海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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今作は本作と同じく「蒼き鋼のアルペジオ」を原作とする「イージスミサイル超戦艦 AGSBB 信長」から信長が登場します。
要するにコラボです。
なおこの作品の作者のAGSBBさんには承諾を取った上で執筆をさせていただきました。
本作のストーリーの流れと絡めた上でのコラボです。
それではじっくりとお楽しみください。


第21話 信長と曳航、そして交わり。

「どうだ、ヒュウガ。解析対象である破片の様子は?」

「元気盛んみたいね、解析するにはいいサンプルね。」

「各種実験及び解析を蒔絵とともに始めてくれ。」

「分かったわ、万が一事故があってもあなたが対象を殲滅できるようにはしてくれたからそこには感謝しておくわ。あなたの推測が正しかったらとんでもないものね。」

リヴァイアサンのCIC内でそう音声通信で会話する智史とヒュウガ。彼女は智史から受け取った破片をスキズブラズニルの実験室でデータ採取及び各種実験に掛けようとしていた。

 

「ところで私の艦に女風呂を作ろうとしているみたいだな…。それをやろうとしている元凶がお前であることは知ってはいるが…。」

「あら、あなたの艦には大規模な浴場が無いじゃない。スキズブラズニルで一応入浴は出来るけど長期間作戦行動をする際にはそれが無いのは寂しくない?風呂というものはあるけどそれはあなた個人の風呂であってせいぜい2人ぐらいが入れるのが複数あるぐらいじゃないの。大規模な浴場でみんなで仲良く話し合いたいから今回のことを実行しようとしたのよ。」

「…了承した…。」

 

ヒュウガのとんでもない計画に唖然としてしまう智史。それも無理はない、自分の艦の中に自分の意思抜きで浴場が造られようとしているのだ。自分の意思で造り替えるのならまだ分かるところもあるが、他人が勝手に造り変えようとしているのだ。彼はその計画をやめて欲しい気持ちだった、自分の住処のルールに基づいた空間の配置が勝手に崩されてしまうのだから。

 

「(勝手に自分の艦の中が作り変えられてしまうなんてある意味辛い…。これも私が彼らを散々に弄りまくった報いとも言えるのか…?私の場合は敵に一方的に勝てても味方には勝てず、か…。しかし琴乃が作り変えてしまったこの空間も最初は違和感を感じたが今では見慣れてしまったか…。今回の改装もそうなるのかな…?)」

心の中でそう愚痴を呟く智史。実際何故なのだろうか、琴乃によって改装されたリヴァイアサンのCICのCICらしくない茶と黒といったイメージカラーをふんだんに用いて雰囲気を落ち着かせたオシャレな書斎風のインテリアにも今は見慣れてしまっていた。寧ろその空間が好きになってしまった程である。

 

「この空間は住処としては落ち着きますね。かつての私なら校則違反として撤去を命じたのに」

「ヒエイか。そうだな、お前はあの戦闘から随分と変わったな。」

「あなたと戦って完敗してしまったことが私達が変わっていくきっかけとなったのですよ」

「そうか?しかし各分野を担当するメンバーの有無でこんなに雰囲気が変わるとはな…。」

 

そう、リヴァイアサンのCICには401のものと同じコンセプトで(ただし360°全周囲スクリーンや各種映像表示システムが401のものとは違い実装されている。)各操作用コントロールパネルやモニターがある席が元々付いていた、しかしそれらが利用されたことは今まではほとんど無かった、というのも今まで智史は琴乃と一緒だったこと以外は全く他者を使った戦闘をしなかった、いや出来なかったと言った方が正しい。

彼は人間関係を築くのが元々苦手であったこと、そして霧となってしまったことも相まって全くといっていいぐらいに艦を支えてくれる仲間や同志ーーつまりクルーを手にできなかったのだ。

なので彼はいつも自分一人で戦闘をやってのけていた、他者がいなくても平気な程に実力をつけ過ぎてしまった(今でも更に実力を付けている)こともあるのだが。

確かにそれは自立できているという点では素晴らしいと言える、しかし協調性の観点では彼に協調性が欠けていることもあってか非常に問題とも言える。

具体的に言ってしまうと、彼は自身が他者に倒されるという確率が0に違いレベルであり、また他者を確実に、いや一方的に倒せる確率がほぼ100%になってしまっている。しかもその確率が効く強さの上限は自身の異常な自己研鑽のお陰でうなぎ登りということだ。しかし彼は常にマイペースで規則的で情緒不安定な性格で、些細なことで暴走したり、一方的に殲滅し、焼き尽くしたりしてしまうという残虐な行動を他人が制御し切れない程の勢いでやってしまうのだ、しかもその勢いは異常な自己研鑽の影響で急激に勢いを増しているのだ。

 

要するに智史は自身の感情を上手に制御し切れておらず自身の感情のままに動いてしまう(増大し続ける力を制御するための器も常にきちんと作っているのでその力に理性を奪われている状態ではない。)ので、その強さが異常なまでに増大していくということは彼を実力で止めるということが実質的に不可能となってしまう。彼ときちんとした信頼関係を築いている他者が居れば彼は落ち着きはするが、その他者がいない状態で彼を暴走させてしまえば場合によっては今後の行動計画や作戦計画に多大な悪影響を及ぼしたり、最悪の場合自分達がなす術も無く彼に一方的に殲滅されてしまうのだ。なので今回のクルーの件は、彼との戦闘で全員が船体を失ったヒエイ達をリヴァイアサンの各分野のクルーとして彼と関わらせることで、彼がその場の感情で暴走してリヴァイアサンの兵装を撃ちまくってオーバーキルと化してしまうのを防ぐのと同時に彼や他のクルー全員がお互いの信頼関係を築いていくことでリヴァイアサンが繊細に動くようにするというよりも霧の究極超兵器リヴァイアサンそのものでもある彼の情緒を安定させていくことで暴走を未然に抑止することが狙いであった。

 

「これは随分と分かりやすい構造だな…。」

「私たちが何をすればいいのかが分かりやすいな」

「智史、ほら早く戦争始めようよ!」

「アシガラ、彼を急かさないの。」

「機関室の操作、面倒くさい…。彼のものだから彼がやってくれれば楽なのに。」

「これが航空機管制システムを兼ねた航空機管制コンソールか‼︎」

 

そうそれぞれの感想を呟く彼ら。

 

「皆随分と楽しそうなことで…。ハグロは面倒くさがりだけど…。」

智史は半ば呆れた感じでそう言いかけるーー

 

「⁉︎本艦から南南東1000㎞の所に巨大なエネルギー反応‼︎解析完了、その地点に強力な空間の歪みが生じています‼︎」

「何⁉︎」

 

ーーやはり当たったか、恐らくは…。

 

「空間の歪み、消滅していきますーー重力子反応を確認、恐らくは霧の艦艇と思われます。」

「データ収集及び解析を速やかに進めるぞ‼︎」

そう言い各種データ解析を始める智史達。

「?なんだこれは?AGSBBーーイージスミサイル超戦艦、信長?こちらの世界のものではない異世界の船だというのか?」

「はい、この未確認艦の識別IDはこちらでもそうだと確認しています。」

「なるほど…。しかし、その近くに霧の中米艦隊が警戒中か、私が軽く打ちのめしてしまったヴォルケン達のものより量は劣るとはいえそれでも超兵器や強力な新型艦を複数配備しているからな…。奴ら強くなっているな、その強化速度は私のものに格段に劣ってはいるが。今判明したものとはいえ、こいつのスペックだとあっさりと殺られそうだぞ…?」

「そうですね、この未確認艦、もとい信長と彼らの間には愕然とした実力の差がありますからね…。」

「おまけに各地の奴らはムサシの命を忠実に守ってるからな、好戦的になってやがる。」

そして智史が予想した通りの事態が起こる。

 

「中米艦隊、信長への攻撃を開始しました‼︎信長から通信を傍受‼︎ 『我、未確認の敵艦隊から攻撃を受け押されつつあり、味方は何処か⁉︎誰か至急救援を求む‼︎』です‼︎」

 

「急ぐぞ、艦載機を順次発進させろ‼︎艦速最大、全速前進!総員戦闘配置につけ‼︎」

 

リヴァイアサンに青い龍の形をしたバイナルが灯る、そしてリヴァイアサンは艦隊から外れるようにして南南東に進撃を始めた。同時に左舷飛行甲板からB-3 ビジランティⅡやB-70 ヴァルキリー、爆装コスモパルサー、F-3 心神、FFR-31MR/D スーパーシルフといった本家を遥かに上回る、常識を逸した見た目そっくりの高性能機が飛び出していく。

 

「モンタナ、タカオ、アタゴ…。お前達も私について行くのか?」

「当たり前ですよ、まだ一回しか活躍してないんですから‼︎」

「お姉ちゃんの為に私も戦いたい!行かせて頂けますか?」

「オウミをヴォルケンが助けたように私も彼女を助けたい。ヤマト様、艦隊を頼みます。」

「わかったわ、モンタナ。みんな、気をつけて…。」

 

そして彼らは中米艦隊に襲われている信長の元へと突き進んでいくーー

 

 

ーーAGSBB(イージスミサイル超戦艦)信長のメンタルモデル、サクラの独白ーー

 

 

ーー私はサクラ。信長のメンタルモデル。

元は向こうの世界での鎮守府で深海棲艦や霧の艦艇を殲滅するという任務をやっていた。

私は最強と言っていい力を持っていた。(*元の世界の基準で)

だが、ある日ーー

 

「本艦正面に強力なエネルギー反応‼︎本艦を引き込むようにエネルギーの潮流が発生しています‼︎」

「さ、サクラ、ワープを用いて脱出するんだ‼︎」

「ワープ‼︎」

 

ーーズヒュィィィ‼︎

ーーズザァァァァァァ‼︎

 

「ダメです、エネルギー潮流が強すぎて脱出できません‼︎」

「本艦、エネルギー体に飲み込まれます‼︎」

「総員何かに掴まれ‼︎」

 

ーーズガァァァァァァ‼︎

ーーゴボゴボゴボゴボ…。

 

 

「ーーあ、あれ…。ここは、どこ…?」

 

気がついたら私は信長のCICでテーブルにもたれかかるようにして倒れていた。

 

「みんな、無事⁉︎提督⁉︎大丈夫ですか⁉︎」

「あ、ああ…。大丈夫だ、それより、ここは何処だ…?」

「わかりません、今からデータ解析を急ぎます」

 

そして私がデータを調べようとした次の瞬間ーー

 

「方位135に艦影多数を確認!潜水艦120、軽巡100、重巡70、空母12、戦艦40、それを上回る巨艦8隻‼︎いずれのものも我々のデータベースとは一致しません‼︎」

「一体何が起きているんだ⁉︎」

「⁉︎未確認の艦隊、こちらに向けてミサイル及びレーザー多数を発射‼︎」

「迎撃しろ!総員戦闘配置につけ!サクラ、ダブルクラインフィールド展開‼︎」

「了解、ダブルクラインフィールド展開‼︎」

 

そして私は艦の迎撃兵装を稼働させ、ミサイルを次々と1223セルものVLSから解き放っていく。だがーー

 

「迎撃ミサイル、命中ーーそ、そんな⁉︎敵ミサイル、様相を変えることなくこちらに向かってきます‼︎」

 

ーービュィィィィィン‼︎

ーーブアァァァァァン‼︎

 

「本艦にレーザーが複数直撃‼︎非常に高威力です!ダブルクラインフィールド、一撃で飽和、突破されました‼︎」

「応戦しろ!撃ちかえせ‼︎」

 

私の方もレールガンや反物質弾に陽電子砲や更には船体を変形させて超重力砲や波動砲を必死に撃ちまくる、流石に軽巡クラスの何隻かはこの攻撃で沈み、重巡クラスにも損傷らしきものは負わせることはできた、だが大戦艦級を超えた大きさの戦艦は平然としていた。おまけにこれを上回る巨艦も何隻かいるのだ、それは更なる猛攻を促すだけに終わった。

 

ーーシャァァァァァ‼︎

ーーズグァァァン‼︎

 

「本艦艦首及び右舷にに侵食魚雷及び高威力魚雷複数直撃‼︎艦首、完全に欠損しました‼︎」

「波動砲及び超重力砲、使用不能‼︎」

「破損箇所から浸水多数‼︎ダメージコントロール間に合いません‼︎」

 

ーービュィィィィィ‼︎

ーーヒュォォォォン‼︎

 

ーードガァァァン‼︎

ーーグワァァァァン‼︎

 

「主砲塔、全て沈黙‼︎上部構造物、大破‼︎」

「各種レーダー破損‼︎火器管制システムが今の攻撃で機能しなくなりました‼︎」

「各所で火災が発生‼︎さっきの攻撃によって各種被害緩和システムが全損したことで規模は拡大しています‼︎鎮火のめどは立っていません‼︎」

 

敵の猛攻を受けた私は各所を損傷し、満身創痍となってしまう。各兵装は悉く沈黙し、船には痛々しい大穴が複数開き、そこから海水が入ってくる。更に艦首を欠損したことや敵の攻撃によって機関部が完黙したことも加わり自力航行がほぼ不可能となり、私は海を漂う瀕死の鯨のように、猛攻を受けてあらゆる所から激しい炎と黒煙を吹き上げて右に傾いた身体で、迫り来る死を待つという選択肢を選ばされるしかなかった。

 

 

ところで智史はというと。

 

「(これ群像達と初めて会った際に起きていた戦いの戦況にそっくりかもしれんな、だが前と同じような結果としてやるか。)」

 

 

そしてーー

 

「くっ…、ここまでか…。」

「提督、私もお供します…。」

「敵ミサイル及び魚雷、多数接近‼︎」

「敵巨大艦、艤装を展開!本艦に高エネルギー兵器を発射する態勢に入った模様‼︎」

「今の本艦では回避はおろか迎撃さえできません!」

「くっ、総員退艦ーー」

 

提督が総員退艦を命じようとした、その時だったーー

 

ーーシャァァァァァ‼︎

ーーヒュルルルル‼︎

ーーガガガガガ‼︎

 

ーーズドガァァァァン‼︎

ーーグワァァァァン‼︎

 

「敵艦、次々と爆発を引き起こしています‼︎その艦隊のものとは異なる航空機によるものです‼︎」

「敵航空機、次々と撃墜されていきます!」

「魚雷やミサイルも撃破されていきます、これはーー」

「一体、何が起きているーー」

 

突如として次々と爆発が生じる、見ると強大だった敵の艦隊が金属の海鳥達に群がられて激しく啄ばまれて次々と臓腑を抉り出されて喰われていく。

 

ーー彼らは、一体何者なのだろうか…?

 

そう考える私達の所に突如として通信が入る。

 

「こちらに向かってくる正体不明の超巨大艦から通信!『我が艦の名はリヴァイアサン。これより貴艦を援護する。』だそうです‼︎」

 

そう通信が終わると突如として敵の巨艦が一瞬だけしか見えなかった青白い光弾を次々と喰らい、一撃だけで原型を留めない程に破片を撒き散らして吹き飛んでいく。

あの巨艦が何者なのかはこの時は分からなかったーー

 

 

そしてリヴァイアサンでは。

 

「全兵装射撃開始、敵艦隊を粉砕せよ‼︎」

「了解‼︎」

「ミョウコウ、敵のデカブツ達に主砲の照準を合わせて片っ端から撃ち沈めてやれ‼︎」

「了解、砲塔レールガン、発射‼︎」

 

ーーキュオオン‼︎

ーーキュオオン‼︎

 

ーーズグァァァン‼︎

ーーグワァァァァン‼︎

 

「敵超兵器、今の攻撃で4隻が轟沈‼︎信長にミサイルが数十発向かっています‼︎」

「ふん、させるかよ!キリシマ、ナチや私の座標データを表示するから私の兵装をフルに使ってミサイルも敵艦も敵の航空機も全部奈落の底に叩き落としてやれ‼︎」

「了解!こんのお…。

“だぁ〜りゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁぁ‼︎”」

 

ーーガガガガガガガガガガ‼︎

ーーウィィィィィィィィィィ‼︎

 

ーーズボズボズボズボズボズボズボ‼︎

 

ーーズグァァァン‼︎

ーーグワッシャァァァン‼︎

 

キリシマは画面に表示されている敵の座標を片っ端からタップしていく、その様は北斗の拳に出てくるケンシロウの北斗百裂拳を彷彿とさせた。そしてリヴァイアサンから凄まじい勢いで光弾やミサイル、魚雷が放たれていき、彼らの身体を次々と食い千切り、四散させていく。瞬く間にレーダーから敵やミサイルを示す光点が次々と消えていった。

 

ーービュィィィィィン‼︎

 

ーービュゥゥゥゥン‼︎

 

「本艦に高エネルギー兵器及びレーザー複数が命中!ですが本艦の各種システムと連動している自己再生強化・進化システムによって全て吸収されてそのまま本艦の強化に回されてしまいました…。幾ら何でもあまりにも一方的ですね…。」

「ヴォルケンの時もそんな感じだったね、智史くん。あまりにも強くなりすぎてるけど、それでもあなたは初めて会った頃から芯をずっと変えようとしないからそこが好き。」

「敵艦、逃走を始めました!」

「逃がすか‼︎タカオ、アタゴ、モンタナ!私や私の航空隊と連携して一匹残らず冥底に送ってやれ‼︎」

「了解、この時を待っていました。ほら、アタゴ、行くわよ!」

「分かったわ、各種兵装の誤差修正を開始‼︎」

「ありがとう、智史さん。元太平洋艦隊副旗艦の実力、あなたに見せてあげる。照準、霧の中米艦隊に定めっ!」

 

タカオとモンタナは彼らの退路を塞いで61cm量子魚雷や新装備の100口径203㎜レールガンに50口径40.6㎝砲を次々と叩き込んでいく。

 

ーーシャァァァァァ‼︎

ーーヒュルルルルルルル‼︎

 

「甘いわ。改装を終えた私の実力、甘く見ないで頂戴。」

「そう簡単に殺れると思ったの?私は彼を目標として自身を研鑽してきたのよ?」

敵も必死に応戦したが、タカオは4000ktを越える速度と小回り、そして素早い迎撃で敵弾の命中を一切許さず、モンタナは何発か命中したものの、その攻撃のエネルギーを拡散したり吸収して自己の攻撃のエネルギーに転用したりして損傷を一切たりとも許さなかった。

そしてそこにリヴァイアサンとその航空機達が容赦なく襲いかかる。更には智史から一方的なトドメが振るわれる。

 

「重力子X線レーザー、撃てぇ‼︎」

 

ーービュォァァァァァ‼︎

 

ーーピィュゥゥゥゥゥン‼︎

 

ーードガガガガガガガガガガガァン‼︎

 

リヴァイアサンから放たれた重力子X線レーザーが、彼らからの猛攻を受けて既に満身創痍となり浮いているだけだった艦や超兵器を次々と焼き払っていく。既に泣きっ面に蜂だった彼らにしてみればもはやそれはオーバーキルを通り越した一方的な虐殺だった。彼らは一隻残らず骸さえ残さずに四散し、冥底へと旅立っていった。

 

「敵艦隊、全滅しました。」

「何かあっさりと片付いてしまったな。歯ごたえがないというか…。一方的なストレス解消なのか…?」

「まあ破片が入っていないこともあったからな。今回の奴の破片入りのが数兆隻来ても全く大丈夫だが…。しかしグロースシュトラールやハリマの形をした量産品が複数登場したな、今回の戦いは。しかも前のより性能が大幅アップか…。」

「そうですね、あなたのデータベースからの結果を元にするとこれまでのものよりは性能が格段に上がっています。」

「私に全く追いつけないーーそういう私自体が自分の意思で彼らを猛烈な勢いで更に引き離しているからな…。だが追いつけなくても彼らは必死に生きようと抗っていることが分かる。信長は今のスペックのままだと蚊帳の外だな…。」

「そうね…。」

そう会話をする智史達。

 

ーーみんなを連れて敵をやっつけるのって何か楽しいな。

今までは私一人で一方的に殺ってきたから私に関わっている他人が少ない。それだからあまり楽しくない所もあったりしたのかもしれない。だがみんながいた状態で敵を一方的とはいえ殺れるとなんかスカッとした気分になる、いつもは遠くにいた皆を直接見れる上でそうできるからだ。少なくとも今回の戦いは1人のものよりは少しは楽しかった。

 

「智史、信長から通信が入ってるよ。」

「ズイカクか、了解した。今出るぞ。」

 

 

ーー再び、サクラの独白ーー

 

 

「…。」

「敵艦、次々と爆発轟沈していきます…。」

私や皆もただ唖然とこの戦いの流れを見守るしかなかった、何せ自分達では歯が立たなかった相手が一方的に蹂躙されて殺戮されていくのだ。その様はまさに羊の群れに容赦なく襲いかかり、嬉しそうに片っ端から彼らを徹底的に殺戮していく狼のようであった。私たちにしてみれば非常に重い攻撃だった敵の攻撃はあの巨艦ーーリヴァイアサンにしてみれば大した苦にもならず、むしろ自分を強くするものと看做してそれらを喜んで受けているようにも見えた。

 

「化け物か、あの巨艦は…。」

「私では防げなかった攻撃を無効化するなんて…。なんて艦なの…。」

「とにかく、あの巨艦は並ならざる存在です…。私たちはその並にすら達していませんが…。」

「提督、応急修理によって艦の浸水は止まりました、ですが機関部はその殆どが破損、沈黙したため自力航行は不可能です…。」

「そもそも艦首が吹き飛んでいますからね…。あの巨艦から逃げようにも無理があります…。」

「それにさっきのような艦隊に襲われたら今度こそ我々は沈められる、あの巨艦が助けてくれるという保証はない…。サクラ、あの巨艦に通信を繋いで修理可能な場所まで曳航させてくれるように頼んでくれないか?」

「は、はい!」

 

そして私はリヴァイアサンに通信を繋ぐ。

 

「あなたがリヴァイアサンのメンタルモデルですか?」

「そうだ、貴艦の名と所属を答えられたし。」

「はい、本艦の名は横須賀要塞港を拠点とする鎮守府に所属するイージスミサイル超戦艦、信長です。私はその本艦のメンタルモデル、サクラとなります。本艦は敵の攻撃を受けて現在航行が不可能な状態です、貴艦に近くの修理可能な場所まで曳航させて頂けませんか?」

「その様は見た目からでもよく分かる。現時点では敵対する理由も無いのだからこちらが断らない理由は無い。それで放ったらかしにしたら私が何か気の毒に見えてしまうのでな…。よし、その依頼は素直に引き受けよう、直ちに曳航されていいように準備を整えてくれ。」

「分かりました、こちらも曳航の準備を整えてください。」

 

そして私はリヴァイアサンとの通信を切る。

「提督、リヴァイアサンは本艦の曳航を承諾しました。直ちに曳航準備に入るそうです。」

「わかった、直ちに曳航準備に入ってくれ!」

 

そして私たちは浸水が止まったとはいえまだ右に傾いている艦の中を曳航されるための準備を整えるためにある者は艦尾に集結し、またある者は応急隔壁の補強に当たる。艦首方向から曳航するとなると艦首自体が欠損しているため曳航による水圧抵抗を防水区画の扉が直に受けてしまうためそれが強度的限界を超えて破れ、そこから水が入ってきてしまう可能性があるため、危険だ。なので比較的破損の少ない艦尾方向から曳航させてもらうことにした。

 

「リヴァイアサンから曳航用のワイヤーロープを繋いだ弾体が本艦に向けて放たれました‼︎」

「直ちにそのワイヤーロープを本艦のボラードに括りつけろ!」

 

そして私達はそのワイヤーロープをボラードに括りつけ、リヴァイアサンに曳航準備よしのサインを送る。

 

「リヴァイアサンより通達!これより曳航を始めるそうです!」

 

そしてリヴァイアサンに艦は引っ張られ始める、皆が艦がこの曳航で壊れないかどうかをつい気にしてしまい、プレッシャーを感じてしまう。

 

ーーギィィィィ‼︎

ーーズザァァァァァ‼︎

 

曳航は慎重に進められる、最初はゆっくりとしたスピードから様子を見て徐々に速度が上げられていく。

 

「曳航予定速度に到達、本艦に異常ありません!」

 

その報告に私達は取り敢えず安堵した、そして艦はリヴァイアサンに彼らの修理拠点に向けて曳航されていくーー

 

 

ーーその頃リヴァイアサンでは。

 

「ふう、無事に曳航に成功したか…。いろんな知識を貪り、信長の現状を調べ尽くしたとはいえ、いざ曳航する時は少しドキドキしたな」

「色々と知識を使ったのね、私も雰囲気に飲まれてプレッシャーを感じたわ。しかし智史くん、有明海での群像くん達にやったあの奇跡をなぜやろうとしなかったの?あなたがそう考えた理由は何となく分かるけど。」

「そうだな、凄まじい力をあれほどまでに見せつけた挙句の果てに物質生成能力を用いて完全に修復したら、かえって警戒されたりやる気を削いだりコミュニケーションがうまく取れないといった色々とややこしいことになるからな。」

 

彼がそう考える理由はあった、というのも圧倒的な力を見せつけて他者の信頼を勝ち取るという手段は有効だが、その力の程度が度を逸し過ぎていると返って害になる。他者に警戒されたり他者のやる気を削いで自分から動く気持ち無くしてしまったり、また修理の際のお互いの交流の機会が失われたり、更には個人的な欲望によるものではあったものの、パパッと修復したら修理や曳航という行為が齎す雰囲気の味や存在感の重みが味わえなくなってしまうのだ。

そういう公私の理由もあって彼は曳航を素直にするという行為を選択したのだ。勿論自分にこんな能力があるという疑いを持たれたら素直にバラしてしまう気でいた。隠しても自身が苦しくなるだけだからだ。

 

「さてと、スキズブラズニルにいるヒュウガに概念伝達で呼びかけるか、『今から損傷した異邦艦をここへと連れてくるから直ちに修理出来るように体制を整えるのも兼ねて同時に技術解析、習得の為のデータ収集の準備を整えてくれ。』と。」

 

そして智史は概念伝達を用いてリヴァイアサンのCICからスキズブラズニルの実験室で破片のデータ解析及び各種データを収集する為の実験に没頭しているヒュウガに呼びかけるーー

 

 

ーーヒュウガの概念伝達空間。

 

 

「⁉︎あんた、何でこのタイミングで私に概念伝達を使ったのよ⁉︎今研究の山場だというのに‼︎少しは空気を読めやおい‼︎」

「まあ落ち着いてくれ、ヒュウガ。スキズブラズニルに入れて修理したい艦がいる。その艦は異世界から来た艦だ。直ちにその艦をドックに入れる支度を急げ。そして修理のついでにデータを解析してくれ。」

「このタイミングで修理やデータ解析もしろだと⁉︎私にオーバーワークを強いる気か〜⁉︎」

「智史ちゃん、随分と突飛じゃないの。いいわ、私がヒュウガちゃんの代わりにその依頼をやってあげる。みだりに力を振るったら誰も近づかなくなると考えるあなたの気持ち、分からなくはないから。」

「イ、イセ…。」

「ヒュウガちゃん、これはお姉様の優しさとして受け取って…。」

「ありがとう、イセ。」

「いいのよ、あなたは私達に大事なことを教えようとしてくれる存在なのだから。」

 

そしてリヴァイアサンは信長を曳航し、タカオとモンタナがその周りを警戒しながらヤマトが臨時旗艦を務める艦隊の元まで無事に辿り着いた。

 

「タカオ、モンタナ…、智史さん…。みんな無事だったのね‼︎」

「ヤマト様や皆も無事で何よりです。」

「ところで、リヴァイアサンに繋がれているものは、何なの?船らしき形をしているけど…。」

「ヤマト、あの艦は異世界から来た霧だ。時空の歪みに巻き込まれてこの世界に来て、いきなり攻撃を受けて沈没寸前のレベルの損傷を負っている。幸い私達がすんでのところで救い出したが…。」

「智史さんが言う通り、あの艦は異世界から来た艦です。

名前はイージスミサイル超戦艦 信長だそうです。」

彼らはそこの戦場で起きたことを次々と話す、そこにーー

 

「あの〜、皆さんお話中すみません。私は信長のメンタルモデル、サクラといいます。」

「サクラね、宜しく。私は霧の艦隊の元総旗艦だった超戦艦、ヤマトよ。」

「サクラ…、いい名前ね。日本の春の名物詩のように美しい存在なのかしら。私は大戦艦モンタナ。元太平洋艦隊副旗艦よ。」

「私は霧の重巡洋艦タカオ。よろしくね、サクラ。」

「そして私は霧の究極超兵器 超巨大戦艦リヴァイアサンのメンタルモデル、海神智史だ。」

「海神智史…。すごい名前ですね…。あ、提督。彼らが私達を助けてくれたメンバーです。左から順にタカオ、モンタナさん、ヤマトさん、海神智史さんの順になります。」

「私達を助けてくれたあの巨艦のメンタルモデルが、男とはな…。君は何故私達を助けたんだ?」

「その場の自身の感情に基づいて行動したためだ、勿論敵のことも考慮して行動はしたが。それ以外の理由など特に存在しない。」

「なるほど、了承した。」

「提督、お怪我の方はまだ治ってはいませんから艦を直すことのついでにお怪我の方も治しましょう。」

「怪我人が出たみたいね。暫くここで休んでいったらどうでしょう?」

「ありがとうございます、ついでに現状の把握もしたいのですが…。」

「我々の害になるような行動さえしなければ好きにしろ。」

「はい、暫くはここで休ませてもらいます!」

 

そして満身創痍の信長はスキズブラズニルのドックに入れられる。

 

「(最初に出した頃より随分と規模が拡大しているな、これ…。太平洋艦隊の本拠地ほどの規模はないけどそれでも移動基地としては十分過ぎる規模では…?しかし信長の損傷の規模は凄まじいな、廃艦の一歩手前だぞ、これ…。オリジナルのパーツの大半は潰されましたって感じかな?いや待てよ、これはこれでいいかもしれない。修理のついでに魔改造も出来るかもしれん。さて、傷病兵ーーといってもその殆どが妖精か…。一体どういう生態系なんだ、彼らは…。とにかく回復が良好になるように施設を整えなくては。)」

「智史さん、何か考え事でも?」

「そうだな、信長を見ていて考えていた、どういう風に作り変えて修理しようかと。」

「元の形にはならないのですか?」

「多分そうだろう。スペックを見ると攻撃の効果範囲が広すぎるものばかりだ。1人の人間を殺すために核弾頭が必要なのか?殺すとしたら拳銃、刃物で取り敢えずは十分で、よくても自動小銃や対戦車ミサイルレベルで十分だ。確かに一つのものを壊すのに強力な火器は必要だが、それとは関係ないそれ以外のものまで巻き込む必要性は無いだろう?私もそうしている、一つのものを壊すために地球そのものまで滅ぼす必要性があるのか?ピンポイントでそれだけを壊すための火力をぶつければ十分だというのに。」

「要するに攻撃の効果範囲を周りの環境を見てから選択しろと?」

「そういうこと。私なら自分で目標物を覆う結界を作ったり爆発の効果範囲を絞ったりしている。火力の高い兵器はやたらめったらに撃っていいものじゃない。範囲を決めてから撃つべきものだ。今回は敵がその火力を受けてくれたお陰で戦闘海域周辺の環境に悪影響は出なかったものの、もし敵がいない状態でこんな大火力の兵器を攻撃の範囲を決めずに撃ったら地球環境に多大な影響が出るかもしれないぞ?」

「なるほど…。」

そう会話する2人。そこへこっそりと2人の話を聞いていた杏平が現れる。

 

「あのさ、聞いてて思ったんだけどさ、地球が滅ぶから攻撃の効果の範囲を絞れと正論を他人に押し付けて自分はそれを実行していないように見えるんですけど〜。」

「杏平、それは甘いな。私は敵を殲滅する際の光景を派手にしたりとかする為に攻撃の効果範囲を絞らずに手加減無用で撃ちまくるところがある。だがその後はどうだ?地球環境に多大な影響は出てはいないだろう?私が爆発の際に生じたエネルギーが周辺に拡散しないようにエネルギーベクトル操作能力を用いて押さえ込んだのだから。」

「う…。お、お前は神かよ…。しかも常に向上する心を持って常に向上してるからますます厄介だぜ…。」

「そんな能力があなたには有るのですか?私にはあなたみたいなことをする力は無いのに…。」

「まあその通り。常に上を上を目指すだけだから。」

 

こうして信長はスキズブラズニルで修理も兼ねた改造を受けることとなる、それは蒼き鋼の技術習得も兼ねており、同時に馬鹿火力だった信長の超重力砲や波動砲をはじめとした各種火器の効果範囲を総合的な火力を落とすどころか向上させた上で絞ることを主にしたものだった。

後に彼らは蒼き鋼と霧の艦隊、そして人類の連合軍に加わり世界を揺るがす戦いに関わっていくこととなる、だが彼らは今はまだそのことを知らないーー




おまけ

今回の艦船紹介

イージスミサイル超戦艦(AGSBB)
Aegis Guidedmissile Super BattleShip信長

全長 420.5m 全幅 51.46m

基準排水量 213200t

最高速力 水上 250kt 水中 未計測のため表示不能

武装
Mk.45 Mod4 62口径5インチ単装砲 1門
90式艦対艦誘導弾(SSM-1B) SSM 4連装発射機 10基
51cm三連装陽電子砲改、51cm三連装核融合砲改、51cm三連装反物質砲改 各1基
EML ElectroMagnetic Launcher (超電磁砲)
Mk99/SPG-62ミサイル射撃装置 15基
Mk41 多目的VLS 1225セル
68式324mm3連装短魚雷発射管 92基
Mk15 高性能20mm機関砲(CIWS) 5基
超重力砲、波動砲 各1基

曳航式デコイMod4
クラインフィールド発生装置、自律制御装置、強制波動装甲を搭載。

解説
本作と同じく『蒼き鋼のアルペジオ』を原作とする『イージスミサイル超戦艦 AGSBB 信長』より参戦。
本作では元の世界で深海棲艦や霧の艦艇と戦っていたものの、突如として空間転移に巻き込まれ、本作の世界に出現した。そしてその直後に霧の中米艦隊の攻撃を受けて大破してしまう。すんでのところで信長の救援要請を聞いた智史達が霧の中米艦隊を一方的に殲滅したことによって危うく難を逃れた。
現時点ではスキズブラズニルまでリヴァイアサンに曳航されてそこで修理と技術供与の意味合いも込めた改装及びデータ解析を兼ねてドック入り。
ちなみにメンタルモデルの名前はサクラ。提督の秘書艦も務めている。

重巡洋艦 タカオ (第1次改装後)

全長 230m
艦幅 24m 全幅 50m
基準排水量 22000t
最大速力 水上 5500kt 水中 4500kt
武装
100口径203㎜連装レールガン 3基
61㎝5連装魚雷発射管 6基
60口径127㎜単装速射砲 6基
80口径57㎜バルカン砲 単装 12基
30連装20㎝噴進砲 10基
各種ミサイルVLS 320セル
533㎜魚雷発射管 16門
超重力砲 1門

クラインフィールド、強制波動装甲、加速用大型ブースター及び旋回用小型スラスターを多数搭載。

解説
重巡洋艦タカオがスキズブラズニルでのヒュウガの改装で生まれ変わった姿。
特徴的な前艦橋以外は大幅に強化、更新された。
元の姿のものよりも非常に強力な武装が多数搭載され、原作基準で行くとするならば超戦艦級10隻分に匹敵する火力を誇る。
そればかりか高速航行のための大型ブースターが新たに搭載されたことで戦闘の際のポジション取りが水上、水中問わず非常に有利となった。
防御面は1番後回しにされたため元のよりは若干強化された程度である。
なので本艦の主戦法は高速と瞬間的な大火力・高命中率を生かした一撃離脱戦術が主となる。
なお、この改装の際にタカオは追加の演算用デルタコアを船体の方に新たに搭載している。
また現時点ではアタゴもタカオの演算を補助している。

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