悪魔の占い師(更新凍結)   作:ベリアル

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太陽の古代生物

「今すぐ神に祈れば一瞬で断罪してやる」

 

大剣を背負う少女は剣士と占い師の2人に挑発する。

 

「無宗教なもんで。内輪揉めとかやだしな」

 

「悪魔は神に祈らない」

 

場所を移した面々は各々の武器を手に空気が張り詰める。悪魔対天使の非公式の勝負。周辺には赤い結界が張られ一般人にバレる心配はないようだ。当の八幡はまさか挑発一つで戦闘になるとは夢にも思わなく、後悔の念が押し寄せる。RPGでいうイベント、逃げる選択肢は通用しない。

 

わざわざ神器を見せることもないと判断し”天命の札”は使用せず、イリナに銃口を向け何時でも撃てるよう引き金に指をかける。脳内では相手の神器の情報を参考にし、お互い怪我をしないように事なきをえようと算段を整えている。自分に対しての被害を最小限に抑えたいがための策。ここで勝ってしまえば余計に目をつけられてしまう。

 

「銃だなんて……、そんな鉄の塊で聖剣と戦おうだなんて。あぁ!そんな悪魔達に魅入られたイッセーくんがかわいそう!出来れば今すぐにでも私の手で罪を裁いてあげたい!でも、安心してこの悪魔の前にあなたからよイッセーくん!」

 

「……イリナ、悪魔とはいえ殺しは駄目だからな」

 

豹変する友人の様子に表情を引きつらせながら大剣を構える少女は忠告を送る。

 

悪魔の陣営も木場を除いて、一誠に知り合いかと視線を送る。当の本人は首を横に振る。

 

「いやいや俺知りませんよ!?ってうをあ!」

 

八幡との戦いを差し置いて、方向転換し刀の形状をしたエクスカリバーを一誠に向けた。

 

「な、俺!?比企谷じゃないのかよ!」

 

右腕に真紅の籠手を展開させ、その場から背を見せずにイリナから距離を取る。戦うはずだった八幡は運がいいと思い、銃をホルダーにしまう。

 

「……イッセー先輩助けないんですか?」

 

「因縁があるみたいだし邪魔しちゃ悪いだろ」

 

小猫の問いかけに他人事のように返す。一誠の方は興味がないのか、木場の方の見物を決め込む。

 

「氷と炎の魔剣か。汎用性のある神器はいいよな」

 

八幡は個の戦闘力において重要視するのは汎用性の高さだ。自身の神器のコンプレックスから来るものなのだろう。多彩さだけでいえば、冥界にも八幡は群を抜いている。しかし、ランダムのデメリットが多彩な戦闘技術を阻害する。

 

「でも、裕斗先輩心配です」

 

「そうね、今の裕斗は冷静じゃない」

 

一撃で木場の魔剣を粉砕した聖剣。更に地面に接触した瞬間、小型のクレーターが土煙を上げて完成した。木場はその光景に苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

八幡と手合わせした軽やかさが見られない。普段の彼なら受けず、躱すか受け流すかしてカウンターを繰り出していただろう。

 

「アホか」

 

木場は己の持ち味も忘れたのか身の丈を超える魔剣を生成。禍々しく、魔剣と呼ぶに相応しいが、木場の剣術と速さを活かした戦闘には向いていない。案の定、聖剣と魔剣のぶつかり合いは魔剣の敗北に終わった。本来の実力であれば、地に伏しているのは木場ではなく、破壊の聖剣を持つ彼女だっただろう。しかし、冷静さを失ったが故の結末。言い訳の余地はない。

 

紫藤イリナを相手取っていた一誠もいつの間にかやられていた。

 

それから教会の使命を果たそうとする2人は去っていき、憎しみを抱えた騎士も主の元から去っていった。

 

 

 

 

「あー。で?俺を呼び出した理由は?」

 

「………」

 

休日の昼間に男女4人が駅前に集まっていた。3人はオカルト研究部。気だるげに声を出す。一誠にご執心で付き添っているアーシアとたまたま会った小猫は神妙な顔つきをしている一誠に興味深そうにしている。呼び出された生徒会の匙は一誠の言葉を待つ。

 

「聖剣エクスカリバーの破壊許可を紫藤イリナとゼノヴィアからもらう」

 

主の知らぬところでオカルト研究部と生徒会の下僕達が仲間の為に動き出そうする。

 

 

そして、太陽が沈んだ代わりに満月が照らす駒王町の一角で2人の男が対峙していた。1人は駒王学園の制服を身にまとい、前方の5対の黒い翼を広げた堕天使を前に脂汗をかく。周囲に結界が張られ逃げ場はない。本来監視の立場にいる悪魔は仕事上の関係で今はいない。

 

「自己紹介をしておこうか、”呪いの占い師”。堕天使のコカビエルだ。お前と1対1の決闘を申し込む」

 

「堕天使のトップがこんなとこまで来て用事がそれだけなわけありませんよね」

 

ニヒルに笑いホルダーの銃を抜き、コカビエルに向ける。何故、堕天使の幹部がここにいるか理解するのに時間はかからなかった。

 

「聖剣の事件はあんたが絡んでるな」

 

点と点が線になる。具体的な理由までは分からないが、現在抱えている聖剣問題この場所でコカビエルがいるというのは偶然にしては出来過ぎている。

 

「ご名答。もう直明かすつもりだったから隠すつもりもない。遅いか早いかだけだ。俺は退屈なんだよ!あの血を血であらう動乱の世を取り戻す!何十、何百万の生命体が起こす戦争の再開を望んでいるんだよ、この俺は!だからその前祝いとしてお前に遊んでもらうことにしたんだよ、占い師ぃ!」

 

「戦争……、駒王学園が狙いか」

 

「ああ、そうだとも、本当は聖剣使いを利用するつもりだったんだがな」

 

「………はぁ」

 

あわよくば土下座に靴舐めの合わせ技で見逃してもらう計画でいた。元々聖剣などと関わる気0。特に堕天使の幹部に指名されるのは厄介極まりない。だが、結界を張られ逃げ場はない。なくともコカビエル地の果てまで追いかけてそうな勢いでいた。

 

絶体絶命、

 

「堕天使に碌なのいないな」

 

ではない。

 

空中でシャッフルされていく、タロットカード。コカビエルは狂気の笑みを浮べ、両手に光の剣を精製する。真っ向からの腕試しに胸を躍らせる。

 

ただし、コカビエルは一つミスを犯している。

 

「お前の実力を見せろ」

 

彼の実力を見誤ったことだ。八幡は己の実力を見誤る愚行をせず、冷静に分析できる。更に言えば、損得勘定で動く彼が動くには今の状況は不幸中の幸いと言えよう。面倒なことを後回しにしないで、今実行する。周りに誰もいないのは、自分の力を可能な限り見せたくない八幡にとって都合が良かった。

 

「”太陽(サン)”」

 

最大火力のカードを引き当て、左手のカードは炎に変化しつつ渦巻きながらバスケットボールほどのまばゆい炎の球体を作り出す。カード名通り、太陽さながらの赤と橙色の黄色の三色の輝きをしていた。周囲は昼間のように照らされていた。光に比例して八幡の影になる部分は酷く暗い影が生えている。

 

コカビエルくらいの距離をおいても火傷しそうな熱気が空気から伝わってくる。

 

「フハハハハハハハハハハハ!」

 

自分を見つめるどす黒い双眸に歓喜の声を上げるコカビエル。まさに命の危機に晒されているのが直感で把握できた。退屈な悠久を過ごして、持て余した戦闘欲を満たしてくれる相手が現れた。あの戦争を生きた堕天使の幹部が弱いわけがない。

 

左腕を真上に向け、増大していく光の槍を八幡に向ける。受ければ一溜りもないだろう堕天使幹部が誇る一撃。

 

「サン・オブ・トリケラ」

 

己で磨いた技術で太陽から9mほどの同色の太古の生物が呼び出される。

 

3本の角が特徴的で四足歩行が重たい体を支える。頭から首の上にかけてフリルがついた恐竜の中でポピュラーな

トリケラトプス。一説ではその巨体故に突進力はないと言われているが、太陽で生み出されたトリケラトプスは異なる。

 

巨体に見合わぬその一直線に突き進む動きはまるで新幹線を連想させる。コカビエルにとっても凄まじいものでも、避けきれない速度ではない。しかし、何かに飲まれたのか飛ぶ寸前でコカビエルは光の槍を放った。その一撃は相当な威力を誇る者で多くの悪魔、天使を葬り去ってきたコカビエル自慢の攻撃。

 

しかし、光の槍はトリケラトプスに触れた瞬間、音を立てることなく蒸発。

 

今も尚、左手に太陽を浮かせている八幡。

 

コカビエルは何が起きたのか一瞬頭の中が真っ白になった。

 

「”太陽(サン)”は”天命の札”の中で1・2を争う高威力のカードだ。俺自身あんまり好きじゃないんだが………」

 

言葉を紡ぐ。太陽から鳥の形状をした15㎝の小型プテラノドンが軌道を描き、コカビエルを標的に定める。1発だけで終わることはなく、20発30発と続々と発射されていく。通過した後は熱線が残る。曲線を描いたり旋回したり無駄な動きはあるが、八幡にはコントロールは不可能。まるで”天命の札”の気まぐれさが表れているようだ。それでも標的を逃すことなく、むしろその読めない動きこそがコカビエルを翻弄する。

 

「……皮肉なことに最初に使いこなせたんだ」

 

俺に日は似合わないと言っていた時期があったことも思い出すのでこのカードを死にたくなる思いに駆られるのだ。

 

「クソがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

最初の笑みから一変。怒りが溢れだす。せめてもの抵抗なのか周囲に結界を張るも、1秒にも満たない時間で作れるものなど知れている。一発の爆撃で粉砕される光の結界。

 

むき出しの肉体は炎のプテラノドンに囲まれていた。

 

「サン・オブ・プテラ」

 

初撃は背中に的中。小型とは思えない爆炎が黒い翼の羽を散らす。墜落の危機を感じ取ったのか上空に上がろうとした時、腹部への爆撃。黒い煙の中からコカビエルが上に投げ出され、視界には炎の滅亡が広がっていた。残りのプテラノドンは間伐を空けず、全弾命中する。爆発の嵐がコカビエルの姿を隠す。

 

爆炎に包まれた地上に投げ出された時には全身に大やけどを負っていた。かろうじて息はあり、意識もある。

 

「戦争とかやってもいいが、俺を巻き込むなよ。弱火にしといてやったから」

 

火加減をしていたかのような口ぶりはコカビエルの耳にはっきりと届いていた。周囲を覆っていた結界が硝子のように割れていくと同時に、コカビエルの横たわる地面に光る魔法陣が展開され、光に包まれたコカビエル。仰向けで八幡を憎々し気に睨みつける。極悪人もびっくりの威圧的な殺気。無表情で受け流すような八幡だが、内心肝を冷やす思いだ。

 

「次だ!次こそ殺してやる!四肢は八つ裂きにして豚の餌だ!胴体は馬に引き摺り回してズタボロにしてやる!」

 

最後にそう言い残して魔法陣ごと消え去るコカビエル。

 

「………必要以上に脅すなよ。夜も眠れないだろ」

 

圧倒的勝者はその場で腰を抜かす。

 

 





感想覧に主人公が八幡じゃなくてもいいのでは?という内容があったのでアンケート取りたいと思います。

多い方を今後の主人公にします。

活動報告に乗せておきますので、よろしくお願いします。

①八幡
②オリ主

締め切りは4月末までとさせていただきます。

所詮趣味なんだから自分の考えた通りでやれや、という人にはすみません。

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