海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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旧19話を削除して再投稿した完全な書き直しです。
なぜ書き直したのかというと、旧19話の戦闘描写にリヴァイアサンとヴォルケンクラッツァーに力強さと威厳がちょっと物足りないという決定的な不満を抱いたためです。
個人的満足に基づく一方的な蹂躙劇に変わったとはいえ、その前後のストーリーに影響しない域での改変に止めています。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
それではじっくりとお楽しみください。


第19話 蹂躙される太平洋艦隊と陵辱される摩天楼

「サバイイ島で奴のものと思われる巨大なエネルギー振動が検出されました。」

「物凄い揺れだったな、まさに地球が悲鳴を上げているようだった。一瞬、恐怖を感じた」

「やはりヴォルケン様が言われていた通り、奴はとんでもない化け物だな…。」

「こんなに準備を整えても奴に勝てるのでしょうか…。軽く蹴散らされ、蹂躙されて終わりなのでは…。」

「そんなことで弱音を吐くな‼︎我々はヴォルケン様に仕えて死んでいくと肝を決めたのだ‼︎」

そうそれぞれの感想を呟くヴォルケン配下の超兵器達。そこへーー

 

「皆、無事か?」

 

「ヴォルケン様、ご無事で‼︎奴は我々の予測を遥かに上回る化け物のようでした、ですがもう準備は十分に整えてあります!これなら奴だろうと蹴散らせます‼︎」

「そうか、準備万端だな。さあ、我々の大切なものを壊しに奴がここに向かってくるぞ!我々が破片を取り込み、その苦痛に耐えながら準備をした努力が、今、報われようとしているのだ‼︎」

「そうです、我々は奴に勝ち、霧の未来を守るためにマスターシップの破片を取り込んだのです‼︎」

 

「さあ行くぞ、諸君‼︎」

「「「ウォォォォォォ‼︎」」」

 

ヴォルケンの掛け声に応えるのかのように皆が歓声を上げる、ヴォルケンの真意を知らずに…。

 

 

「(すまんな、皆。奴を倒すことはいくら私達が頑張ってもできん…。そして戦うことを避けても破片を取り除くことが出来ずじまいでいずれ私達も皆破壊の化身と化してしまうだろう…。もう私達は霧でなくなりつつあるのだから…。

海神智史、早く私達を殺してくれ。この世に破壊の化身と化した我が身を残して逝くわけにはいかぬ…。破片を取り込んだものも含めた私達全員がお前に殺されるのが私がやってしまったことの罪滅ぼしだ…。そしてモンタナ、オウミ…。お前達には私達のような罪や狂気はない、霧の未来を守り、育むために生き延びてくれ…。)」

 

そう考えるヴォルケン。そして彼女の己がしたことへの罪に対する償いとしての自殺願望はまもなく絶望と恐怖で徹底的に彩られた現実となって叶うこととなる…。

 

 

ーーそしてその頃、ハワイに向かうリヴァイアサンの艦橋ではーー

 

 

後悔、憎悪、現実、夢、理想、愛…。

皆元はどこから生まれてどこへ行くのだろうか?

私には分からない、それがいつ生まれたのかさえも。そしてこの先すらも。

群像と喧嘩をしたことや私がこれまで体験した理不尽な出来事はそれらが成り立った上で起きていることだから分かっている、だがそれが私のどこへと結びついていくのだろうか?

一時の喜び?それとも永久の後悔と憎悪?あるいは別の何か…?

皆最終的には虚無へと還るのか…?

いや、私だけが虚無に還れずに永久に存在するという罪を背負って生きていくのだろうかーー

 

 

「自身の今後の生き方について相当悩んでるみたいだね、智史くん。」

「ああ、そうだな、一時の感情で群像から離れてしまったことを後悔しているのかもしれぬ。」

「そうね、さすがにあれは少々度が過ぎてしまったかもしれないわね、あなたの言ったことの大半は間違ってはいないけど。」

「まあ群像も自分なりに考えてはいた、少なくとも力を持つ実力者相手には実力がなければ話さえできないということぐらいは理解していたのだろう。だがその実力は話し合いには積極的に使おうとしても敵対者の完全排除には使おうとせず話し合いだけで解決しようとした、その点で間違っている。その考え方では、抑止力というものを用いた利害の調整しか出来ん。これではいつまでも人間の本質は変わらず、平和が一時的に実現するだけであってまた醜い争いが起こる。ならば誰かが破壊や憎悪をもって人の根本を強引に作り変えていくしかない。だが誰もそのようなことをしようとしない、では私がそれらを背負って根本を作り変えようということだ。」

「責任感強いね、智史くん。そして人権を尊重する気も微塵もないのね。」

「そうだな、私は物事を成し遂げるためには如何なる手段も用いる。

人権、民主主義、平等、博愛、自由?それがどうした?それらは貴様らが自身の本質を変えられることを嫌がって自身の本質を守るために作り上げたものなのだろう?私にこのようなものを用いて人間の本質を変えるのを止めようとしても、無駄だ。私は貴様らが用いる感情論も言論も自身がやることを阻むようなら悉く粉砕して塵にしてやる。」

「うわあ、容赦無さ過ぎ…。」

「私は口が苦手だから口より手で解決する方が猛烈に好きだ。口だけだと納得がいかない。」

「本当に自分の欲望に素直で、他者のことは自分の為になるかどうかで決めちゃうところが強いよね〜。でも降伏した人達はちゃんと受け入れてるし、選択する自由も与えてるからみんな実はあなたがやってることをあまり強く非難できないのよね〜。そのぐらいあなたには良心はあるってことなのかな?」

「まあそういうことだ、良心までは捨てる気には全くなれない。そういえばズイカク、お前隠れているな?最初からお見通しだ。おとなしく観念して出てこい。」

 

智史がそう言う、すると艦橋の出入り口からズイカクがひょっこりと姿を見せる。

 

「私が乗り込んだ時点で気がついていたんだろ、ひょっとしたらお前は千里眼を持っているのか?」

「まあそうだ。敵味方もあらゆる手段を用い、徹底的にきっちりと見ておかないと気が済まないのでな。」

「お前は念入りだな。私は昨夜いっぱい食べてこの艦で寝込んでたら突然動き出したからびっくりしたよ、取り敢えずお前のことだろうから釣りをして色々と魚を獲っておいたぞ、後で食べるか?」

「ありがとう、そうだな、今食べようとしてもヴォルケン達と決戦を挑むから難しいかもしれん。そして魚の為に私の艦の中の一部を作り変えたみたいだな…。そうだ、琴乃、回収し損ねたピアノ達は全部回収しておいたぞ。」

「次元空間を通じて回収したのね、そうね、置き去りもちょっとまずいからね。」

 

そう会話する智史達、そして智史が望んでいた時が来る。

 

「敵艦影多数捕捉、超兵器も複数含まれていることを確認。ヴォルケンクラッツァーを旗艦とする艦隊と思われる。結構な数だな、艦艇型超兵器が53隻、航空機型超兵器が10隻、超空母ニミッツ級が100隻、新型戦艦が300隻、重巡が500隻、高速強襲型の巡洋艦が400隻、軽巡が1000隻、潜水艦が500隻、各種工作艦200隻か…。

ヴォルケン、それほどの兵力を揃えてしまうだけの努力は大したものだ。だが私は貴様のその努力は最初からお見通しでもう既に対処済みだ。だからその希望的観測を絶対的絶望に変え、貴様とその配下共に絶望と戦慄、悲鳴と恐怖を味あわせながら一方的に蹂躙して解体してやろう。」

そして智史は指を鳴らす、すると突如としてリヴァイアサンの後方に非常に巨大な次元の歪みが生じるーー

 

 

ーーヴォルケンクラッツァー側から見た光景

 

「な…、なんだあれは…⁉︎」

「巨大なワープホールが、発生しているだと…⁉︎」

「それも、ヤツ単体でこれ程のものを…‼︎」

彼らがリヴァイアサンを視認したのは確かなのだが、それよりも視界に写っている異常な光景の方に目が行ってしまっていた、というのも世界を仕切る壁のような巨大な次元の歪みが突如として生じたのだ。

そしてそこから無数の艦艇が次々と吐き出され、みるみるうちにリヴァイアサンを囲むように大軍が生成されていく。しかも恐るべきことに、ヴォルケン達の大艦隊を上回る勢いで数が揃えられる。

 

「ば…馬鹿な…‼︎」

「常に進化している圧倒的な力を持っている存在ということは聞いているが…、まさかここまでとは…。」

「信じられん…‼︎」

 

あまりに常識を逸している光景に戦慄するヴォルケンの配下達。だが驚くことはこれでは終わらない、戦艦や空母は勿論のこと、なんと彼がこれまで倒してきた霧の超兵器達を模したものまでもが姿を現したのだ。

 

「グロース・シュトラール…‼︎沈んだはずでは…‼︎」

「ハリマクラスにアラハバキクラスまで出現しただと⁉︎ヤツには死者を蘇らせる力があるというのか…⁉︎」

「沈められた艦がゾンビのように蘇るとは…、ええい、こんな馬鹿げたことがあるか‼︎」

彼に沈められた超兵器達そのままの姿を模して彼の配下同然として現れるという光景が現実となったことに驚き、恐れおののく配下達。

 

「我々とハワイ諸島を囲むようにクラインフィールドの結界が展開されています、ヤツは恐らく我々を徹底的に殲滅するつもりです!」

「糞、やりたい放題やりやがって…。だが我々を甘く見るなぁっ!全艦進撃せよ‼︎」

「「「おおおおおおおお〜〜‼︎」」」

 

そしてヴォルケンの配下達は全艦が鶴翼の陣で突撃を開始する、その陣容は無数の武者が敵陣に突っ込んでいく様相を呈していた。空母は艦載機を次々と吐き出し、先頭の部隊は彼の大軍の壁に穴を開けんと突撃を開始する。彼が元いた世界に限るとして、こんな規模を揃えられる国家は無い。だがこれはまだ常識的としか言いようがなかった、彼の艦隊はこれ以上に常識を逸していたからだーー

 

 

「ふん、全軍突撃のみか…。笑止、一つ残らず轢き潰し、粉砕し、解体してくれよう。全軍、進め…‼︎」

 

そして智史は自身の血肉で構成された「人形」達に進撃するように命ずる、そしてヴォルケンの配下達の6倍以上はあろうかという大軍がゆっくりと進撃を開始する。既にアルケオプテリクス10機を中核とした航空機群とミサイルの大群、複数の艦影が近づいていることが確認できた。

 

「敵艦隊を確認、な、なんで数だ…‼︎」

「まるで海が鋼鉄の艨艟で埋め尽くされているようだ…‼︎」

「狼狽えるな、全機突撃せよ!オリジナルを模したものがオリジナルに勝てる訳がなかろう!それに我々は破滅の苦痛と引き換えに圧倒的な強さを得たのだ!」

「敵艦隊、発砲を開始しました、ミサイルも多数発射された模様!」

 

ーーシャァァァァァ!

ーービュォァァァァァ!

 

ーードガァァァン!

ーーボガァァァァン!

 

「第12、13突撃部隊、壊滅!」

「アルケオペテリクス7号機並びに9号機、撃墜されました!」

「先頭の攻撃部隊が敵の対空砲火に捉われ、次々と被害が出ています!」

「くっ、好き勝手にさせるかぁ!全機、ミサイル発射!」

「突撃部隊は艤装を展開!突撃を開始せよ!」

「魚雷、テーッ‼︎」

「主砲、発射‼︎」

 

ーーヒュオオオオン!

ーーバシュウウウン!

ーーヒュルルルル‼︎

 

ーーブィィィィィィィン‼︎

ーーカキィィィィィン‼︎

 

敵艦隊と敵機から次々と放たれた光弾、ミサイルや超音速魚雷、侵食魚雷に反物質魚雷、振動弾頭までもが次々とリヴァイアサンとその艦隊を襲う。それは彼、海神智史がこれまで受けた攻撃の規模を遥かに上回っていた。しかしそれは全て迎撃砲火もしくはクラインフィールドの鉄壁で悉く無効化され、表面で爆発を引き起こすだけに終わる。しかもそれらはすべて彼ら=リヴァイアサン=海神智史の力として取り込まれ、智史を更なる頂きに導くだけに終わる。

 

「な…、なんだと…‼︎」

「馬鹿な、そんな筈はない…‼︎コピー品がオリジナルに勝るとは…、そんな馬鹿げた話があるかぁっ!」

「我々の破片を取り込んだ強烈な攻撃を食らってもケロリとしているとは…。」

「畜生、なんて奴らだ‼︎」

「くっ…化け物共め‼︎これだけの火力を叩きつけても平然としているだとっ、うおあっ!」

 

ーービュォァァァァァ!

ーーピィィィィィィン!

ーーキュォォン!

ーーパシュゥゥゥゥン!

ーーガガガガガガガガ!

 

ーーズバァッ!

ーーボガァァァァン!

ーーチュドォォォォォン!

ーーズビィィィィィン!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「ぐぁぁぁぁぁぁ!」

 

そして彼らからの攻撃が再開される、模造品は勿論のこと、「霧」でさえ「尺」にもならないほどの凶悪性を持ち備えた彼の「配下」達による凄まじい蹂躙戦が開幕した。

それはまさにアニメ版本編のopの霧が人類を蹂躙している光景の再来だった、だが先ほどの攻撃だけで終わるならまだ可愛い方だ、なんと航空隊も展開して積極的に攻撃を仕掛け、敵の航空機をバタバタと叩き落としながら、ヴォルケンの配下達を囲むように積極的に突き進んでいく。

 

ーーザァァァァァァァ

ーーゴォォォォォォォ

ーーキィィィィィィィィ!

 

「うわっ、来るな、来るなぁ〜‼︎」

「ひっ、こっちに来ないでぇぇ‼︎」

「来るな、あっちに行けぇぇ!」

「ダメだ、逃げ切れない…!」

 

ーードガァァァン‼︎

ーーガリガリガリガリ!

ーーギィィィィィィ!

ーーボカァァァン!

 

彼らの進路上に居た敵艦は彼らのラムアタックを次々と船体に受けていく、そして一際高い接触音が立つや否や、次の瞬間には爆発を引き起こし、跡形もなく四散した。

そして生き残った艦にも光子榴弾砲や各種レーザー、ミサイル、ガトリング砲、レールガン、大口径主砲の弾丸が暴風雨の如く降り注ぎ、次々と消し飛ばしていく。

潜水艦だろうと御構い無しに破滅は訪れ、さっきの意図返しと言わんばかりに水上艦、潜水艦、対潜ヘリ、航空機達から次々とASROCや侵食魚雷、超音速魚雷、共振魚雷の弾幕が雨霰と降り注ぎ、こちらも海上と同様の悲惨な結末を辿った。

そしてそれらが生み出す光景はあらゆるものを飲み込み、破砕していく大津波、もしくは羊の群れを容赦なく蹂躙していく餓狼達のようであった、あまりにも力が違いすぎたのだ。しかしこれでも悪夢は終わらない。

 

「ふふふ、これでは生温かろう?次は用意してあるぞ?」

 

この戦闘の様相を見てまだ満足していなかった智史がそう嬉しそうに呟くと、今度は上空に巨大な時空の歪みが生じ、そこから無数の大口径ガトリング砲をこれでもかとばかりに積み込んだ巨大な飛行物体と各種ミサイルのVLSを大量に積み込んだ巨大なミサイルコンテナが無数、そしてヴリルオーディンのコピー達もそこから現れる。

 

「さあ、この雨を浴びて、穢れを祓い落とすがいい。」

 

そして更なる地獄絵図が開幕する、その言葉と同時にガトリング砲の弾丸とミサイルの雨が光の豪雨となって容赦なく降り注ぎ、生き残った者達の穢れを落とすどころか容赦なく彼らを消し飛ばし、抉り、焼き尽くし、塵どころか粉一つさえ残さずに彼らを轟音とともに完膚なきまでに消し去った。

もはやそれはオーバーパワーによる一方的な地獄絵図と阿鼻叫喚の嵐、そして完璧なオーバーキルだった、なにしろ最大限の努力をして臨んだ決戦だというのにその結果はその努力さえ軽く吹っ飛ばす一方的な数と力の暴力が盛大に振るわれたことによる敗北と殺戮、そして蹂躙というものだったから。

 

ーーキュォォン‼︎

 

ーーカァァァァァン‼︎

 

ーーピュォァァァァ‼︎

 

ーーキィィィィィィン‼︎

 

そしてその蹂躙劇が終わった後に忘れるなと言わんばかりに突如として飛来する緑のビームと青い光弾、それはリヴァイアサンに着弾するも一瞬で超微粒子レベルで吸収されて終わる。

 

「さて、ヴォルケンよ。残るは貴様だけだ、だが貴様に奥義を披露するだけの価値はなくなるほどに私は強くなりすぎてしまった。よって貴様を一方的に斬り刻んで嬲り、抉り、臓物を晒し、そして徹底的に解体してやろう。」

そしてその言葉とともに青の大軍は霧の究極超兵器ヴォルケンクラッツァーに大挙して襲いかかるーー

 

 

ーー大戦艦モンタナの独白

 

 

ーーそう、ヴォルケンと私達は最初から彼の「手の平」の中から逃れられなかったのね…。

 

「た、た、助けて、うっうわぁぁぁぁ‼︎」

「ヒイッ!ギャ、ギャァァァァァァ‼︎」

「破片を取り込んだオリジナルが、コピー品に負けるとは、はっ、ぐはぁっーー」

「ヴォルケン様、万歳ーー」

「だっ、誰かっ、助けてぇぇぇ!ひっ、ぎゃっ、ギャァァァァーー」

「手が、手がぁぁぁぁぁ!」

「来るな、こっちに来るなぁぁぁーー」

「ギャァぁぁぁぁぁぁ!」

 

「み、みんな…。そんなの…、そんなの…、嫌だぁぁぁぁぁぁ…‼︎」

 

オウミが悲鳴をあげて泣き叫ぶ中、ヴォルケンの命令に従って彼が来る前に予め避難しておいた私達はヴォルケン達を囲うように展開されたクラインフィールドの蚊帳の外からリヴァイアサンとその尖兵達による一方的な虐殺劇を見ているしかなかった。

ヴォルケンの当初の作戦計画は彼を圧倒的な数を生かした飽和攻撃によって動きを封じて彼を屠るという内容だった、しかしその作戦の内容に裏腹に「破片」を取り込んでしまったことによる罪科を償うために自滅を望む彼女の真意が見え隠れしていた。

そして彼は単体で来ることが予想され、実際に彼は「単体」でここまで来た。しかしその後に想定を超える事態が発生する。

 

「モンタナ様、リヴァイアサン周辺に次元の歪みが突如として発生!なおも規模は増大中!」

 

なんと突如としてワープホールのような空間の裂け目が形成され、そこから青いバイナルを輝かせる大軍がわらわらと吐き出されてくる。大軍はみるみるうちにヴォルケン達の規模を上回る規模に成長し、逆にヴォルケン達を包むような陣形を形成した。

 

「な…、なんてことだ…‼︎」

「くそ、ヴォルケン様の努力は無意味だと、そう言いたいのか、リヴァイアサン‼︎」

「おまけに太平洋にいた奴らやヒエイの奴に付き従ってた奴の姿形を模したものを大量に作りやがって!許さねえ!」

 

あまりに無常識な光景にあるものは戦慄し、あるものは憤る。だがそれはこれから始まる戦闘を変えるものではない。

青の大軍とヴォルケン達の艦隊は交戦を開始する、そしてヴォルケンの願い通りであり、私にしてみれば想定していたことではあるが、それでも常識を逸する悪夢のような光景が開幕する。

 

 

「た、た、助けて、うっうわぁぁぁぁ‼︎」

「ヒイッ!ギャ、ギャァァァァァァ‼︎」

「破片を取り込んだオリジナルが、コピー品に負けるとは、はっ、ぐはぁっーー」

「ヴォルケン様、万歳ーー」

「目が、目がぁぁぁぁ!」

「だっ、誰かっ、助けてぇぇぇ!ひっ、ぎゃっ、ギャァァァァーー」

 

「そ…、そんな馬鹿な…。」

「ありえん、奴ら本気を出しているのかぁ⁉︎」

「馬鹿な、強過ぎる…。」

「破片を取り込んでも、無意味だというのか…⁉︎」

「逃げろ、おい、逃げるんだぁぁ‼︎」

青の大軍は仲間達の攻撃を次々と弾き返し、そのエネルギーを己のものにどんどん変えていく。対して彼らに浴びせられる攻撃は次々と仲間達を討ち取り、粉砕し、砕き、溶かし、消し去っていく。破片を取り込んだ超兵器達もその悲惨な運命の定からは逃れられずに次々と沈められていく。

 

ーーザァァァァァァァ

ーーゴォォォォォォォ

ーーキィィィィィィィィ!

 

「逃げろ、逃げろぉぉぉぉ!」

「奴ら、単に沈めるだけじゃなくて攻撃をかましながらこっちに突っ込んでくるぞ‼︎」

「逃げろ、殺されるぞぉぉ‼︎」

 

ーードガァァァン‼︎

ーーガリガリガリガリ!

ーーギィィィィィィ!

ーーボカァァァン!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「うがぁぁぁぁぁぁ!」

 

そして彼らは艦載機を繰り出して敵を蹂躙し、甚振りながら進路上にいた仲間達を我が物顔で蹴散らし、津波が街を飲み込んでいくのかのように破砕していく。しかもこれでも物足りんと言わんばかりに彼、リヴァイアサンは上空に無数の構造物を出現させるとその構造物から一斉に光の豪雨が降り注ぎ、瞬く間にもはや死にかけた家畜以下の状態となってしまった仲間達を容赦なく吹き飛ばし、骸一つ残さずに破砕していく。

 

「なんなの…これ…。」

「なんなんだよ、これはぁぁぁ…⁉︎」

「おい、滅茶苦茶じゃねぇかぁぁ…!」

これはもはや戦闘ではなく、大自然の驚異のような驚異的な力が振るわれたことによる一方的な虐殺劇だった、最強の練度、装備を揃え、万全の装備で臨んでも大自然の驚異の前では紙切れ同然に一方的に蹴散らされ、滅茶苦茶に破壊されたのだ。

まさに、霧が人類との戦いで人類に味わせた一方的な結末を今度はこちらが身でもって味わされていた。

 

「ふっ、お前の軍はお前一色だと見える、いくぞ、海神智史ィィィィィ!」

 

仲間達が蹂躙されるのを後方で見ていたヴォルケンが動き出し、彼らに襲いかかる、彼女は単なる無能なのか?否、自分を終わらせるという観点から見ればむしろそれは適切といえよう。

 

ーードコドゴドゴドゴドゴドゴドゴォン‼︎

ーーパシュウウパシュウウパシュウウパシュウウパシュウウ‼︎

 

ーービュゥゥゥゥン‼︎

ーーカキキキキキイン‼︎

 

ヴォルケンは破片を完全にフル稼働状態にして、紫色の禍々しいオーラを纏い艤装も船体を上下に割って展開する、そして同時に攻撃も熾烈さを増す。レールガン、120㎝砲、δレーザー、光子榴弾砲、反物質ビーム、多連装超重力砲といった威力を増した全ての攻撃が烈火の如く彼らに次々と叩き込まれる。

更に艦首のハッチを開いて連装波動砲と多連装超重力砲を艤装展開し、重力子ユニットをフル稼働させてエネルギーのチャージを始める。そしてチャージを終えると強烈な閃光と共に強烈なエネルギー波を彼らに向けて放つ。

彼、リヴァイアサンが現れる前に、一度だけだが、霧の合同演習でヴォルケンと模擬戦をしたことがある。その時の私は彼女が不完全な状態ーー器に破片が入っていなかった状態だということは知らなかったものの、彼女の圧倒的火力にモノを言わせた攻撃に終始守勢に追いやられて彼女の妹、ルフトシュピーゲルングが止めなければ殺されるどころか地球が危うく滅びてしまうところであった。

実際にヴォルケンクラッツァー級に敵う霧の超兵器は存在しないという結論がこの他の模擬戦で出ていた、しかも、破片を入れていない不完全な状態でこれなのだ。これで破片を入れたら彼女に敵う存在などない。

だがしかし、実際に起きている光景はその「最強」を圧倒的な力で否定するという「現実」だった、なんと一連の攻撃による爆煙が消失していく中で彼らは無傷で平然とその中から姿を現したからだ。彼女が破片を取り込んで全力を出しても全く敵わない、いや全く足元にさえ及ばない程に絶望的な差があるという現実が目の前で繰り広げられた。

 

「そ、そんな…。破片を取り込んだヴォルケン様の攻撃さえ効かないとは…。」

「だ…、駄目だ、霧の太平洋艦隊はもうおしまいだぁぁぁ‼︎」

「ヴォルケン様、お願い、逃げて、逃げてぇぇぇ‼︎」

あまりに一方的な現実に彼らの希望はあっという間に恐怖と絶望、そして悲鳴へと変わっていく。

 

「流石だな海神智史…。霧の究極超兵器の名に相応しい威厳だな…。」

「やはりその程度かヴォルケン。では今度はこちらからだ。」

 

ーーキュォォキュォォキュォォキュォォキュォォン‼︎

ーービュォォォォォォォォン‼︎

ーーパシュパシュパシュパシュパシュゥゥゥン!

ーーガガガガガガガガ!

 

ーーズガズガズガズガズガズガズガズガズガズガアァァァン‼︎

ーーボグァボグァボグァボグァボグァボグァボグァボグァボグァァァァン‼︎

ーーズビュズビュズビュズビュズビュゥゥゥン!

 

「げぼぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎」

 

彼がそう言うと、霧の超兵器達の姿を模した彼の「人形」達はヴォルケンに一斉に攻撃を放つ、瞬く間にヴォルケンのクラインフィールドやエネルギーリフレクターをはじめとした彼女を守る「盾」は豆腐でも刺し貫くのかのように次々と貫通され、彼女の船体を貫き、各兵装を片っ端から吹き飛ばされ、重力子ユニットも次々と破砕されてしまう。もちろん自己再生強化・進化システムは稼働させてはいたものの彼、リヴァイアサンの分身であり、彼の手駒である「人形」達が放った攻撃エネルギー量は想定していた量を遥かに上回るものだったのですぐにパンクして機能停止に追い込まれてしまった。瞬く間に彼女はその威容すら見る影もない所々が抉れ飛び、彼方此方に巨大な刃物で刺し貫かれたような痛々しい爪痕が残った燃え盛る廃墟同然の姿となってしまった。

 

「嫌ぁぁぁ‼︎ヴォルケン様ぁぁぁ‼︎やめてぇぇぇぇ!」

「やめろ、あの方を殺すのは止めてくれぇぇぇ!」

「ひっ、嫌ぁぁぁぁ!」

 

あまりに凄惨な蹂躙劇に悲鳴をあげて泣き喚く仲間達、しかしこれは序の口だった、なんとリヴァイアサンから蒼色をした長槍と言ってもいい重力子の槍や巨剣が次々と突き出され、彼女の船体を貫き、宙へと強引に持ち上げる。

 

「さぁ〜て、どこまで耐えられるかなぁ〜?」

 

船体の機能を散々に破壊されたヴォルケンにはそんな陵辱劇の進行を止められる力などなかった、彼女は重力子の槍と巨剣を振り回してくるリヴァイアサンに船体を宙に放り投げられ、重力によって落ちてきたところを刺し貫かれ、また突かれて放り投げられて宙で体を回され、その度に血飛沫と肉塊、爆発と悲鳴をあげて体を抉られ、内臓をぶち撒かれて船体をバラバラに引き裂かれていく。

 

「もうやめろ、やめてくれぇぇぇ!」

「嫌だ、嫌だ、ヴォルケン様ぁぁぁぁ!」

 

先程よりも残虐性と陵辱性を剝ぎ出しとした惨たらしい光景に泣き叫び、泣き喚く仲間達、もはや彼女達の心の芯は壊れ果て、冷静に考えることさえできなくなってしまう程だった。

そしてそれは命を軽く弄んで殺そうとしている残虐性が剝ぎ出しとなっている悪鬼とそれを見ている輩がいる光景だった、といっても実際には彼1人だが。

そして一斉に重力子の槍と巨剣がヴォルケンの船体を一際と深く貫く、次の瞬間、ヴォルケンの船体は想像を絶する大爆発を引き起こした。

 

ーーもはや一方的だな…。こちらの奥義がことごとく通用せずに吸収され、逆に弄ばれてヤツの奥義を拝むことさえ許されずに無様な形で死ぬとはな…。だが海神智史、我が生涯の最期にお前は霧の未来を託すにふさわしい存在であるということを見極められた…。モンタナ、後を頼んだぞ…。

 

その爆発が生じる瞬間、ヴォルケンの声が聞こえたような気がした、その声はリヴァイアサンはマスターシップを倒せる存在であるということを見極められた、だから悔いは無いという感じで終わった。

私はこの声を聞いた瞬間、もう彼女には2度と会えないーー彼女の死と確信した。そしてその爆発で生じた閃光と爆煙は天まで届くほどだった、そしてその爆発が引いた後には彼女の姿は無かった。

 

「ヴォルケン様のメンタルモデル並びにユニオンコアの反応、確認出来ません…。」

「そんなのありえない…、認めたくない…‼︎」

「そんなの…、嫌だ…。」

「ヴォルケン様ぁぁぁぁ、ヴォルケン様ぁぁぁぁ…。嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」

 

あまりに凄惨な陵辱劇が齎したヴォルケンの死という結末に泣き喚き、絶望する仲間達。ヴォルケンの願いである罪科の償いは達せられたが、その際に見せつけられた圧倒的絶望と恐怖に蹂躙された私達の心は壊れてしまった、辛うじて私は壊れるのを食い止めたが。

既にクラインフィールドの蚊帳は消滅していた、そして彼の「人形」達が用を終えたのか青白い光の粒となって消え、ヴォルケンの船体の残骸が変わった光の粒と共に光の雪が降ってくる光景はとても美しかったが、どこか哀しかった。

圧倒的な暴力によるあれ程の蹂躙劇と陵辱劇を見せつけられた私達には抗うという気力さえ無かった、そしてヴォルケンの予想が正しいことを祈ることだけしか今は出来なかったーー

 

ーーイ401のCIC内部

 

「おいおい…、これって大艦隊戦じゃなくて虐殺じゃねえのか?」

「まさに一方的すぎますね…。」

「そして俺たちはこの戦いに参加する権利さえ与えられずに指を咥えて見てるしかないというのか…?」

「群像、そんなことは無いと思う…。でも、雪、綺麗…。」

「本当だ、雪が降ってる…!」

「綺麗…!」

 

そしてスキズブラズニルでも

「何と言うべきなんだ、これは…。解体ショーか?」

「智史さんの実力は底が見えませんね…。」

「さすが破壊神‼︎あたし達を散々に打ち破った時のように一方的だぁ!伝説の怪物の名を冠してるだけあってすげぇぇぇ‼︎」

「皆さん、もはや誰も彼を止められません、実力を用いた戦闘では。彼を止めるとしたら言葉を用いるしかありませんね…。」

 

「あ〜、楽しかった楽しかった。でも事前のシミュレーション通りになることは理解していたとはいえ、あっさりと終わっちゃった。これ、どう表現したらいいんだろう…。」

「あの大ボスが、一方的に…。やり過ぎとはいえ、凄すぎるな、お前!その強さは絶え間なく自分を磨き続けている努力の賜物だぞ!」

「確かにそうだけど…。一方でこの世界の敵に実力面で歯ごたえを感じなくなってしまっているような…。とにかく魚食べようか、2人とも。」

「そうしましょう。ズイカクは私達に料理を食べて欲しくて魚を釣ったんだから。それにしても、「雪」が綺麗ね。」

「そうだな、それが哀しみによる美しさを醸し出しているからいい。」

 

そして智史はズイカクが釣った魚が保管してある場所に向かう、

 

「やっぱり緑色か…。お前は緑が好きだからな…。」

「そうそう!お前の船の中の空間はすっきりしすぎてるから大型の冷蔵庫を取り付ける改装の際に一緒に緑色にしたのさ!」

ーーまあ、いいか。

 

そして彼らは魚を次々と冷蔵庫から出して調理室で捌く。

 

「これは骨を全部抜いた方がいいんだな?」

「そう!飲み込む際にトゲが刺さるから!」

「痛っ‼︎」

「大丈夫か、琴乃?手当をしておけ。」

 

そしてご飯を盛って魚の捌きと一緒にリヴァイアサンの左舷飛行甲板上に並べる、しかし何故か数が多い…。

 

「ズイカク、蒔絵達に私の居場所を教えたのか?」

「そう!お前はうっかりしてる所あるからな!」

 

そして南西の方から卵の形をした飛行物体がやって来るーー

 

ーーキィィィィィィ‼︎

ーーガチャン‼︎

 

 

「突然いなくなったと思ったら千早艦長達と喧嘩をしてそのまま逃げて黙ってっぱなしなの⁉︎だ〜め〜で〜しょ〜?これだといつまでも仲直り出来ないよ〜?」

「ああ、そうだな…。」

「ズイカクが居場所を教えてくれたお陰でお前が何処に行ったのかが把握できた。霧の太平洋艦隊の大半を壊滅させたらしいな。」

「ああ、旗艦も含めた多数の超兵器と艦艇を撃滅した。」

「本来ならため息だけしか出ないが、今回は違うぞ、千早群像に謝ってこい。私も手伝ってやる。」

「そうだな、すまなかった…。」

「モンタナ達は401やヤマトがお前の付き添いであることを理解した瞬間、全艦が投降した、ただ一隻を除いて。」

「なるほどな…。彼女は私を極度に恐れているのだろう。

了解した、料理を食べながらその場所に向かうぞ!」

「智史くん、もしあなたに何かあったら私があなたを庇うわ。一緒に行きましょう」

「ありがとう…。琴乃。」

 

そしてリヴァイアサンはモンタナ達の所へと向かう、既にバイナルは消えていた。

 

 

ーーその頃。

 

「なんで私達だけ置いてけぼりなのよ〜‼︎」

「お姉ちゃん、怒らないで!スキズブラズニルでの船体の大幅改装で時間が掛かっちゃったから仕方がないじゃない!」

「2人とも、さっきの戦闘のデータを解析した結果なんだけど、智史の奴、太平洋艦隊を一隻で壊滅させたそうよ?」

「智史ちゃん、何処までも強くなってくわね…❤︎」

「あと蒔絵とハルナ達に与えた私特製の卵型UFO、結構使えるみたい。本来ならイオナ姉様と一緒に2人っきりでデートをする為に作ったんだけど」

「そう、なら私も一緒に2人っきりで乗ってみようかしら…❤︎」

「げっ…。それはやめて…。」

 

そう会話をするタカオ達。彼らは既に降伏したノースカロライナ達も一緒に引き連れてモンタナ達の所へと向かっていたーー

 

 

彼らはそれぞれの事情に決着を付けるためにモンタナ達と群像達がいる場所へと向かっていくーー




おまけ

リヴァイアサン=海神智史が新たに習得したオプション

メギド

元ネタはエタってしまった某小説より。
智史がこれまでの進化をし続けたことで新たに反物質を生成、安定的に運用可能となったことに加え、これまで習得した各オプションの知識を基にして開発、実装された究極の大量殲滅兵器。
まず船体の艤装を展開し、重力子ユニットをエネルギー集約レンズにエネルギーを集中させる形で展開する。次に重力子エネルギー、波動エネルギー、反物質エネルギーをそれぞれのエネルギーベクトルを強制操作してタイミングを調整することで、異常な勢いで共振させ、総破壊エネルギー量を高める。その上で重力子ユニットを固定する為のパーツの一部を変形させたエネルギー集約レンズにそれらを集約することで発射される。
その威力は現時点のものとはいえ、宇宙を数十兆個は吹き飛ばしてしまう程。もちろん現時点のものと付け加えたのは今後更なる進化によって威力も効果範囲も上昇、拡大していく為である。
ちなみにチャージ中でも隙は無しに等しく、多層クラインフィールドや新しく習得した量子フィールドを組み合わせた多層複合フィールドや本体の強制波動装甲や量子クリスタル装甲、そしてそれらを支える自己再生強化・進化システムによって悉く阻まれ、吸収され、挙句には自己強化に回されてしまうのだ。
今作では御披露目する機会は無かったものの、いずれバリエーションを変えて披露される可能性がある。

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