る前に木場は確認を取ってくる。それを取り終えるとポツリポツリとつぶやき始める。

 

 

 

「みんなは殺されたんだ。みんな主のためと辛いことにも耐えていたのに……自分たちはいつか選ばれるって信じていたのに……そんなみんなを殺したもの達を僕は許せなかった。聖剣計画の首謀者も、エクスカリバー自身も……いつか必ず壊すと、そう心に決めていた。それが唯一生き延びた僕の贖罪であり義務だから……」

 

そういう彼は拳を握り締める。

彼の過去は中々に凄惨なものだ。

聖剣計画。

僅かながらも素質を持つ人間を材料にして集めた因子を凝縮、これを移植して人工聖剣使いを作り出す計画。木場はかつてこの計画の被験者であり、教会の人間に利用されそして最後は切り捨てられたのだ。彼もまた恵まれぬ過去を持っている。そんな彼が今自身の思いを打ち明けてくる。

 

 

 

「でもそれと同時に僕は、ずっとずっと思ってたんだ。僕が……僕だけが生きていていいのかって……僕よりも生きたい子がいた、僕よりも夢を持っていた子がいた……それなのに僕だけが生き残り、平和な暮らしを過ごしていていいのかって…どうして僕だけが生き残ったんだって‼︎」

 

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間俺はかつて、ある少女が俺に対して発してきた言葉を思い出し、木場とその少女の姿が重なって見えてしまった。

 

『みんな死んだ……ねぇちゃんも母さんも父さんも……それなのに…どうして僕だけが逃げ延びてるんだよ‼︎死ぬために生まれた僕がどうして……僕は父さん達みたいに何かを生み出すことも与えることもできやしない。なのに……どうして僕だけが…………たくさんの薬や機械を無駄遣いして、周りの人たちを困らせてその果てにただ消えるだけの僕が生き延びてるのに、どうしてみんなが死んだんだよ……』

 

 

彼とその少女がその言葉を発した理由はまるっきり違う。そこに至るまでの経緯も……

 

だが、どちらもそこには取り残された者の悲痛な思いが含まれていた。それは俺が唯一、未だに知らない痛みだった。

 

 

本当のつながりがあるからこその苦痛。

本当に大切なものとの別れ。

一度できたからこそ、それを失うことはとてつもなく怖く、そしておそらくだが想像ができないほど辛いのだ。その痛みは知らなくともその恐怖はかつて味わったことはあった。

 

その時俺はそれを恐れていた。

何としてもそれを阻止しようとした。

それこそ身体を明け渡してまで……

 

 

 

「だから僕は何としてもエクスカリバーを壊したい。僕の剣に……魔剣に僕の想いをのせて。それがみんなへの唯一の手向けとなるだろうから………」

 

俺が木場を重ね合わせる間も彼は一言一言口にしていく。

 

「でも今の僕じゃ恐らくエクスカリバーは壊せない。あの2人に会ってそう思った……だから八幡君に力を貸して欲しいんだ」

 

 

そう言って木場は頭を下げてくる。

 

 

「イッセー達には頼らないのか?」

 

「イッセー君達なら手伝おうって言ってくると思う。でも、できることなら彼らを巻き込みたく無い。聖剣は悪魔にとって擦り傷でも重症になる程のものだ……だからみんなを巻き込みたく無い……僕はまた…誰かを失いたく無い……」

 

 

それがこいつの答えか……

エクスカリバーの破壊。

目的は一切変わってはいない。

ただ、ヴィザの言葉を……ユウキの言葉を受けて、彼はそこに至るまでの道筋を大きく変えていた。

 

(1人だけでやるんじゃなくて誰かを頼る……剣に被害者達の恨みをのせるのではなく、自身の想いを剣にのせる……)

 

木場がもし主を持っていなければ……或いは主が俺ならばその答えは最も良い答えだろう。だが……俺はこいつの主ではない。

 

 

「断らせてもらうぞ」

 

俺の言葉に木場は目を見開いた。

 

「ど、どうして?」

 

「俺はお前の主じゃない。ましてやお前にそこまでしてやる義理もないからな」

 

「で、でも……」

 

俺の返答に木場は必至に言い返そうとするが俺はそれをさせる前に言葉を吐く。

 

「頼む相手が違うだろ?木場……お前の主はリアス・グレモリーだ。そしてイッセー達はお前の仲間だろ?仲間なら迷惑なんてかけてなんぼだ。巻き込みたくない?ふざけんな。お前があいつらを巻き込みたくないのと同じくらいあいつらはお前を助けてやりたいと思ってるんだよ」

 

その言葉に木場は押し黙る。

 

「だから後はそこで立聞きしてる奴らに頼れ」

 

「え?」

 

俺の言葉を不思議に思い振り木場は振り向く。すると物影から申し訳なさそうにリアス・グレモリーやその眷属達が出てきた。

 

「みんな……」

 

そこにいた彼女らに木場は驚いている。

後はイッセー達に任せればいいだろう……

 

 

「じゃあな頑張れよ」

 

そう言って俺はその場を後にした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、似たような言葉をこんなとこで聞くとは思わなかったな……」

 

《なになに?珍しく昔のことでも思い出しちゃった?》

 

俺がふと呟いた言葉に何処からともなくそれに応える声が聞こえた。

 

「珍しいじゃねぇか。お前がこんな時間から起きてるなんて」

 

《別に普段はやることがあんまりないから寝てるだけでいつも寝てるわけじゃないよ‼︎》

 

俺が返答するとその声は何処か拗ねたような声を発する。

 

「いつも夜は構ってやってんだろ阿朱羅丸」

 

《それとこれとは別さ》

 

話し相手はかつて俺の身体を幾度となく乗っ取った吸血鬼。だが、こういう風に話す様子からはそんなことは想像もできないだろう……

 

「はぁ、わりぃな最近はあまり構えなくて…」

 

《ハチが忙しいのはわかるけどさ……それにこうして話すのは久々だろう?》

 

そういえばそうだ。

最近は仕事で忙しかったうえ、家には小猫がいるためあまりこちらでは話ができない。無論その分寝ている間、阿朱羅丸の精神空間でめちゃくちゃおしゃべりしているが……

 

 

《まぁ、それはいいや。それよりもどうするのさ?》

 

 

「鬼呪召霊をやる」

 

阿朱羅丸の問いに俺は瞬時に答えた。

 

《相変わらずだねぇ。力を貸さない様に言いながら結局手助けしてあげるんだから……それとも彼とユウキが重なって見えたかい?》

 

阿朱羅丸の言葉に不意に足を止める。

 

 

《確かに込められた想いは似てたよね。まぁ、僕から言わせればユウキの方がもっと重く深刻だった気もするけど……それでも彼のあの出していた雰囲気は、込められた気持ちはユウキに似てたよ》

 

「そうだな……」

 

阿朱羅丸の言葉を俺はただ肯定した。

確かに俺は木場とユウキを重ねて見てしまった。大切な者を殺されたという意味であの2人は似ており、そして俺に対して発した言葉に込められた思いも似ていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信頼し合っているが俺とユウキが出会ったのはそんなに昔ではない。更に言えばユウキが今の様に明るくなったのは実は最近の話でもある。

 

 

俺の眷属は実は3種類に分けられる。

1つは俺が爵位をもらった後に出会い眷属となったやつ。

 

2つ目はそれ以前から交流があり現時点で眷属となっているやつ。

 

そして最後は眷属になる予定だが現在協力者として各勢力に紛れているやつだ。

 

 

ユウキの場合1つ目に当てはまる。

 

 

俺とユウキがあったのは俺が爵位をもらい、そして雪ノ下達の前から姿を消してからすぐのことだった。

 

【ダルクスの災厄】

 

それが俺とユウキが出会うきっかけだった

 

 

当時とある国で起こった奇病があった。

【拡散性ALS】

 

それが当時その地域で急速に広がっていた病だ。ALSとは萎縮性側索硬化症の略称で重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患であり現在でも解明されていない病だ。

 

しかしこの拡散性ALSは従来のALSとは違った。名前はあくまで症状が似ていたためつけられたものであり、この病気はウイルス感染症とされていた。そしてその病は感染経路が完全に特定される頃には既に1国丸々を覆っていた。

 

そんな病気の蔓延した国でユウキは生まれたのだ。

 

 

ユウキの両親は医師としてこの病気を解明するためにその国に訪れ、そこでユウキを生んだのだが、医師としてその国にいた両親は既にウイルスに感染しており、生まれてきたユウキにはその病が遺伝子レベルで引き継がれていた。

 

しかし本当の悲劇はそれではなかった。

それはユウキが12の頃、ユウキの親がウイルスの感染経路を見つけた時に起こった。

 

 

 

当時現代医学では決して治せないとされていたこの病気も完全な感染経路を除き多くのことが解明されていた。

 

このウイルスが感染病であること。

このウイルスは感染するとともに遺伝子レベルにまでその猛威を振るい生まれてくる子供すらこの病にかからせること。

そして、従来のものとは違い初期の進行速度が異常に遅いにも関わらず末期になるとそれが急速に進行していく。それ故感染しているかどうかが非常にわかりにくい。

そして空気感染すること。しかし、空気感染だけではないということだ。

 

 

というのも街の隔離を繰り返して尚感染が止まることはなかった。故に医師達は感染経路を血眼になって探した。

 

そしてユウキの親が見つけた結論は当時その国を治めていた者にそして周辺国に恐怖を植え付けた。

 

この病の最大に恐ろしい点は植物にすら感染することだった。そしてウイルスは花粉にすらその猛威を乗せ広がるということ……

 

ユウキの親がそれを発表した時、当時の周辺国の動きは早かった。

 

モタモタしていれば自国にすら被害が及ぶ。

そう考えた周辺国はその国を焼き払った。

 

感染しない様に防護服を身に纏ったもの達がその国を焼き払い始めたのだ。その国は周辺国によりわずか7日で焦土と化した。

 

そしてこの事件はその周辺国の人種の名前をとってこう呼ばれた《ダルクスの災厄》と。

 

 

そんな災厄の中で俺はユウキと出会った。

 

あの時、家族の手により1人逃げ延びていたユウキの強い想いを感じ取った阿朱羅丸に促され、俺はユウキの前に訪れた。

 

逃げ延びていたユウキは死にかけていた。季節は冬。雪が地面に積もり、そしてユウキの上にも積もっていた。それでも彼女は地を這いながらなんとしても生き延びようとしていた。

 

「よう」

 

「君は…….だれ?」

 

雪に囲まれ、静まり返った空間の中あまりにも気楽な声を俺は出し、彼女は困惑しながら問いかけてくる。

 

それが俺とユウキとの始まりだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《おーいハチってば》

 

ふと昔のことを思い返していると阿朱羅丸の声が聞こえ俺は現実へと引き戻される。

 

「なんだ?」

 

木場のあの言葉のせいですっかりユウキとの出会いを思い返してた俺は頭を切り替え問う。

 

《昔を振り返っているところ悪いんだけどさ、どうやら動いたみたいだよ?》

 

気がつけば日も沈み夜になっていた。

 

「どんな感じだ?」

 

《うんとね、なんか堕天使陣営の敵を聖剣使い2人とあの魔剣使い君が追っていったよ。あと、なんかソーナちゃんとその眷属達も集まってるね》

 

リアス・グレモリーはどうやらソーナ達にも援助を求めたか……まぁ、背後にコカビエルがいるなら仕方ないか……

 

「阿朱羅丸、相手は堕天使の幹部だ。だから…」

 

《わかってるよー》

 

俺の言葉に最後まで言うなとばかりに阿朱羅丸は声を発してくる。

 

《いつでも力を貸すさ。僕はハチの家族だからね》

 

顔は見えないがそういう阿朱羅丸は笑っている気がした……

 

 

「それじゃあ、そろそろ本格的に動きますか……」

 

そう言って俺は動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

八幡side out

 

イリナside in

 

 

 

 

 

 

気がつくと私は教会の廃墟にいた。

どうして?と身体を動かそうとすると身体に激痛が起こる。

 

「起きたか?」

 

その声は目の前の男性から発された。

 

「八幡君?」

 

「まだ動くな。一応応急処置はしたがまだ身体にダメージは残ってるからな」

 

ダメージ?

彼の言葉に首をかしげるた時ようやく私の記憶は覚醒した。

 

「そ、そうだ‼︎ゼ、ゼノヴィアは⁉︎」

 

そう、自分は昨日堕天使陣営の者とやりあっていたリアス・グレモリー達を見てその戦いに参戦し、逃げた堕天使陣営の者を木場祐斗と追っていた。その先でフリードセルゼンにやられて、しかもその後にコカビエルまで出てきて………………

 

そこまで考えるとふと私の脳裏にあることがよぎった。

 

「八幡君って何者なの?どうしてここに?」

 

そう、彼の正体だ。

あの時コカビエル達に私の聖剣を取られた後から私はあまり覚えていない。でも、あそこで私が倒れていたにも関わらずここにいる。運んだのが彼だとしたら彼はいったい……

 

「コカビエルがお前を殺そうとしてたからな……まぁ、少しだけだが関わりのあるお前をあそこで見捨てるってのは流石に良心が痛んだだけだ。ゼノヴィアは今、リアス・グレモリー、ソーナ・シトリー達と合同でコカビエルと戦ってる」

 

そこまで一気に言うと彼は一息つき更に一言加える。

 

「んでもって俺はセラフォルー・レヴィアタンの女王だ」

 

そう言った彼から悪魔の気配が漏れ出す。先ほどまでは一切感じなかったのにいきなり感じた気配に私は驚きを隠せなかった……

 

「うそ……」

 

信じられなかった。

彼が悪魔だとしたら、私たちのことを知っていたはずだ。自分達が聖剣を持っていることに……でも彼は私達を助けてくれた……それになんでさっきまで悪魔の気配を感じれなかったのだ……どうして、どうしてと幾つもの疑問が私の頭の中でぐちゃぐちゃに混ざっていく。

 

「隠してて悪かったな」

 

そんな私に対して彼は本当に申し訳なさそうに言ってくる。その様子が更に私を困惑させた。

 

「まぁ、ゆっくり休め。じゃあな」

 

そう言って外へと歩いていく。

その背中に悪魔の翼が生える。

やはり……本当に悪魔なのだ……

 

聞きたいことはいろいろあった。

それでも私は言葉を続けられない。

覚醒した私の意識はそこでまたゆっくりと閉ざされていった。

 

 

 

 

 

イリナ side out

 

八幡side in

 

 

 

 

 

教会跡地を出た後俺は駒王学園上空を飛んでいた。今現在学校は結界に覆われている。張っているのはソーナとその眷属達。街に被害がいかないようにしているのだ。

 

俺の視線の先には高笑いをしているバルパー・ガリレイ。協力者からの情報では彼が聖剣計画の首謀者だ。

 

そしてそのバルパーの前で木場は何か青いクリスタルのようなモノを抱えている。アレについてもきいている。確か、聖剣の因子を集めた結晶だ。そしてその様子からそれが彼のかつての仲間達のものだということがわかった。

 

 

 

「あいつが言ってた通りだ。あの結晶があるなら割と簡単にできそうだな……やるぞ阿朱羅丸」

 

《はいよー》

 

それを見た俺は手を木場に向けると魔方陣を展開する。

 

「な、なに⁉︎」

 

突然木場の周囲に現れた複数の魔方陣を前にリアス・グレモリー達が驚きの声をあげていた。

 

「繋ぎを握りてここに定めん」

 

そう俺が呟くと魔方陣から木場の周囲の魔方陣からでた糸のようなモノが彼の握りしめる結晶と結ばれる。その瞬間、魔方陣もまた結晶と同じ青色へと染まっていく。

 

「鬼呪をもって此の鍵とす」

 

校庭では何が起きているのかわからない面々がいるが次の瞬間彼らの目の前に信じられない光景が生まれる。

 

「開け霊門」

 

俺がそう言った直後、木場の周りに展開していた魔方陣は消える。しかし、それと代わるように人型の半透明な存在が彼の周りを包む。

 

 

 

八幡side out

 

イッセーside in

 

 

「…皆。僕は、僕はッ!」

突然現れた光を前に木場は声をあげていた。

 

「あれって……」

「ああ、おそらくは……」

「犠牲者達……」

「おそらく先ほどの魔方陣が影響してるんでしょう」

 

部長達が口々に呟いている。

そして俺にも分かる……あれは処分されたものたち……木場のかつての仲間達だ……

先ほどの魔方陣が彼らを呼び覚ました……

 

 

「僕は…ずっと…ずっと……思ってたんだ、僕だけが生きていていいのかって……僕よりも生きたいと思った子がいた、僕よりも夢をもった子がいた、それなのに僕だけが‼︎」

 

木場を囲んでいる霊達に向かって彼は叫んだ。それは先日、彼が八幡に向かって言っていた彼の本心。それを今かつての同志達に伝えている。

 

そんな木場に対して霊達は彼に囁きかける。

 

「大丈夫だよ……」

「1人では無理でもみんな集まれば……」

「聖剣を…僕達を受けいれて……」

「怖くなんてない…たとえ神がいなくても…」

「神様が見ていなくても……」

「僕たちの心はいつだって……」

 

 

「1つ………」

彼らの言葉を受け木場が最後に呟く。彼の頬に涙が流れ落ちそして、結晶へと雫が落ちる。

 

 

その瞬間彼らは大きな光となって木場の中に流れ込んでいく。蒼白い光が木場を包み込んでいき、彼もまたその流れに身を任せている。

 

《相棒》

 

「ズズッ。な、なんだよ」

顔を鼻水でぐちゃぐちゃにしている俺にドライグが話しかけてくる。

 

《あの騎士は至った……所有者の想いが……願いが……欲望が……此の世界に漂う流れに逆らうほど劇的な転じ方をした時神器は至る……それこそが禁手化だ‼︎まぁ……至った過程にクソむかつく奴が関わっているがな》

 

 

 

 

 

 

「同志達は復讐なんて望んでいなかった……でも、僕は君たちを倒さなきゃならない……第2第3の僕たちを生まないために……今ここで君たちを倒す‼︎」

 

そう言って木場は手に1本の剣を作り出す。その剣を禍々しさと神々しさ……相反する筈の2つのオーラが混じりながら包み込んでいく。

 

「フ、フリードぉぉぉぉおお」

 

その雰囲気を危険視したバルパーは声をあげて彼の後ろに控えるフリード・セルゼンを呼ぶ。

 

「あいあいさー」

ふざけた返事をしながらバルパーの前へとやってきたフリードは相変わらずふざけながら言ってくる。

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃ、この4本のエクスカリバーをくっつけたエクスなカリバーちゃんに勝てると思ってんのか?」

 

あいつ………

 

「祐斗‼︎」

 

フリードのふざけた態度に怒りがこみ上げる中隣にいた部長が木場に向かって叫ぶ。

 

「やりなさい。貴方はこのリアス・グレモリーの眷属なのよ。その剣でグレモリーが威を示しなさい‼︎」

 

「はい‼︎」

 

「おーおー、くせぇくせぇ。手加減してやっからさっさと来いよ」

 

部長と木場のやり取りにすら茶々を入れるフリードだが、そんな奴に向かって木場は向かっていく。

 

「僕は剣となる。僕と1つになった同志達の魂と共に……あの時果たせなかった想いを……願いを……今ここで果たす‼︎禁手【双覇の聖魔剣】聖と魔の性質を持ち合わせるこの力…….同志達が与えてくれたこの力……破れるというのなら破ってみろ‼︎」

 

そう言って木場は黒と白の入り混じった剣をフリードに向かって薙ぎ払う。

 

「おいおいマジですかい⁉︎御本家を超えるとかどんなチートだよ⁉︎」

 

しかし、フリードもエクスカリバーで持ってそれを防ぐ。悔しいが剣の腕自体はフリードに分があった。

 

「そのままそいつを抑え付けておけ。あれはもう聖剣であって聖剣ではない。ただの異形の剣だ。そんなものいまここで砕く……そしてイリナの仇を今ここで取る‼︎」

 

そう言って剣技の差を埋めるようにゼノヴィアが介入してくる。

 

左手に持った聖剣を地面に突き刺すと右手を掲げ声を張る。

 

「ペトロ…パシレイオス…ディオニュシウス…そして聖母マリアよ私の声に耳を傾けてくれ。この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。こい、聖剣デュランダル‼︎」

 

そう言うと彼女の手の先に魔方陣が現れそこから大剣が現れる。

 

 

「マジすかぁぁああ⁉︎そんな超展開は流石にごめんなんすけど⁉︎」

 

ゼノヴィアの切り札にフリードが思わず絶叫する。そんな彼を無視し彼女は大きく振りかぶりデュランダルを振り下ろす。

 

「あぶねぇぇぇえええ⁉︎」

 

両手で剣を持ちゼノヴィアの一撃を防ぐが更にフリードが叫んだ。

 

「ちょ⁉︎ヒビ入ってる。エクスなカリバーちゃんにヒビ入ってるって。これ以上は折れるからやめて⁉︎」

 

そんな彼に向かって木場は聖魔剣を振り下ろす。

 

バキィィィィンと校庭に音が響き渡ると共にエクスカリバーが砕かれフリードも斬り伏せられる。

 

「みんな……見ていてくれたかい?僕らの力はエクスカリバーを超えたよ」

 

 

 

 

 

「聖魔剣だと⁉︎そんな馬鹿な⁉︎ありえるはずがない……反発するものが混ざり合うなど…いや、そうかわかったぞ‼︎聖と魔を司るバランスが崩れているならこの現象にも説明がつく。つまり……つまり魔王だけでなく既に神も………」

 

 

自身の傑作であるエクスカリバーが折られたとこに戸惑いながら何か呟くバルパーだが、次の瞬間彼の体を光が貫き、彼はただの肉塊と化した。

 

「バルパー、お前は優秀だった。その考えに至れたのもそれ故の事だろう。だがもとより俺一人で十分だ」

 

バルパーを殺した張本人コカビエルが遂にその腰を上げ校庭にいる者全てを威圧してくる。

 

「おい、お前……赤龍帝の力を限界まで高めて誰かに譲渡しろ」

 

「なんだと⁉︎」

 

「私たちにチャンスを与えるというの⁉︎ふざけないで‼︎」

 

コカビエルの唐突な申し出に俺も部長も声をあげる。

 

「ふざけているのはお前らだ。本当にこの俺を倒せるとでも思ってるのか?」

 

再び威圧が俺らにかかる。だがそれは先ほどよりも強力だった……

 

「っ⁉︎」

 

その威圧に反応するように俺は力を上げていく。その間もコカビエルは動く気配がない。

 

 

そうして限界まで高まった力を部長に譲渡した瞬間、部長が……コカビエルが動いた。

 

「はぁぁぁあああ」

 

譲渡した力を、渡した力の限りを尽くし部長はコカビエルに滅びの魔法を放つ。

 

 

「ははははは、面白いな魔王の妹、サーゼクスの妹よ、だが‼︎」

 

そう言ってコカビエルが振るうと逆に部長が吹っ飛ばされた。

 

「部長⁉︎」

 

渾身の一撃を容易く破られ倒れた部長に駆け寄った瞬間。

 

「はっ‼︎」

 

朱乃さんが雷を放つ

 

「俺の邪魔をするかバラキエルの力を持つ娘よ。でも、俺には届かんぞ?」

 

しかし、その雷すら簡単に弾かれ、彼女もまた吹き飛ばされる。

 

「バラキエル?」

 

「雷を自由に操る堕天使の幹部の名だ」

 

俺の出した言葉にゼノヴィアが答えてくるが、その後コカビエルから衝撃の言葉が発される。

 

「しかし愉快な仲間を集めたもんだ、リアス・グレモリー。赤龍帝に聖魔剣、そしてバラキエルの娘。なかなか集められるものではないぞ」

 

 

「バ、バラキエルの娘だと⁉︎」

 

その言葉に真っ先にゼノヴィアが声をあげる。俺も驚きを隠せない。

 

「朱乃さんが……堕天使の娘⁉︎」

 

「お前もあいつ同様ゲテモノ好きか……」

 

その言葉を聞いた瞬間、部長は立ち上がり怒りをあわらにする。

 

そんな部長の姿を見て俺は再び力を蓄え始める。

 

「ほぉ、今度はお前が来るか?赤龍帝?」

 

「イッセーダメ‼︎」

 

 

コカビエルの言葉をきき、部長が俺に制止の声をかけるが俺は力を溜め始める。

 

「イッセー君は力を……」

 

俺が溜め始めた瞬間、俺の前に木場、小猫ちゃん、ゼノヴィア、雪ノ下、由比ヶ浜がでる。

 

「早くしてください……」

 

そう言って小猫ちゃんを筆頭に、木場とゼノヴィアがコカビエルの元へ駆けていく。雪ノ下と由比ヶ浜は俺の前で俺を庇うように立っていた。

 

 

「「はぁぁぁああ」」

 

ガキんという音と共に木場とゼノヴィアが振り上げた剣は防がれる。しかし両手が塞がったところに小猫ちゃんが追い打ちをかけた。

 

「そこ‼︎」

 

しかし、次の瞬間コカビエルから堕天使の翼が生えそれで3人を吹き飛ばした。

 

 

「「「ぐぅ………」」」

 

「その程度か?」

 

「「まだだ‼︎」」

 

直撃した小猫ちゃんは部長の後ろから心弾銃を放つアーシアによって回復をしてもらう中、木場とゼノヴィアは再びコカビエルへと迫る。

 

「遅いんだよ」

 

 

しかし、再び振るった剣撃も全ていなされ再度吹き飛ばされる。

 

 

「くそ……」

悪態を吐くゼノヴィアだがそんな彼女を見てコカビエルはふむと顎をさすりながら呟く。

 

「しかし、仕える主をなくして尚、よくまぁそんなに戦えるものだな……」

 

「どういうことコカビエル?」

 

「主を亡くしたとはどうしう意味だ⁉︎」

 

コカビエルの言葉に部長とゼノヴィアが答えるが、

 

 

「おっと口が滑ったか……」

 

「答えろ‼︎」

 

コカビエルは適当に流すがゼノヴィアはそれどころではなく声をあげる。

 

「ん?待てよ?んははははは、そうだったな。戦争を起こそうとするんだ、今更隠す必要もないか……ははははははははははは」

 

そんな彼女の言葉を聞くとコカビエルは高らかに笑い出す。

 

「簡単なことだよ」

 

はぁ、と一息つき彼は口を開いた。

 

「先の三つ巴の戦争で……そして二天竜と交えた戦いの中で4大魔王と共に神も死んだのさ‼︎」

 

『な⁉︎』

 

それはあまりにも衝撃的な言葉だった

 

 

「神が……死んだ?」

 

アーシアは膝から崩れ落ちる。

 

「う、嘘だ……」

 

そう言うゼノヴィアもギリギリで持ちこたえているが、全身が震えている。

 

「神が……死んだですって⁉︎馬鹿なことを…そんな話聞いたことないわ‼︎」

そう言う部長も初耳なのかその瞳は揺れている。

 

「あの戦争で悪魔は魔王全員と上級悪魔の多くを、天使も堕天使も幹部以外殆ど失った。もはや純粋な天使は増えることすらできず、悪魔とて純血は希少だろ?」

 

その言葉に全員が押し黙る。

 

 

「もはやどの勢力も脆弱な人間に頼らねば存続できないほど落ちぶれた。天使も悪魔も堕天使も……どの勢力のトップも神を信じる人間を存続させるためにこの事実を隠した……」

 

 

「嘘だ……うそだ……」

 

ギリギリで耐えていたゼノヴィアも膝から崩れ落ち手を地面につける。

 

 

「そんなことはどうでもいいんだよ。俺が我慢ならないのは神と魔王が死んだことで戦争継続を無意味と判断したことだ。堪え難かったんだよ‼︎1度振り上げた拳を抑えることが。あのまま続けていれば堕天使が勝てたはずだ‼︎なのにアザゼルの野郎は2度目の戦争はないと宣言しやがった。ふざけるんじゃねぇ‼︎」

 

そう言ってコカビエルは拳を握る。

 

「主がもういらっしゃらないなら、私たちに与えられる叛意は?」

 

「っは‼︎ミカエルもよくやっている。神不在の中天使と人をまとめているのだから」

 

「大天使ミカエル様が……神の代行……だと⁉︎」

 

アーシアの問いの答えにゼノヴィアは絞り出すように声を発する。

 

「システムさえあれば機能していれば、ある程度はうまくいくだろうしなぁ」

 

その言葉にゼノヴィアもアーシアも目と口を開き呆然としてしまう。

 

「聖魔剣がいい証拠だ。聖と魔を司る者がいなくなったため、そんなイレギュラーが生まれてるんだろ」

 

その言葉に木場が自身の剣を見つめる。

 

「まぁいい。お前らの首を土産にあの時の続きを俺だけでもしてやる‼︎」

 

そう言ってコカビエルは光の槍を放つ。

 

全員が避け、動かないアーシアは小猫が庇うもゼノヴィアだけは間に合わなかった。

 

「危ない⁉︎」

 

誰かがそう叫んび、ゼノヴィア自身も目を瞑る。しかし、その槍が彼女に届くことはなかった。

 

 

「はぁ……やっぱり出張らなきゃダメか……」

 

そこにはよく見知った1人の男が刀を片手に立っていた。

 

 

 

イッセーside out

 

八幡side in

 

 

 

 

「はぁ……やっぱり出張らなきゃダメか……」

 

ずっと上空で彼らの戦いを見ていた俺だがそろそろ限界だった。

 

「なんだお前は⁉︎」

突如現れ自身の攻撃を止められたコカビエルは俺に叫んでくるがそれを無視してゼノヴィアに話しかける。

 

「随分参ってるみたいだな……この前教会で死にそうになってた時より厳しそうだぞ?」

 

「君はいったい……?」

 

突如現れた俺に彼女は戸惑っていた。

 

「無視してんじゃねぇ‼︎」

 

そう言って先程までとは比べ物にならないほどの大きさの光の槍をコカビエルは放つ。

 

「あ、危ない⁉︎」

 

「大丈夫だよ」

 

叫ぶゼノヴィアを他所に俺は振り向きもせず刀を振るい光の槍を霧散させる。

 

「馬鹿な⁉︎」

 

相当力を込めていたのかコカビエルから驚愕の声があがった。

 

 

「君は本当に何者なんだ?」

 

目の前にいる俺にゼノヴィアは聞いてくる。まぁ人間の気配のままこんなことしてたら普通はそう聞いてくるよな。

 

 

「お前もイリナと同じようなこと聞くんだな」

 

「イリナに会ったのか⁉︎」

 

ああ、そういや、イリナの奴は俺が無言でサラッと助けてたからこいつらからしたら死んでると思われてたのか……

 

「ああ、応急処置はして教会跡地に置いてきた」

 

「よかった……」

 

すると彼女は安堵の声を漏らす。

 

「八幡お前今まで何やってたんだ⁉︎」

 

そんなゼノヴィアを他所にイッセーが声を上げてきた。

 

「来るならもっと早く来て欲しかったわ」

「全くですわ」

「先輩……遅いです……」

 

3年2人と小猫が文句を言ってくるが酷いなおい……

 

 

「俺が最初から対処してたら意味ねぇだろ」

 

まぁ、そんな文句はサラッと流すのだが……

 

 

「というか、八幡君は神が死んでいることを知ってたのかい?」

 

「ん?ああ。セラフォルー様に黙ってろって言われてたけどな」

 

木場の質問にサラッとゲロる俺氏。

 

「だから……君は本当に何者なんだ……」

 

3度目のゼノヴィアの問い……

 

それにまたもスルーしコカビエルの方に向き直すと彼に話しかける。まぁ、結果として答えることになってるが。

 

 

「さてと……堕天使コカビエル。現在の状況はリアス・グレモリー及びソーナ・シトリー両名では対処不能と判断。よってこれより魔王セラフォルー・レヴィアタン様の女王である自分が対処を開始しますのでご了承下さい」

 

まるで用意されていた文を読み上げるように言った俺は自身から魔力を放出する。それとほぼ同時に言われた当のコカビエルとそれを知らなかったゼノヴィアは声をあげる。

 

「セラフォルーの女王だと⁉︎」

 

「悪魔……君が?」

 

「隠してて悪かったなゼノヴィア……」

 

イリナに言ったときと同様に申し訳なさそうに俺は呟く。

 

「じゃあ、始めるか?」

 

そして俺はコカビエルに呟く。

 

それと同時に俺から先程とは全く異なる質の魔力が出始めた。

 

 

 

 

八幡 side out

 

ゼノヴィア side in

 

 

「じゃあ、始めるか?」

 

彼がそう言った瞬間彼から出る雰囲気が変わった。

 

 

それと同時にコカビエルが空中に退避しながら彼へと攻撃を放つ。しかし目の前の彼はそれを全て容易くさばききる。

 

「っくそ‼︎」

 

そういってコカビエルが今までにない大きさの光の槍を作りこちらに投げてくる。

 

 

まずい⁉︎

本気でそう思った。

私はまだ立つことができない。

 

「に、逃げるんだ‼︎あれは……」

 

気がつけば声を発していた。

 

(何を言ってるんだ私は……彼は悪魔だぞ)

 

おもわず出してしまった自分の言葉に自分自身が驚くが

 

 

「逃げる理由がねぇ」

 

彼はそう呟くと刀を振るう。

 

そして先程までと同様に光は刀に触れた瞬間霧散していった。

 

「………」

規格外すぎる。

あんな一撃を苦もなく消し去るのか……

 

 

「っちぃ。これならどうだ‼︎」

 

舌打ちしたコカビエルらそういって今度は大量の槍を周囲に出現させた。

 

「これなら防げねぇだろ‼︎」

 

そういってコカビエルは槍を放つ。

それは広範囲で私だけでなく、グレモリー眷属にも及ぶものだが……

 

「阿朱羅観音」

 

そう彼が呟くと周囲に彼の持つ刀と同じものが出現し、光の槍全てを相殺していく。

 

 

「すごい……」

 

力だけじゃない。

操る刀1本1本がまるで達人1人1人に振るわれているかのよう鋭く、自在に操っていることに感嘆の声を出してしまう。

 

「あれを防いだだと⁉︎」

 

「堕天使総督の意すら無視するほど地に落ちたんだ、もうその羽根はいらねぇよな?」

 

そういって彼はコカビエルとの距離を一気に詰めていく。

 

「っく」

 

近づいてくる八幡に対抗するためコカビエルも光の剣を握るが

 

 

「ぐぁぁぁあぁぁぁああ」

 

突如苦悶の声を上げ始める。

よく見ると八幡は自分自身にコカビエルの視線を集めさせ、自分が攻め込むと思わせた上で、先ほどの刀の1本をコカビエルの背後に回りこませ彼の羽根を削ぎ落としていた。

 

うまい……純粋にそう思った。

 

「視野が狭くなってんぞ」

 

そういって彼はコカビエルを地面へと叩きつけた。

 

「っがは」

 

その衝撃でコカビエルは吐血する。

 

「すごいわね」

「こんなに強いのかよ……」

 

後ろから兵藤とリアス・グレモリーの声が聞こえるがまさにその通りだ。

セラフォルー・レヴィアタンの女王と名乗った八幡は堕天使の幹部を前にしても擦り傷すらおっていない。

 

「はぁはぁ、これなら……どうだぁぁぁああ」

 

突如コカビエルの咆哮が校庭に響いた。

見ると身体はふた回りも大きくなっている。

 

「力を全て身体強化に回したのか……悪くねぇけどよ」

 

咆哮を上げたコカビエル迫る中でも彼は平然としている。

 

「無駄だぞ?」

 

《あはははは、Boostだよ》

 

彼の刀の緑色の部分が光ると共に突如彼の近くからどこか幼い感じの少女の声がする。すると目に見えて彼の力があがった。

 

「ほい」

そう短く発しながら彼はコカビエルの打ってきた拳に自身の蹴りを合わせる。そして突進してきたコカビエルが吹き飛んで行った。

 

 

「ごほっごほっ⁉︎い、今のは⁉︎」

 

吹き飛ばされた彼は体勢を立て直すもそれどころではない。私も、私の後ろにいるリアス・グレモリー達も同じだ。

 

「ほらほら、早くしねぇとどんどん勝てなくなるぞ?」

 

《それ‼︎もう一回Boostだよ》

 

再度聞こえてきた声に思わず声を上げたのは兵藤だった。

 

「八幡……何でお前が…….なんでお前がその力を使えるんだよ⁉︎」

 

兵藤の声にその場にいる全員がうんうんと頷いている……いや、塔城だけはじっと八幡のことを見ているが……

 

「それが俺の神器の力だからな」

 

「うわ⁉︎」

 

八幡がそう言うと木場が声をあげる。

みれば彼の腕の部分に先ほどの刀の1本が擦りつけるようにしていた。

 

その時その刀に木場が流した血が付着し、それが刀に吸い込まれるように消えていくのを私は見逃さなかった。

 

「んじゃまぁ、ほれ魔剣創造」

 

「ちぃぃいい」

 

突如自身の周りに現れた魔剣に対しコカビエルは鬱陶しそうに腕を払い剣を砕いていく。

 

「………」

開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。

自身の力を使って見せた八幡に木場は口を開けっぱなしにしている。

 

「これが俺の神器の力なんだよ。」

 

「まさか刀に吸わせた血で、その者の持つ力を使うことができるのか⁉︎」

 

「当たらずとも遠からずってな」

 

コカビエルの荒げる声に彼はあっさり答える。

 

「っこのチート野郎っがぁぁぁあああ」

 

八幡に向かって罵倒するコカビエルだがその声が途中から尋常ではない悲鳴へと変わる。

 

「なぁ、そろそろ終いでいいだろ?」

 

彼が浮かせていた刀を2本、コカビエルの両肩に刺さっているが、先程までとはまるで違う黒いオーラが刀に纏わりついていた。

 

「鬼呪阿朱羅観音」

 

それをくらい膝をついたコカビエルは苦痛の声と共にその2刀を自身の肩から引き抜く。

 

「ぐぁ……なんなんだこれはぁ……」

 

「特攻作用のある攻撃ができるのが天使や堕天使だけと思ったか?お前らが俺らに使う光のように俺もお前らに対する特攻攻撃があるんだよ……まぁ、全種族に特攻だが……」

 

「………」

 

もはやコカビエルすら開いた口がふさがらない。それほどの実力差がこの場にはあった。

 

トドメをさす。そう思った矢先八幡は刀を納刀した。全員がどうして?と戸惑う中彼は空を見つめ大声を出す。

 

 

「んじゃまぁ、そろそろこいつを連れて帰ってくんねぇかな?そこに隠れてる子」

 

「あれれ?バレてたんだ」

 

あまりにも気の抜けた声がその場に響いた。

そしてそれと同時にソーナ達が張っていた結界がパリィンと割れていく。

 

 

そして空から白い鎧をまとった者が降ってきた。

 

「バニシングドラゴンだと⁉︎赤いのにでもひかれたか⁉︎なぜここに⁉︎」

 

「バニシングドラゴン⁉︎」

 

コカビエルの叫び声をきき兵藤も声をあげる。

 

じゃああの者が今代の……

 

 

「っくそ、なんでこいつまで……」

 

「んー。そりゃ君の回収だよ。アザゼルくんから頼まれてねぇ。堕天使幹部と戦える♪って思ったんだけどつまんないの、もう瀕死じゃん」

 

そう言うとコカビエルの元に瞬時に移動しコカビエルを地面へと叩きつけた。

 

「アザ………ゼ………ル……」

 

そうしてその一撃でコカビエルは遂に意識を失った。

 

 

「見事なもんだな」

 

「いやいや、やったのほとんど君でしょ?君強いんだね……今すぐにでもやりあいたいんだけど……今は回収が優先かな……」

 

そう言って白龍皇はコカビエルを肩に担ぎ、続いてフリードの元まで移動するとその首筋を掴み上げる。

 

「さってと……とりあえずはこの辺で……」

 

 

《無視か白いの……》

 

白龍皇が飛び立とうとした時、兵藤に宿る龍が声を上げた。

 

《生きてたのか赤いの……いいさ、いずれ戦う運命だ……こういうこともある》

 

《それもそうか……》

 

それに呼応して恐らく白龍皇の龍が返してくる。

 

《また会おうドライグ》

 

《そうか……またなアルビオン》

 

 

赤龍帝と白龍皇の会話。

そんな稀なシーンを見ている私たちだがそこにいきなりの介入者が出てくる。

 

 

《あはははは、君たちまるで恋仲だね。ねぇハチみてよこれ、BLだよBL……白と赤のコラボレーションってね》

 

先ほど聞こえた少女の声がその場に響いた。

 

《うるせぇ‼︎》

《何故お前がここに⁉︎》

 

赤龍帝と白龍皇はそれぞれ違う反応を示す。

 

「アルビオン知ってるの?」

 

《ああ、こいつは……》

 

《ねぇ?僕かハチが言うまで余計なこと言わない方が身のためだよ?ドライグもね》

 

アルビオンが何か言おうとした時、その少女の声から脅しの言葉が発せられる。

 

《っ⁉︎》

 

「アルビオン⁉︎」

 

いきなり黙ったアルビオンに白龍皇は驚きの声を上げている。

 

「アルビオンがこれだけ怯える相手……か。いいね本当に戦ってみたいな……でも今日はもう無理か……」

 

そう言って白龍皇は空へと飛翔する。

 

 

「おい!お前はなんなんだよ!」

 

そんな白龍皇を兵藤が止める。

しかし……

 

「すべてを理解するには力が必要なんだよ?もっと強くなってね私の宿敵くん。それと……ねぇ君の名前教えてよ♪」

 

白龍皇は明らかに兵藤よりも八幡に興味を持っていた。

 

「はぁ、比企谷八幡だ……」

 

「そっか、八幡くんか……ねぇいつか闘おうね」

 

そう言って白龍皇は去っていった。

 

 

 

白龍皇が去った後、ソーナ・シトリー達も集まってきた。堕天使幹部を倒したからか八幡を中心に彼女達は騒いでいた。そんな彼女達をよそに私は静かにその場を去っていった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……これからどうしたものか……」

 

教会には戻れない。

神不在を知ったとなれば恐らく私は異端の烙印を押される。たとえ押されないとしても帰ろうとは思わない。他の信者達に会わせる顔が無いからだ。彼らは今尚神がいることを疑っていない。そんな彼らに対する申し訳なさや、彼らがそれを知ってしまう可能性から、私は戻る気にはなれなかった。

 

「はは、野垂死にだなこれは……」

 

半分ヤケになりながら呟く。

 

「先日とそんなに変わんねぇなそれじゃ」

 

ピタリと私の歩む足が止まる。

 

「ふふ、容赦の無い言い方だね。アレはイリナが日本に来るのにファーストクラスに乗ってみたいと言ったせいなのだがね」

 

「そりゃ災難だったな」

 

そうして振り向いた先には彼が……

 

比企谷八幡がいた。

 

 

 

 

 

ゼノヴィアside out

 

八幡 side in

 

 

 

 

 

 

俺は見てしまった。

イッセー達が集まる中で1人まるでこの世の終わりかのように俯き消えていく少女を。

 

「んじゃ俺はセラフォルー様達に報告しなきゃいけねぇから失礼するぞ」

 

気がつけば俺は適当な言い訳をしその場を後にした……

 

《行くのかい?》

 

「ああ」

 

どうしても放っておけなかった。

どうしてもあの姿が重なってしまったのだ。

 

あの絶望している姿が……

まるで世界を酷く見ているその目が……

かつての自分と重なってしまった。

 

 

当然俺と彼女は全く違う。

それでも……重なってしまったのだから仕方ない。

 

《まぁ、聖魔剣君とユウキが重なって見えたのと同じだろうよ。理由も経緯も違う。それでも結果として同じような雰囲気をまとっているのさ。だからこそ重なって見える》

 

俺の思いに阿朱羅丸が応えてくる。

 

《まぁ、僕は賛成だよ。彼女は聖剣使いであると共に素質もかなりある。ただし条件があるよ》

 

「条件?」

 

《彼女の駒はーーーにすること》

 

その言葉に俺は思わず聞き返す

 

「ーーー⁉︎……えーっとどうしてでしょう?」

 

《1つは彼女の資質だよ。あの子ハチが思っている以上の才能があるよ。それを逃す手はないよね。2つ目は彼女が聖剣使いだから。悪魔の聖剣使いなんて面白いだろ?ならできるだけ強くしたいじゃん。3つ、そうした方が絶対面白くなりそうだから♪》

 

それはシノン達の反応のことを揶揄しているのか?

 

「はぁ、わかったよ……サンキュー阿朱羅丸」

 

《いやいや、面白くなりそうだし気にしないでよ》

 

 

そんなやり取りをしながら走っているとようやく彼女に追いついた。

 

 

 

「はは、野垂死にだなこれは……」

彼女は冗談混じりなんだろうがその様子からは冗談とは思えないようなことを呟いていた

 

「先日とそんなに変わんねぇなそれじゃ」

 

そんな彼女に俺はツッコむ。

 

「ふふ、容赦の無い言い方だね。アレはイリナが日本に来るのにファーストクラスに乗ってみたいと言ったせいなのだがね」

 

ああ、それで金を持ってなかったのか……

 

「そりゃ災難だったな」

 

肩をすくめながら俺は呟く。

 

 

「何か用かい?」

 

「ん?今後どうするのかと思ってな」

 

「さぁな。行くあても無い、それに……神がいないんだ。生きてく気力すら危ういな。こうやって冗談を言うのもそろそろ厳しいくらいに」

 

そういう彼女の顔色はやはり冴えない。

 

 

「そんなにショックか?」

 

「そりゃそうさ……私の全てだったんだ。主だけを信じてきた。それが既に居ないなんて……ショックを受けないはずがない」

 

「でも、お前は生きてるぜ?人生は命と心あっての物種だ。逆に言えば、それさえあれば何度だってやり直せる」

 

「簡単に言うな‼︎お前に私の気持ちが……」

 

「わからねぇよ」

 

俺の言葉に対して声を張る彼女に俺は断言する。

 

「俺にお前の気持ちはわからねぇ。俺は大切な物を失いかけたことはあっても実際に失ったことはねぇ。だからお前の気持ちはわからない。」

 

 

「なら‼︎」

 

 

「それでもお前のその見ている世界が間違いなのはわかる」

 

「見てる……世界…だと?」

 

俺の言葉に彼女は怪訝そうに眉をひそめる。

 

 

「汚いよなこの世界は……」

 

ただ一言。

その一言に彼女は目を見開く。

だが、その一言だけで彼女は俺の言葉を理解する。それが彼女がかつての俺と同じことを示す最大の証拠となった。

 

「俺もそう思ってた。みんな上辺だけ良いこと言って、心の中では別のことを考えている。都合の良い嘘で騙し、大多数を守るために平然と小を切り捨てる……でも、それはさ……この世界のほんの一部分でしか無いんだよ。俺はそれを昔教わった」

 

その言葉を受け彼女は俺に問いかける。

 

 

「本当に……君は何者なんだ?どうしてそんなことがわかる?どうしてあんなにも強い?どうして君はそんなにも……」

 

4度目の問い。

だが、そこには3度目までとは異なる意味が含まれている。

 

 

「比企谷八幡。元いじめられっ子のボッチで、今は魔王セラフォルー様の眷属だ。子供の頃人が見ないようなものを見て、人が味合わないようなことを経験しているので目が腐ってるのが特徴だ」

 

「ふっ、なんだそれは……」

 

やや自嘲気味に俺が言うと彼女は初めて笑った。

 

 

「もっと上を向けよ。世界は汚いもんだけじゃねぇ。もっともっと、お前が知らないような綺麗なもんだっていっぱいあるんだ」

 

「それを君が教えてくれるのかい?」

 

「お前が教えて欲しいならな」

 

首をかしげながら聞いてくる彼女に対して俺は手を差しのばす。その手には駒が置いてある。

 

 

「悪く無い……神がいないというのなら……自由に生きてみるというのも良いかもしれないな」

 

「ああ、なんせ人間でもあと70年以上、悪魔になればほぼ無限に生きれるんだからな」

 

「ああ、行くあても無い。だから世話になっても良いかい?」

 

「おう、うちは賑やかだぞ」

 

その俺の一言に彼女はまた笑い、そして駒を取る。その駒は女王の駒。それは阿朱羅丸から言われた彼女に渡せと言われたものだ。多くのものは勿体無いと言うかもしれない。けれども、面白いという理由が入っているとはいえ、阿朱羅丸がそうすべきと押してきたことだ。ならば、俺は阿朱羅丸を信じる。大切な家族ということもあるが、彼女の実力や潜在能力を見抜く目はヴィザの比ではないからだ。

 

そうして月夜の街中に1つの光が月光を霞ませる。今日この日、また1人家族が増えた……

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?

今回はちらっとユウキの過去も含んでましたが眷属の詳しい過去はそのうち番外編で出します。

ご感想お待ちしております。
ゼノヴィアの件とか……ヴァーリTSの件とか……文の書き方の件とか……どんなことを言われても今回は甘んじて受けてみせるw

ということで今回はここまで。

次回は3大勢力会議……にはまだ行きません。

その前に1つ話があるので、それを書いたあと3大勢力会議を書き始めます。

ではでは( ´ ▽ ` )ノ

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