海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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注意

この小説はアンチヘイト満載です。
この小説を読んで不快な思いをされても責任は取りません。
今回はとあるの魔術サイドが酷い目にあいます。
とあるシリーズの説明色々読んで書きましたが、もし不足があったら知らせてください。必要があれば対応します。
多少スランプ状態で書いたので投稿遅れてすみません。
それではじっくりとお楽しみください。


第44話 否定される『魔術』と因果関係

「リヴァイアサン…。ヘブライ語で「渦を巻く者」という言葉を語源として生まれた言葉…。旧約聖書では最強の生物と定義された存在…。その名を冠した『存在』は全てを焼き尽くす炎を放ち多くの世界を悉く焼き払い、行く手を阻む者を次々と引き裂き葬った…。まさにリヴァイアサンの名にふさわしき所業だな…。」

「彼のことをこの世界では知らぬ者達から聞かされた時は少し驚いた、この世界の外から『災厄』がやって来ることなど殆ど聴いたことがなかったのだから…。」

「だが彼らの表情、態度に偽りなど見当たりはしなかった、このことから推測するにこの世界は彼の手により呆気なく踏み荒らされ、壊されてしまう可能性がとても高い…。」

「実際にこれまでにない禍々しい何かが迫りつつある、あらゆるものーー魔神達さえ霞んで見えなくなってしまう程、いやそれ以上の力を持った何かが。そうならば我々の夢は早々と潰えるのかもしれない、全てと共に。そしてこの世界は彼の草刈場となるだろう…。」

学園都市の中枢部に聳える窓のない構造物の中にある生命維持槽の中にいるアレイスター=クロウリーとエイワスはそう会話をする、エイワスはヒューズ=カザキリ(風斬氷華)を製造ラインにして、この世界に現出した存在であり、アレイスターに知識を必要な分だけ授けた存在である。

 

「だが、何もしないわけにはいかない、少なくとも実力で勝てる可能性はほぼ皆無だ、我々だけならまだしも、この世界の全ての力をぶつけても勝てる存在ではない…。そんな存在と戦うのはあまりに無謀すぎる…。」

「実力ーーそれ以外ならば勝機はあるかもしれない…。」

「どういうことだ?」

「彼を話し合いをし、何らかのパイプラインを持つ…。そしてそこに策を絡める…。上手く行けば我々の夢ーーこの世界から魔術を消し去るという願いを叶える方向へと持っていける筈だ…。」

「しかし我々の話を聞いてくれる相手ではなかったらーー言うまでもないか。」

「承知している、だが実力で相見えるよりは可能性はまだ残っている方さ…。」

2人はこの世界から魔術を消し去るという計略の為に静かに策を進める、智史に聴かれているのも知らぬままーー

 

 

アレイスターとエイワスは己が欲の為に私との交戦を避け、私を利用する肝か、面白い。圧倒的な『力』で踏み躙ったところで改めてゆっくり話を聞いてみよう。まあまずは僧正を踏み潰してからだな…。

とあるシリーズの世界系の外に停泊しているリヴァイアサンの艦橋で智史は興味深そうにそう呟く、そして智史は時空を強引に捻じ曲げ、とあるシリーズの世界系に乗り込み、いきなり僧正達魔神がいる隠世に強引に踏み込んだーー

 

 

ーー隠世

 

「ん?お前さん何もんじゃ?只ならぬ気配を纏っているが…。」

「ジ、ジィージィ、これやばそうな感じじゃ…。何か現世の方でやばい奴が来るって話があったけど、まさか本当に…。」

「あの若造、アレイスターの奴とは一味違うみたいだな…。だがワシは魔神。現世の者達とは全くわけが違うのじゃよ。」

「現世も、隠世も、あまり関係ない感じで吹っ飛ばされるんじゃ…。魔神でも太刀打ち出来ないのでは?」

突如として現れた智史に困惑しかし戦慄する、僧正を除く隠世の者達、だが僧正は自分が最強の存在であると確信しており、彼に臆することなく戦いに臨もうとする。

 

「我ら魔神は“無限”の力を持っておる。何の策も講じずに下手に世界に足を踏み入れれば世界が我らの無限の容量に耐えきれずに崩壊してしまうのじゃよ。」

「成る程、この世界の中では“無限”と言い切って構わんだろうな。だが私はこの世界の存在ではなし、お前達に生み出されたものではない。さあ、“無限”と何処まで言い切れるかな?」

「ふふふ、こちらを盛り上げるような高慢な言い回しをしてくるのう…。行くぞい!」

僧正はそう言い終えると智史の方を見て1つ瞬きをする、そして泥で出来た巨大な腕が智史に襲いかかる、それは一発で宇宙一つを軽く破壊出来る威力を持つ代物だった、だが智史はこれを呆気なく防ぎ、この魔術に使われていたエネルギーも一瞬で一緒に分解吸収して己のものへと変換してしまう。

こんなこと普通ーー常人達の域で言えば『あり得ない』のだが、常に強化・進化を続け、更にはそのペースを言葉では言い表せないほどに上げまくっている智史にしてみればこんな攻撃も大したことではなかった。

 

「ほう、土か。神道において死とは「穢れ」を意味し、死体を土中に埋葬する葬法「土葬」は穢れを隠す側面をもつ。日本では仏教と共に火葬が伝来するまでは土葬が主流だった。これは日本各地に根付いた土着信仰、神道の風習が背景にある。それを先ほどの攻撃のモチーフとしているのか?」

「な、なんなのこの余裕…。ジィージィ、やっぱこいつヤバそうだよ…。早く締めにしようよ…。」

「ふふふ、これは小手調べじゃぞい…。やっぱお前さん面白そうじゃな…。久々に魔神の本領を叩きつけられるような強敵が現れて、嬉しいぞい!」

そして僧正は智史を蹂躙しようと襲いかかる、この後蹂躙される相手が自分自身と知らぬまま。それはともあれ彼は肉弾戦を挑む、無数の泥を纏って強度を増したーー並の方法では砕くことも出来ない程の強度を持つ拳が智史に向けて放たれる、しかし智史はこれを受けても全く涼しい顔だった、その場を動かぬまま気持ちよさそうにその全てを受け、そして先ほどと同じく吸収して己の力へと変換してしまった。

 

「土を浴びるのは好きではないが連打(マッサージ)は大歓迎だ。もっと殴って気合と元気を私にぶち込んでくれ。」

「な、何ぃ⁉︎良かろう、お前さんの気がすむまでもっと殴ってやるぞぃ‼︎」

そして僧正は智史をもっと殴りつける、しかし結末は残念かな、先ほどと同じだった。

 

「どうした、もっと強く、たくさん殴ってくれ。これでは凝りが取れなくて気合も元気も入らん。」

「ええい、もっと殴ってやるわぁぁぁ‼︎」

智史の『挑発』に更に激高した僧正は無我夢中に殴り続けた、判断する精神的余裕や肉体的余裕も完全に失って。やがて“無限”の力を持っている筈ーー無制限に殴打のペースを増大し続けられるーーの僧正の動きが鈍ってきた。

 

「どうした、ごちゃごちゃとうるさいな。これでもうお終いなのか?何か物足りないな。」

「な、何てやつじゃ…。もう堪忍してくれ、疲れた…。」

「“無限”と言ってはいたもののやはり事前に見て調べ上げたとおり、その力は無限ではなかったな。測りきれなかったから無限と確信してしまったのだろう。どうだ?自分の力が“無限”であるという高慢が崩れた気分は。」

智史はそう冷たく、嘲笑うようにして言い放つ、老人の姿をしていようとも見た目に惑わされることなく。

 

「ついでに言っておくが無限の“モノ”は存在はしない、よって私の力も無限ではない。無限に存在する事象は時間の流れぐらいだ。

だがお前は自分が無限の力を持っていると慢心した、まあ己を脅かす、己に比類する力を持つ者、己が踏み潰したいと思うものがいなければそうなるな…。

さて、今度は此方から行くぞ。凝りや疲れがたまっているようだな、なら有難い。この世界ーー隠世諸共お前の体が砕け散るまで『マッサージ』してやろう。」

「や、やめて、結構ですぅぅぅぅぅ‼︎」

智史はそう言いながら嬉しそうに手をポキポキ鳴らす、僧正はこの後自分を襲うものが何なのかを理解したのか甲高い悲鳴を上げて怯えて震え上がる。

 

ーードガガガガガガガガガガガ!

ーーズゴズゴズゴズゴズゴッ!

 

「いだだだだずげでやべで‼︎」

そして今度は僧正が先ほど自分がかましたモノよりも遥かに猛烈な殴打の嵐を見舞われる、逃げようとしはしたもののとても強力な拘束ーークラインフィールドによる強制固定(ご存知かもしれないが残念なことに自己再生強化・進化システムによってクラインフィールドを形成している“モノ”さえも彼ら魔神の位相による介入を悉く、徹底的に拒絶してしまう程、いやそれ以上に強靭になってしまっていた、その為破こうにも破けなかった)エネルギーベクトル操作能力、神経系への介入によるもの、更には念入りに時空空間への介入、転送も強引に拒絶ーーを受け身動きが全く取れない。殴り続けられても全くその場から動かない、いや動けない。強制的に破壊を受け続ける格好となっては、もう末路は見えていた。

あっという間に僧正の肉体は挽き肉同然、いやそれ以上に酷いことになってしまう、しかも彼が先ほど宣言した言葉の内容の通りに猛烈な殴打の余波ーー正確に言うとエネルギー衝撃波で周りのモノが一瞬で吹き飛び、いや隠世そのものが軋み、悲鳴をあげて崩れていき、彼が僧正を殴りつける度にその軋みと破壊は増大していった。

 

「さて、これで『施術』は終わりにしよう。ふんっ!」

「ぎゃはっ!」

 

ーーズガァァァァァァァン!

 

そして締めとして放たれた一撃により僧正は跡形もなく消し飛び、そしてその勢いで隠世は完全に崩壊してしまった、ぶっ壊れる様を詳細に見たのはこの世界を破壊した元凶である智史本人を除いて誰もいなかった、逃げ出そうとはしても彼の手により何重に、完全に『道』を塞がれてしまった為に逃げられぬまま破壊の嵐を受ける羽目となってしまった為だ。

こうして、とあるシリーズの世界系でしか通用しないとはいえ、全次元、全元素、全位相を完全に掌握し、世界を自由自在に歪め、作り、壊す事が出来るという“無限”に近い途方も無い力を持つ魔神達もそれ以上の力を軽々と振るってきた智史の前に呆気なく蹂躙されてしまった、それも鏡合わせの分割という『弱体』抜きで。

事前に超高精度(それも人類文明やそれを上回る高レベルの文明はおろか、あらゆるものを通り越して滅茶苦茶細かい、おまけに常に強化されている自己強化・進化システムでその精度、処理能力は滅茶苦茶すぎる程に強化され続け、おまけに智史の異常過ぎる超絶ペースの強化を促すのに一役買っている)で調べ上げていたことを考慮しても、一方的過ぎる程に強すぎた。

 

やはり無限のモノなど無いのだな、無限にモノは生み出せても。さて、世界が容量ーー負荷に耐えきれないとか言っていたな、その言葉を裏付けるかのように、ここの世界系の強度はとても低い…。やはり私も例外にあらずか。ならば掛かる負荷を軽減するとしよう、分割とやらで弱体という方法抜きの…。

智史はそう心の中で呟き終えると静かにアレイスター達が居る世界系へと向かっていくーー

 

ーー学園都市中枢部

 

「やはり、消し去られたか…。」

「ああ、隠世諸共、跡形もなく、だ…。」

「魔神は無限の力を持っているとされていたが、所詮は単に数え切れない、把握しきれない有限でしか無かったか…。」

そう会話するアレイスターとエイワス。彼らは智史がそこでどういうことをしたのかは詳しくは知らなかったものの、隠世が崩壊し、智史がこちらへと向かってきていることから、僧正達魔神が敗れ去ったということを理解した。

 

「鏡合わせの分割、それに近いようなものをし、世界に負荷を掛けないようにしなければ足を踏み入れただけでここは崩壊するだろう、もし何の策も講じずに無闇に入られたら我々には破壊以外の結末は無い…。」

「彼は魔神を越えてみせた、当然彼は魔神ではない、この世界を壊さないように『分割』のようなものを掛けてくれるとは限らない…。」

 

ーードガァァァン!

 

「来たか…。世界に、負荷は掛けないようにはしてないようだな…。」

「だが、『分割』は行っていないようだ…。」

「やはり魔神とは訳が違うか…。まあいい、魔術を消し去るように事を動かす為に策は講じた、後は話がうまくいくかどうかだ…。脳幹、その為によく頑張ってくれた…。」

「別に気にしなくていい、ただ君の為に為すべきことをしただけだ。彼を通そう。」

そう会話する木原脳幹(イヌに高レベルの演算回路を取り付けた存在といった方が適切)とアレイスター、彼アレイスター=クロウリーは己の策をうまく進めてくれる為に色々と尽力してくれた脳幹に感謝していた。そして程なくして、智史が脳幹に連れられて彼らのいる生命維持槽がある部屋へと現れる。

 

「はじめまして、かな。この学園都市の総括理事長、アレイスター=クロウリー殿。」

「そうだ、君が『リヴァイアサン』の名を冠する存在か…。」

「如何にも。同時に『海神智史』という名を冠する存在でもあることも覚えて頂きたい。」

「なるほど…。早速で済まないが、小手調べをさせてくれ…。我々は君の凄まじさを先程見せつけられたがそれをもう少し具体的に知りたい…。」

「承知したーー戦う相手は貴君の切り札ーー聖守護天使エイワスでいいのだな?」

「そうだ…。エイワス、始めてくれ…。」

アレイスターの言葉に従い、2人は相対する、そしてエイワスが小手調べとばかりに強烈な一撃を放つ、これは地球はおろか、太陽系を軽く消し去る一撃であった、余程実力が高くない限り、これに耐えられるものはこの世界には存在しない。

しかしリヴァイアサン=智史は彼アレイスターの期待通りにこの一撃を難なく防ぎ吸収してみせた、凄まじ過ぎる自己進化のお陰で宇宙を10の10億乗も破壊できるエネルギーを受けてもケロリと吸収してしかもその全部を自己強化に回せることが出来てしまうという、こんなもの見てしまったらもう酷すぎてただ笑うしかない程強すぎるのだ、むしろ太陽系を軽く滅せる程度で殺傷できること自体がまずあり得ない。

 

「今度はこちらかな、はっ」

 

ーードゴォン!

 

「つ、強い…‼︎」

お返しとして智史からも一撃が放たれる、それはエイワスの自殺防止機構ーー無意識にでも攻撃を防ぎ自動的に反撃してしまうーーを反撃さえ許す事なく軽々と突破した、エイワスは恐るべき相手だと改めて理解する、何せ一方通行の黒い翼さえ弾き圧倒したモノを藁の家を消し飛ばすかのように軽々と破ったのだ、しかも殆ど威力を損なう事なく。幸いその一撃はエイワスを襲う前にエネルギーベクトル操作能力により消滅したものの、彼がこちらを殺す気であったらその個体共々一瞬にして消されていただろう。

一瞬、それは分からないと考えてしまうかもしれない。確かにエイワスはヒューズ=カザキリを核とし、AIM拡散力場を集合させることで現出した存在であるが故に今ここにいる『自分』を消されても問題はないものの、自分は『無限』ではない。しかもこれは『自分』が一箇所に集中していなければ成り立つ話で、もし彼エイワスを消そうと彼、霧の究極超兵器 超巨大戦艦リヴァイアサンにしてその意識体、海神智史が本気を出したらこの場に『自分』を集約させられて消されてしまうのだ。

こんな芸当も常識的には不可能だが智史には容易く出来てしまう。それは進化のペースも含めたあらゆる面の強化も推し進めたが故に戦闘能力は勿論の事、対応・対処能力も最早常識を逸脱して異常過ぎるまでに強化されてしまったからこそ、出来てしまう事であった。

 

「もうよい…。君が私達の話を聞いてくれそうな相手である事は先程ので十二分に理解できた…。」

「この話の本腰の入れ具合は、どれぐらいかな?」

「もし食い違った際、君にまとめて殲滅されることも覚悟の上でここに臨んだ…。食い違い、自分の為にならぬ者は普段は排除しているが、こうも力の差が違いすぎるのであれば、そうするどころかこちらがあっさりと消されているだろう…。だから君にいつでも殺されるという覚悟はもう出来ている…。」

「なるほど…。そこまでの覚悟をしてまでやりたいのだな、この世界から魔術を消し去るという計画を。」

「そうだ…。そして我々は君の強大な力を理解した、それを見込んで魔術を消し去る方へと事が進むように君を道具として使う予定だ…。我々の策に、手を貸してくれるか…?」

「ふふふ、やられたわ…。了承した、私は元々『魔術』にいい印象は抱いていないのでな。『魔術』を消し去るのに喜んで協力しよう。

そしてここ学園都市に世界中の魔術側の者達が集結するように仕組んだらしいな、私がこの世界にしてみれば重大な脅威であるという事を逆手に取り私を使って一気に彼らを殲滅する算段か。」

「ああ…。彼らは我々の策にはまってくれたようだ…。」

そう呟くアレイスター、彼は重大な脅威である智史がここに来るという話を逆手に取り、智史が自分と同盟してこの世界から魔術を消すという噂、情報を広めたのである。普通これは希望的観測、ご都合主義だと言えてしまう事なのだが、そう見えても成立すればそうとは言い難くなる。そしてそれは智史が彼との協力を成立させた事で実際に現実味を帯びていたーー

 

ーードゴォォン

 

「アレイスター、彼らが来たようだ。」

「そうか…。さあ、リヴァイアサン…。真髄を思う存分彼らに見せつけるがいい…。」

外で爆発と轟音が複数生じる、警報を示すモニターが部屋の中に無数表示される。彼らがこの近くに来ているという事は智史は初めから見通していたのであっさりと把握していた、脳幹とエイワスが出るのに合わせて、智史も嬉しそうに外へと出て行くーー

 

 

ーー同時刻 学園都市郊外

 

「リヴァイアサンは、アレイスターと手を組んだようだな。」

「はい、アレイスターの反応が確認されています、そして未確認の巨大な反応も…。」

「アレイスターは奴を使い一気にこの世界から魔術を消し去るつもりだろう。幾ら策を講じて手駒の消耗を恐れて小競り合いをやったところで、奴を止められなければ意味がない。それに魔術にしてみれば重大な一大事だというのに内輪揉めは危険すぎる、下手をすればこちらが各個撃破されかねん。」

「この世界の外から来た者達がその存在について我々に警告しました、『あの存在、リヴァイアサンは我々以上ーー魔神達さえ上回る圧倒的な力を振るい、この世界に巨大な爪痕を残し、最悪焼き尽くしてしまうかもしれない』と。そしてその言葉の通り既に魔神達がその存在により叩き潰されています、脅威としては十分すぎるほどです。」

「幸いアレイスター自らが奴と組んで魔術を消し去ると自ら警告してくれた。お陰でアレイスター討伐という大義名分が出来、大事になる前に全ての魔術の人間が団結してここに集結している。幾ら奴とて、この数と我らの全力を以って畳み掛ければ殺せなくとも、勢いはかなり削ぎ落とせる筈だ。そしてそこを理想送りでトドメを刺す。」

「そしてその存在の勢いが落ち、理想送りで葬り去ったところでアレイスターを殺す、と…。成る程、犠牲は沢山出ますが、最も現実的な戦略ですね。ですがあのアレイスターがこうもあっさりとあの存在と手を組んだ事を公表すると思いますか?少なくとも普通は隠し通す筈です、何か、裏がある筈では?」

そう会話するのは英国女王のエリザードとロシア成教総大主教、クランス=R=ツァールスキー。彼らはこの世界にて重大な影響力を持つ大組織のトップであった。

彼らはアレイスターがいつもとは異なる動きをしている事に僅かながらも不安を抱いていた、彼らとて無能ではなく、リヴァイアサン=智史がここに来るという事前情報、そして実際に隠世を滅したことで危険性を実際に認識してからは、できる限りの情報収集をしていた、お陰で魔術の人間達は智史が自分達を、この世界を脅かす重大な脅威であるということを素早く認識できた。しかし想定外の事柄が突然として発生するという状態が具現化した、しかも自分達が物理的に認識できるようになってから急に事が進んだために相手の把握が間に合わないという状況下であった為に、まだ明らかになっていない不確定事項(鏡合わせの分割といった弱体化がされてないということも含まれる)が多数あり、智史が自分達の予測を遥かに越え、悉く常識、法則を逸脱し捻じ曲げてしまう強大な存在であった事を理解しないまま突っ込むこととなってしまったーー

 

 

「来たか…。」

学園都市中枢部の窓のないビルから出て、しばらく歩いた智史、学園都市というだけあって大都会だった、彼の元の世界の大都会に近い物が沢山そこにあったものの、何処か雰囲気が違っていた、攻撃で幾つかが破壊されてしまったこともあったのだろうか。

そして辺りを見回すと沢山の魔術師達が居た、皆の半分は死ぬ覚悟を固めていた、魔術の世界が守られるなら自分の身などどうなってもよいと。もう半分はこの世界の脅威たる彼を倒す事で名声を得ようと希望的観測で頭を満たしていた。

トップはーー目の前にはいないようだった、最前線で士気を鼓舞するのは戦闘意欲を高めるのには十分だがそれ故に殺されるリスクも増大する、リスクが未知数なところもある上にトップたる自分達が死んだら今後に悪影響が出るということを憂慮した最高指導層は後方で戦略を練りながら指揮をとるようにしたようだ。

 

「リヴァイアサン、魔術を守る為にお前を討伐する!」

「そうよ、あなたを使ったアレイスターの企みも一緒に!」

「私を倒し、私が持っている名声と権力を得ようというのか、面白い…。さあ、全てをぶつけて来るがいい、そして何もかも無へ還そう!」

智史は嬉しそうにそう呟き戦端は開かれた、そして無数の魔術師達が呪文と共に智史に魔法を叩きつける、爆発と閃光、土煙により智史の姿が霞み、見えなくなる。その光景は無数の花火が花開ているかのようだった。

晩餐の魚、グレゴリオの聖教隊といった大魔術さえ投入された魔術のオンパレードである、普通こんな猛火力をぶつけられるような環境など発生はしないのだが、相手が相手である、それ故にこのオンパレードは発生した。智史は特に反撃もすることなく何も動きはしなかった、だが彼は『化け物』である、彼はこの猛攻撃を難なく耐え凌ぎ、しかもお約束とばかりにその攻撃のエネルギーを術者のエネルギーと一緒にどんどん奪い吸収して己の更なる強化の一助にしてしまった。

 

「こちらヴォジャノーイ、魔術師達の魔力が吸い取られていきます!このままでは持ちません!」

「まずい、生力まで吸い始めたぞ!」

「単に魔術をぶつけるだけでは駄目か。オマケに魔力だけでは飽き足らずに貪欲に命まで食らい始めたか…。ならば殺られる前にとっとと全能の力を用いて切り裂くしかねえな!」

智史に攻撃だけでなく、魔力も命も無茶苦茶なペースで吸い取られて攻撃のペース、質も、存在価値さえも落ちていき次々と倒れていく魔術師、修道士達に代わり、グレムリンのメンバーの1人、トールがリヴァイアサンごと海神智史に突っ込んでいく。

 

「こんにちは、リヴァちゃん。魔神吹っ飛ばすとか、なかなかやるみたいだね。こんな強敵は久しぶりだ!だが悪いけど、最後に勝つのは俺だ!あんたは俺をより強くする為にここで死んでもらうぜ!」

「この世界基準で言えば、全能神に該当する存在か…。いいだろう、歯応えのない根性無しばかりで困っていたところだ。その言葉に則り、お前を葬ろう。」

「いい答えじゃねえか、行くぞ!」

トールは両手両足にはめたグローブの指先より噴出する雷光の溶断ブレードを急激に噴出させることによる空気の膨張爆発を自身を加速するブースターとして使用して智史に迫る、それは恐るべき速度だった、極超音速に匹敵するほどの。だが智史は全く怖気付かない、寧ろ嬉しそうに不敵に微笑んでみせた。

 

「行くぜ、リヴァちゃん!あんたのような魔神を軽々と吹き飛ばし、多少の細工程度は全く通じねえような相手、全能の力を全力で叩きつけるに相応しいぜ!てやぁっ!」

そしてトールは両手両足にはめたグローブの指先から雷光の溶断ブレードを展開し、智史に斬りかかる、そのブレードは最大で2キロまで伸長し、腕の一振りで学園都市の学区一つを破壊し尽くすことすら可能な代物である、全能の力を解放していない状態でこの威力である、全能の力がここに加わったらその威力は計り知れないものとなる。

 

ーーこの世界基準ではそう言えるのだが。

残念な事にそれは単なる数え切れない『有限』なのであって『無限』ではない。そして『力』の法則から見るに、力の優劣で全てが決してしまう以上、トールを軽々と凌ぐ力を持ち合わせ、しかも彼を完全に突き放す勢いで進化を続けている智史が圧倒的、否一方的に有利であり、おまけに彼の事も含めたこの世界の事(法則も含む)を殆ど知ってしまっているのだ、この攻撃を防ぎ吸収し己の力へと変えてしまうのは当然の事であった。吸収するのを利用して乗っ取ろうとしてもその前に徹底的に破砕分解された上で吸収されてしまうのだから乗っ取ること自体が不可能に近い程極めて困難である、したがってその逆など全くありえない。智史はそれを易々と防ぎ、己の力へと変換してしまう。

 

「やっぱ化け物じみてるぜ!こりゃ戦い甲斐がありそうだ!」

「嬉しいぞ、幻想の敵を磨き台にして強化・進化しまくるのもいいがこうも実際に戦うのもいい。」

トールの全身全霊を込めた攻撃を智史は圧倒的な力で無力化、吸収した上でその光景を堪能している、そしてその頃ーー

 

「晩餐の魚やグレゴリオの聖教隊を諸に受けても膝を屈さなかったか…。トールが奴と戦っているが、あいつも全く歯が立たん…。想像以上の化け物だな…。」

「ならば我らロシア正教の大魔術、七つの大罪で削り取りましょう、完封は出来なくても理想送りをスムーズにやる為にはこれしかありません。」

「ああ、幸い幻想殺しやアクセラレータももう直ぐ奴と激突する。その隙を突くようにして一気に押しきろう。トールには悪いが、これが奴を消耗させるには適切な作戦だ…。しかし何か胸騒ぎがする、普通に科学勢を一気に引き潰せるこれだけの兵力を叩きつけてもケロリとしている、しかも我々の考えを理解しているような素振りを見せながら避けようともしない、その内面は覚悟ではなく余裕…。何なのだ、このあと途方もないことが起こるような予感は…。」

「私も同感です、把握しようと努力して今も情報を入手し、彼を追い詰める策を着実に練っているというのに。これが杞憂ならばいいのですが…。今は策を着実に進めましょう。」

エリザードとクランス=R=ツァールスキーは智史の余裕に満ちた嬉しそうな表情を見て半ば不気味な感情ーー恐怖を抱かずに居られなかった、こちらの策を分かっているかのような表情とそれを避けようともせずに嬉しそうに受けているのだ、通常ではありえない光景である、こんなものに不気味な感触など抱かない訳が無かった。

2人は着実に策を進める、しかしこの恐怖は間もなく現実となって襲いかかろうとしていた。

 

 

ーードゴォン!

 

「へぇ、へぇ…。やっぱあんた最高だぜ…‼︎」

「こっちが持っている力に怖気付くことなくただ己を強くする為に戦う、か…。殺すには少し惜しくなってきたな。」

「こんな言葉を口にし、隙もなく、しかもこちらの成長に応えるかのように滅茶苦茶に強大に『成長』しているのか…。随分と余裕に満ちてるじゃないの…!」

あの後トールは智史に散々に斬りつけ、数十メートルの幹線道路を丸ごと持ち上げ叩きつけたりしたが、悉く防がれ吸収され結局全てが智史に届かなかった。そしてお返しとばかりに見舞われたキングラウザーの一閃で彼は大きく吹き飛ばされる、簡単に殺さないように加減はされていたものの、全能の力を以てしても防ぎきれない程の威力を持った一撃だった。仮に全能の力を用いて勝てる位置に移動しようとしてもそうする前に当てられたら意味もなく、移動しても逃れられない、外さないように強引に空間や法則を捻じ曲げられては逃げる行為自体が無意味だった。

トールはこんな化け物じみた相手と戦っていることにこれまでにない喜びを感じていた、何せ彼は強敵と戦闘を行い、「経験値」を得ることで『成長』したいという行動原理を智史という化け物と戦うことで大いに満たせているのだから。

 

「さあ、もっとあんた自身も、俺も『成長』させてくれ、リヴァちゃん…‼︎」

 

「待ちやがれ!」

「来たか、興削ぎが…。」

「当麻ちゃんと、アクセラレータか…。ここはあんたらが来る場所じゃないよ…。あんたらをボロクソにできる俺がこの様なんだ…。そしてあいつと俺だけの楽しみ、邪魔しないでくれるかな?」

乱入するように現れた上条当麻と一方通行、それにより興を削がれた2人は不機嫌になる。

 

「てめえ…。アレイスターの野郎と協力して魔術を滅ぼすだと⁉︎何考えてやがる⁉︎」

「単に魔術にいい印象を抱いてないから総括理事長殿のお誘いに付き合ったまでだ。」

「ふざけんな、エイワスのことは知っているのか⁉︎」

「エイワスが現世に現出する為に打ち止めに多大な負荷を掛けていることだろう?私は彼女等に関心は無い、寧ろ御坂美琴本人の何の対処策無しの自己満足、偽善の為に他者に多大な迷惑を掛ける態度に嫌悪を覚えるぐらいだからエイワスが多大な負荷を掛けて彼女等を使いつぶしても全く気に掛けなどしない。」

「な、なんだと…⁉︎」

「そして貴様等が来ることは既に知っていたにせよ来たら来たで鬱陶しい。そして貴様等を蹂躙したいと元から考えていた、だからこの際塵芥残さず滅殺してくれよう。」

「このクソ野郎が…。その口、黙らせてやる!」

完全にブチ切れた一方通行はアクセラレータを行使して智史を粉砕しようとする、一般人のものとは思えない程の破壊力が秘められた一撃が智史に襲い掛かる。だが智史はこの一撃をあっさりと防ぎ、取り込んでしまった、既に力量の差が開き過ぎてしまったが故に。

 

ーーバガァン!

 

「げぴゃっ‼︎」

そして智史は力業でアクセラレータの能力を強引に打ち破ってしまう、その一方的な力を伴ったエネルギーベクトル操作による一撃で一方通行はベクトル操作による防御さえ許されずにミンチと化して周りのものを吹き飛ばしながらビルの残骸に叩きつけられる、一際と大きな砂煙がその場所から上がる。『一方通行』の名を冠する存在は、皮肉にもそれ以上の力を持つ存在によって一方的に、それも一撃で叩き潰された。

 

「くっ、お前の信条は何だ⁉︎」

「『力こそ正義』だ。そして私は自分がよければあとはどうなってもいいと考えている。」

「ふざけんな、その自己中心的な信条のせいでどれ程の人間に不幸を撒き散らしたんだ⁉︎力があれば何でも許されると思っているのか⁉︎その幻想をぶち殺す!」

一方通行が一撃で瞬殺される光景を見せつけられた上条が幻想殺しーーイマジンブレイカーを解放して挑んでくる、智史にその幻想殺しが通用しない、仮に効いたとしても力技で押し切られるのが関の山だと考えていても。そして見えていたかもしれないが、その考えは悪い意味で的中する、智史はまず幻想殺しで相殺できるような攻撃を殆ど使ってこない、というかいずれもが幻想殺しで殺せる域を超越している為だ。仮に幻想殺しで相殺できる攻撃を用いてきたとしても圧倒的、否一方的としか言いようのない力に任せたごり押しで押し切られてお終いである。

こうなってしまったのも日々続けてきた異常過ぎる程の強化・進化のし過ぎのお陰なのだ、進化というものは実に恐ろしい。

智史は突っ込んできた幻想殺しを纏った上条の右腕を思いっきり掴む、そしてギリギリと締め付ける。

 

ーーバキィッ!

 

「ゔがぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

智史は上条の右腕を握り潰してへし折り、そして上条の腹を軽く(だがこれでも滅茶苦茶重い)蹴り飛ばす、へし折られたことで強度が落ちていた右腕は吹き飛ばされる本体に付いていけずに一瞬で引き千切れた。そして上条は一方通行が叩きつけられた同じ場所に重なるようにして叩きつけられる。

そして智史は右手を突き出し呟く、

 

「冥土の土産だ、御坂美琴に宜しくな。」

 

ーーキュォォン!

 

ーーブォォン!

 

ーードゴォォォォォォォン!

 

「い、今の美琴ちゃんのとポーズは同じだけど破壊力、やばくねぇ…⁉︎名前、何っていうの?」

「『レールガン』だ。御坂美琴がよく使っている擬きと混同するな。」

「す、凄え…。一発で当麻ちゃんとアクセラレータを魔術師達、街や山ごと跡形もなく吹っ飛ばすなんて…。美琴ちゃんが完全に霞んでるぜ…。」

そして甲高く力強い発射音が轟き、強烈なエネルギー衝撃波を伴い、右手から青白い光弾ーーレールガンが放たれる、それは上条と一方通行が居た場所を背後の山々、否日本列島そのもの、そして海を切り裂きユーラシア大陸を吹き飛ばすようにして一撃で両断した、その跡には煮え滾る切断面が残っていた、彼の右手から放たれたその一撃に戦慄しながらも彼を褒め称えるトール。

智史はそんな彼を一暼しながら、自身の目の前に完封出来ると希望を信じて現れたロシア正教の魔術師達ーー七つの大罪で完封しようとTV局が用いるような機材やスピーカーを構えていたーーを睨みつける。

 

「『七つの大罪』という視野狭窄状態の難癖の当てつけで私の力を削ぎ落とす気か?笑止。やれるなら、やってみせろ。」

「その言葉、後悔するな!」

智史の挑発に応えるようにして七つの大罪の術式が発動する、強引な当てつけ断罪が智史に襲い掛かる、内容は相手の行動や思想にその断罪の象徴である、「色欲・傲慢・怠惰・暴食・嫉妬・強欲・憤怒」を当て嵌めて断定し、 それを相手が認める毎に相手の力を1/7奪うものだった。智史は自分に当てはまるものは認めた、しかし認めても、力を奪わせようとはしない、否そうとさえする必要もなさそうに嬉しそうに余裕の笑みを浮かべていた、何故ならーー

 

「な、何だと⁉︎こ、これ程とは…。」

「そ、そんな、『七つの断罪』が、効いていません‼︎」

「ダメです、あまりにパワーが強すぎて全く封印できません!それどころかこちらの術式の魔力が全て吸収されてしまっています!」

「魔力低下ーーまずい、魔力が術式諸共反転した!」

 

ーーズガァァァン!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「ゔがぁぁぁぁぁぁぁ!」

「我らの同胞たる教徒達に威力を増し、逆流した魔力が流れ込み、教徒達を内から破壊しています!」

「つまり、失敗か…。何という化け物だ…。総大主教様は…?」

「威力を更に増して逆流してきた魔力を『七つの大罪』の術式と共にもろに受けて何も出来ずに戦死されました…。」

「くそぉ…、化け物め‼︎」

彼らに対して振るわれる圧倒的な力。

魔神達を隠世諸共消し飛ばした力。

彼らはその圧倒的な力を御すことが出来ず逆に押し負けて圧倒的な力の濁流の前に流されてしまった、彼らにして不幸だったのは鏡合わせの分割のような弱体をやっていないことを知らなかったことだった、もし知っていたらこんな無謀な計画などやりはしなかったのかもしれない、まあ戦うのを避けても強制転送とかでまとめてつまみ出されたりされたら全く結末は変わりはしないが…。

 

「何もさせないか、これ程までに酷いの見せられたら、ますますあんたともっと戦いたくなってきたぜ、でも…、そうだった、もうスタミナがねえ…。」

「そうか。まあ全能の力も含めた全ての力を行使したのだから仕方あるまい。さて、もうダラダラと戦うのは面倒くさいから、宣言通り『奴ら』を等しく殲滅するとしよう。上里翔流とやらも何もかも関係なくな。」

智史はそう言い終えると再び右手を突き出す、上里翔流を視線に捉えて。

 

「え、今度はこちらの」

「終わりだ」

 

ーーキュォォン!

ーーキュォォン!

ーーキュォォン!

 

ーーズガァァァァァン!

ーードガァァァン!

ーーボゴォォォォォン!

 

「ちょ、みんな焼き尽くす気ですか…?」

「焼き尽くす?気に入らないところを気遣い無しで気持ちよく吹き飛ばしているだけだが。」

「だ、だってあんなやばいことしたらこの星普通にみんな住めなくなりますよ…?」

智史は凛然としながらレールガンによる砲撃の連射を行う、それは理想送りでその攻撃自体を消し去ろうとしてオーバーフローで一瞬で吹き飛ばされた上里翔流だけでなく、周辺にいた魔術師達やエリザードも粉々に消し去った。しかしそれだけで飽き足らずに魔術側の拠点が集中しているヨーロッパも、その他魔術組織が存在する地点も、魔術に関連するものならば皆関係なしに容赦なくその射撃を撃ち込み、宇宙を舞い射線上にあるもの全てを巻き込み破砕しながら着弾し、巨大な爆発を次々と巻き起こして跡形もなく殲滅してしまった。

勿論これによって生じた熱量は凄まじい。これを放置しておくと当然地球は灼熱の死の星となってしまうので原子・粒子運動エネルギーベクトル操作能力で熱エネルギー量を強制減衰させて着弾前と同じ熱環境にし、更に物質生成能力を用いて消し去った分と同じ体積量の海水と、抉り取られてマントルむき出しとなった所の『プレート』を補充した。

 

「これで抹殺対象は殆ど殲滅した。総括理事長殿の今後の統治に差支えがないレベルで。」

「す、凄すぎでしょ…。でも魔神達は『世界』を自由自在に改変できるやばい奴らということを考慮し、そんな奴等を次々と屠ったという実績を考慮するとこれだけのことが出来るというのも納得が行くぜ…。」

その常識などどこ吹く風と無視した光景にもうため息しか出ないトール、そこに脳幹が現れ、モニター画面を開く。

 

「ん?総括理事長殿か。派手にやり過ぎた、敵は全て葬ったが、自分の欲望の赴くがままに暴れたせいで学園都市の一部はおろか、この地球の半分を吹き飛ばし、クレーターに変えてしまった。人間も何も色々と吹っ飛ばして申し訳ない。」

「国家も人間も色々と消し飛ばしたことか…。そのぐらいのことなど計算内とはいえよいざ見るとなると目が回るな、だが巻き込んだにせよ、私の予測をいい意味で裏切り、魔術側に計り知れない程の致命的打撃を与えてくれたことには感謝したい…。」

アレイスターはそう呟く、リヴァイアサン=智史が想像以上の勢いで破壊を齎した事に多少ため息をつきつつ、本来の目的である魔術を消し去るという利害の一致による同盟をきちんと遵守してくれたことに感謝しながら。

 

「あとは我々がやろう、君には色々と我々が為すべきことをたった1人でさせられてしまったからな…。」

「面子を守りたい、か…。了承した。では私がこれ以上ここにいる理由は存在しないからここを去るとしよう。貴君との協力関係を築けたことに感謝する。」

智史はそう言いワープホールを開放する、そしてリヴァイアサンへと帰っていった。

 

「二大勢力の片側である魔術ーー俺達魔術側が壊滅的打撃を受けて完敗か…。しかもこちらの攻撃が何一つ効かない、大魔術も何もかも。寧ろ単に相手を更にパワーアップさせるものにしかならないというワンサイド過ぎて全く勝負にもならないという酷すぎる結末…。ひっでえ負けっぷりだぜ…。だがガチでぶつかれたからまだいいな…。強くなる為の経験も得られたからいいし…。しかし、これが不意打ちだったら憎しみで一杯だぜ…。」

「…当麻は、ねえ、当麻はどうなったの…⁉︎」

「美琴ちゃんか…。あの巨大な爆発、複数引き起こされたのを見たろ?あの爆発を引き起こした奴ーーリヴァイアサンごとリヴァちゃんが当麻ちゃんを殺したのさ、幻想殺しも、何もさせずに、一撃でな。」

「あ、あいつに殺されたというの…⁉︎当麻が…⁉︎」

「ああ、魔神達も理想送りちゃんも手も足も出ずにぶっ殺されたぜ、あいつを殺す?やめておきな、俺は兎も角あんたは絶対に無理。沢山の世界ーー宇宙を世界系という固まり諸共一瞬で焼き尽くした化け物だという話もあるぐらいだし、しかもこれではまだ物足りないって感じで貪欲に誰の追随も絶対に許さない勢いで強大になってやがるからな、当麻ちゃんにあんた敗れてるだろ、幻想殺しで。その当麻ちゃんを破った俺がなんだかんだで情をかけてもらって何とか首の皮一枚で繋がったって感じだ。もし情かけられなかったら嬲り殺しか当麻ちゃんや魔術のトップ達のように一瞬で消されておしまいだったぜ…。」

「そ、そうなんだ…。」

「(平気なように振舞っているけど、内心かなり傷ついているな、まあ突っ込んでも勝てないという現実を前にして何も手足が出ないんじゃそうなるよな…。)」

トールは内心でそう呟く、実際に先述したように智史は魔術側に一切の反撃らしい反撃もさせないという一方的な戦闘能力を見せつけた、そしてそこから放たれる圧倒的な威圧感に美琴は怯えて自分には何もできないという事を本能で戦わずして悟ってしまったのだ。

折角上条を引き止める為に行動したというのにその本人が見ただけでレベル5の第3位たる自分のプライドを砕くような一撃で死んでしまったのを知ってしまった美琴は泣き崩れ、もはや放心状態だった、取り巻きの仲間がそんな彼女を慰めようとするのをトールは静かに見守ることしか出来なかったーー

 

 

とあるシリーズの世界系の外にいるリヴァイアサンの一室ーー

 

「ただいま、ズイカク。いつものように暴れてきた。」

「今回もまた派手だな、大陸は指先から放たれた砲弾で切り裂くわ世界中のあちこちをクレーターに変えるわ。滅びないように加減していることは分かるがこれでも滅茶苦茶だぞ?」

「ああ、少なくともこの世界の住人達にはそう映るだろうな。」

「巻き込まれる側は無理やりいいように振り回されて堪らないだろうな、まあこちらに関わってくるような話じゃないからあまり強くは言えないけど…。ところでお前の事を知らせた輩が居たらしいが…。」

「恐らくアンチスパイラルと戦った時に無数の世界系を一気阿世に焼き払ったことと深く関わりがあるな。知らせるなら知らせるだけ知らせろ。ただし我が道を阻むようならば容赦なく蹴散らし、踏み潰すのみ。」

「そうか。まあ常に進化してるわそのペースは鰻登りだわそもそも上昇志向強いわで負ける要素なさ過ぎだからこう言い切れちゃうからな。あ、琴乃。智史帰ってきたし、一緒にこの前行った世界で買った物から料理作るか?」

「そうね、その時たまたまレシピ考えてた所だったこともあるけど、智史くん適応能力高すぎだから自分の好きなように凄まじい勢いで事を進めちゃうし。ちょっとは考えて欲しかったけど、これ以上は深く突っ込まないようにしましょう。」

「ありがとう、なら作るとしようか。カザリも呼んでくる。」

そして智史達は調理室へと向かい、これまで入手してきた食材を使って料理を作り始める。

 

「向こうの世界の様子、どうだったの?」

「学園都市ってものが存在した、規模的や様子的にはこれまで見てきたものとはあまり変わらない。」

「なるほどね〜。風車やソーラーパネル沢山あるけど、特にこれといったものは無かったみたいね。でも一度は歩いてみたかったわ。」

「学園都市は二大勢力の一つ、科学サイドの総本山だけあって最重要機密の塊だ、なのでその都市を守る自衛組織も実在した、学生や教員のみで構成されたものがな。」

「学生と教員ね…。徴兵制ではない事は確かだけど…。警察といった治安組織は無かったのかな?」

「無い。彼らがその役割を担っているからだ。話を変えるが、トールって奴と会った。奴は私と戦う事を己を高める事として戦いを望んできた。」

「あんな圧倒的な力を目の当たりにしても恐れずに突っ込んでくる人、居たのか…。智史くんもそういう心意義、あるかな?」

「…『ある』とは言い切れんな、だが私は私なりのやり方で行く、奴とは違うやり方で。相手を知り、己を知り、己を鍛え、より高めて。さて、ここの世界で欲望も満たしたし、次はワンパンマンの世界系へと行くとしようか。」

「ワンパンマンって、どういう存在なんだい?」

「一言で言うと地球を滅ぼすような敵も吹っ飛ばすような人の皮を纏った化け物だ、パンチ一発で。まあ私は奴やその周り、否この世界系そのものの事を想定し、対策を練り過ぎているから問題無い。」

「ぱ、パンチ一発って…。それじゃあ僕が戦ったら傷一つ付けられずに一発で吹っ飛ばされるの…?」

「まあそういう事だ、大事を引き起こさなきゃ吹っ飛ばされはしないがな。まずは世界系に紛れ込んで奴の動きを観察するとしよう、把握済みかつ対策済みとはいえど、奴から学べる事もまだあるかもしれん、特に人間性、日常性は。」

そしてリヴァイアサンはスラスターを吹かしてワンパンマンの世界系へと進んでいくーー

 

 

ーーほぼ同時刻、とあるシリーズの世界系付近

 

「畜生、奴が好き勝手に暴れたせいでこの世界のバランスが滅茶苦茶だ…。」

「そのせいで本来の時の流れとは異なる方向にされてしまっている、消されるのではなく、改変されてしまったからな、元に戻そうと関わると余計に面倒だぞ、仮面ライダーの世界系のように…。」

「くっ、単なる警告だけでは皆話を聞かずじまいで結局ダメだというのか…。」

「というよりも世界系の外を見る事を知らないせいで奴のような存在に関する事に疎いのだろう、だから説得が効かず、奴の脅威もあまり伝わらなかったのかもしれん。」

「何れにせよこのままではまずい、早くライトマサル様や他の方々に報告せねば…。」

まだ見覚えの無い姿をした者達が会話をしていた、智史を除くすべての者にしてみれば。彼らは世界系を管理する者達の手先だった、そして言わずもかな、リヴァイアサン=海神智史と彼らの間には少なからぬ因果関係が存在していたーー


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