海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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今回も容赦ないです。
ですが書いているうちにウルトラ民族を根絶やしにすることに対する罪悪感が芽生えてきたのでその罪悪感による苦悩も交えて書きました。
ウルトラマンが大好きな方は読むことを避けるのをお勧めします。
それではじっくりとお楽しみください。


第41話 ウルトラマン殲滅

「タロウ、異常はないか?」

「ああ、特に異常は認められない。怪獣がよく出てくること以外は特にはない。」

「そうか、お前はこれまで多くの怪獣を倒し、かつ他の若い世代の戦士達を助けてくれたからな…。」

ここは、ウルトラの星のとある一箇所での会話である。彼らはいつも通りの日常を送っていた。

 

「お〜い、こっちだ〜‼︎」

「ははは、平和はいいものだ、何時までも続いてくれればいいんだがな…。」

そう呟くウルトラの戦士達、しかし災厄は突如として襲来することを予期してはいなかったーー

 

 

「やはりこういう一面を見ると私がとんでもない暴挙を引き起こそうとしている大罪人のように見えるな、まあ統一された見方、正しい見方など無いから仕方のないことか。さて、それを見て改めて自分がなぜチートラマン達だけでなくウルトラマンの世界もぶっ潰そうとしている動機を再確認しよう、(チートラマン達を殺すのは彼等を殺すことで達成感と無双の域に達しているという喜びで心を満たすためだと理由は成立している)ーーやはり、見た目ーーキャラデザインに気品が感じられぬ事、やっていることが勧善懲悪ーー視点を一箇所に完全に固定しているとも受け取れる行為が多いことと見方変えれば集団リンチの如き所業をやっていることが大きい。」

智史はこの様子をこっそりと見ていた、空間を歪めて創り出した次元の穴を通じて。そして己の所業も振り返りつつ。

 

「さて、行くとしよう、私にも罪があるからってぶっ潰したいという気持ちを抑えるつもりにはあまりなれん。」

「判断に躊躇というものが生まれるのを忌み嫌っているの?確かに即断即決という事象自体は非常に大切なことだけど、時と場合を考えなけれければ途方もない後悔を生み出すかもしれないと私は思うわ。」

「そうだな、だが始めたことを捻じ曲げられるのは大の嫌いでな。それに時と場合を考えてばかりが正しいとは限るまい、この世の物事に『正解』が無いように一見正しいように見えることが実は間違っていたりする。

まあ私は矛盾まみれな存在だからな、後悔を生み出し続けるのがお仕事かもしれん。だがそんなことを嘆いていてもそれは何も生み出しはしない。」

「いつものように正直ね、自分の気持ちに。」

「ああ。」

そして智史はウルトラマンの世界を区切る時空の壁を強制的に捻じ曲げ、そしてウルトラの星に強引に侵入する、彼らにしてみれば宿敵というべきエンペラ星人とほぼ同じ、いやそれ以上の邪悪なオーラを醸し出しながら。

 

「くくく、チートラマンも含めたウルトラマン達よ。邪悪なモノを纏っているからって本当に星ーーお前達を滅ぼす存在とは限らんぞ。お前達は己の知らぬ事しか知らぬ方法でしか感じえぬという現実を知るまい?まあ私もそういうところはあるし、今回は滅ぼす気満々だからそうだとは強くは言えんが、そのことを今から思い知らせてやろう、絶望と破滅と共にな…。」

 

 

「な、なんだあの邪悪な気配は…⁉︎」

「エンペラ星人と同じ気配だ…、だがエンペラ星人よりもより強い怖気を引き起こす程に殺気が強過ぎる…‼︎」

「なんなんだ、あの気配は…‼︎」

突如として発される邪悪な気に動揺するウルトラ戦士達、そしてその気が発されている場所ーー智史が出現した場所に大慌てで集まっていく。

 

 

「随分と美しい景色をしているものだ、地球とは随分と異なる趣を出し、心に静寂を齎してくれるような宝石のような街の輝きもいい。だがこの光景を楽しめるのは一瞬のみか、私自身がウルトラマンという民族諸共この星を跡形もなく破壊しようとしているが故に。さて、蜂の巣を突っつかれたかの如く、続々と集まってきてくれたようだな。」

智史はウルトラの星ーー光の国の風景を豊かな感受性でしんみりとした気分も交えて楽しみながら続々と集まってくるウルトラ戦士達を見て思惑通りだと静かに微笑む。

 

「何者だ、お前は!」

「私か?ああ、これからお前達を面白半分で破壊しようとしている、お前達にしてみれば悪魔の如き存在だよ。」

「ふ、ふざけんな…!」

怒りに任せ怒鳴りかけるウルトラ戦士の1人に智史は自分を貶めるようにして挑発する。

 

「こんな馬鹿げたことを言っているように見える私を殴りたいか?なら大歓迎だ、さっさと掛かって来い。」

「ふざけるなこの野郎‼︎」

その挑発に完全に血が上ったそのウルトラ戦士は智史に掴みかかろうとする。

 

ーーパンッ!

 

「げぴ!」

 

ーービシャッ!

 

そして智史はビンタ一発でそのウルトラ戦士を木っ端微塵にしてしまった。木っ端微塵にした際に飛び散った肉片と体液が智史の手に付く。

 

「脆いな…。」

 

その光景を見たウルトラ戦士達に緊張と戦慄が程走る、皆戦闘が始まると判断したのか警戒心と怖気を剥き出しにして身構える。

 

「さあ、次に掛かって来たい奴はいるか?いないならこちらから行くぞ。」

「こ、この野郎…‼︎」

智史はそう言い放つとゆっくりと彼らに迫ってくる、得物であるキングラウザーを右手に掴んで。

 

「たぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

そして戦端が開かれる、次々とウルトラ戦士達が智史に襲いかかってくる。

 

「ふんっ!はっ!」

 

ーードガァァァン!

ーーグワァァァァン!

 

「ぎゃぁっ!」

「だはぁっ!」

智史はそんな彼らを次々と斬り飛ばし、殴り飛ばし、次々とグロッキーへと変えていく、積極的に避けようとすることなくゆっくりと歩きながら。

光線が幾つか智史に浴びせられる、智史はそれを黙って受ける、そしてすべて無効化されて吸収され、己の力へと変えられてしまう。

 

「忌々しい、消え失せよ」

 

ーードゴォォォン!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

しかし物理的に脅威にはならなくても見た目の忌々しさはかなりのものだった、まるで象に無数の蟻が必死に抵抗しているような様だったからである。

そんな忌々しい光景を何時までも見続けるのは智史の好きなことではなかった、智史は左腕から無数のクラインフィールドを生成すると重力子エネルギーと共にエネルギー衝撃波としてそれを彼らに叩きつける、それらは大津波の如く彼等に襲いかかり、一瞬で群がっていた彼らは跡形もなく四散する、その余波で美しい宝石のような色合いをした街並みが崩壊してしまう。

 

「仲間が、街が、い、一瞬で…。」

「な、なんて奴だ…。」

「あのエンペラ星人並か、それ以上の実力だ、気をつけろ!」

「強い…、だが何処かに弱点がある筈だ!」

ウルトラ戦士の1人がそう発言する、確かに圧倒的な力を持つ智史にも弱みは無い訳ではない、だがしかし弱みは消せぬ訳でもない。

彼らは同じ愚を犯さない程、決して無能ではなかった、現に彼らは戦闘の方法を変えた、一発でまとめて撃破されないように距離をとって分散し、接近戦を避けて牽制し、撹乱するようにして様々な攻撃を試し撃ちするかのように散発的な攻撃を仕掛けてきた。

それは戦術的観点から見れば確かに適切な選択だった、しかし現実での有効性が示されたとは限らない。彼らは宇宙を『警備』という名を借りて支配するに相応しいだけの高い実力を持つ戦士の集団なのだが、智史はそれ以上の実力を持ち合わせていた、唯でさえ素の実力が彼等より強いというのに滅茶苦茶な勢いであらゆるものを強化している為である、おまけに既に彼らの実力は把握済みかつ対処済みなのだから結果は言うまでもない。

彼らの行動は物理的意義の破滅から逃れる為の時間を稼ぐだけに終わり、そして更なる絶望と恐怖を煽るだけに終わる、智史は右手にダネルMGL(リボルバータイプのグレネードランチャー)を生成すると次々と榴弾を彼らに撃ち込んでいく、榴弾が撃ち込まれるたびに轟音と爆風が轟き、彼らの肉片が周りの破片と共に飛び散っていく。ウルトラ戦士達は人間を殺傷出来る程度の火器でくたばる程脆い訳ではないのだが、相手が相手である、相手は彼らを粉砕出来るだけの量を軽々と上回る破砕エネルギーを込めた弾を次々と、容赦なく撃ち込んでくる、弾切れなどまるで気にしていないかのような勢いで。弾がなくだったら自分で新たに造ってしまえばいいだけのことである、彼はそんなことを容易くやっていた。ましてや地球の百二十倍という重力による射程距離の低下を、回避させる隙を消すこと、更には弾頭自体の威力を増加させることも兼ね弾頭の運動エネルギーを異常なまでに増加させることで強引に相殺していた為に弾速も桁違いに速く、彼らの反射神経では回避が全然間に合わぬ程の速さだった。当然避けようとはするものの回避という行為自体が全く間に合わぬのでは意味がない。

 

「シュワッ!」

 

このままでは一方的に全員殲滅されると考えたのか、ウルトラ戦士の一部が強化変身ーー見た目で見ればチートラマン化を遂げて智史に突っ込んでくる、智史に今は勝てなくても仲間が退避する為の時間稼ぎをしてやることで戦力の温存を狙ったのだ。

その様は島津の退き口の如き光景といえた、しかし智史はその願いをそのまま見届けてくれる程優しくも、甘くもない。直ぐに突っ込んできた彼らに対してM134ガトリングガンを新たに生成するや否や、その青白い弾丸の雨を雨霰と見舞う。

チートラマンというだけあり堅牢性は凄まじく高かったし、戦闘能力、機動力もウルトラマン系列の世界では最高クラスの戦闘能力ではあったものの、それはウルトラマン系列でしか確実に通用しえない。

豪雨の如き青白い光の雨を避けようとしたり、又は防ごうとしたものの彼らにしてみれば回避不可能な程の勢いで飛んでくる滅茶苦茶な破壊の力を込めた無数の濃密な弾丸の雨の前に、彼らは次々とその身を砕かれ、あっという間に挽肉になっていく。弾丸が脇を通って行っただけでも悲惨な結果が生まれるのだ、仮にバリアーなど展開していたりしていてもその結末は変わらなかっただろう。

そしてその光の雨は彼らを挽肉に変えるだけでは飽き足りず、既に破壊されかけた宝石色の街並みに降り注ぎ、更なる破壊と叫喚を齎した、もう原型など留めぬ程に徹底的に。

 

「せ、先輩達を、い、一瞬で…‼︎」

「つ、強過ぎる…。あ、悪魔だ…‼︎」

こりゃ蒔絵が見たら『だぁ〜め!』って言いそうな光景だな、まあこれでも良いが。

もはや虐殺というべき光景を見て生き残ったウルトラ戦士達は腰が砕けて戦意を失い、恐怖にワナワナと震えるばかりだった、智史はそんな彼等さえも容赦なく手に掛けようと此方に向かってくる。

 

「ふふふ、死ぬ覚悟はできたか?」

「く、来るな、た、助けてくれぇ!」

 

「この野郎、好き勝手にやってくれるんじゃねえ!」

智史は予想通りに現れたかと思い、その声が発せられた方向を見る、見るとウルトラマンゼローーチートラマンの1人がそこにいた。

 

「お前の名前は、ウルトラマンゼロだな?」

「な、なぜ俺の名前を⁉︎」

「何処かでお前のイメージと共に耳にしていてな、だからだ。」

いきなり初対面の相手に自分の名前を言われ驚き動揺するゼロ。

 

「…くっ、何の目的でこんな惨たらしいことを!」

「私がこの世界をぶち壊したくなったからだよ、お前と同じ種族と一緒にな。」

「ふざけんな、この外道!八つ裂きにしてやる!」

「八つ裂きか、面白い。ならば私を八つ裂きにしてみせよ。」

智史はゼロを戦いに誘うようにして挑発する、その挑発を食らったゼロは感情のままに智史に突っ込んでくる。ゼロスラッガーが人間、いやメンタルモデルさえも捉えきれぬ程の速さで彼に見舞われ、並の怪獣では掠っただけで木っ端微塵にされかねない程の攻撃が容赦なく放たれる、しかし

 

「緩いな、レオの元で過酷な修行を積み、私と同じく己を鍛えているとはいっても全く磨けん。まあ私が今も己を半ば無意識とはいえよ鍛え続け、強くなり過ぎてしまっているから仕方あるまい。だが己を磨く意欲を更に高めてくれるのには感謝しよう。」

「な、何っ⁉︎」

智史はゼロスラッガーを握り潰して放り捨てる、そしてゼロの正面に瞬間移動するや否や顔にデコピンを食らわす、それだけでゼロは大きく弾け飛び、建物の瓦礫を幾つも吹っ飛ばして建築物の残骸の一つに叩きつけられる。

 

「ば、化け物め…。舐めやがって…‼︎」

何とか起き上がろうとするゼロ、しかし次の瞬間、その目の前に智史が瞬間移動に見えるような信じがたい速さで現れる。ゼロはシャイニングゼロとして強化変身する、ストロングコロナゼロ、ルナミラクルゼロに変身しても勝ち目は全く無いと一瞬で見抜いた為だ。

 

「ほう、二つの特化形態では勝てぬと判断したか。流石はゼロ。ウルトラ戦士の最強クラスというだけのことはある。しかし、見た目がかなりダサいな、シャイニングの名の通りの美しい輝きでその醜さをフォローしているというべきか。」

「だらだらと戯言を喋りやがって…。だがもう終わりだ、真っ二つにしてやるぜ!」

「“ゼロ、待て!”」

「し、司令官‼︎レ、レオ教官!」

突如として威厳のある声が響く、智史はお頭が来たかと見て、浮かれた気分を少し鎮める。

 

「相手の格が違いすぎる。アレはベリアルやエンペラ星人よりも遥かに強大だ。」

「いい評価だ、感謝しよう。お前達の名はウルトラマンケンとウルトラマンレオだな?我が名は海神智史。この世界の外から来た侵略者だよ。」

「成る程、だがらあのような傍若無人な振る舞いを…。では何故このようなことを…。」

「単純にお前達を壊したくなった、それだけだ。理由?下手に探して中途半端な訳を理由とするつもりは無い、だから自分の素直な気持ちを理由としたのみ。

さて、今度はこちらから聞くとしよう、お前達は何の為に宇宙警備隊とやらを作ったのだ?」

「なっ…‼︎」

智史の質問に皆が少し動揺する。

 

「何言ってやがる、宇宙の平和を守る為だ!」

「表面上、はな。だが私にしてみれば自分達による自分達の為の世界を作り上げる為に作った組織にしか見えん。宇宙の平和を守るだと?それはお前達によるお前達自身のための世界を作ろうとしているということの言い間違いだ。この世界の全ての生命が『宇宙の平和』と名乗るお前達による支配を受け入れて喜んでいるというのか?お前達の『宇宙の平和』という目的に基づいて行われた行為は彼等をいい方向へと導くものなのか?

いや、そんな筈がない。過去の例が無いにせよ、今の心情から見るにお前達はその星に害を齎すようなものでも自分達の為になる存在ならば殺しはせんだろうな。お前達がやっていることは『宇宙の平和』という偽善の皮を被った、生殺与奪の権を自分達の手元に集約するという行為そのものだな。」

「う…。」

まあ、偽善と矛盾を生み出し続けている私が言う言葉では無いかもしれんな。

智史の指摘は本質を突いていた、自分達の目的を綺麗事のようにするーー本質に偽善の皮を被せることは自分達の正義の為なら幾らでも出来たからだ。

それに智史が指摘した通り、彼等ウルトラ戦士達のやった事は必ずしも正しいとは言い切れなかった、実際に手助け不要だと言っていた民族に節介のように見えることをしでかしたという『実績』があったからだ。

そして何より、彼等のやった事は結果論で見れば『宇宙の平和』を作り出しているだけなのであって、本質的な行動を見れば宇宙の平和を作り出すという雰囲気はあまり感じられない。まるで彼等と敵対している宇宙人がしている事とそっくりな事をしていたからだ。

 

「あと蛇足として一言付け加えておくが先程まで『害悪』な気配を出してはいた、だからって本当に『害悪』とは限らんぞ?一度自分のモノを見る『目』の状態を知ることだ、まあ今から滅ぼすからそんな助言など無用か…。

さあ、雑談はこれまでとしよう。多数で掛かってきても構わんぞ、騎士道精神など私に対する勝利の為の手段を妨害するファクターでしか無いからな。」

智史はそう言い手を叩いて論戦を強引に終わらせる、更なる緊張が走る。

 

「話し合いで、終わらせる気はないのか?」

「無いな、私は一度始めたことを中途半端に終わらせられるのが一番嫌なのでな。さあ、始めようか。」

「この野郎め…。レオ教官達や司令官達が俺の不本意ながらも一緒に戦ってくださる以上、今言ったことを後悔すんじゃねえぞ!」

そして火蓋は再び切られる、ウルトラ兄弟と父母達とゼロが智史に襲いかかる。

 

「はあああああああ!」

「ふっ!」

複数の光線と技が飛び交う、しかし智史は其れ等を全て吸収し己の力に変え、強烈なカウンターを次々とお見舞いしていくというもはや力技でしかない強引な攻めで次々と打ち倒し、追い詰めていく。

 

「この野郎、食らえ!」

ゼロがシャイニングワイドゼロショットを打ちかます、しかし智史はあっさりとこれを受け止めて同じ結末としてしまう。

 

「強くなり過ぎているせいで全く効かんな、まあ研鑽を促すのにはいいが。」

「な、何だと…‼︎」

そして智史は再びゼロの正面に突如として現れると避ける暇さえ与えずに強烈な一撃をかます、ゼロは再び大きく吹き飛ばされる。

 

「くそぉ、何て威力だ…。このままだとこちらが一方的に…。」

「…そうだなゼロ、こうなったら早い内にケリを付けるぞ!」

「…はい!」

形成を立て直したゼロ達ごとウルトラ戦士達は一斉に必殺を放つ、火力を集中して一気に突破することを狙った戦術だった、だが

 

「戦術的には適切だな、だが素の実力差が大き過ぎたらそれは殆ど通用せんぞ?」

智史はこれまでと同じように数多の怪獣達を粉砕してきた実績を持つ高威力の肉弾技や光線技の連携攻撃をあっさりと受け止めてしまった。

 

ーーやはり、何処か心に響かんな…。奴らを甚振る事しか楽しめる要素が無い…。強くなり過ぎた悪影響なのだろうか、それとも私自身が悪いところを変えようとしていないツケか?まあそれでもよいが。

 

「飽いたわ」

 

ーーバァァン!

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

そして智史は空間を引き裂くようにして周囲を薙ぎ払う、一瞬にして肉片が舞い散り、ウルトラ兄弟達、そしてウルトラ父母2人の体に龍の爪に深々と切り裂かれたかのような規則的な巨大な傷跡が出来上がる。そして衝撃波は彼等を貫通し、破片を更に巻き上げる。

 

「…くそ、こうなったら…、時間を巻き戻してやる…‼︎」

この一撃で追い詰められたゼロは半分ヤケになったのか、過去からもう一度鍛え直すことを狙っているのか、最後の切り札としてのチート技、シャイニングスタードライヴを発動する、彼の頭上に太陽の如き光球が現れ、そこから光が放たれて周囲の空間の時間を巻き戻そうとする。

そして時間が巻き戻ることによってウルトラ兄弟達の傷が消えて彼等は復活する、当然、智史もそこに居ない、筈だった、が

 

「過去へ逃れてもう一度鍛え直すことで私に勝とうというのか。立派な戦術だ。だが生憎だな、それを見逃す程私は優しくはない。憎しみの禍根は跡形もなく消しておきたいのでね」

「な、何っ⁉︎」

智史は強引にシャイニングスタードライヴの時間の空間を力技というべき強引な攻めで侵入した、周囲とは独立した自己専用の時間軸を異常な迄の自己進化で既に確保した彼にはもはや因果律など通用しなかった、当然、アンチスパイラル戦で宇宙の時系列を無視して消し去ったように彼には過去も未来も一つのモノにしか見えない。

 

「さあ、もう終わりにするとしよう。同じモノは見飽きた。」

 

ーーバッ!

 

「ゔわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

そして智史は紅蓮の炎を生み出し、一瞬にして彼等を焼き尽くした、彼等は塵芥残さずに消滅した。そして智史は現実に時間を強制的に戻す。

 

「わ、私達が消えたら…。宇宙の平和が…。」

「平和?お前達による支配の言い間違いだろうに。お前達の支配を完全悪と言うつもりは無いが、お前達の支配は必ずしも全てに『平和』を齎すとは限らん。如何なる相手に受け入れられるようなモノなど無い。さて、タワーにあるプラズマスパークとやらを奪い取り我が物にした後、ここを滅ぼすとしよう。ふっ、まるでかつてヨーロッパ人が南米で先住民にやった事とそっくりだな…。」

「や、やめろ…。」

ウルトラの父が声を振り絞るようにして懇願する、既に父母2人は先程までの攻撃で既に瀕死だった。しかし智史はそれを意に介さずにタワーへと向かっていく。

 

「ほう、これがタワーか。やはり、間近で見ると随分と大きなものだ。早速、中に入ってみるとしよう。」

そして智史はさっさとタワーの中に入ってしまう、タワーの中は落ち着いた青色で染められた神秘的な空間が広がっていた。

 

「美しいデザインだ、これが私が元いた世界にあったとしたら建築物としてかなり有名になっていただろうに。」

智史はそう呟く、しかしプラズマスパークコアの所まで直接行ける使えそうな階段やエレベーターのようなものが無かったので智史は軽く、しかし途方も無い勢いで跳躍して瞬時に最上階へ到達する。

 

「これがこの星を死の星へと変わる定めから守っていた代物か。素晴らしい。だがそこから発せられる光ーーディファレーター光線はウルトラ戦士達のスタミナ源でもあると同時に浴び過ぎれば猛毒ともなりうる存在だ。ふっ、薬は毒であるとよく言うが、まさにそれだな。

だが『猛毒と化す』のは入ってきた力を己のものに仕切れなくなったからなのであって、入ってきた力を常に己のものに仕切れていれば『猛毒』とはなり得まい。」

そして智史はプラズマスパークコアに手を伸ばそうとして、『何か』がやっと来たことに気が付く。

 

「今更来たのか、遅いぞ、ウルトラマンノア、ウルトラマンキングよ。」

「そこまでだ!この国を滅ぼそうとする侵略者よ!」

「シュワッ!」

「数百数千の我らの戦士達が倒されたことを見るにベリアルかそれ以上の実力はあるようだな、だがそれもここまで!」

「ほう、各方面の守備を放っぽり出してまで私を潰したいようだな。裏を返せば私にそれだけの価値があると認めてくれたのか。」

「そうだ!お前は我らを滅ぼそうとする脅威!例え星を守る使命を放り出してもお前の魔手からこの星は守り抜かねばならぬ!」

そしてタワーの窓のようなものが一斉に開かれる、見ると10万というべき数のウルトラ戦士達がタワーの上空に集結していた。

 

「面白い、ならばその期待を越えるかの如く、こちらも礼を尽くして全員葬り去ってくれよう。」

智史はそう答える、そして己の周囲に時空の歪みを出現させるとそこから無数の火器、兵器が次々と姿を現す。

 

「狼狽えるな!あんなものは見掛け倒しだ!」

見掛け倒し?見掛け倒しが世界をひっくり返すことなど幾らでも存在するというのに。さて、ぱっぱと片付けるとしよう。

 

「沈め」

そしてその言葉と共に無数の火器兵器が一斉に咆哮をあげる、無数の火線や光条が次々とウルトラ戦士達を抉り飛ばしていく、如何に強靭なウルトラ戦士でも智史と同じように『力』の因果からは逃れられない、そのあまりに圧倒的、いや一方的な火力の前に断末魔をあげる暇さえ与えられずに肉片一つ残さず次々と殲滅されてしまった。そしてその余波で街の周囲までもが爆風と熱線によって吹き飛ばされ、水や緑、そして人、否ウルトラ民族は消え去り、後には何も残らぬ煮えたぎる大地が、クレーターが無数出現した。

無論こんな芸当を出来る存在は智史のような力を持て余し過ぎた存在である。そして智史はゼロの事を少し教訓として更に己を高める速度を上げるのであった。

 

キングもノアも目にも見えぬ程のほんの少し本気を出しただけで一瞬で死んでしまった。『力』が無ければ何も変わりはせぬが、『力』があり過ぎれば、こうもあっさりと、簡単に終わってしまうものなのだな…。まあ、全ては『力』で出来ているのだから、当然の顛末か。

さて、プラズマスパークの力を我が物にしよう、…ふっ、ウルトラ民族よ、お前達にしてみれば侵略者、破壊者というべき存在であるこの私を好きなだけ恨むがいい。

智史は罪悪感を強く認識していた、自分が倒したウルトラ戦士達の中には少なからずともマトモな存在が居たからだ。しかし彼らを復活させようと時を巻き戻す気にもなれはしなかった、時を巻き戻す事が無意識にも引けたからだ。

 

ーー過去に拘ることなく今を、未来を向いて生きていたい。

 

そんな思いが、無意識とはいえよ智史の中にはあった。

それはともあれ、智史はプラズマスパークコアに手を伸ばす、そしてそのエネルギーをディファレーター光線、そしてコア自体の構成物質諸共取り込み、吸収し、己の『力』へと消化変換していく。

やがてプラズマスパークコアそのものが消える、すると太陽の役割を担っていたものが消えたせいなのか、急速に星が凍り付いていく。

 

「ああ、光が消えた…。」

「この星は、死の星に変わる宿命だったのか…。」

そう呟くウルトラの父とウルトラの母、智史との戦闘で深手を負った2人にはこの低温に抗うだけの力はもう残ってはいなかった。

2人の体は凍てついていく、そして民族、植物、水、構造物といったあらゆるもの全てが凍てつき、ウルトラの星は氷の星と化してしまった。

 

「…寂しいものだな、『光』が無くなればこうもあっさりと全てが凍てつき『生』が消えた死の星となってしまうのか…。翔像の墓参りの時にバックとなっていた、雪が静かに降り注ぐ白い空に匹敵する程の美しさと儚さを伴った哀しみが心に突き刺さってくる…。まあ、こういう風景に変えてしまった私自身が言うべき言葉ではないのかもしれんが。やはり、私は矛盾まみれだな」

智史は己を責めるようにしてそう言う、そしてそれを言い終えた時に音声通信が入る、智史はサークルを展開する。

 

「智史くん、どう?」

「…きれいさっぱりに死の星へと変えてしまったよ、欲望の赴くがままに暴れたからな。だがそれを何時までも嘆いている理由などない、私の生きる目的は欲望のままに暴れることなのだからな。ところで行きたいのか、この星に?」

智史は琴乃に自分の周囲の様子を写した画像を見せる、死の星という要素が十二分に伝わってくるかのように。

 

「重力は地球の120倍、おまけに酸素が無い。琴乃、如何にお前でも生身のままだと只では済まんぞ?」

「分かったわ。パワードスーツ機能も兼ねた宇宙服、着てくるからちょっと待ってて。ズイカク、一緒に行く?」

「ああ。カザリ、お前も行くか?」

そして琴乃達は一度通信を切る、琴乃は一度衣服を脱ぎ、宇宙服を着用する。そして智史がワープホールを展開し、琴乃達が姿を現わす。

 

「お、重い…‼︎」

「す、すごい重さだ…!」

「これが私がいた世界よりも120倍もあるという重力だというのか…。かなり身に応えるな…。」

宇宙服のパワードスーツ機能が焼け石に水程度とはいえ、立っているとはな。私による『補正』があることも考慮しても、流石に海洋技術総合学院で努力という努力を積み重ね、優秀な成績を収めただけのことはあるか。恐るべし、天羽琴乃。

智史は琴乃が物理的に視線が合わぬ所で如何に努力していたかをこれ迄に痛感していた、琴乃の部屋にあった無数の研究書類、数学、リヴァイアサンの艦内で行われた体育運動の数多といったものがこれを物語っていた。

 

 

「皆、大丈夫か?」

あまりの高重力に皆人外とはいえよ体が重そうな表情をしていた、智史はその光景を見て少し心配に思ったのか、手を差し伸べる。

 

「ありがとう…。体にくるね…。」

「そうだな、無理はしなくていいぞ、お前の好きなだけ歩くがいい。」

そして智史達は散策を始める、風景自体は美しいものだったが、環境は優しくない。智史以外の全員に体の重みが更に強くのし掛かり、体力を急激に奪っていく。

 

「『体』を…、鍛える必要があるね…。」

「そうだな…。今のままではいずれ対応しきれなくなる時が来る…。」

ズイカクとカザリは今まで味わったことの無い環境と自身の感覚とのギャップにそう苦笑しつつも今のままでは不味いと判断し環境への対応を目的とする自己強化を始めることとした、とはいっても何も策や考えが無いのではタイムロスを複数生み出す可能性がある。故に2人は智史にその方策を聞くこととした、こんな環境に平然と適応し対応できているという実績が智史にはあったからだ。

 

「成し遂げること自体が困難かもしれんが、とにかく対応力、対処速度、対処の質を徹底的に上げることが如何な環境に置いても対応できると私は考え、その信条を元にしてこうしてここに存在している。」

「まあそうだろうな…。お前に強化を依存するのが一番手っ取り早いが、それだとお前に操り人形にされ易くなる。まあ助言ありがとう。自分で強化は推し進めるよ。」

「そうだな、このことを教訓として高重力環境をはじめとする各種環境を自動生成するトレーニングルームを新規に作るとしよう、艦の大半が兵器にスペースを取られていることを考慮しても、スペースが有り余り過ぎてる。さて、禍根を断つことも兼ね、この世界を滅ぼすとしよう。自分で引き起こしたことは自分の手で尻拭いだ。」

「容赦ねえな、まあこれだけの暴挙を仕出かしたからには復讐やらかす輩が沢山出るかもしれん…。復讐戦挑まれたら堪ったもんじゃないから、後顧の憂いを断つという点では適切だな…。」

「この星には自分の心を惹きつけるものがある、ならばせめての己なりの贖罪として、この星が存在したという記録は残しておこう…。」

智史はせめての贖罪として氷の星となったウルトラの星に関する情報、記録を己の中に刻み込んだ。そして智史達はリヴァイアサンに移動する、智史はウルトラマンの世界系に別れを告げるようにしてこう呟く、

 

「さよならだ」

 

と。

すると超巨大なブラックホールが氷の星と化したウルトラの星を中心として生成される、そしてブラックホールはその星を中心として全てを吸い込んでいく、星も、生命も、ウルトラマンの世界系全てのものを。

そしてウルトラマンの世界系は跡形もなく消滅し、ウルトラマンの世界系があった場所には何もない空間だけが残った。

「矛盾まみれだとしても、私は存在し続けたいのかもしれない。さて、次はドラゴンボールの世界に行くとするか、あそこの輩共を徹底的に甚振り、奈落に叩き堕とし、孫悟空とマトモに戦うとしよう、跡形もなく滅ぼす必要性のないように。ふっ、オーズに行った時のことにならないように少しは工夫しよう…。」

そしてリヴァイアサンは強くスラスターを輝かせて、ドラゴンボールの世界系へと航行を開始する、だが智史は同時に悟っていた、これ迄の所業で自分を快く思わぬ者達が動き始めたということを。

智史はゼロとの戦闘経験、ズイカクとカザリの成長やそんな彼らの動きも更なる進化を促す『ファクター』として己の研鑽を更に高め、対応を異常過ぎるレベルの速度で練り続けていたーー




おまけ

トレーニングルーム

今回新規に創られた部屋。
これ迄の環境のデータを再現し、その環境下でトレーニングを積むことが出来る。
智史が今回の重力の件でズイカク、カザリ、琴乃達の環境適応の重大性を認識したことがこの部屋が創られた理由の一つである。

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