魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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前回行った通り今回も短め。

でも次回は八幡の過去回と同じくらい長く書く予定です。

では本編へどうぞ( ´ ▽ ` )ノ


そして彼は女王の前に立つ

日曜日

多くの者が休む中朝早く小猫は学校に向かった。昨日俺が消えた後何故かソーナとリアスの眷属対抗ドッチボールが始まるらしい。何故そんなことをしてるのか疑問しか残らないが当人達が決めたことならばこちらが口出しするようなことでは無いだろう……

 

小猫や他の奴らが頑張っている中俺はというと少々面倒臭いことになっていた。

 

「どうしたもんかね……これ……」

 

そう言って俺はかつてレイナーレ達が拠点にしていた教会跡地に訪れていた。もしかしたらここにコカビエルがいないかな?と割と軽い気持ちで来たのだが、入ってすぐ俺の目には予想していなかった光景があった。

 

 

「お前ら……なにしてんの?」

 

そこには縮こまりながら身を寄せ合っている2人の女性。昨日会った時は真っ白だったローブも汚れており、昨日と違いフードをとっていた彼女達は何故かげっそりとしていた……

 

「ああ……昨日の………」

 

「どうしてここに?…………」

 

俺の問いに逆に問い返してくる彼女達だが、昨日とは違いまるで元気が無い。

 

ぎゅうぅぅぅぅうう

 

「「あう……」」

 

ふと音がなったと思ったら2人揃ってお腹を抱えている。いや、こいつらまさかとは思うが…

 

 

「お前らもしかしてなにも食ってないのか?」

 

コクリ

 

「ここで寝泊まりしたのか?」

 

コクリ

 

アホだ……

教会の、しかも聖剣使いが廃墟で寝泊まりする上に空腹で今にも倒れてしまいそうとかシュール過ぎて笑えない……

 

 

ここで魔王の女王としての最良の決断をするのであれば放置しておくことだ。聖剣は悪魔達にとって脅威だ。ならばその聖剣使いが自滅してくれるのであれば願っても無いことなのだが……

 

「「………」」

 

まるで捨てられ、野良犬にでもなってしまったかのような目でこちらを2人は見てきていた。いや、してないかもしれないが何故かそう見えてしまう。

 

「飯……食うか?」

 

「「!!」」パァァァァアアア

 

2人の顔がこれでもかというくらい晴れやかなものに変わっていく。

 

 

 

今日の収穫。

聖剣使い達を拾いました……………

 

 

 

 

 

 

 

「うまい‼︎うまいぞ‼︎これが日本の和食というものか‼︎」

 

「うんうん、これが故郷の味よ‼︎」

 

1時間後

俺はあの後近くにある温泉施設にこいつらを連れて行きとりあえず軽く飯を摘ませた後先ず初めに風呂に入れた。あの汚くなったローブはコインランドリーで洗濯中だ。そうして出てきた2人はレンタルの浴衣を借り、食事処に集合すると同時に驚くほど食べ始めた。ぶっちゃけ小猫に匹敵するくらい。まぁ、ここの飯は確かに美味い。その代わり一般人からすれば値は張るし、何よりそんなガツガツ食べるところでは無いのだが仕方ないだろう。ぶっちゃけ風呂と飯がセットなのはここしか無いし……

 

しかしこいつら浴衣が思いの外似合いやがるな。

イリナの桃色の浴衣もゼノヴィアの空色の浴衣も彼女達と見事にマッチしている。無地なのにこんなにも魅力を引き出せることに対して、地味に驚きだった。

 

 

「ふぅ、昨日だけでなく今日までも……本当に感謝してもし尽くせない」

 

「はふぅ〜、ご馳走様でした」

 

俺がそんなことを思っていると、食事を終えた2人はそう言って胸の前で十字を切った。悪魔にとってそれだけで頭痛が襲うモノだが、現在俺は阿朱羅丸の力を使っているため効かない。

 

ソーナ達は勘違いで俺が気配を消していると思っているらしいがそうでは無い。

 

これは気配を消すなんて安いものではなく俺の身体を悪魔から塗り替えているのだ。そもそも阿朱羅丸の最大の武器は血を飲んだ者の力をコピーすることでありこれはその応用に過ぎない。

 

要は阿朱羅丸が吸った人間の血から人という力を俺の身体に上書きすることで一時的に悪魔でなくなっているということだ。

 

「まぁ気にすんな。あんな状態の奴らをほっておいたらこっちが後味悪くなる」

 

「そうか?でも本当に助かった」

 

そう言って青髪の少女は頭を下げてくる。

 

「っと、そう言えばこんなに世話になってしまったのに名前を名乗っていなかったね。私はゼノヴィア・クァルタだ」

 

「私は紫藤イリナ、助けてくれてありがとね」

 

そう言って名乗られてきてはこちらも名乗らないわけにはいかない。まぁ、セラフォルー様の女王とはいえ、そこまで目立ったことは3ヶ月前のゲームの時くらいだし大丈夫だろう。

 

「駒王学園2年、比企谷八幡だ」

 

「わー、じゃあ私達と同い年なんだ。」

 

そう言って彼女は笑顔で俺の手を取ってくる。

 

ん?この笑顔何処かで……

 

「ふむ。こう言っては失礼かもしれないが、この間の制服姿を見ていなかったらとても同い年には見えないな。なんていうか……すごく大人びている気がする」

 

俺がイリナの笑顔に引っかかっているとゼノヴィアが俺に向けて話しかけてくる。

 

 

「まぁな。誰もが見て見ぬふりしているような世の中のことを真っ向から直視してきたからな。その反動か何かだろ」

 

「……もしかして何かあったんですか?なら私達に話してみませんか?一応こう見えても教会の人間ですから。話してみたら神は手を差し伸べてきてくれます」

 

そう言ってイリナ、そしてゼノヴィアは俺の方を真っ直ぐ見つめる。その眼には俺に対する悪意など無い。彼女らはおそらく信仰に忠実なのだ。だからこそ悪意が無い。俺が悩んでいると思い、本当に親切心や慈愛を持って俺に問いかけてきているのだ。

 

「いや、もうだいぶ前に解決したことだ。だから大丈夫だよ。親切にありがとな」

 

そんな彼女達の言葉を俺は断った。

もう済んでいることだ。俺の悩みは既に神ではなくそれと相反する存在により解決されている。それでも彼女達の親切心は有難かった。

 

でも、だからこそ申し訳なさを感じてしまう。

俺自身正体を隠していることに、そして……

 

既に彼女らが信仰している神がいないということに……

 

 

「そうですか……でも、悩んだらいつでも相談してください」

 

そう言ってくるイリナ達に対し、俺は申し訳ないと思う気持ちを圧し殺し問い始める。

 

 

「そう言えば、2人はどうしてここに来たんだ?あんな風になってたってことはここの地理にそんなに詳しく無いし当ても無いんだろ?」

 

俺の言葉に2人は少々悩みながら答えてきた。

 

「あ、えっと仕事できたんです。昔この辺に住んでたことがあって大丈夫かなって思ったんですけど……」

 

「イリナが住んでたのは子供の頃の話だろ、覚えてなくても仕方ないさ」

 

イリナの言葉をゼノヴィアがフォローする。その時だ、俺の中で1つのかけていたピースがはまった。

 

聖剣使い

昔この街に住んでいた

子供の頃

この容姿

おれやイッセーと同い年

 

………っ

 

こいつイッセーと写っていた奴か⁉︎

 

ピースがはまり結論が出た後俺を襲ったのは面倒ごとの予感だった。ただでさえコカビエルとかで面倒なのに、この後に及んであの写真の子が教会の使い、それもリアル聖剣使いとしてここに来たということを木場が知れば面倒になることは確実だ。

 

(どうしたもんかね……)

やれやれと思いながらも既にある程度の覚悟は決まっていた

 

「あ、あの……」

 

「ん?」

 

俺が面倒なことを予感しながら考えに没頭していると不意に声をかけられた。

 

「大丈夫ですか?なんか怖い顔してましたけど……」

 

「この目なら元々だぞ……」

 

彼女達が前にいるのに考えに浸ってしまった俺は、それに対して不信感を持たれまいと、無いも同然のユーモアを使う。

 

「そ、そういうことじゃ無いですよ⁉︎」

 

「確かに独特な眼をしているがイリナは怖かったのか?」

 

「ち、違うって⁉︎」

 

俺の言葉にゼノヴィアが乗ってくれたおかげでどうにかごまかせた。やってみるもんだな……

 

 

「それでお前ら今日はどうすんだ?明日学校に行くとしても今日の寝床ねぇんじゃねぇの?」

 

じゃれ合っていた2人の身体がピクリと動きを止めた。

 

「だ、大丈夫よ‼︎いざとなったら箱を持ってお願いすればお金をくれる人がいるはず‼︎」

 

「そうだな‼︎迷える子羊を救ってくれる者が他にも現れるはずだ‼︎」

 

いや、それ完全に乞食と変わらないぞ……

 

 

はぁ、と思わず嘆息を吐き俺は財布から諭吉さんを複数取り出す。

 

「ほれ、これでしばらくは持つだろ。これでその辺の格安のホテルに泊まったり、飯を食ったりしてしのげ」

 

そう言って俺はスーッと諭吉sを机の上に滑らせる。

 

「え⁉︎で、でも⁉︎」

 

「そうだ、これ以上助けてもらうわけには…」

 

「遠慮すんな。困った時はお互い様だ。それでなんとかやってけ。俺はこの後やることがあるからこれで失礼するぞ。乾燥機に入れてたローブも脱水終わるだろうし、一先ずはここに一泊してその後は格安のところに変えろよ」

 

そう言って俺は立ち上がる。

 

「「ほ、本当にいいの(か)?」」

 

「かまわねぇよ。じゃあな」

 

そう言って俺は外に出て行く。

出る際後ろから物凄い大声で感謝の声を述べられたが他の人の視線もあるので振り向かずに帰った。

 

というより、あの2人の容姿と食べっぷり、そして声の大きさや言動から終始目立っていたので俺にはそろそろ限界だった。

 

 

 

 

 

「ふぁぁあああ」

 

翌日大きなあくびをしながら俺は街中を歩いていた。学校はサボりだ。

 

というのも今日はオカルト部にイリナとゼノヴィアが来る可能性があるため仕事があると嘘をついて学校をサボった。別にそこまでして隠さなくてもいい気もするがあんなことをした手前悪魔ですよーっと会うのが少々辛かった……

 

 

あくびをしているのは夜遅くシノン達からの電話のせいだ。マジでなんで冥界とこっちで繋がっちまうんだよ……

 

 

 

しかし暇だ。

いつもなら仕事とかあるのだが、この前の協力者との接触でコカビエル側の戦力と目的がわかってしまい、尚且つ協会側の投入戦力もわかってしまっているので、久々にやることがなかった。

 

 

しかし、久々の何も無い時間だからか俺の中に流れるぼっちの血が騒ぎボーッとしながら歩いていると気がつけば夕方になっていた。

 

え⁉︎マジで何これ怖い。

 

久々に感じた時の流れの速さに戦慄していた俺だが突然声をかけられた。

 

「八幡君」

 

振り向いた俺の目の前には俺が昨日危惧していた人物……木場祐斗がいた。

 

 

 

八幡side out

 

木場side in

 

 

 

僕は悩んでいた。

あの日、イッセー君の家であの剣を見た時僕の中で落ち着いていた炎に燃料が投入された。

 

あの時、すぐにでも動き出したかった。

聖剣の手がかりがそこにあったから。

 

しかし、そんな僕の炎を止めたのはあの10日間の出来事。ユウキさんやヴィザ翁の言葉が鎮火剤となり僕の心を押し留めた。

 

しかし、今日……

聖剣使い達が僕の前に現れた。

思わず剣を振りたくなる。

今すぐにでも壊せと心の中で何かが叫んでいた。止まれ、止まれと必死に腕を握り抑え込む。ここでやれば部長達にも迷惑をかけてしまう。並の者では聖剣には勝てないし、ましてや悪魔にとって聖剣はそこにあるだけで脅威だ。

 

 

話が終わり彼女達が帰ろうとした時、彼女達はアーシアさんの存在に気付き彼女を否定した。

 

それがきっかけでイッセー君が激怒し2人に手を出そうとする。

 

「イッセー君、抑えて‼︎」

 

気がつけば僕は叫んでいた。

 

「なんだよ木場‼︎お前はなんとも思わな……」

 

声をあげたイッセー君は途中で言葉を止めた。

 

「祐斗⁉︎何してるの⁉︎」

 

部長が叫んだところで僕は初めて気がついた。僕の右手の爪が左腕に深く、深く喰い込み服が血で染まっていっていることに……

 

 

「っつ⁉︎」

 

気が付いた瞬間腕に痛みが走る。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

 

そう言って近づいてきたアーシアが僕の腕の傷を治していく。

 

 

「やはり、悪魔の傷を治すか……」

 

冷たく言い放ったゼノヴィアの声に再びイッセー君が反応した。

 

「お前な‼︎」

 

そう言って今にも飛びかかりそうなイッセー君の腕を掴み止める。

 

「放せよ木場‼︎」

 

声を張ってくるイッセー君に対して僕は思わず言ってしまう。

 

「僕が耐えてるんだ。イッセー君も耐えてくれ‼︎」

 

「ゆ、祐斗⁉︎」

 

その他の声は今まで出したことが無いほど低く、憎悪に塗れていた。そんな僕の声と様子を見てか部長も先ほど以上に驚いている。

 

「ふん。そこの男はよくわかっているようだな」

 

そう言って彼女らは帰って行った。

 

 

「どうして止めたんだよ木場‼︎」

 

止められたイッセー君は彼女達が消えた後も声をあげる。僕の過去を知っている部長達の顔色は悪いが……

 

「さっき言った通りだよ。僕が我慢してるんだから、君にあそこで突っかかって欲しくなかったんだよ」

 

そう言って僕はドアの方へと歩いていく。

 

「おい‼︎どこ行くんだよ⁉︎」

 

「待ちなさい祐斗⁉︎」

 

イッセー君だけでなく部長も声をあげた。

おそらくは僕が1人で無茶をしようとすると思っているんだろう。

 

 

「別に、じゃあね」

2人の制止の声も聞かず僕は部室を後にした。

 

とある事が思い浮かんだから……

 

思い浮かんだ事が正しいかどうか、答えが知りたくて僕は街中を歩いた。

 

そうして夕日が沈みかけた頃、僕はようやくその答えを知る人物と会う事ができた。

 

 

「八幡君」

 

僕の声を聞き振り向いた彼だが特に驚いた様子はなかった。もしかしたらこれすら予想していたのかもしれない。

 

 

「ん?どうしたんだ?」

 

そう聞いてくる八幡君だが、彼を前にいざ聞こうと思うと言葉が出てこなかった。

 

「えっと…………」

 

言葉を出そうとしては飲み込み、また出そうとして飲み込む僕に痺れを切らしたのか、その答えは聞く前に彼から発せられた。

 

 

「ゼノヴィア達にでもあったのか?」

 

「やっぱり……知ってたんだね……」

 

やはり彼は知っていた。

聖剣使い達がこの地に来ていることを。

そもそも、セラフォルー様の女王である彼がこの地に来た者達について知らないわけは無いと思っていたが、名前まで知っていることから、かなり深くこのことについても既に知っているのだと理解した。

 

「まぁな。俺にはいろんなところにツテがあるから情報が回ってくるのが早いんだよ」

 

そう言って彼はこちらを見据えてくる。

その眼はいつもの腐った目ではなかった。

それは澄んだ瞳。

そこには普段の彼ではなく魔王セラフォルー・レヴィアタンの女王比企谷八幡の姿があった。

 

なにもかもお見通しなのか……

 

そう思い思わずはぁと息を吐き出す。

 

「それで、木場……お前はどんな答えを出したんだ?」

 

「僕は……」

 

 

魔王の右腕に問いかけられた僕は自身の解を彼へと打ち明けるのだった……

 

 

 

 

 

 




今回は前回よりも短めになってしまいましたね。
でも次回はマジ長めです。
ご期待ください。

それと感想本当にありがとうございます。
感想を見てさらにやる気を出してるので感想お待ちしてます。
ではでは( ´ ▽ ` )ノ





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