悪魔の占い師(更新凍結)   作:ベリアル

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2人の到達者

疲れ切った部屋の主は、そっと銃に手をかける。

 

「帰っても休みがないなんて社畜の鏡になったもんだな」

 

窓には一枚の黒い羽と駒王学園と書かれた紙が窓に貼られていた。誰の演出かは明白。予感するまでもなく、今夜が決戦であると察した。装備を整える、部屋を後にして、駒王学園へ自転車を漕ぐ。

 

途中、朱乃から連絡から入り教会のイリナがコカビエルにやられたことなど報告された。

 

「比企谷!」

 

既に到着していたオカルト研究会と生徒会メンバー。木場の姿は見られないのは相変わらずだ。

 

駒王学園には全体をすっぽり収めるような形で結界が張られていた。その役割を果たしているのは、生徒会メンバー。

 

学園内で待機しているコカビエルが本気を出せば、この地方都市は消し飛ぶ。それを最小限に抑えるために生徒会メンバーが動いているのだ。

 

正面から進むオカルト研究部。最後尾を歩く男に生徒会長から声がかかる。

 

「八幡。本当はこの戦いに魔王の力を借りたかったの。この結界もどんなに頑張っても1時間が限度。頼りにしてもいいわね?」

 

「嫌がらせですか?そういうこと言われるとプレッシャーかかるんですけど」

 

「失敗したら舌打ちしてあげる」

 

「やめてください。傷つくんです、そういうのは。あと、聞こえるような小声で、使えねえなとかも言わないでくだい」

 

「その役割は椿姫がやってくれるわ」

 

「任せてください、会長」

 

「任されないでください。地雷を踏まれるんで」

 

一通り軽口を叩き、微かな沈黙。

 

「……恋人がいるんで大丈夫ですよ」

 

八幡の視線には先を歩く朱乃の後ろ姿。

 

「そう。やっぱり彼女が最初の恋人なのね」

 

「使えるカードが多いことには越したことはないんでね」

 

そう言って小走りになることもなく、オカルト研究部を追う。

 

「あいつに恋人っていたんですか?」

 

八幡の姿見えなくなったところで匙からの質問が飛んでくる。

 

「比喩よ、ただのね。でも……」

 

ソーナは八幡から目を離さない。

 

「私が最後の恋人であってほしいわ」

 

 

 

校庭には3人の人影。

 

初老の男。白髪の修道士。堕天使の幹部。

 

コカビエルは宙に浮きながら椅子に座っている。視線の先は苦汁を味わせられた八幡を見下ろしていた。

 

「バルパー、あとどれくらいでエクスカリバーは統合する」

 

「5分もいらんよ」

 

校庭の中央には魔法陣が敷かれた上には4本の発光した聖剣が浮遊していた。バルパーと呼ばれた老人は、ニタリと答える。

 

「エクスカリバーを一つにする気か。黙ってさせるかよ」

 

瞬時にバルパーを撃ち抜こうと無駄のない動作で、仕留めようとした矢先、冷たい殺気に当てられ思わず動きを止めてしまう。

 

邪魔をするなと言わんばかりに、殺意だけで動きを止めた。

 

「貴様らの相手は用意してある」

 

闇夜の奥から顔を出したのは、ケルベロスお呼びにミノタウロスの群衆。

 

「堕天使のくせに冥界の動物をよくもまあ集められたもんだ。動物大好きか?」

 

駒王学園の校庭には冥界の門番ケルベロスが3つの口を開けて雄叫ぶ。ソーナ達の結界がなければ一体に響いていただろう。一匹の獣を相手するのはオカルト研究部の面々。

 

八幡が相手取るのは牛の頭を持ったミノタウロスの群衆。大の大人の身長を優に超え、斧やら剣やら、果ては木の棒を各々利き腕に装備している。筋骨隆々の肉体の兵士は鼻息を荒くして八幡を凝視していた。彼らは素手で巨木をへし折ることなどたやすいだろう。それが武器を持っているのならば、鬼に金棒。標的にされている本人は涼しい顔で”天命の札”から一枚のカードを抜く。

 

「殺せ」

 

コカビエルの合図がかかると一斉に巨体の波が押し寄せる。怪物の疾走により地響きが校庭を襲う。

 

最前列にいたミノタウロスが斧を上段から落とした。下から突き上げられた拳で斧は砕け散り勢いの衰えない拳はミノタウロス1の顎を砕く。歯は何本も抜ける。そこから顎を鷲掴み、手首を捻れば嫌な音を立ててあらぬ方向に首が歪んでいた。

 

「運動は苦手なんだよ」

 

暗示されているカードは”力(ストレングス)”。

 

「ストレングス・オブ・ブラックキャット」

 

この日、木場には見せなかった”力(ストレングス)”の全力、”神器舞踏”が発揮される。

 

襲い掛かる大剣を2本の指ではさむ。攻撃を静止させると、大剣を持ったミノタウロスの首から血が噴き出す。並の刃物より切れ味を上回る手刀によるものだ。背後にいた別のミノタウロスの顔面に視線をやらず蹴りを入れ、顔がこれでもかとめり込む。骨は砕ける。顔は窪んでいた。

 

強化された肉体が更に強化された攻撃力に見合わぬ、猫のような軽やかな動き。この状態であれば木場の魔剣はクッキーの如く簡単に砕くことは雑作もない。

 

「運が悪かったな、全員死運だ」

 

繰り広げられるのはミノタウロスと激闘を繰り広げる”呪いの占い師”。否、”呪いの占い師”に死の宣告された哀れな獣の一方的な殺戮ショーだ。

 

突き出された槍を噛み砕く。巻き付いた鎖は引きちぎる。勢いにのったハンマーを殴り飛ばす。レイピアは肌を貫かない。短剣を指で弾いて粉砕。メリケンをはめた拳を手刀でぶつけ、手刀進行は収まらず手から腕の中へ侵入すると首に達した。これで50体目のミノタウロスを撃破。

 

大幅に強化された圧倒的腕力と速度と動体視力で行われるのは単純な暴力。目を抉られる者、首と別れる者、胸に穴が空く者。死因は様々だが、全て一人の人間が引き起こした災害だ。

 

(……妙だな)

 

素手による虐殺を繰り広げる中で自然と疑問が生まれる。

 

(冥界に生息するこいつらをこんなに連れてこられるもんか?堕天使の幹部なら容易いかもしれないが)

 

一つの仮説を立てる。幹部という役職の高さを利用して準備した魔獣。が、首を振って自分で否定した。

 

(いくら立場が良くても無理だ。第一俺はそれに苦労した側だ。となりゃ手引きした奴がいるな)

 

導き出されたのは第三者の存在。協力者が悪魔なのを前提に新たな仮説を3つ立てた。

 

(単に金か何かで協力した悪魔。グレモリー家またはシトリー家を狙いとする悪魔。……禍の団(カオス・ブリゲード)か)

 

2つの仮説は第三者の目的であった。しかし、最後の仮説は明らかに第三者が誰であるか特定している。

 

かつて八幡が所属していた組織、禍の団(カオス・ブリゲード)。精鋭揃いのテロ集団。悪魔・堕天使・天使の和平をよく思わぬ過激派が揃っている。組織は言わば連合であり、一枚岩ではなくいくつ派閥に分かれている。派閥のトップは有名人ばかりである中で、八幡がいた派閥は小さな派閥であった。

 

そこにいた際、教わった”仙術”と呼ばれる技術が”力(ストレングス)”に宿っている。

 

(やっぱ、ライザー戦で顔さらしたのはマズかったかもな)

 

組織を抜けた八幡。思い上がりでなければ禍の団(カオス・ブリゲード)の差し金だと踏む。げんなりしながら確実にミノタウロスを減らしていく。ミノタウロスの武器は八幡の体に触れることはない。当たったところでダメージが通ることはない。

 

(こんなことするってのは何かしら起こすってことだろ)

 

最後のミノタウロスの胸に手刀を突き刺しても”力(ストレングス)”の効果は切れない。

 

仙術は”力(ストレングス)”でなければ発揮できない。通常の状態はもちろん、他のカードでも使用不可能。

 

「僕ちん忘れちゃダァメェえ!」

 

「死ねぇええええ!」

 

襲来する双方向からの挟撃。青白い聖剣を持つフリード、光の剣を持つコカビエル。

 

フリードが持つ4本だったエクスカリバーは一本になっていた。明らかに1本では発せないオーラが宿っている。

 

これには舌打ちをして、エクスカリバーを回避してフリードの襟首を掴んで投げ飛ばす。背後から来るコカビエルの攻撃は受けるしかなかった。背中に赤い一本の線を引く。”力(ストレングス)”の効力のおかげだろう、切り口は浅い。

 

「俺さまおまえに辛酸なめさせれてんでね!あの日の屈辱晴らさせてもらうよん!」

 

「手段は選ばねえ! さぁて、制限時間はそろそろ切れんじゃねえのか!」

 

「………」

 

一誠達の方はかなり手こずっている。ケルベロスの動きは明らかに洗練された動き。人間の世界で言えば、軍用犬だろう。体格を活かし、厄介であろう一誠を重点的に狙っている。数の理があるため、このままいけばケルベロスはどうということはない。

 

逆に言えば、終わるまで八幡の加勢に誰もいけないということだ。

 

「待たせたね」

 

ただ2人の剣士を除いては。

 

今度はフリードが2つの剣撃を受ける番になった。

 

「チィッ!邪魔すんじゃねえよ!三流剣士ども!」

 

交差した剣技を防ぐ。

 

「4本の聖剣が一つになったのか……!」

 

「向こうから回収の手間を減らしてくれるとはありがたい」

 

怒りを滲ませる木場とは対照的に、任務を意識したゼノヴィア。

 

「ひゃははははは!俺さまを倒せるの前提で会話してんじゃねえ、よっ!」

 

邪悪な修道士が持つ聖剣が透過したした瞬間、木場とゼノヴィアの襟首が何者かに引っ張られ、景色が遠のいていく。視界に映る状態が正常になったときは、元凶の3人から離れた位置の戦闘を繰り広げるオカルト研究部の近くまで移動していた。

 

「なんのつもりだい、比企谷くん」

 

「おやおやおや、やっぱ一筋縄じゃいきませんねぇ!」

 

八幡の行動に意図が読めない木場は睨みながら問いかける。待ちに待った憎い聖剣との闘いを邪魔され、頭に血が上る。それは女剣士も同様。

 

そんな時、フリードからの声が届く。よく観察すれば、彼らが建っていた地面には、幾つもの線で抉られていた。

 

「融合した聖剣の能力か」

 

「イエース!今使ったのは天閃の聖剣、擬態の聖剣、透明の聖剣。これでゴミ2つを片せると思ったんですけどぉよぉく気づきやがったな」

 

仙術によって聖剣の形状が変化したのに、逸早く気づいた八幡の行動の結果がこれだ。

 

「くくく、焦ることはあるまい。全て揃えば最強の聖剣となるのだからな」

 

「バルパー……!」

 

聖剣計画を企てた張本人と被験者の再会。それは決して感動的なものではない。

 

悪魔の騎士の脳裏に深く刻まれた怒りと兄弟同然だった少年少女を失った悲しみが蘇る。

 

「あの時の僕は無力だった……!なんでもっと早く神器を、魔剣創造を使えなかったのか、後悔しない日はない……!あなたへの怒りも日に日に増していく……!」

 

「ほう、あの時の生き残りか」

 

「おやおや再会とは、ドラマティックですねぇ。復讐は果たせねえで死んじまいな、ゴミ」

 

「そう言ってやるな、フリード。彼らの犠牲のおかげで成功したのだ、聖剣を使えるものを人工的に生む研究が。ちなみにこれが彼等だよ」

 

懐から取り出した光輝く球体。

 

「完成?僕らは失敗で処分されたんじゃ……?」

 

声は震えていた。疑問を口にするが、読めてしまったのだ。バルパーの言いたいことが。聖剣計画の本来の姿を。

 

そして、バルパーの口から語れる聖剣計画の真実。聖剣を使うには必要な因子があること。それだけを抜き取ったこと。聖剣計画は未だどこかで行われていたこと。

 

全ては狂った研究者のエゴで行われたこと。

 

「聖職者とは思えないわね」

 

ケルベロスを仕留めたオカルト研究部の面々は、皆怒りを隠すつもりはなかった。

 

リアスの言葉に反応したバルパー。

 

「好きに言え。もっとも私の研究を教会連中を利用しているがな。忌々しい。改良して被験体を殺さないようにしてるんだろうが、やってることは変わらん。私を追い出しておいてな。記念すべき最初の成功作だ、くれてやる」

 

因子の球体を投げると、膝をつく木場に転がる。

 

見ていた八幡は同じように見ていたコカビエルに向き直る。

 

「茶番劇はもういいのか?」

 

コカビエルの挑発は聞き流された。

 

木場と八幡の神器への境遇は非常に似ていた。唯一、違う点は復讐を支えてくれる仲間がいる点だろう。証拠に彼の仲間が木場を見守っていた。

 

木場裕斗の復讐は木場裕斗が終わらせる。

 

八幡は復讐の矜持を理解していた。

 

「俺には聖剣などどうでもいいがな。そして、貴様には油断はない。”呪いの占い師”!」

 

飛翔するコカビエル。瞬時に察した八幡はコカビエルの頭上に移動し、腰をひねって全体重を踵に乗せる。交差した腕に阻まれ、脳天には届きえなかった。が、空に移動はされなかった。空中戦は八幡の望むとこではない。まともに空中を動き回れるのは”星(スター)”のみ。

 

空から遠距離攻撃されてはジリ貧。他にも遠距離攻撃で戦えるカードはあるが、天地の差で言えば天のほうが有利なのは言うまでもない。

 

「簡単にはさせてくれないか」

 

「ったりまえだ。こちとらただの人間なんだ」

 

光の剣と拳が衝突しあう。激しい接近の攻防。コカビエルは破壊力抜群の光でごり押したかったが、そんな余裕を八幡が見せるわけがない。しかし、接近の攻防も終わりを迎えることになる。

 

「チッ。時間切れか」

 

後ろに下がって、”力(ストレングス)”のカードが手元に出現。効力が切れた証拠。新たなカードを出そうとシャッフルさせる。その隙を逃すはずのないコカビエルは、地を蹴り翼の推進力で最短で詰め寄る。

 

「くたばれ!」

 

「させん!」

 

光の剣と八幡の間に割って入る破壊の聖剣。更にもう一本の剣がコカビエルに振り下ろされる。

 

「聖剣デュランダル……?」

 

「博識だな、占い師殿」

 

現れたゼノヴィアは2本の聖剣を左右に持ち、微笑して八幡の前に立つ。

 

「邪魔をしてくれるな、小娘。お前如きがデュランダルを使うなどおこがましいわ!俺が戦ったデュランダルの使い手ならば今の一振りで俺は消滅していたわ」

 

「であろうな、私が未熟なのは私が一番理解している。今の私では貴様には勝てんだろう」

 

「ならフリードの相手をしていろ。占い師を殺したら、次にお前を殺してやる」

 

「フリードはここを統治する悪魔の仕事だ。それよりも堕落した天使を滅さねばだろう」

 

「ぬかせ。貴様になにができる」

 

「貴様?貴様らの間違いだろ」

 

「”世界(ワールド)”」

 

声が聞こえてきたと同時にコカビエルを縛り上げようと、鎖が蛇行しながら飛んでくる。

 

「もっといいカードきてもよかったんじゃねえか?」

 

「いいだろう!まとめて相手してやる、飛べぬ蟻ども!」

 

そう言って翼を扇ぐコカビエルは空を飛べない2人の人間を遠距離から仕留めようと狙う。引いたカードの詳細は不明でも、先手をうったコカビエルの考えは正しく、”世界(ワールド)”には、”太陽(サン)”のように圧倒的攻撃力もなければ、”力(ストレングス)”のような身体能力もない。

 

”天命の札”の中でも弱い部類に入るだろう。

 

両手に光を灯し、シャワーの如き光の矢が八幡のみに振り注ぐ。遠距離攻撃のできないゼノヴィアには成す術もない。

 

「む?」

 

ゼノヴィアは消えていた。どこを見渡しても姿形はない。

 

上から見た景色には光の矢を躱す八幡。先ほどまでなかった正四角形の何か。

 

「油断はよくないな、コカビエル」

 

「なっ!?」

 

自分よりも頭上にいたゼノヴィアの破壊の剣とデュランダルが重たい風切り音をたてた。左肩に破壊の聖剣が、右頬にデュランダルが堕天使に血を流させた。どちらも浅く重傷には至らない。

 

攻撃を与えたゼノヴィアはただ重力に従い、落ちていく。その背中には天使の翼も悪魔の翼もありはしない。

 

「ワールド・オブ・クッション」

 

どこからともなく現れた巨大なクッションが数十メートルに及ぶ場所から落下したゼノヴィアを包み込む。

 

「感謝する、占い師。そこらのベットより柔らかいな」

 

「感想そこ?」

 

「占い師ィ!その女になにをしたあ!」

 

「はい、分かりましたって答えると思ってんのか?つっても大した能力じゃないけどな」

 

そう言いながら一つの巨大なボーガンが校庭から出現。巨大さもさることながら、通常のボーガンと違う点は、引き金がないという点だ。矢は槍の形状をしながら、フライトはついている。

 

考えるのは苦手な部類であるコカビエルは考察する。数多の戦闘経験から答えを導き出す。

 

鎖、クッション、ボーガン。順番に思い返していく。

 

ゼノヴィアの急上昇の謎。

 

(物体を生み出す能力か?それでは、あの小娘が飛べた理由はなんだ?)

 

思考の最中、飛来する巨大な矢。単発のそれを回避するのはたやすい。が、矢に鎖でつながれて剣を振るうゼノヴィアには不意を突かれた。それでもコカビエルにとっては遅い攻撃であっさりと防ぐ。ゼノヴィアの首を掴みへし折ろうとしたところで、

 

「させるわけないだろ」

 

背後にいた八幡が長剣を下ろした。

 

咄嗟に腕を離し、剣を回避。

 

「殺す手間が省けたわ!まとめて殺す!」

 

「せやぁあ!」

 

黒と白の剣が混じり合う剣を持ったがコカビエルを襲う。

 

フリードは血の水溜まりに身を沈める。4本の聖剣は粉々になっている。もはや歴史の遺産ではない。

 

そばにはフリード同様死体になったバルパーが息絶えていた。

 

「フリードやられたのか、役立どもが!」

 

「待たせたね、比企谷くん」

 

「それは……」

 

「ああ、これは禁手化。聖剣と魔剣を合わせた聖魔剣だよ」

 

「聖魔剣だと?ちょっと待て……」

 

禁手化には驚かない。これまで幾度となく、見てきたからだ。

 

光と影は混じらない。どれは聖と魔も同じ。

 

「合っているぞ、聖剣使いの小娘。聖と魔は本来相いれない。しかし、そのガキの禁手化は成功している。であれば、答えは簡単だ。司るバランスの崩壊。ようは冥界の魔王だけでなく、神も死んだ」

 

先程までとは打って変わって、笑い声を漏らすコカビエル。誰もが彼の話に耳を傾けた。

 

「神は先の戦争で死んでるんだよ!故にバランスが崩れ、ガキが聖魔剣などという異物を生み出せたのだ」

 

高笑いしながら告げられた事実に絶望の表情を浮かべる元も含めた3人の信者。悪魔になるまで各地で治療を行ってきたアーシア。かつては神に縋っていた木場。深い信仰のもとで聖剣使いとなったゼノヴィア。

 

「……事情は冥界の純血種と似たような状況だったのでしょう。神が死んだなどと知られれば教会は崩壊しかねない。俺だけでも戦争を始める!」

 

「人を巻き込むなよ」

 

「クソ野郎が!」

 

1発の弾丸と赤龍帝の光線がコカビエルに直撃する。埃を払うように、手で払い霧散する。

 

「無宗教なもんでね。俺には無関係だ。無駄話聞かされて”世界(ワールド)”の効力切れただろ」

 

「ッけんな!お前の都合で俺のハーレム計画を邪魔させてたまるかよ!」

 

「ほう。占い師はともかく赤龍帝のガキは大きな口を叩くな」

 

「叩くさ……」

 

左手を突き出して、赤龍帝の籠手がまばゆい輝きに包まれる。

 

「ライザーのときも、フリードのときも……俺はなにもやれなかった。みんなの足を引っ張ているだけだ。そんなのもうごめんだ」

 

籠手の宝玉からの赤い光が一誠の全身を包み込む。

 

「なにもできないでいるのはムカつくんだよ!誰よりも腹が立つんだよ、自分に!」

 

ドラゴンを模した赤い鎧。

 

「禁手化 赤龍帝の鎧!」

 

1日で2つの禁手化が誕生した。

 

「十秒でケリをつける!」

 

 





前回、3枚のカードを登場させるといいました。あれは嘘です。

ごめんなさいあながち嘘じゃありません。

というのも、3枚登場させると、どうしても長くなってしまうので、前後で分けさせてもらいます。

今回が前編。次回が後編みたいな感じです。

さて、次回はいつになるやら、という方もいるかもしれません。

全くもってその通りです!

作者もわかりません。後編の戦闘シーンはもう書き終わってます。でも、物語の方には全く触れていないので、時間かかるかもしれません。

前編も実は2週間前に完成してました。でも、かみ合ってない部分があったので修正したりして、こんなに経ってました。

聖剣編が終了したら日常編を少しやってみたと思ってます。キャラの絡みが少ないというのも、作者自身自覚しているからです。

可能なら第三者視点じゃなく主観で。八幡視点とか。戦闘なら第三者は楽なんですが、日常的な会話は主観の方がやりやすいんです。




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