海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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第55話の続きです。
ファンは何者なのか、大人は果たして嘘つきのままでいいのか、そして戦争の負の記憶は果たして人々の中に残っているのかを考えながら執筆しました。
内容は相変わらずキツイです。
カイジで有名な焼き土下座を智史が誠意のある謝罪を行えるかを見極める、というよりはじっくり嬲って殺す為に深海棲艦と艦娘を使って利益を貪るというシステムを造った組織の重役達に対して執行します。
当然、カイジで行われたものより更に厳しくなっています。(10秒→60秒、それも半身にガソリン掛けられて半分火達磨の上で)まあその分だけ耐え抜いて謝れた時に示される誠意も重く、大きくなりますが。
それでは今作もお楽しみ下さい。


第56話 悪意と真実

「何だと…。深海棲艦が次々と殲滅された挙句、そこから我が社の機密が漏れただと…‼︎」

「はい、深海棲艦は世界各地に突如として出現した未確認生命体に襲撃され次々と殲滅されました。その際に深海棲艦の隠蔽プログラムが無効化された後、我が社のネットワークに大規模なサイバーテロが行われ機密が次々と漏れた模様です。」

「一体、誰がこんな事を…‼︎まさか、艦娘達ではあるまいな!」

「各鎮守府の周辺海域の艦娘もまた、未確認生命体の襲撃を受け、鎮守府共々音信不通です。」

「成る程…、兎に角、誰がこんな事を行なったのかを直ぐに調べさせろ。我々が利用している者達の中に真相を悟った者が居るのかもしれんが、ここまでやるとは到底思えん。真相を暴露される前に何としても処理するんだ。」

これはリヴァイアサンごと智史に洗脳されたナマモノ達の侵略開始から少し経った後の組織の会長室の様子だった、自分達が作った深海棲艦と艦娘を都合よくコントロールして利益を生み出すという所得システムが露見したら今までそれに利用され続けて金を延々と毟り取られた者達に凄まじい報復を受けるのではないのかという思考が彼らの中にあった。何せ智史の発言通り深海棲艦と艦娘を生み出し、綺麗事で事実を隠して戦争というビジネスで儲け続けていたのだから。

彼らの頭の中には『何か物事をする時に醜い事、言いたくない事があったら極力それを隠してしまう事』というルールがあった、それに則り彼らはこのビジネスをうまく成功させたのだ。しかしその成功は大きくなればなるだけ『隠す』事を無意識に彼らに強要し、ましては『隠す』事で得られたモノを守る為へと彼らの人生を変質させてしまうという危険な面もまたあった。それに彼らは全く気が付けていない、それはある意味幸せなのだろうか、それとも…。

そして彼は『隠す』事が大の嫌いだった、例えそれが自分に都合の悪いモノであろうとも。彼は先述した面を見抜いてこう罵った、

 

「『隠す』事によって得られた成功に縛られる馬鹿共め、自分達がそうなってしまっている事に未だに気が付けない程に欲にまみれて愚かなのか。何とも欲深き輩だ」

 

と。

尤も、彼等がこの事に気づく気づかないに関わらず、彼は彼等を艦娘や人類共々巻添えにする形で滅ぼす気満々だが。

現に、彼の意向を反映するようにこの世界の中ならば至る所で艦娘や人類が物凄い数に膨れ上がったナマモノ達の圧倒的な火力にものを言わせた容赦の無い猛攻で吹っ飛ばされたり、形残さず消滅したり、そして彼等ナマモノ達の養分となり肥やしとなって次々と捕食されてしまったりしていた、無論その後にはぺんぺん草も何も生えず、人間や艦娘と呼べるものは誰も居ない世界が広がっていた。

 

 

「何だ、あの巨大な艦は‼︎」

「他の鎮守府が目撃した化け物どもがその周りを取り巻いているぞ!」

そしてリヴァイアサンごと海神智史の行く先々でもそれと同じ事は現出する、これはフィリピン方面にある鎮守府の一つでの事だったが、当然この後リヴァイアサンを取り巻くように存在していたナマモノ達が一斉に鎮守府に襲い掛かってきた。

 

「ええい、何としても撃退しろーー」

ーーズガァン!

ーーグワシャァァン!

鎮守府が本格的に襲われる。

こんな事例を一応、想定していたとはいえよ、あくまで真実を隠す為の手段の一つという程度でありーー即ち表面的、そして深海棲艦は組織のコントロール下に置かれ、ゲームバランスを保つ為に本格的に襲わせようとはしなかった事の裏返しでもあったーー本当に本格的に襲われる事は想定したまでには至っていなかった。まあ本当に想定していて造っても、甘く見積もって深海棲艦の局地的猛攻を防げる程度が最大でしかなく、智史の魔改造ナマモノ、おふざけ兵器達の猛攻を防げる程度に達するには茨という茨の道なのだが。

 

「うわぁぁ、助けてくれえ!」

 

ーーシュボァァァァン!

ーーゴォォォォォォォ!

ーーズゴォォォォォン!

 

「ギャァァァァ!」

「いやぁぁぁぁ!」

 

申し訳程度に付いていた中身スカスカの防御施設は紙屑同然にぶち破られナマモノがそこから鎮守府の中へと次々と突入して自身に備え付けてあった兵器を滅茶苦茶と言える程に乱射しながら縦横無尽に駆け回って必死に抵抗する艦娘や基地要員達を嘲笑いつつ、その防御網をズタズタに引き裂き暴れ回って蹂躙の限りを尽くす。中は仕組まれたゲームとはいえど『鎮守府』としての機能を果たす為の機能が最優先で重視されており当然の事ながら『防御施設』としての機能は外ほどあまり重視されていない。要するに外よりも中が脆い状態なのだ。

そんな状態で防御施設という名の外壁をぶち破られたらどうなるかは先述の通りである、一応『鎮守府』を構成するパーツとしての風格のあった建物の群れは見る影もないレベルで破壊し尽くされ、艦娘や基地要員達は吹き飛ばされるか、ナマモノ達に食われて殺されるか、あるいは智史の悪趣味に使う為に生け捕りにされると云う救い様の無い惨状であった。

そして智史はそこに居た提督達を直ぐには殺さず、あえて生け捕りにした、真実を伝えるというより

『悪魔』『鬼畜』『外道』『魔王』

そういう風に自分を認めて欲しいという承認欲求を満たす為に。万人に一見いいイメージを与えそうな承認欲求は偽善的と見做して一切持とうとはしなかったが。

さて、彼はそこで生け捕りにした提督達を詰め込んだ、瓦礫の山と化した鎮守府の残骸を一掃して設置した牢屋の群れーートレーラーに詰め込んで大衆の見世物にでも出来そうな程に空風通る鋼鉄の檻がメインのコンテナタイプのプレハブ式で作成したものなのだがーーへと歩いていくーー

 

 

「“うちの艦娘達は、どうなったんだ…⁉︎”」

「“分かるかよ、ここまで徹底した襲撃などこれが初めてだぞ…?俺の方もこの様だ、こっちの事など構ってられるか。”」

「艦娘、艦娘、艦娘、艦娘…。実に愚かな連中だなぁ…。本質はブラックだというのに。」

智史は牢屋群に着くなりそう冷たく呟いた、何処か醒めたような眼差しでコンテナタイプの牢屋にぶち込まれてもなお自分が所有する艦娘達の行方を心配する自称提督達を見つめながら。

 

「お、お前は誰だ!」

「『お前』?ふむ、私のことか。」

「そうだ!」

「あの化け物の群れを率いてるのは、お前か!」

「その通り、他ならぬ私だよ。そして私はお前達をここに軟禁し、これから救いようの無い地獄を味わせようとしている。」

「な、何だと⁉︎」

「まさか、うちの艦娘達を手に掛ける気か!」

「そうだ。」

彼らは彼を視線に捉えた、そして尋ねた、その問いに彼は何も隠さずストレートに答えた、深海棲艦によるビジネスに絡んでるからには艦娘も人間も皆平等に撃沈してやろうとはっきり決めていたからだ。

 

「本題に僅かながら関わる話だが、艦娘の格好について、考えた事はあるか?」

「こんな目に遭わせておいて、一体何様だ!」

「答えられるか!艦娘達は提督である俺達にしてみれば大事な存在だ!」

「艦娘達は深海棲艦を撃退するのには不可欠だ!格好などどうでもいい!」

「随分と稚拙な答えだな。だが、これでいい。」

「何い⁉︎」

「そんな言葉が易々と出てくる程組織に『依存』させる為に艦娘達はお前達を誑かすような格好をしていたのだよ。そうでなければ富などお前達からじっくりと搾り取れまいて。」

彼は艦娘の格好について尋ねた、彼らは彼の何処か醒めた態度に激高して答えられるか、艦娘は大切な存在だと感情的な答えを返す。

問いの本質から外れているが彼から見た場合、答えとしては十分だったようだ、自分の考えを確実に固めるのには。

 

「深海棲艦、艦娘のバックアップ並びに鎮守府の運営も担当する『組織』…。その二つに実は繋がりがあるとは、まさか考えもするまい?」

「ふざけるな!うちの艦娘達も、組織も、日々深海棲艦を撲滅する為に活動している!」

「“ふざけるな”?私は事実を言ったのだが。それはあくまで事実を隠すのに欠かせないというべき表向きのパフォーマンス。つまり組織側にとても都合のいい答え。事実、真実の答えではない。」

「な…⁉︎」

「見せてやろうか?本当の答えを。既にお前達がバケモノと罵るナマモノ達のエサに変えた艦娘共に見せたのだがなあ…。」

そう言い終えると彼は少しうんざりしたーーいくら事実要素がゴロゴロと詰め込まれていてもでも彼らにしてみれば所詮都合の悪いものでしかないから『偽造だ』『まやかし』とか考え言い張り「艦娘は自分達にしてみれば必要である」という思考停止状態を改めようとしないなと彼は見抜いていたーー顔で深海棲艦や組織の人間達並びに最深部のコンピューターなどから採取したデータを元にして作成したVR映像を大型のスクリーンを即座に生成するや否やそこに投影した。

 

「艦娘達や、深海棲艦は、全て組織の儲けの為に造られ、俺達はその儲けのシステムに組み込まれていると…⁉︎」

「その通り。これが現実、そして真実。事実に徹底して近づけた、事実の光景を収めていない作り物の映像とはいえど真実と現実を詰め込んだ上で再現したからには事実に等しい。」

「…ふざけんな、これは作り物だろ…⁉︎もしそれが本当だったら、俺達は、単に利用されていたという事じゃねえか‼︎こんなふざけた事認められるか!」

「そうだ!艦娘達が居なかったら深海棲艦によって俺達人類は滅亡してしまう!どこが真実だ!」

そして彼の予想通り彼らは『偽造だ』『作り物だ』と騒ぎ始めた、まあ予想通りなので改心してくれるとは一切期待しておらず、寧ろこのまま奈落に叩き落とせると彼は内心喜んでいたが。

 

「深海棲艦が猛威を振い始めた時にタイミング良く艦娘達が出てきた事も、一欠片も考えられない程に思考が止まってるか。実に心地いい。そのままで居てくれ。」

 

ーーパチン!

そう本音を告げた後、智史は指を鳴らす。牢屋コンテナにフォークリフトが次々と接近する、そしてフォークリフトは彼らを詰め込んだ牢屋コンテナを順々に列車に積載していく、そして牢屋コンテナを全て積み込んだ列車は彼が搭乗したのを見計らったかのように処刑場へと発車していった。

 

「ここは…‼︎」

「処刑場だよ。さっき呟いた自分の本題をきちんと履行する為の。」

列車は処刑場へと到着した、ここは正真正銘の処刑場だと彼がそう呟き終えると同時に逆さ吊りにされた艦娘達が懸垂型のコンベアで搬入口から運ばれてくる、彼女らは先述した通り敢えて殺さずに生け捕りにされた、彼の玩具として。

 

「て、提督、助けて!」

「あいつを、どうにかしてくれ!」

「お願いだから、助けて!」

「て、天龍!」

「高雄!」

「やめろ、俺の命はいい、だが俺の艦娘達は!」

聞くだけで今にも反吐が出そうな気味の悪い命乞いだな。

 

「やかましい」

その命乞い達を気味悪く感じた智史はそう一喝する、先程まで叫んでいた艦娘、提督達がその一喝で静かになる。

 

「随分といい服を着てるではないか。おや、そこのお前も綺麗な服を着て。顔色は悪そうだが、その艶のいい肌、生気に満ちた肌色…。史実と看做されたモノを模した装飾品を付けて、仕組まれていたとはいえ組織とやらの利益の為に男を誑かしたくて仕方が無いんだろうなぁ。まるでキャバクラ嬢みたいだ。」

彼は逆さ吊りにした艦娘達を自分の近くまで下げさせると、冷たい笑みを浮かべながら彼女らをじっくりと触る。当然触り方も厭らしいというよりは今にも殺してやろうと言わんばかりの悪意に満ちた触り方だった。

 

「嫌ぁぁぁ!触らないでぇぇ!」

艦娘の一人が彼の手を振り払おうと暴れる、この後何かされると怯えているが故にだろう。

 

「振り払おうが気にはせん。こう暴れられるだけの事は私はしているのだから。だが今からやる処刑はこんな些細なもので行う事ではない。お前達は組織の利益の為に仕組まれたとはいえ、あまりに思考が止まっている。」

「そ、そんな…。」

「真実を告げるのももう飽きた。いくら真実でも頭が止まってるし、第一都合が悪いから『虚構だ』とか言い放って己を正当化するからなぁ。バイバイ菌だ。」

そして智史は右手にMAC11を瞬時に生成すると逆さ吊りにした艦娘の一人に向けて乱射した、オリジナルはあくまで人間を殺せる程度の鉛弾をばら撒くモノなので、当然このままでは艦娘達をまともに殺傷する事など不可能だが、この『模造品』、否『模造品』であるが故に桁違いに破壊力が高められていた、深海棲艦、戦艦水鬼の20インチ砲などと比べ物にならない凄まじい破壊をばら撒く程に。

それを物語るかの様に弾丸が発射される度に空気が激しく震える、あっという間にその艦娘は全身を蜂の巣のように穴まみれにされ、何をされたかわからないまま絶命した、だが彼はその艦娘が絶命しても飽き足らず既に穴まみれの挽肉同然だというのに徹底的に弾丸を撃ち込んだ、四肢が千切れ内臓が吹き飛んでも。まるでこの世から一つ残らず消し去ってやろうと言わんばかりに。

 

「さて、次に死ぬのはどいつかな?」

「うわぁぁぁ、助けてぇぇ!」

「やだぁぁ、許してぇ!」

彼の行動で艦娘達が悲鳴を上げて再びここから逃げようと騒ぎ始める、とその直後艦娘達を吊り下げていた上のコンベアのレールが動き出す、実は艦娘達が今吊り下げられていたこのレールは懸垂式のトラバーサーだったのだ。

艦娘達を吊り下げたままトラバーサーは彼がいる方から反対向きにしばらくーー40m程度ーー走って停止した、と同時に艦娘達とトラバーサの真下の床がゆっくりと開く、そこに待ち受けていたのは、廃車となった自動車や粗大ゴミを破砕する為としか言いようがないオーバースケールな大きさの黒々と黒鉄色に輝くライオンシュレッダーだった。

 

「一体、何をする気だ‼︎」

「艦娘達の『解放』だよ、ライオンシュレッダーで裁断してやるという形でな。」

ーーガガン!

ーーガガァン!

そして彼は艦娘達とトラバーサーを繋いでいる鎖に向けて再びMAC11を放った、いっぺんに殺すのでは無く一人一人の悲鳴と断末魔、ライオンシュレッダーで裁断される際に響く肉が千切れ、骨が砕ける音を集音マイクを通じてじっくりと楽しむように。

 

「嫌ぁぁぁ、嫌ぁぁぁ‼︎」

 

ーーガガン!

 

ーーガコッ!

ーーゴキゴキッ!

ーーブチャッ!

 

「き、貴様、こんな事をしてタダで済むと思うなよ!」

「往生際の悪い言葉だな、だがこれでよい。」

 

ーーガガァン!

 

ーードカッ!

ーーバキィッ!

ーーゲシャッ!

 

檻に閉じ込められた提督達はその様子を見て声を荒げ悲鳴を上げる、だがこんな事などお構い無く、いや狙い通りに行ったと寧ろ嬉しそうに彼は処刑を続行した。

何故なら彼は『手に届きそうな所にいるのに手が届かない』つまり艦娘達を直に見ようと思えば見れる、でも彼女らに対して何かしてやれる事は無い、何も出来もしない、そんな場所に強制的に提督達を入れ込み、自分達のお気に入りというべき艦娘達の処刑の光景を直に見させる事で後味の悪さと歯痒さをじっくりと彼ら提督達に味わせたかったからだ。

 

「な、那智…⁉︎那智…⁉︎」

「大淀…、扶桑…⁉︎」

「これで全員『自由』になった。死んでナマモノ達の為の謎肉缶詰になるという形でな。」

謎肉缶詰…、主な成分は艦娘達の肉だから、「人肉」ではなくて「艦娘肉」か?何れにせよこりゃソイレントシステムさながらだな。

やがて処刑は完了する、彼は冷徹に処刑を完遂したと提督達に告げる。しかし内心ではその謎肉缶詰の主成分は元を辿れば艦娘達なので「人肉」ではなく「艦娘肉」と呼べばいいのかと少し戸惑う。何れにせよ彼らと艦娘達を痛めつけた事に罪悪感は感じてもいなかったが。

 

ーーガシャァァン!

ーーガシャァァン!

 

「い、今更檻を開けて何のつもりなんだ…‼︎」

「そうだ、こんな酷いモノ見せたくせに‼︎」

「今更怖気付いて許してくれと⁉︎ふざけるな‼︎」

「そう思って当然な程憎いだろう?こんな酷い光景を味わせた私が。艦娘達をゴミ同然に皆殺しにした私が。そして私に対する復讐の機会をやる為とはいえど、救うには今更のタイミングで檻を開けた私が。

私に先程の復讐をしたいなら今がチャンスだぞ、こんなチャンスは二度もやるつもりは私には無いからな。

さぁ、やりたいなら掛かって来るといい。ただしここで復讐を仕掛けてくるのを何時迄も待つつもりは私には無い。私は己が欲のままに赴くから気まぐれなのだ。

まあ、辿り着いたらだがな…。」

彼は今更だというのに何故か檻を開けた、そして『私を殺すなら今のうちだぞ』と吐き終えるとこれ以上の関心は無さそうに冷淡な態度を示し踵を返してこの場を立ち去ろうとする。

 

「こ、この野郎…‼︎」

「俺の、艦娘達を…‼︎てめぇはぁぁぁぁ‼︎」

彼に復讐をしたところで艦娘達が帰ってくる訳ではない。

彼ら提督達は流石にそれは分かってはいたもののそれでも彼に一矢報いねば気が済まなかった。

 

「ゔぁぁぁぁぁぁ!」

「おぁぁぁぁぁ!」

 

…愚かな。

何故今更と檻を開放し『復讐の機会は今のうちだ』と言って興味の無さそうな態度を示したと思う?それに「何故だ?」とふと我に帰って気がつかないのか?『辿り着いたらだがな』とさりげなく警告したのに。

まあその行動の真意を考えようとせぬ程に『熱く』してしまったのは他ならぬ私なのだから今更こう問いかけても仕方がないのだが。

ともあれアウトだ。「私に復讐をしてやる」と思った時点で。まんまと引っ掛かったな。

ゆっくりとその場を立ち去ろうとする彼の後ろから提督達が「復讐」せんと追い掛けてくる。だが彼は特に慌てず、何の反応も示さず、ハマったなと提督達を冷たく嗤う、するとーー

 

ーーグォン!

 

ーーザシュザシュザシュザシュザシュザシュ!

 

「な、何っ」

 

ーーバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!

ーーゴシュズゲシバシュバシュバシュバシュ!

 

突如巨大な黒い影が提督達の真下に出現する、提督達をすっぽりと飲み込むようにして。突然と大きな物体が出てきて光を遮ったという訳ではないというのに。

次の瞬間、そこから無数の黒い刃が次々と提督達を串刺しにした、何が起きたのかを悟る間も無く彼らは黒い刃に全身を貫かれて絶命した。

 

清々しく返り討ちにする。

これが私が敢えて檻を開けて「復讐して来い」と復讐を誘った本当の理由だというのに。

『大人』は自分から積極的に答えようとはしない、相手側から質問をされない限りは。仮に相手側から質問をされて答えたとしてもそれは自分に都合がいいと判断した時だけ。それ以外は一切答えようとはしない。

だからこそ私は『大人』が大の嫌いなのだが。とはいっても私が今為したこの事は本質に限るとはいえ『大人』がやる事と同義だからな、皮肉というべきか。

 

「琴乃、ズイカク、奴らへの仕打ち、終わったぞ。」

「智史、相変わらずお前は辛辣だなぁ、特に好きでないものに対しては。」

「ズイカク、お前だって好きでないものにはそうしたくなるだろうに。」

「私もよ。智史くんが仕打ちを始める前の提督達の様子見たけどあまりに気持ち悪かったわ、普通彼女達が居なくても別の生き方を選べば生きていけるのに、彼女達が居ないと生きていけない、心に余裕の無い駄々っ子みたいな感じが漂ってたから。」

「艦娘達に夢中になり過ぎるあまりに他の生き方を自ら放棄した、か。嵌められたとはいっても艦娘達に夢中になって居たのは事実だからな。そして私は、そんな彼らと『同じ』なのだろうか。」

「全く違うと思うわ。特にこれと夢中にもなり過ぎず、自罰的過ぎるけど自分をよく振り返って考えてる。提督達や艦娘達の様子や状況を冷静に見れてるじゃない。『やり過ぎじゃない?』って事はよくあるけど『本当に我慢できない』って事は智史くんには無いから。」

捕虜にした艦娘と提督達の処刑を終えた智史は自分は「自分自身も特定の事に夢中になり過ぎるあまりに彼ら提督達と同様、考えが止まってないか」とふと悩んで振り返った。自分が忌み嫌っている存在が実は自分自身もそれと同じ要素があったとしたら、物凄く馬鹿らしくて笑えなかったからだ。

だからこそ彼は先述した彼らと全く同じ存在ではないのだが。ただ他の生き方を放棄している点は形違えど彼も同じなのでそこだけを究極的に突き詰めるのなら彼らと同じだが。

 

「ところで…、智史、さっき『P38EX』と独り言言ってニヤニヤ笑ってたけど、何かおかしいのか?」

「おかしい?ああ、この機体はP38ライトニングにしては随分とオーバーなスピードと88㎜砲といった重武装を持った機体でな。そして似たようなモノとしてセイラン(晴嵐)が霧にはあった事を思い出した。」

「P38EX…、セイラン…。まさか…、もう嫌な予感しかしない。」

「それで当然。ハウニブーシリーズも真っ青な性能のWW2米軍モドキ機体をワンサカと作ってやる。ガチな光学兵器と特殊兵器満載のオンパレードだ。あとガトー級の霧verもな。艦娘達のトラウマスイッチ、折角なら限界まで押し込んでやる。

自分自身でもあるリヴァイアサンの兵装など態々使う価値も、ましてや直接相手をする価値などこいつらにはあるのか?勿体無い。」

彼はそう呟き終えるや否や早速これらの製造に取り掛かった、更なる高みへ達する欲望を満たす為に今もペースを目も眩み過ぎる程に上げ続けている物質生成能力が今回も猛威を振るい始まる、まずは全長6000mという巨大な滑走路を二つも備え、あくまで自己防御用とはいえ下手をしたらフィンブルヴィンテルすら一太刀も浴びせられずに簡単に消し飛ばしてしまう程の凄まじい火力とそれに見合った防御を備え付けた巨大な戦略メガフロートが20隻に霧ミッドウェイ級が100隻、それを取り巻くように戦艦、防空巡洋艦、イージス艦ーー何も霧の基本装備を搭載していたーーといった無数の護衛用艦艇が10秒も掛からぬうちにリヴァイアサンを囲むようにして生成された、既に日本列島以外の場所という場所はナマモノ達やおふざけ兵器達に制圧されて改変されてしまっているので、日本列島しか残っていなかったとはいえ、これだけでも日本列島を跡形も無く消し去るには十分過ぎる兵力だというのに、先述した通りにF6Fヘルキャット、F4Uコルセア、P-51Dマスタングに戦艦大和を始めとした多くの日本海軍の艦船を海の藻屑に変えたSB2CヘルダイバーにTBF/TBMアヴェンジャー、あと無差別焼夷弾爆撃や世界初の原子爆弾で日本全土を焦土に変えた悪名高きB-29スーパーフォートレスといった史実モドキーー何も艦娘達のトラウマスイッチを限界までに押し込む為に選んだのであり、手加減する気は全く無いーーにして実質はオーバーパワーな高威力兵装を無数装備した艦載機の群れが加わるのだからそれはそれは凄まじい事この上ない。

かくして、彼の手により生み出されて使役された大艦隊のメガフロートの滑走路から手始めにとB-29モドキ達が発進していく。

 

「お、おい…。なんだそのへんちくりんな絵の描かれたミサイルは…。」

「あれか?ああ、この世界の日本への怒りか、それとも私が居た元の世界への怒りか…。何れにせよ一度はやってみたかった。『神』すら超える立場になったからこそ出来るくせに、力が無いからと怯えて何もしようとせずに逃げたくせにと言われてもやってやりたかった。」

「何れにせよその場ばかりの平和を維持しようとして近視的な政策ばかりを繰り出し、結果として相手をより増長させる事態を生み出した政府への怒りとも受け取れるわね…。」

「その話の様子だと、何かとんでもないものを積み込んでるねぇ…。」

「その通り。全部熱核弾頭だ。先人達が戦争の恐怖として刻みつけたあの光、思い出させてやる。」

何故か一部のB-29は「将軍様のミサイル」と側面にデカデカと書かれ、先頭部分には某北半島の独裁者がデカールされた大型ミサイルを腹に抱え込んでいたのだが。

それと護衛のP-51DとF6F達が続々と飛び立っていく、表現する言葉がない程の地獄絵図を日本列島に撒き散らす為に。

 

「な、何だあれは?」

「B-29にP-51、F6Fみたいだが…。凄い数だ…。だがあんなアンティークなレシプロ機の群れを投入するとは、何なんだ?」

「気をつけろ、深海棲艦を滅ぼし、世界を蹂躙しまくった連中の一味かもしれん。」

「そうか?何れにせよ連中、日本列島に向かっているみたいだが…。」

「だったら退去通告は無用だ、撃ち落とせ!」

「そう言われなくても、うおっ!連中の方から仕掛けて来たぞ!」

進軍の道中、レーダーサイトに捕捉されたからか、F-15、F-2といったジェット戦闘機ーー恐らくはこの世界の日本の航空自衛隊か。全く別の世界のものだが便宜上、空軍と表現しておこうーーが本土の方から続々と飛び立って来た。仮に爆撃群が彼らを無視しても日本を徹底的に爆撃するという任務が彼により与えられている以上、彼らと一戦交える事はどうやっても避けられない。

彼ら空軍の迎撃戦闘機群だって日本を爆撃しようとする爆撃群の通過を許したとなったら笑えない。深海棲艦の影響で艦娘の航空機もどきが防空の主力を担わなければならない状態だといえ、深海棲艦群に各所が致命的に攻められていない以上、既存の脅威は滅失した訳ではないのだ。何れにせよレーダーサイトに捕捉された以上、空戦は必然だった。

そしてB-29の護衛に就いていたP-51とF6Fの一部、それだけでもが5000機もの数が彼らに襲い掛かってくる。彼ら爆撃群の護衛達の取る戦術は基本的には圧倒的な数の暴力と性能差を生かしたスチームローラー戦術だ。

 

「こいつらレシプロ機かよ!なんてスピードだ!」

「滅茶苦茶な機動だ!くそ、振り切れない!」

「レーザー兵器を装備してやがる、しかも全方位かよ!反則だろ!」

「くそ、三番機がやられた!」

「拡散ビームかよ!こんなものまで積んでるのか!」

圧倒的な数の暴力に対する彼ら迎撃戦闘機群の戦術は各個撃破だというべきだろう。いくら相手が旧式だからだといっても物凄い数なのだ。レシプロ機でも、複数相手にしていたら撃砕される可能性は大きい。彼らはあくまでもスピードがレシプロ機より滅茶苦茶な出る事とレシプロ機よりも遥かに多くの兵器を積みこめる事が出来るだけなのだ。

かくして迎撃戦闘機群は一つ一つ撃破する事を目的にして撹乱と陽動を試みた、しかし彼らはそれを読んでいたのか、迎撃戦闘機群と同じ戦術でレシプロ機とは思えぬ機動力で迎撃戦闘機を一機一機と集中して狙っていく。

 

お互いの戦術が同等ならば、火力が高い方が勝つのが道理。

 

この場合ならば戦術を戦術で無効化したあとは数と質の圧倒的暴力で叩き潰す、ただそれだけ。空戦は劇場版アルペジオDCでヒエイが言っていた先の言葉を具現化したような一方的な戦いへと変貌していく。

彼ら迎撃戦闘機群は騎射突撃に等しい一斉突撃を食らい、傷つき、隊列を乱す。それで逸れた者は待ち構えていた別の戦闘機隊の各種レーザーによる集中攻撃を食らって容赦無く大空で散華させられる。

仮にレーザーの死角から攻撃しようとしてもパルスレーザーを除いた彼らのレーザー兵器自体が前方に隙なし、後方に隙なし、全方位に隙なし、しかも広範囲攻撃が可能というモノが大半を占めているのでどうしてもレーザーの死角は狭まってしまう。

アクロバット飛行の様な芸術的かつ徹底して効率的な空戦機動も組み合わせた多彩な花火が現出しているような鉄壁というべき凄烈なレーザーの射撃は彼らに近づく事を一切許さない、一機の後ろに付いても、後方に向けてレーザー、別の方向からも、あちこちからもレーザー、レーザー、レーザーの嵐といった感じで。幾ら何でもこれは無茶苦茶な無理ゲーに等しい。しかも鋼鉄の世界系にある高レベルの電磁防壁を持ってきてもまだ足りないという狂いすぎている有様だ。彼らは鴨撃ちのように一方的に叩き落とされる。

 

「新たな敵機が12時方向より接近中!」

「我々の退路に待ち構えるようにして敵機が展開していきます!」

かくして迎撃隊の戦闘機の数は3割を切った、そしてトドメを刺すように先の5000機の戦闘機隊とほぼ同数の戦闘機隊が到着するという絶望的な凶報が彼らの耳に襲来する。

これでは逃げようにも逃げ切れない。

そう確信した彼らは一機でも道連れに叩き落とすべく突っ込んで来た、しかしそれはより容赦のない追撃を招き寄せる、レーザーの嵐が必死に戦闘機群を叩き落とそうとする迎撃隊を、そんな彼らから放たれたミサイルを嘲笑うように一機、また一機、一発、また一発と絡め取っていく。最終的に彼らは一機も撃墜できずに全滅してしまう。

だが、彼ら迎撃隊は全滅した事で皮肉な事だが地獄絵図を見ずに済んでいた。さて、彼らが守ろうとした日本本土の様子はというとーー

 

ーーほぼ同時刻、東京上空

 

ーーキュルルルルル!

ーーキュルルルルル!

ーーゴォォォォォ!

 

ーーシュボァァァォン!

ーースゴォォォォン!

襲来したB-29モドキが低空、高空問わず悠々と大空を舞いながら機体に取り付けた超高威力兵装を無差別に撃ちまくり地上に煉獄という煉獄を量産している、B-29モドキ達がその上空に到達するつい30分程前まではここは東京という名の鎮守府を束ねる組織の本社を初めとした大企業の本社の高層ビルやオフィスビルが立ち並び、港湾施設が海辺にわんさかと並んでいた大都市だった。

だが、彼らが到達してからのその30分だけで東京はものの見事に煉獄に変わり果てた、何百何千もの超怪力線、エレクトロンレーザーにX線レーザー、各種荷電粒子砲、レールガン、各種特殊レーザーにカニ光線、ねこビームになすビー夢がまず対空射撃を行う軍隊や艦艇、戦闘機を発進させる飛行場といった軍事施設に対し集中的に浴びせられ、片っ端から彼らを飴細工のように融解させ消滅させていく。そして彼らを薙ぎ払った後は波動砲に重力砲、光子榴弾砲に特殊弾頭ミサイルが合切を塵芥に変えんとばかりにこれに加わる、港湾施設が、高層ビルの群れが、コンクリートジャングルが、そこにあるもの全てを飲みこむブラックホールに飲み込まれたり、地下の構造物も根こそぎ抉り消し去るような地下からの爆発により宙を舞い、溶けて、消えていく。

一応彼らの襲来に対する避難命令が発令されていたのでそこに済んでいた住民は避難を開始していたものの、まともに避難するにはあまりに時間が短すぎた。組織のトップは短時間で脱出できるような手段を確保していたおかげだろうかすぐに脱出したもののそうでない者達の殆どはまともに避難も出来ぬままレーザー攻撃や波動砲や重力砲を無差別に撃ち込まれて何が起きたのかも分からぬまま悲鳴と断末魔を奏で合切を塵芥に帰す煉獄の焔に焼き尽くされ、この世から消えていく。彼らの襲撃が終わった後には大都市東京としての面影も、記憶も、存在も一切合切無いただ雄大に広がる火焔地獄が広がっていた。その光景は東京大空襲以上の一切合切根切りにせんばかりの凄まじい攻撃が行われた事を当然の如く物語る。

しかし仕打ちはまだ終わらない。熱核弾頭を内蔵したあのミサイル、そう「将軍様のミサイル」を搭載したB-29が日本全土にトドメとばかりに「将軍様のミサイル」を次々と撃ち込み始めたのだ、着弾する度にアトムの光が輝き巨大なキノコ雲が立ち昇る、着弾地点の、いや日本列島の地形そのものが核で変わり果てても完全に消え去るまでそのミサイルは撃ち込まれ続けた、広島と長崎の核の記憶を、太平洋戦争という負の記憶を、日本全土に染み込ませ、二度とこの世に日本という国を存在させないと言わんばかりにーー

 

 

ーー日本本格空襲の開始から2時間後、日向灘沖の様子

 

「な、何とか逃げ出せた…。でも鎮守府は…‼︎」

「アメ公を模した機体の群れに街ごと容赦無く蹂躙され尽くされた挙句、あの忌々しい光によって、残っていた仲間も一緒に焼き尽くされたよ…。」

「そんな…、これから私達はどうなるんだろう…。」

「B-29やP-51にF6F…、あんなアンティークな機体のクセに、どうして、どうして落ちないの…‼︎」

「しかも仲間は一方的に…。かつての私達が味わった悪夢が、再び蘇ったというの…?」

「悪夢は、もう味わない筈だったのに…‼︎」

「そして、訳のわからない化け物が世界各地で跋扈してるからには、他の鎮守府も頼れない…。」

艦娘達が会話をしていた、様子を見るに恐ろしく怯え、震えていた様子だ。服や艤装が汚れ、破け、壊れている艦娘が沢山いた。

その原因は言うまでもなく、彼による容赦の無い空襲が原因だった。日本本土に居た艦娘達は大半がこの凄まじい攻撃で殲滅されたが、一部はこの地獄から何とかと脱出した、彼女らはその一部だった。しかし、地獄から抜けても次に待ち構えて居たのは地獄だった。

 

「一時の安息と不安に大いに酔いしれろ。そして絶望と悔恨に満ちた数多の末魔を私に捧げよ…‼︎」

 

何故なら智史がそのようなえげつない手段で絶望へとどんどん突き落として彼女らの絶望に満ちた最期をじっくりと味わいたかったからだ。

 

ーーシャァァッ!

ーーヒュォォッ!

 

「ぎょ、魚雷⁉︎潜水艦が潜んでいるというのか‼︎」

「音探に反応は‼︎」

「ありません!」

「6時方向から、複数の物体が接近!」

「14時方向からも接近音!」

「20時方向からも!なおも増加中!」

突如として現れた無数の物体ーー魚雷の反応が彼女らの一時の安堵と不安を無理矢理引きちぎる、彼が生成した霧ガトー級の潜水艦隊が次々と魚雷を放ったのだ。

 

「深海棲艦のものよりも非常に速度が速く、航跡が視認出来ません!気をつけて下さい!」

「とにかく回避運動を取れ!散開するんだ!」

「は、はい!」

慌てて彼女等は散開し回避運動を取る、しかし魚雷は追尾してきた、そして雷跡が確認出来ずしかも600ノットは超える雷速を持つ高性能な水中ジェット推進である為に全弾とまでは行かなくても大多数の魚雷が彼女等の足では振り切れないスピードで迫ってくる。

 

「こ、来ないでぇぇぇ!」

ーーズゴォォン!

ーーグシャッ!

 

ーーバガァァン!

ーービチャッ!

 

そして魚雷に追いつかれた者から順に、巨大な爆発が生じる、魚雷が命中したのだ。魚雷が命中した彼女等は全身傷まみれになったり、腕や足、四肢や艤装を飛び散らせる。当然それは深海棲艦の武装を遥かに上回る凄まじい威力を誇る光子弾頭を搭載していた、深海棲艦に転生して艦娘で無くなっても徹底して消してやると言わんばかりに。彼女等は敵を発見出来ず、一太刀も浴びせられずに良い様に一方的に攻撃を受け続けて数を減らし、波間に消えていく。

 

「み、みんなをこれ以上は…。あぁぁぁぁぁ!」

「やめろ、朝潮!自殺行為だ!」

そんな一方的な状況に一部の艦娘は耐え切れずに半ば自暴自棄と化して主に魚雷が来た方向に向けて闇雲に爆雷や対潜兵装を乱射した、相手の居場所が分からないという事は闇雲に撃った場所にガトー級が居ない可能性が高いという事である、しかしガトー級が絶対に居ない訳でも無い。兎も角何もしないまま一方的に痛めつけられるのは嫌だったのだろう。だがそれは当然の事ながら余計に自身の存在を際立たせる行動でもあった。

 

「ぎょ、魚雷…⁉︎それも、10発、20発、数え切れない…。本当に、死ぬ、の…?」

 

ーーズシャァァァン!

ーーボガァァァン!

 

「朝潮!」

新たに放たれた無数の魚雷がその艦娘達に次々と容赦無く命中する、魚雷の炸裂で全身が砕け吹き飛ぶ、艤装も何も跡形も無く。

この時点で艦娘達はほぼ半数が壊滅するという有様だった、それも戦闘開始から僅か5分程度の時点で、だ。元々ここに居た彼女らは先述したように日本各地の鎮守府から何とか脱出した寄せ集め集団でしかない。冒頭で述べたように大小問わず大半が脱出の際に何らかの被害を受けていた為に無傷はほぼいない。その為躱そうも迎撃も上手く出来ぬまま魚雷を次々と食らってこうも全滅寸前になるのには時間は掛からなかった。

尤も万全の状態でもこうなるまでの時間が精々10秒程度しか延びず、こんな状況を変えるにはまだまだ力不足という現実が待ち構えているのだが…。リヴァイアサンもとい海神智史さん、今も膨張し続けている更なる高みへの欲望を満たす為とはいえ、あなたはあまりにも強くなり過ぎている。

兎も角彼女らがこんなに追い詰められても魚雷はなおも殺到し続ける、最後の一匹も残らず消してやるとばかりに。彼の艦娘達に対する悪意と殺意を物語るかのように。

そしてそれらの嵐により艦娘達は散開に転舵を重ねてあっちこっちにバラバラに散らばってしまっていた、艦隊陣形を乱さずに維持し続ける余裕も何も、ありゃしない、こんな悪夢のような魚雷の嵐の前では。陣形を組むなどこんな状況ではまるで自分達から射的の的になっているようなものだ。

しかし、艦隊陣形は何の為に存在するのか考えてみよう。

単に敵の魚雷に効率よく仕留められる為の方法なのか?

否。

戦闘を有利に進める為に生み出された戦術だ。

これを一つも為していないという事は何を意味するのか。

味方同士での連携が上手に取れておらずに各々が孤立してしまっているという状態なのだ。

この状態が戦闘上いかに恐ろしい事なのか。

それは各個撃破されるリスクが格段に増大した事である。まさにその通りと言わんばかりにに南の方からわんさかと航空機、それも旧日本海軍のトラウマそのまんまを模した機体の群れが彼女らに襲いかかってきた。

水中からの霧ガトー級潜水艦隊による魚雷飽和攻撃はまだ終わってなかったから、彼らがここに加わった事により艦娘達は脱出時の手傷、そして先の魚雷攻撃を食らってそれを更に深めて立ち直れないまま、海中と空中、その両方から徹底して苛烈たる同時攻撃を受ける事が確定した。

 

「ヘルキャット、コルセア、アヴェンジャーに、ヘルダイバー…。」

「嫌ぁ!もう嫌ぁ!ねえ、私達をそんなに苦しめたいというのぉぉ⁉︎」

「くうう…。もはやこいつらからは純粋な悪意と殺意しか感じない、深海棲艦ですらここまでの悪意をぶつけて来たと思うか…⁉︎」

そのトラウマの群れを見た艦娘達は泣き喚いたり、戦慄する、しかしトラウマ達はそれに反応を何も示さない、そもそもトラウマ達は彼の僕であり彼自身でもあったからだ。彼らはそれに構わず彼に与えられた仕事を忠実に遂行する為に散り散りとなった彼女らを連携を断ちながらガトー級潜水艦隊と協力して一つ一つ仕留める一斉攻撃を開始した。

 

ーーガガガッ!

ーーギュゥゥゥゥゥン!

ーーヴォォォォォォォ!

ーーバババババ!

 

そしてトラウマ達は機銃掃射やロケット弾、爆弾、魚雷を次々と艦娘達に叩きつけた、機銃の曳光が逃げ回る彼女らに彼女らに吸い込まれ爆弾やロケット弾が至近で炸裂して破片、否子弾頭が彼女らの肉体に食い込む。

 

「あ…、熱い!ぁぁぁぁぁ!」

「熱いよぉぉぉぉぉ!お洋服がぁ!」

「く、焼夷弾か…‼︎連中、一撃で吹き飛ばさずにじっくりと追い詰めるつもりか、どこまであのトラウマを蘇らせるつもりなんだ‼︎」

撃ち込まれた機銃弾や子弾頭の一部には彼女らの構成物質に爆発的な化学反応を連鎖的に引き起こしその際に凄まじい高熱を発させる化学反応型焼夷剤が濃縮されていた、それが撃ち込まれた彼女らの体内で解放され拡散し彼女らの構成物質と爆発的な化学反応を引き起こしてその際に6000℃という高熱ーーフィンブルヴィンテルの配下の虫達に用いた100万℃というエゲツない熱を発する焼夷弾には全く及ばないものだった、これを使った方がもっと効率的に短時間でに彼女らを殺せるのだが、裏を返せば彼女らをじっくりと苦しめる時間を大幅に短くする事にもなる他、いくら収拾出来るとはいえ、周辺環境に与える影響も先のものより遥かに膨大になる為、この焼夷弾は用いられなかったーーを発して彼女らの全身を瞬時に紅蓮の炎に包んでいく、その様は傍目から見れば火達磨様々だった。

火を消そうと必死にもがき海水を浴びようとするも通常の火とは大違い。優に1000℃は上回る高熱なので海水が簡単に蒸発してしまう。それに火はあくまでその焼夷弾が引き起こした化学反応の結果として生じた現象でしかない。根本たる構成物質との化学反応を断ち切らない限りは高熱も火も消えない。

彼女らは化学反応も、火も消せないまま全身を焼き尽くされ、やがて形を崩していく。しかし形が崩れても火は化学反応の元たる彼女ら自身の構成物質を焼夷剤が一つ残らず食い尽くすまで盛んに燃え続けた。

 

ーーピーピーピー!

ーーミィィィィ!

ーーピャォウォァァァ!

 

「あぁぁぁぁ!」

「げほっ!」

勿論、このトラウマ達にも光学兵器は搭載されていた、爆弾や魚雷にロケット弾を撃ち尽くして背を翻してはい帰還、それは絶望をより深々と与え続けるのにはあまりふさわしく無かったからだ。延々と永劫に討ち取るまで一方的かつ容赦の無い追撃を続ける事こそが絶望を与え続けるのがこの場には相応しかった、だからこそ。

トラウマ達は空母を模した艦娘から迎撃として放たれた『艦載機』もどきを歯牙にも掛けずに簡単に蹴散らすと上空を我が物顔で縦横無尽に飛び回りながらじっくりと追い詰め八つ裂きにするかのように執念深くかつ正確に光学兵器を次々と浴びせていく、それでもすれ違いざまに最後の抵抗として対空砲が彼らに向けて放たれたものの、命中しても悉く弾かれ、吸収され、彼の力の元として消えていく、嘲笑を浮かべているかのように。

そして艦娘達は機銃掃射や光学兵器のレーザーに切り刻まれ、艤装もろとも裁断され、縫われて次々と爆散したり、四肢を撒き散らして砕け散っていく。こうも苛烈では『深海棲艦』化して生き延びられた艦娘は全く皆無だった。

 

ーーギュゥゥゥゥゥン!

ーーグォォォォォォ!

 

「お…、お前らは、お前らはぁぁぉぁぁぁ!」

艦娘を皆殺しにしたトラウマ達は何処か誇らしげに、残った半ば手負いの艦娘、武蔵(※アルペジオのムサシとは別人)の上空を飛ぶ、手負いとはいえ先述したように自分の攻撃が悉く歯が立たず、自身の奮戦虚しく、自分を横に置いて仲間達が次々と嬲り殺しにされていくトラウマというトラウマを見せ続けられた彼女はこの行動で完全に吹っ切れた、彼の思惑通りに。

 

「せめて、せめてお前だけでも!」

彼女は残った主砲を死に物狂いでそのトラウマの一機に乱射したものの悉く弾かれて吸収されて同じ結果になるのが返答として帰ってきた。そして他のトラウマ達から無数の光学兵器が一斉に斉射され、彼女の全てを悉く貫き、完膚なきまでに切り刻んだ。彼女はその際に生ずる苦痛と絶望に満ちた断末魔を最期に挙げて、体液を撒き散らして完黙した。

 

 

「やっぱりいい絵だ…。これでこそ戦争。奴らの絶望とトラウマに満ちた最期が私に悦びを与える。

そして奴らはこれで絶滅した…。人間も同様にな。

しかし、いくら陰謀で非が沢山とはいえこいつらはサクラや提督達(イージスミサイル超戦艦 AGSBB 信長の登場人物。本作はこの作品とコラボしている部分がある)と相性が近い。共通点も沢山ある故にか。サクラや提督達はこれをどう考えるのだろうなあ…。取り敢えず報告、かな。」

「サクラ?提督?この世界の『提督』達じゃなくて?」

「ああ、全くの別人。かつて私と一緒に戦った仲間だ。」

「ふぅ〜ん。でも何れにせよこれでこの星はナマモノ達の星になっちゃったって事だね。既にナマモノ達が空と海を埋め尽くしちゃってる。」

「これからはこの世界ではナマモノが沢山取れそうだ…。この世界の生態系のバランスぶっ壊しちゃってる事がその証拠だけど。」

「環境の変化に適応、対抗出来なければその生物は滅びる。そうなるのは必然。」

「必然って…。ドSだなあ…。ところで、あいつらどうするんだ?」

「ああ、艦娘や深海棲艦を造り、その争いで利益を貪るシステムを創った元凶共か。殺すに決まってる。」

文字通りトラウマスイッチを限界まで押し込む程の殺戮劇の一部始終を見届けて満足げに笑うもどこかに複雑な思いーーかつて自分と共にフィンブルヴィンテルと戦ったサクラ達の事が主だったーーを抱えた智史はズイカクに組織のトップ達の処遇のことを訊かれ、艦娘達と同じく殺してやると答えた。彼らもまた、進化という形で研鑽に研鑽を重ねた彼の目からは逃れられず、乗っていたシャトルは彼のロックビームに呆気なく捕らわれリヴァイアサンの後部飛行甲板にいる彼の目と鼻の先に叩きつけられて大破した。

そして組織の重役達が大破したシャトルのハッチを開いてそこから湧き出してくる、彼らが死なないように加減したから当然な結末なのだが。

 

「うう、ここは…。」

「馬鹿共を騙して利益をうまく貪った挙句にいざ危機となると馬鹿共には黙って極秘のルートで脱出…。まあ馬鹿共をうまくこき使ったものだ。」

「だ、誰だ貴様は!」

「この星の侵略を世界各地で繰り広げ艦娘や人類を滅亡に追い込んだ張本人だよ。この嘘つき共が。

見たぞ。お前達が仕組んだ陰謀の全てを。そして自分に都合のいい嘘をつきまくって散々に利益を貪った事を。」

「そうしなければ、ここまで組織を大きくできぬし、第一組織が成り立たぬわ!利益を上げるのに印象やイメージは大切なのだ、例え嘘を吐き、真実を隠してでもいい印象を与えねば、利益はより上げられぬ!」

「欲深い、卑しい、下衆臭い。そして虚構ばかりで真実とは程遠く薄っぺらい。こうだから私は嘘を吐くのが大嫌いだ。特に見せびらかしたら都合の悪いモノは訊かれたら気が進まなくても吐いてやる。まあ訊かれたらの話だが。

嘘を吐きまくって繁栄を得ても最終的にはその報いが返ってくる、嘘を真実に、真実を嘘にしなければならないという事に縛られ続けるという形で。例え損をしても己が信念を曲げるつもりはない。」

ここまで言ったら、寧ろ裏で嘘を吐いていそうな感じもしなくないな…。だがそれから逃げても仕方がない、立ち向かうだけだ。

「何と愚直な!自分の本当のものをわざわざと素直に見せびらかすと!これではまるで子供だ!」

「こういう言葉が多くの大人の口から出てくるから大人は嫌いだ、お前達ほどそうでなくても自分に都合の悪い物を隠したがるから。本当の物事は都合の悪い時は全く言おうとせず、隠したがるからなあ。

子供、餓鬼と罵られて結構。寧ろ大人と言われる方が嫌いだ。そしてお前達の理想に基づく大人は子供以下だな。」

「な⁉︎」

「お前達は謝れるか?心を痛められたか?嘘に踊らされ、お前達に良い様にこき使われた馬鹿共達に。」

「そんな事あるか!愚民はこき使って利用して当然のモノだ!」

「そう言って当然だろうな。馬鹿共達を良い様に利用しこき使って当たり前と考えていたからな。だからこそその痛みを味わなかったのだろう。

まあ、『謝った』らこの事は許して見逃してやる。」

「あ、謝れだと⁉︎立場を弁えろ!」

「成る程、そんなに謝るのが嫌いか。ではこの場で今すぐ殺す。とにかく、過ちを認めるのが嫌なのだろう…?」

「随分と舐めた真似をしてくれる、だが貴様さえ討てばその野望は破綻する!」

確かにその通り。だがそうは甘くないぞ。

重役達の一人が隠し持っていたレーザー銃を智史に向けて撃つ、人間なら当たっただけで確実に死ぬ威力のある代物だった、この中年男は彼を人間と認識したからこそ撃ったのかもしれない。

しかし彼は見かけは人間でも中身は人間ではない。人の姿を模したメンタルモデル、いや終わりなき進化を続けるリヴァイアサンなのだ。

 

ーーパキィン!

ーーパキィン!

「な、何故効かん⁉︎何故だ⁉︎」

「どうした、これで私を殺せる筈ではなかったのか?他に策はあるのか?」

放たれたレーザーを全て吸い込むようにして吸収し、そう言いながら彼は凍てつくような殺気を放って迫ってくる、やれるならやってみろ、すぐに消してやるとばかりに。それを見せつけられたその重役は死を恐怖し、ガタガタと身を震わせ失禁し身を硬直させてしまった。

 

「あ、あ、あああああ…。」

「興を削ぐ様なその下らん面を二度と見せるな。死んでくれ。」

もはやただの置物と化したその重役の一人の首に彼は手を掛けるや否や次の瞬間、力任せに切断してしまった、一瞬、男の切断された首の断面から勢いよく血が噴き出す。

 

「さて、次は誰だ?」

「わ、分かった、とにかく謝れば良いのだろう‼︎」

そして彼は他のトップ達を睨みつけた、先程の光景を見て怖気付いた重役達は慌ててその場しのぎで謝る。

 

「違う、同じ事は二度としまい、そういう誠意のない形だけの『謝り』など私は求めていない。しかもこれには何の痛みも無い。謝りたい気持ちでいっぱいなら何処ででも謝れるはず、いや謝らずには居られない筈だ。謝らずに居られないという事はそのぐらい心が痛いし辛いし同じ事を繰り返さまいという誠意もまた同じ位あるのだ。たとえ体を痛めつけてでもその心の痛みが一つでも消えるのならば肉焦がし焼く焼けた鉄板の上でも進んで謝れる筈だ…。その痛みに耐えてこそ、初めて示せるのだ、誠意を…‼︎」

しかしその謝りは所詮その場しのぎで無かったが故に誠意が無かった、彼はそれに不満と不信を覚え、誠意のある謝りは何かという事について自論を吐き終えると指を鳴らしてバーベキュー用のものにしては随分と大きすぎる鉄板と石炭で一杯のグリルを生成した、そして彼はそのグリルの中へと火のついた木の棒を放り込む、石炭は瞬く間に燃え出し炭火へと変わる、炭火の上に置かれた鉄板は赤々と輝き高熱を帯び始めた。

 

「ま、まさか焼けた鉄板の上で謝れと!」

「その通り。これがお前達の誠意を見極める為の方法、通称、『焼き土下座』だよ。焼けた鉄板の上で60秒間、半身を炎に包まれた上で土下座をする事が達成条件。額を鉄板に付けてからが60秒のスタートとなる。もし土下座が60秒に至らないのならばやり直し。土下座の途中で火が消えてもやり直しだ。炎に包まれたまま始めから謝ってもらう。60秒の土下座に至るまで何度でも何度でもだ。それこそ皮も肉も全て溶け、焼け、骨を直に焼こうともな…。」

「や、止めろ、そんな事をされたら焼け死んでしまう!」

「焼け死ぬ?お前達に焼き土下座を拒否する権利は無い。戦いに勝って初めて実効性を伴って得られる資格、それが権利。私との戦いに敗れたお前達ゴミが主張する権利など最早聞くに堪えぬゴミ以下の醜聞。それでも権利を主張したい、主張したいのならその刑の執行を実力で止めてみるんだな。」

彼は淡淡と彼ら組織の重役達の命乞いを一刀両断する、そして再び指を鳴らすと彼らの周りを取り囲む様にして

黒いコートを纏った筋骨隆々な5mという高さの人離れした巨大な体格の灰色の肌が露わなスキンヘッドが特徴的な男達、通称T-103(バイオハザードシリーズより)が何体と現れた、T-103の群れは次々と重役達を鷲掴みにして捕まえると赤々と焼けた鉄板の所へと連れて行く。

 

「お、おい、そこの女の人、カネは幾らでもくれてやる、今から更生するからこの化け物を止めてくれ!」

「ダメね。智史くんはカネや権力にはあまり興味がない人だし、それにあなた達が言うカネと権力、幾ら馬鹿とはいえ多くの人をこき使い犠牲にして得たモノでしょう?

そういえばあなた達の立場なら、その気になればボディーガードや作り物を呼べるんじゃないかしら?」

重役達はそれでも往生際が悪いのか、T-103達に鷲掴みにされ連行されながらも喚く、金をやる、権力をやる更生する、だから助けてくれと。その命乞いに卑しさをふんだんに感じたのか、冷たく一蹴する琴乃。

 

「あ、ああ…、ああああああ‼︎」

「根絶やしにした今では来れそうにもないな…。そして相変わらず誠意の全くの無さよ。最期の時に誠意の厳しさをじっくりと骨の髄まで味わえるというのに。やれ。」

 

ーービチャァ!

ーーゴォォッ!

「おぁぁぁぁぁ!」

「ぎぃぁぁぁぁぁ!」

 

ーーガッ!

ーージュゥゥゥゥ!

「うごぉぉぉぉぉぉぉ!」

「一度にやるのは詰まらん、一人一人、じっくりとやってやれ。」

そして重役達は一人一人、半身にガソリンを浴びせられた後火をつけられ半身火達磨にされた上で赤く焼けた鉄板の上に叩きつけられるようにして放り出された。

半身が燃え盛るガソリンで焼かれるので跳ね回るも、消そうにもそこに接しているのは赤々と焼けた鉄板。

まさに、焼き地獄である。こんなモノなど人間にしてみれば最早度を逸した拷問だ、あまりの高熱に動かずには居られずに苦悶を上げて跳ね回ってもおかしくない。

しかし、こんな事を延々としてもこの焼き地獄は終わらない、この状態のまま額を焼けた鉄板に付けて60秒土下座をしない限り終わらないのだ。

 

「“ああああああ!おぁぁぁぁぁ!”」

ーーガンッ!

ーーガンッ!

ーードシャッ!

ーードシャッ!

「ひ、ひぃ、ヒィィィィィ!」

「やだ、やだァァァァァ!」

「ふふふ怯えろ…。もっと怯えろ、恐怖を共鳴させるのだ…‼︎誠意の厳しさを深く胸に刻み込め…。」

炎に包まれ苦悶を上げて跳ね回り、そして追い打ちとばかりにT-103達にその焼きかけの身体を赤々と焼け焦げた鉄板に何度も何度も叩きつけられる男達を見た他の重役達は動揺し恐怖する、そして震え上がる。

智史はそれを見て満足気に笑みを浮かべた、別に土下座が達成されない様な事を巻き起こしても彼は全く気にしなかった、「殺す」と発言していた通り、当初から彼らを生かして返すつもりなど毛頭すら無かったからだ。

 

「ふむ、焼き地獄に耐えきれずにくたばったか。次。」

「や、やめろ、やめてくれ」

ーーボアッ!

ーーゴオン!

ーージュゥゥゥゥ!

「うがぁぁぁぁぁぁ!」

やがて一人が全身を焼く苦しみにのたうち回った上に同じように焼きかけの身体を何発も赤々と焼け焦げた鉄板に叩きつけられて滅茶苦茶な様で焼け死ぬ、それを見届けると彼はまた別の重役を放り込む、その男も全身を焼かれる苦しみに耐えきれず、土下座もせずにのたうち回り、同じように叩きつけられてまた滅茶苦茶になって焼け死んでいく。

それが繰り返される、その度に一つ一つ違う苦悶が響いては消えていく。やがて最後の重役がグチャグチャの黒焦げとなって焼け死んだ、他の者達も皆グチャグチャに叩きつけられて原型留めないほどの黒焦げと成り果て苦悶や恐怖を刻みつけた様相すら分からないほどの様となって息絶えていた。

 

「ほんのちょっと負荷を加えただけで土下座のポーズさえ出来ずにのたうち回るとは、実に醜い。誠意の一つすら実行出来ない本性に相応しい苛烈な末魔が見れて満足だ。」

「いやいや、求めている誠意があまりに厳し過ぎる点もあるんじゃないの?まあこうでもなきゃ同じ事をまた繰り返すかもしれないからな。ところで、焼き土下座って発想、何処から来た?」

「カイジという漫画作品の中で兵藤という男が失態を犯した部下を制裁する際にその罰が用いられたシーンから来た。誠意の無い謝罪のポーズには不満足なんだとさ。」

結局、厳し過ぎる厳し過ぎないにせよ、これらに耐えきり60秒の土下座を成し遂げここを凌ぎ切った重役は誰も居なかったという事は明らかだった。

 

「さてと、ここは完全にナマモノの星になったし、ここでやりたい事、やるべき事は全部やり尽くしたから満足だ。次はフロントミッションの世界系に行くとしよう。寝返り電波砲を使って部下を洗脳して軍デレを弄んでやる。」

「軍デレ?誰だそれは?」

「リン・ウェンライトという女上官だよ。こいつは鬼上官の様に振舞いながら好きな奴に対してはツンデレだからな。ツンデレの焦らしは本当にイライラするから気に入らん。どういう風に嬲ろうか、マーライオン擬きにするあたりが面白そうだな。」

「やっぱり、ツンデレか…。新型寝返り電波砲を見てはニヤニヤ笑いながら小型寝返り電波砲を作ってた理由が分かった…。あ、そろそろ夕飯の支度した方がいいんじゃないのか?」

「そうだったな。琴乃、夕飯作り始めようか。」

夕飯食べ終えた後、サクラと提督達に艦これの世界系の一つでの仕置きの内容を説明しようか。

そして彼らはリヴァイアサン艦内の厨房へと向かっていった、夕飯といっても様々な世界を飛び回っているので時間の違いによる混乱を防ぐ為に最初に出現したアルペジオの世界の時間を基にして食事の時間を設定し、それに従っただけの事である。

それと同時にリヴァイアサンは人類も艦娘も深海棲艦も皆絶滅し最早立派なナマモノ天国となった艦これの世界を出発し、智史の欲望を満たす新たな生贄として選ばれてしまったフロントミッションの世界系へと向かっていった、家になってもいつも通りの顛末でーー


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