悪魔の占い師(更新凍結)   作:ベリアル

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閑話

クーラーがきいた生徒会室には、生徒会の面々が各自の仕事をこなしていた。防音なのだろう、まだ日が明るい季節で、校庭と体育館で部活動に勤しむ生徒の掛け声は届かない。吹奏楽のラッパの音も聞こえない。ここで聞こえてくるのは、キーボードを叩く音とペンを走らせる音。

 

生徒会支給のパソコンに映し出されたに前年度の部費を参考に削れる予算を打ちこみ、賞や大会成績を残した部には、予算を上げられる数字を打ち込む。参考資料には、オカルト研究部の予算は0と記載されてる。部室にある高級カーペットなどの物資はグレモリー家の出費などなのだろう。

 

終わると保存をクリックして別の仕事に取り掛かる。生徒会の面々は仕事に関わる話もしているが、談笑もしばしば。

 

俺はステルスは発動してただ黙々と、カタカタッターンしていく。このように窓際社員よろしく誰かと極力会話することなく、淡々と仕事をこなしていく姿は、正に社畜の鏡と言えよう。

 

「八幡うるさい」

 

その発言で生徒会の視線が一気のこちらに集まり、動いていた舌は止まる。

 

なんだよ、会話つづけてろよ。注目しないでください。

 

ステルスを無効化した張本人はただペンを走らせている。心なしか笑いを堪えているようにも見えるが気のせいだろう。……貧乳めが。

 

「生徒会の仕事はどう?」

 

続けるようにこちらを見ないで口も動かした。

 

「生徒会でもないのに書類仕事どうなんですか?」

 

「初めてにしてはスムーズに進んでるじゃない」

 

「仕事の話じゃなくてですね。普通新人って先輩から懇切丁寧にやり方を教わるもんでしょ。特に部費とかやらせちゃ駄目だと思うんですけど」

 

「チェックするわよ。一週間くらいいいでしょ?」

 

会長の言う通り、一週間はここに足を運ばなければならない。

 

コカビエル戦での借りを返さねばならないらしく、指名生贄にされた。コカビエル戦ならオカルト研究部も戦ったから得に問題はないんだが、後始末はほとんど生徒会が請け負うことになったのだ。確かにクレーターや死体の山。後片付けは並の苦労ではないだろう。

 

それを告げにきた会長の目元には若干の隈が浮かんでいた。ミノタウロスの死体がトラウマになりそうだったらしい。

 

他の生徒会も死体慣れしていないせいか、大変だったそうだ。兵藤達はミノタウロスの死体は遠目からしか見ていないから、平気のようだ。

 

生徒会に借りを返すべく、売られてきたわけなのだ。不幸中の幸いというべきか、人とコミュニケーションを必要とする仕事は割り振られなかった。分からなかった時は、隣にいる真羅先輩に聞けばいい。彼女との会話は特に困ることはない。必要以上の会話がないのもそうだが、元々面識があるおかげだろう。

 

生徒会選んでなくてだったなぁ。毎日、こんな作業しなきゃいけないなら2日でバックレる自信がある。

 

「………」

 

しかし、困ったことに生徒会で俺を面白くないと思う奴がいる。

 

匙とかいう同じ学年の支取先輩の兵(ポーン)がやたら俺に睨みを効かせてくる。誰の目から見ても彼は主である支取先輩に行為を寄せているようだ。悲しいことに彼女はそれに気づいていない模様。

 

彼女に構われる俺に嫉妬しているといったところだろう。

 

かといって、俺にはどうすることもできない。普段通りに流していても睨まれるし、支取先輩の誘いを受けようものならば余計に厄介なことになるだろう。というか、受けちゃったら終わりじゃねえか。

 

「あの、会長と比企谷さんってどういった関係なんですか?」

 

1年生から遠慮がちに質問が飛んでくる。

 

自分で言うのもなんだが、”呪いの占い師”は有名で、つい最近まで正体が謎に包まれていた。シトリー家のご息女との関係は疑問に思われるのもおかしくはない。

 

「……そうね、友人という親しい間柄でもない。先輩後輩以前の付き合いでもあるわけだし」

 

会長は指で唇を隠すような仕草で記憶を辿っている。

 

だが、確かに俺たちの関係を言葉で表すのは難解だ。彼女の家に居候をしていた時期があったし、会長と副会長の特訓にも協力していた。しかし、友人というには距離もあったし、近づけないまま去ってしまった。

 

「強いて言うなら主従関係かしらね」

 

あえて言うならば、そうだろう。俺も同じことを言っていたかもしれない。

 

「それって私達みたいな……」

 

「どうかしらね。私自身よくわからないわ。共に戦い、私の執事になっていた時もあった。でも、ほんの短い期間だけ。書置きだけ残して出ていく、愚か者だもの。おかげでこっちがどれだけ苦労したのか分かっているのかしらね」

 

まだ根に持ってるんですね……。でも、あなたのお姉さまはご存知でしたよ。

 

「じゃあ恋人とかだったりはしないんですよね!?」

 

今度は匙からの焦ったような口調が会長に飛んでいく。

 

「え、あ、うーん」

 

また悩む姿に生徒会のほとんどが衝撃を受けたのか、口は開いていたが声は漏れなかった。

 

「つつつ付き合ってたんですか!?」

 

半泣きの匙が会長に詰めよう。それを近くにいた生徒会が取り押さえる。

 

匙は血の涙を溢し、俺を睨みつける。他の面々は恋愛ネタに飢えていたのかニヤついて俺と会長を交互に見ていた。

 

「俺と支取先輩は付き合ってねえよ」

 

「じゃあああどうして会長ぉは言い淀んだよおお!?」

 

「落ち着けよ……。恋人ではねえけど、婚約者候補にはなってたんだよ。先輩の親が勝手に決めてたんだ。俺たちは合意じゃない」

 

「あぁん!?」

 

「匙、落ち着きなさい……。あなた、疲れてるのよ」

 

因みに彼女の姉の婚約者候補にもなっていた。それを告げられた時は、俺と支取先輩は涙を流してしまいそうになった。当の本人は号泣していたが。

 

 

『はぁ゛ーぢゃん結婚じよお゛ぉ!』

 

『こわいこわい!怖いですよ!』

 

 

「……俺たちの間に恋幕とかは生まれねえよ」

 

ふと昔のことを思い出しながら、自然と口を開いていた。

 

あそこにあった光景は仲のいい一家が温かく暮らしていただけだ。俺はその一部は味わっていたに過ぎない。

 

「一緒に暮らしていた。それだけだ」

 

生徒会に設けられた部屋は静寂でいっぱいになる。血涙を流していた匙も興奮が収まり、俺の言葉に耳を傾けていた。

 

「彼の言う通り、私と八幡の間にあるのはただのビジネス関係。私の夢に関わるね。私の夢には彼が必要なの」

 

そう、俺たちにあるのは利害の一致だけ。そういった意味では俺は彼女を信頼している。

 

故に俺たちの間にはなにもない。

 

「でも、キスはしたわよね」

 

「ちょバッカ真羅先輩!」

 

が、いい感じに終わりそうなとこで、真羅先輩からの爆弾発言。

 

それにより室内がが先程よりも熱を帯びていく。女子数名の甲高い悲鳴が響き渡る。会長に詰め寄る生徒会女子連中。真羅先輩は微笑んで仕事を続けている。

 

この女……!

 

彼女ばかりに意識を向けているわけにもいかない。目の前の怒り狂った匙から逃げなくてはならない。今の匙には人間の言語は通じない。

 

「比企谷ぁぁああああああ!」

 

この日は怒り狂った匙に追いかけられて終わってしまった。

 

 

 

『お~い、生きてる?』

 

『よし、はーちゃんって呼ぼう!』

 

『初めまして、ソーナ・シトリーです』

 

『意外と連携考えてるのね』

 

『学校?え、まあ少ないわね。それがどうしたの?』

 

『それが”恋人(ラヴァーズ)”の条件なの?』

 

『私のモノになりなさい、八幡』

 

『私はいいわよ、あなたが婚約者でも。……なんて、本気にした?』

 

『お姉さま、私と八幡であなたを打ち倒します!』

 

 

『また会えるとは夢にも思わなかったわ。体育館裏まで顔貸してくれるかしら』

 

 

 






一人称ってこんなに難しかったっけ?

短いですけど、投稿しました。

最初はソーナと椿姫の3人でお買い物。八幡がため口になったりにしようとしたんですが
、ボツ。

次に生徒会と特訓を書いてる内に匙との戦闘に突入。ボツ。

ソーナ達との過去編、閑話の枠で収まりそうにないからボツ。

これで収まる形になりました。

戦闘を書かないことが本当に大変で、いつからこんな戦闘脳になってしまったんだと、辛かったです。

本当はもうちょっとイチャコラ書きたかったんですけど、誰だコレになったりでラブコメはキツイですね。

さて、次話はどうしようか迷っています。

閑話か、本編か。

ですので、ちょっと(かなり)時間がかかってしまいますので、ご了承を。




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