海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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前作の続きです。
今回は他人の視点で物語が進むところがあり、それを意識して書いた結果長い文章になってしまいました。
あと読まれる方によってはあのトラウマを思い出されてしまうシーンがありますので注意してください。
それでは読みたい方だけお読みください。


第5話 智史と群像、そして蹂躙タイム。

「ぐふふ、着々と強化が進んでいる…。いいぞ!この調子でもっと強くなるぞ…!」

リヴァイアサンの艦橋のトップでそうニヤニヤしつつ自分が強くなっていることを無邪気に喜ぶリヴァイアサン=海神智史。他人が見ればその様子は悪魔が微笑んでいること以外の何者でもない。彼はそう喜ぶ一方で同時に霧の艦の重力子反応を幾つか見つけていた。

「ナガラ級を改良したピケット艦が多数か、事前に調べ上げてシミュレーションで準備万端とはいえ、結構な数がいるなあ、おい。」

彼はそう呟く、そしてリヴァイアサンの左舷飛行甲板に霧の航空機、B-3ビジランティⅡとF-35CライトニングⅡが彼の生成能力で次々と生み出され始める。

「面倒くさい、もう霧も人類も関係ない、みな平等に殲滅してやる!」

そしてリヴァイアサンからB-3ビジランティⅡとF-35CライトニングⅡが各500機、合計1000機もの攻撃隊が飛び立っていく、彼らは各方面の霧のピケット艦に以前より大幅に威力を増した侵食魚雷や振動弾頭ミサイル群を容赦なく叩きつける、中には装備していたロケット弾、バルカン砲まで撃ちまくってピケット艦を粉砕する機体もあった。ピケット艦側も必死に反撃したが、こちらの航空機は彼らの攻撃を全て吸収し、自分達、ましてや智史の強化に回してしまう。仮にダメージを与えても次の瞬間には元通りになっていた。そして更に威力を増した猛攻が浴びせられた、彼らがリヴァイアサンから飛び立ってから霧のピケット艦群が全滅するまでに5分もかからなかった、彼から攻撃を受けているという報告を残して。ただし重巡洋艦一隻だけはあえて大破させても沈めずに残しておいた…。

 

「ふふふ…弱い…貴様らは弱すぎるっ!」

あまりに一方的な勝利にはしゃぎつつも心の何処かでは虚しさを覚える智史。

「それにしても霧も対策を練り出したか、改クマ(漢字で書くと球磨)級重雷装軽巡洋艦やアトランタ級防空軽巡洋艦、ナガラ級の後継としてアガノ級軽巡も投入か…。うちの方はこいつらが大量に襲ってくるのは結構な殺り甲斐があるし、現時点のスペックでも余裕で対処できるけど、油断は禁物、更に強化ペースを上げようか。でもうちみたいな能力を持たない群像達はその皺寄せを絶対喰らうな、これ…。果たして原作のスペック通りだとに振動弾頭をアメリカに持っていけるのか?霧の奴らうちのせいでピリピリしてるからなぁ…。」

そう彼が呟くのも無理はない、リヴァイアサンが霧に対してこれまでに与えた被害は無視できるものではなかった、

一矢を報いてなんらかの損傷を与えたならまだしも、一矢も報いることができずに一方的に殲滅されたからだ。しかもこれまでの戦闘データから彼らはリヴァイアサンはただでさえ強大だというのに更に強く進化していると判断していた、実際に何度も今後をシミュレーションしても自分達が全滅する確率が100%を示す数値が出ていた。それだけでも霧にしてみれば絶望同然だというのに、人類がSSTOに振動弾頭のサンプルを載せて打ち上げようとしているのだ、もしこれが量産されれば東洋方面の霧には破滅以外の運命は残されていない。

それに自分達の上司、超戦艦ムサシの諜報部隊にかつて所属していたイ401が2年前に人間を乗せて自分達に反旗を翻したのだ、人間を乗せた彼女は戦い方がこれまでとは異なっており、自分達の所属下のナガラ級や、駆逐艦、潜水艦が数隻づつと、元東洋方面第二巡航艦隊旗艦大戦艦ヒュウガが沈められた。もし彼女が奴と連携し始めたらますます追い詰められる。幸い彼女には奴と連携する兆しはないもののそれでも奴に追い詰められている今の自分達にしてみれば脅威以外の何者でもない。

リヴァイアサンは止められなくても自分達が破滅する運命だけは止めたい、そう考えた大戦艦ナガトはSSTOを守るべく行動を開始したイ401共々SSTOを確実に始末する為に大戦艦ムツを旗艦とする大戦艦級6隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦30隻の大艦隊となる第3巡航艦隊を佐賀県宇宙センターへ差し向けたのだ。

彼女は本当はリヴァイアサンとの決戦に向けて艦隊を一ヶ所にまとめたかった、しかしそんなことに集中していたら振動弾頭が量産されてリヴァイアサンの脅威と相まって破滅が確定してしまう。彼女は戦力分散によって各個撃破されることも覚悟の上で彼らを差し向けたのだ。そして彼が佐賀県宇宙センターに向けて向かっていることを知っていた、各方面にばらまいたピケット艦が彼から発進した航空機群の猛攻を受け瞬く間に全滅したからだ、その全滅間際に彼がそこへ向かっているという報告を残して。そんな彼女の苦悩を彼はハッキングできちんと見ていた。

 

「ナガトは霧を存続させようと必死みたいだ、でも容赦は無用。さあ、私が作る暴力と破壊のディナーを佐賀県宇宙センターに向かっている霧の皆さんに食べていただきましょう!」

そう彼は嬉しそうに呟く、そしてリヴァイアサンの船速が更に上がる。そしてその気分のまま、リヴァイアサンのCIC内部の画像を出すと…。

 

「琴乃さ〜ん、幾ら何でもこれはないっしょ〜。まあこの空間が自分の家とは異質だから変えちゃおうというのは分かるけど…。」

 

彼女はリヴァイアサンのCIC内部を自分が好きな空間にアレンジし、そして彼が置いた彼女自身の思い出をそこに飾っていたのだ、さすがに家具はそこには置かなかったが…。

「智史くん、どう?私風にあなたのCICを作り直してみたわ?」

随分と生活力ありますねぇ、琴乃さん。

「雰囲気的には…あんたの家の感じには近くなってる、でもどういう風に変えるのかは事前に説明して欲しかった、まあこういう空間も悪くはないけど。」

彼は自分の空間を勝手に変えられてしまったことにストレスを少し感じていた、しかし彼女が改変の内容が無機質な感じからだいぶ落ち着いた空間になったので、よしとした。

「群像くんに2年ぶりに会えるんだね、わくわくする〜!」

「招かれざる客もそこにいるから、ついでに彼らにうちのディナーを食べてもらおうか!」

それぞれ違う思いを抱えつつ2人は喜ぶ、そしてリヴァイアサンは有明海にいる彼らーー群像達と霧の大艦隊に向けて西へ突き進んでいく、そして智史はSSTOを巡る戦いが始まったことを知っていた。

 

ーーそして佐賀県宇宙センター近くの沖合にいる群像達はというと…

 

「おいおい、奴らこんなに来てるのかよ、こんなの聞いてねえぞ⁉︎」

「大戦艦ムツを旗艦とした大戦艦級6隻、重巡洋艦2隻を中核とした大艦隊ですか、こんな大艦隊は見ること自体が稀ですね…。」

「あの巨艦に追い詰められて後がない故に手段を選ばぬ勢いでこのSSTOの打ち上げを阻止したいのでしょうか…。」

「圧倒的に劣勢だが、何としてもSSTOを打ち上げまで守り抜くぞ‼︎全速前進‼︎」

 

 

ーーこれは、俺達にとって大ばくち、いや俺自身の願いで始まった戦いの今だ。俺たちは政府の命令に従って佐賀県宇宙センターに迫り来る霧の艦隊と必死に戦っている。

 

 

「本艦左舷方向に着水音多数!接近するタナトニウム反応を感知!数、500以上‼︎」

 

「サイドキック!音響魚雷、パッシブデコイ射出!発射タイミングは任意‼︎そしてそれらを射出した10秒後に侵食魚雷を発射!機関出力、最大!急速潜行急げ‼︎」

 

「音響魚雷発射準備よし!発射‼︎侵食魚雷、10秒後に発射!」

 

俺達が戦い始めた理由は人類にとって生命線ともいえる海を封鎖され、滅びに瀕しているこの世界の運命を変えたかったことが主だ。

 だが、残念なことに人類はその運命の変化を求めず、俺たちが次々と霧の艦艇を沈めていっても世界の運命は何も変わろうともしなかった。

 

ーーそれはわかっている。だが、悔しい。

 

俺達がどんなに動いたって、俺たちに世界を変えるだけの力が無いせいで世界が動かない。だが世界を揺り動かすほどの力を持った存在が現れても、世界が動こうとしないのは何故だろうか、そう、今から2週間前に現れた、未知の超巨大戦艦、リヴァイアサンがそうだと言うのに。

 

「パッシブデコイ、アクティブデコイ射出完了!」

 

「本艦の侵食魚雷、全て迎撃されました!」

 

「艦長!タナトニウム反応、さらに増加!艦後方及び右方向から600発!距離は一万を切っています!」

 

リヴァイアサンは圧倒的な力を示した。

まず手始めに霧の諜報潜水艦隊をまとめて沈め、東洋方面第一巡航艦隊を一隻で完全に壊滅させ、そして第4巡航艦隊も呆気なく蹴散らした。更についさっきのことだが霧の索敵網を片手間だけで完黙させたという知らせを聞いた時には世界の運命が変わると信じていた。

 

だが、世界は、世界自身の運命を歪めるほどの力を持ったリヴァイアサンを警戒して、自分達の更なる保身に走った、そして自身の視野を狭め、自身の内側に向けてしまったーー引き籠ってしまったのだ。

 

「侵食魚雷、なおも多数が本艦に接近!回避、間に合いません!」

 

「くっ、イオナ、クラインフィールドを展開!稼働率は落ちているが、何も無いよりはいい!」

 

「了解、クラインフィールド、展開。」

 

 

 世界が動くことを拒否して逆に保身に走った理由は俺にはよく分からない、ただ、圧倒的な力を持つ未知の存在、いや化け物としか思えないものを前にしてよく分からないが故に警戒して動けずに保身に走ったと考えたかった。

 その存在が霧と戦っていたと言うだけで、その存在が必ずとも俺達人類の味方であるとは限らない。だから人類が保身に走る理由は分からなくはない。ひょっとしたらその存在は人類を滅ぼすために現れたエイリアンなのかもしれないからだ。

 

「クラインフィールド、飽和。このまま今の攻撃を受け続けたら船体が持たない。」

 

「くっ…。」

 

「パッシブデコイ残存数ゼロ!これ以上は出せねえ!」

 

しかし今の世界がその存在を恐れて積極的に動こうとしない故に、まともな補給・整備を受けられない俺達は思うようには動けず、それが無くなったら後は動けなくなるだけの飼い犬と成り果てていた、そしてリヴァイアサンの圧倒的な力の前に後がない東洋方面の霧はそれ故に死に物狂いで俺たちやSSTOを屠ろうと襲いかかってきているのだ。

 

 

 

そして、彼らが霧に押し込まれている頃、智史は有明海付近の状況も調べていた、リヴァイアサンから発進した偵察機からの報告を精査し、霧の通信の様子と群像達の様子をハッキングで調べ上げた彼はこう呟く、

 

「群像達結構押されているな、歴史の修正力がうちではなく彼らに働いているのか?このままのペースだとうちらが有明海に着く前に彼らが殺られちゃうな、これ…。」

 

「えっ、今のペースだと群像くん達死んじゃうの⁉︎智史くん、急ごう、手遅れになる前に!」

その呟きを聞いていた琴乃が驚いて彼に急ぐように促す、そしてその言葉を実行に移すのかのように彼は攻撃を終えて一旦戻ってきた艦載機群を群像達を援護するべく再度発進させる、同時にリヴァイアサンの艦速も上げていった、群像達を援護するために。

 

そしてリヴァイアサンから艦載機を発進させてからほぼ10分後ーー

 

「もはや…ここまでか…。」

 

あの後俺達は霧からの猛攻を受け侵食魚雷や侵食爆雷が船体の至近で何十発も炸裂し、各所で浸水が発生して速力が低下し、更に超重力砲が使用不能になり、おまけに侵食魚雷や音響魚雷をはじめとした全ての兵装を撃ち尽くしてしまった。

 

「敵ナガラ、改タマ、アガノ、多数接近してきます。」

 

リヴァイアサンが出現してから霧の装備に大きな変化がありらナガラ級を上回る強力な霧の艦艇が次々と投入されているのだ。それらにハード面で対抗する術を持たない俺達は彼らを撃退することさえできなかった。俺達が沈められると覚悟を決めたその時ーー

 

「敵艦、次々と爆発を引き起こしています!」

 

「一体何が起きてるんだ!」

 

「艦長、レーダーの反応ではリヴァイアサンの艦載機群からの攻撃で爆発しているようです!」

 

俺達の仲間の一人、織部僧に言われた通りにモニターを確認するとそこには艦載機の群れからの攻撃を受けて次々と爆発轟沈していく霧の艦艇の姿があった、俺達はその光景を見て愕然とした、強大な彼らが次々と金属の海鳥達に落し物を叩きつけられて細切れになっていくからだ。俺達はただその光景を見守るだけしかできなかった…。

 

ーーほぼ同時刻。

 

「全機攻撃開始、そこに居る霧を全部海の藻屑にしてやれ。出し惜しみ無用、なぁに、幾らでも代わりは用意してやるよ。」

リヴァイアサンの上で智史は青いサークルを展開した状態でそう呟く、そして彼の一方的な破壊と殺戮のディナータイムが幕を開ける。

「まずはオードフルだ。艦隊の外郭にいる奴を血祭りにしてやれ。」

すると1000機ものb-2スピリッツとF-35CライトニングⅡの群れが次々と霧の軽巡洋艦群に襲いかかる、霧の方も必死に抵抗しているようだが、彼らとの彼我兵力差は愕然とした差が開いている、おまけに戦闘中でも彼ら=智史=リヴァイアサンは常に進化をし続けているのだから堪らない。霧の軽巡洋艦群はミサイルや侵食魚雷、更には着弾するととんでもない爆発を引き起こす量子弾頭ミサイルを次々とプレゼントされて爆発四散し、その全てが沈んでいく。

「次はサラダとスープだ。とくと味わえ。」

彼がそう言うと、b-3ビジランティⅡと爆装コスモパルサーの延べ500機もの混合爆撃群が襲いかかる、しかも前者は20t強化バンカーバスター「ツォールハンマー」を12発も装備し、後者は268基の300kg高性能炸薬弾が内蔵され、対艦戦に威力を発揮する複合爆装ポッドを2基も装備しているのだ、それが大戦艦ムツを除く全ての霧の生き残りに叩きつけられる。大戦艦キリシマは全ての兵装を展開して、必死に抵抗しているようだがその程度で引く気は彼にはひとかけらもない、むしろ攻撃をより一層苛烈なものにするだけであり、結局彼女達の抵抗は全く意味を成さず、ある艦は機関部にツォールハンマーを喰らって爆発四散し、またある艦は複合爆装ポッドを何十発も浴びせられて跡形もなく吹き飛び、次々と沈められていった。

「さ〜て、メインだメインだ、大戦艦ムツ、貴様に私特製のとっておきを食べさせてやろう。」

そう呟くと彼は有明海にいる大戦艦ムツに襲いかかっていく。

 

 

ーー大戦艦キリシマの独白ーー

 

 

ーーそれは私達にしてみれば霧の裏切り者を処刑し、リヴァイアサンとの決戦に向けて後門の憂いを断つ戦いのはずだった。

 

「皆、リヴァイアサンがここに向かっているようだ、こうなったらそれまでに401とSSTOを片付けるぞ。」

 

リヴァイアサンがピケット艦を全て沈めて我々の元に向かってきていると告げる大戦艦ムツ。

 

「なぜ奴に怯える、大戦艦ムツ。大戦艦級の私の火力なら奴など怖くはない!」

「大戦艦キリシマ、奴は常識を逸する相手です。あなたの火力だけでは奴には勝てません。」

 

ムツの発言に憤る私を重巡洋艦アタゴが制する。

 

「実際にあなたの姉であるコンゴウ様が奴に何の手傷も負わせることができずに沈められています。」

「そ…そうか…。」

 

彼女の発言を聞いた私は沈黙を強制せざるを得なかった。

そして401との戦闘が始まり、我々は彼女を順調に追い詰めていく、しかし彼女をあと一歩で撃沈できるという時に、悪夢は始まった。

 

「敵機多数レーダーに捕捉!リヴァイアサンからです!」

「おのれリヴァイアサン!自らは姿を表すことなく飛び道具で攻撃してくるとは!」

 

そして奴の一方的なワンサイドゲームが始まり、奴の破壊の尖兵が次々に襲いかかり、我々の軽巡洋艦は次々と沈められていく、奴らに対抗するために必死で対空砲火を放っているのに一つも墜ちていかず、奴らは平然と攻撃を続けている。

 

「これだけ攻撃を浴びせているのに、何故だ、何故墜ちないっ!」

「こちらもだ、全ての攻撃が吸収されている。」

 

そう嘆く私にハルナが音声通信で私にそう伝える、しかし次の悪夢が私達を襲う。

 

「くっ、今度は私達か!だが何としても生き残るぞ、ハルナ!」

「同意する、キリシマ。今はこの地獄から生きて帰ることを優先しよう。」

 

私とハルナは滅びの定めに必死に抗う、しかしそれはその定めを確実にするだけに終わる。

 

「大型ミサイル20発、こちらに向かって落下、駄目だ、回避が間に合わない!」

「ハルナ!っ、ばっ、バンカーバスター⁉︎うっ、うわあぁぁぁぁぁ!」

前の戦闘で対空兵装の大半を損傷し、機関部にもダメージを受けて速力が低下しているハルナには延べ20発の大型ミサイルが命中、その船体は粉々に吹き飛んだ、そして私にはバンカーバスターが4発も命中しその全てが私の機関部で爆発、私の船体を跡形もなく吹き飛ばした。もちろん私達はクラインフィールドを展開してはいたものの、こんなに強力な兵器を複数食らってはその防御など紙切れ同然に吹っ飛ばされた。

 

「ハルナっ!無事か!」

「ああ、ミサイルが炸裂した時に私は水中へと吹き飛ばされたから大丈夫だ、こちらこそ無事で何よりだ。」

 

幸い私達は爆発の際に船体から吹き飛ばされる形で爆発をもろに食らわずに済んでいた、イセもアタゴも船体を潰されたが、コアとメンタルモデルは無事だった。しかしフソウとヤマシロと重巡洋艦チョウカイはミサイルとバンカーバスターが何十発も命中して、コアを脱出させる間も無く轟沈した。それを嘆いていても仕方がない、とりあえず私達はとりあえず集まったあと、流れ弾に当たらないように海底で助けを待つことにした。

 

「しかしなんて奴らだ、こちらが一方的に…。」

「残るはムツしかいない…。戦況は絶望的だ。」

 

だが、悪夢はこれだけに終わらない、ついに奴が姿を現した、私達にはその姿は世界の全てを司り、悪しき者を容赦なく裁く巨大な蒼き龍のようでもあった。

 

「い…嫌だ、こっちに来ないでえぇぇぇ!私は、私はまだ、死にたくないっ!」

「落ち着け、アタゴ!むやみに騒げば殺されるかもしれないぞ!」

 

奴は水上にいたが、その姿は海底にいた私たちにもくっきりと見えた、そしてあまりの迫力にアタゴはまるで人間のように怯え、狂乱していた、私は彼女を落ち着かせることで精一杯だった。

 

「リヴァイアサン!私は刺し違えても、貴様をここで討つ!」

 

そう言い、全力で攻撃を仕掛けるムツ。その姿は仲間を嬲り殺しにされて怒り狂っているようにも思えた、しかし奴は平然とその攻撃を受け止め、そして吸収してしまう。ムツが全てのミサイルを撃ちつくすと、奴から青黒い光条が二本、ムツに向けて放たれた。

 

「リヴァイアサン、貴様の反撃はその程度か!」

 

そう言いミラーリングシステムを展開するムツ。しかしそれこそが奴の狙いだった。

 

「馬鹿な、上下の多次元空間の穴から大量の重力子エネルギー反応⁉︎」

 

奴はミラーリングシステムの仕組みを理解し、それに対するカウンターを用意していたのだ、これは彼女にしてみれば想定外の事態だった、そして奴はその様子を見て嬉しそうに呟く、

 

「これが貴様の為に作っておいた取っておきのディナーだ。これを味わいながら、苦しまずにひと思いに逝くがいい。」

 

そして黒い濁流が次元空間の穴から吹き出し、ムツを飲み込み豆腐でも圧し潰すのかように彼女を粉砕する、そして一際巨大な爆発が起こり濁流が穴へと引いていき、元の空間に戻るとそこに彼女の姿はなかった、コアやメンタルモデルの反応さえ確認されなかった。

 

「まさか…ミラーリングシステムが…。」

 

あまりに無常識な光景にハルナは唖然とする、超重力砲を防ぐ究極の盾さえ奴は無力化し、それを逆用してしまったのだ。そして奴は戦闘が終わってこちらに気がついたのか、こちらの方に向かってきた。

 

「リヴァイアサン…、お前は…私達を殺す気なのか…?」

 

ハルナは奴の圧倒的な暴力の前に身を震わせつつ奴に向けて言葉を口にする、私も殺される覚悟を固めていた、しかし奴からの返事は意外なものだった、

「“そこの海底にいるメンタルモデル、さっさと乗れ。貴様らが海底で恐怖に怯えてガタガタ震えているのは見苦しい、だからだ。”」

そして奴は右舷甲板から梯子を海面に垂らして、私達はそれを伝って奴に乗り込む、そして奴の意外な正体を目にする。

 

「お、男⁉︎」

「馬鹿な、メンタルモデルは女だけのはずだ!」

 

そう驚く私達。そして奴はこう答える、

「貴様ら何を勘違いしている?船の代名詞に女性の代名詞が多く使われていたことは事実だが、かといってこのことを絶対化して信じ込むな。感性が鈍っているのか?このボケナス共。

私は霧の究極超兵器、超巨大戦艦リヴァイアサンであり、海神智史というメンタルモデルでもある。ようこそ、我が船へ。」

 

そして私達は奴に歓迎されて、奴の元にしばらく居候することになった。

 

一方、智史達は…。

 

「うわ〜今回も容赦無いね〜、智史くん。少しはあの人達に情けをかけたら?」

「そんなことをすることなんかあまりできない、情けをかけたらその殆どが仇になるし。そして捕まえた奴らは突っ込みどころ満載だしっ♪」

智史は相容れぬ者は容赦なく排除していくという性格である、それはさておきとして彼が拾い上げたメンタルモデル達は彼にしてみれば突っ込みどころ満載である、例えばハルナはコートを脱がすとシクシク泣いたりガクガク震えたりして弱気になってしまうのだ。イセもアタゴもそういうところがあり、彼にしてみれば彼女たちをネタにした悪戯による他人の反応を妄想して笑いが止まらない、だから彼女たちは容赦なく彼の悪戯のネタに使われることが多くなる。唯一キリシマだけは彼が望む突っ込みどころを持っていなかったので彼女は比較的マトモな扱いとなる。

 

そして群像達の方はというと…。

 

「おいおい、こんなのアリかよ、こいつあいつらを一方的に叩き潰してその攻撃全部無力化して、しかもその攻撃を全部吸収して自分を強化・進化させちまうなんて…。まさにやりたい放題だな、おい。お前はどうなんだ、群像?」

「…。」

そう訊く橿原杏平の質問に群像は答えることができなかった、自分達を苦しめていた大艦隊が容赦なく蹂躙され、次々と海龍の生贄になっていく様をどう表現したらいいのか分からなかった。

「とにかく、我々は助かったみたいですね、艦長。」

そう僧が呟く、少なくとも自分達を攻撃する気配が彼にはないのだ。

「群像、リヴァイアサンから通信が入っている、早くモニターに出して。」

イオナがそう言い、画面にリヴァイアサンのメンタルモデルが姿を現わす、そしてその姿を見た杏平は男だということに驚く。

「初めまして、401クルーの諸君、そして千早群像君。私は霧の究極超兵器超巨大戦艦リヴァイアサン。そしてそのメンタルモデルの海神智史です。君たちのことはよく知っていますよ、なんでも無計画に行動して中途半端な結果に終わったことで。あ、そうだ、群像君、君にに会いたい人がいるから401のメンタルモデルーーイオナと一緒に甲板に出てきてください。」

そう彼は言うとぷっつりと通信を切る。

「おいおい、上から目線でこっちの悪口いってきたぞ。」

「行こう、イオナ。彼が俺たちに会わせたい客がいるらしい。」

「分かった。」

そして二人は401の甲板に出る、401の右側に戦闘が終わったのか、青いバイナルが消えているリヴァイアサンの姿があった。

「やっほ〜、久しぶり、群像くん。」

「お…お前は、琴乃⁉︎一体何故ここに?」

「私が君に会いたがってたし、彼も君の顔が見たいって賛成してくれたから〜!」

なんとリヴァイアサンの左舷飛行甲板から智史と天羽琴乃が姿を現していた。

「私はイオナ。あなたが智史?」

「そう。うちがリヴァイアサンであり、智史でもある。今回の件うちのせいで酷い目に遭わせちゃった、ごめん…。」

「今回のことはあなたのせいじゃない。そんなに自分を責めないで。」

「でもそんなに酷い損傷蒙ったんじゃ、横須賀まで無事に行けないよ、だから直してあげるね。」

彼はそう言うと右手からナノマテリアルを大量に発生させた、そしてそのナノマテリアルは白い雪のように401に降り注ぎ瞬く間に損傷した箇所が元どおりに戻っていく。

「綺麗…。」

あまりに美しい奇跡に八月一日静が思わず感動する。

「んじゃあ行こうか琴乃、ナガトが首を長くして待ってるから。」

「そうね、あまり長く話す理由は無いからねっ。じゃあね、群像くん!」

彼と琴乃は群像達に別れを告げた、そしてリヴァイアサンは機関を唸らせ沖縄へと進んでいく、そしてそのバックでSSTOが空へと登っていく。彼はナガト達の覚悟に応える為、彼女らに決戦を挑むのだ。後にその決戦での彼の完全勝利が、人類を救う第一歩になると知らずに…。

 




今回リヴァイアサン=海神智史が披露した新たなオプション

次元津波発生能力

元ネタは鋼鉄の咆哮wsg2より。
ミラーリングシステムを無効化する為に彼が考え、開発した新たなオプション。重力子エネルギーと量子エネルギーを共振させることで次元空間に非常に強烈な重力子エネルギーの津波を発生させるというもの。今作ではムツのミラーリングシステムで作られた次元の穴から逆流させるという形を取ったものの自分でミラーリングシステムを展開して、津波のエネルギーベクトルを操作すれば半径500㎞以内(現時点での最大効果範囲。今後彼の自己再生強化・進化システムによってその範囲は拡大し、そして威力も大幅に上がっていく。)の物を一瞬で殲滅してしまうことが可能。

おまけ
今までの強化で最大速力が上昇。
水上 2200ノット→3500ノット
水中 2000ノット→3300ノット

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