海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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今作は智史本人の考え方が判明します。
北斗の拳に出てくる世紀末覇者拳王ごとラオウ様の考え方に近いです。
そして智史がヴォルケン達を蹂躙したくてすごく殺る気満々です…。
それではじっくりとお楽しみください。


第18話 会談と威厳、そして智史の考え方。

「何⁉︎智史が琴乃とヒエイ、イオナを引き連れてサモア諸島のサバイイ島に向かっただと⁉︎」

「はい、メンタルモデルイオナの行動記録とその時の会話データから推測するにその様だと判断できます。何者かに呼ばれた様です。実際、リヴァイアサン本体もサモア諸島方面に向かっていることが確認されています。」

「まさか、智史さんが琴乃さんとヒエイ、そしてイオナを連れて行くなんて…。一体何をする気なのでしょうか…。」

「ヤマトか。とにかく、リヴァイアサンの後を追おう!」

「私達も連れて行って頂けませんか?」

「会長や智史達が心配だ、連れて行ってくれ。」

「ありがとう、索敵と情報処理を頼む。」

 

ーーそしてヤマトとミョウコウ姉妹を乗せた401は慌てて出航する、智史たちが心配な為に。

 

 

ーーそして、サバイイ島上空ではーー

 

「あれが、サバイイ島か…。初めて来たが随分と緑豊かな島だな。」

「あちこちに構造物が建っているわ、少なくとも人が作った様にも思えるものが…。」

「つい最近まで使われていたみたいですね…。」

「ここでムサシが何かをしていたの…?」

「そうみたいだ。超兵器の技術はここで解析され、新しく建造された霧の艦艇に取り入れられたらしい。」

「そんな…。」

「海岸沿いに着陸するぞ、風景をじっくりと楽しみながらヴォルケンの所に向かいたいからな。」

「私もそうしたい。智史くんの側にいると色々と楽しめるし安心できるから。」

 

そして彼らはサバイイ島の海岸に着陸する、そしてヴォルケンの所へと観光をしながら歩いていく。

「随分と美しい海ね、コバルトブルーの色合いだし、空も晴れてるし!」

「そうだな、ヤシの木が何本か立ってて南国に相応しい雰囲気を強めている。スキューバダイビングには最適だろう。」

「これが、南国…。」

「ヴォルケンの場所がどうして分かったの?」

「すまんな、理由を言いそびれて。今からデータを送る。」

智史はそう言うと他のメンタルモデル達にデータを送信する、そしてそれぞれのサークルのモニターにヴォルケンの居場所が表示される。

 

「なるほど、あなたは最初から見抜いていたのですね、敵の戦略や目的を…。」

「ああ、そしてマイペースですまないな。」

 

そして彼らは研究場跡をじっくりと歩いていく。

 

「大規模な分析を行った痕跡があるな。」

「そうみたい、機器は撤去されてるけど…。」

「ムサシは人類や私を滅ぼす為にこんな分析や開発をやったんだな、だが無駄すぎる。こちらは規模がもう読めているし、ハードやソフトも今でも把握済みだというのに…。」

 

やがて彼らは緑豊かな場所に建てられた研究場跡を抜けてヴォルケンが待っていた海が見渡せる所に出る。

 

「随分ゆっくりと散歩していたみたいだな、海神智史。」

「ヴォルケンクラッツァーか、すまないな、マイペースで。」

「まあいい、約束通りに来てくれたのだから。そして連れが何人かいるな?」

「ああ、気まぐれで連れてきた。」

「なるほど、気まぐれか。そしてヒエイか。お前はよく調べずに部下を引き連れてリヴァイアサン、いや海神智史に戦いを挑んだ結果コテンパンにやられて大勢の部下を奴に食い散らかされたようだな。面だけは立派な無能が」

「くっ…。」

 

自分なりに智史を調べて準備をして臨んだというのに無能と罵られて悔しい思いをするヒエイ。思わず殴りかかろうとするが智史がそれを制止し、彼女を弁護するかの様に台詞を呟く、

 

「彼女は無能ではない、私のスペックが普通の霧だったらあっさりと殺られていた。ソフト面では私は彼女達に劣っていた、にもかかわらず彼女達があっさりと殺られたのは私がソフト面での劣勢をハード面での一方的な優勢、いやチートスペックで強引に覆したからだ。それに彼女が怒り狂って十分に準備を整えてくれなかったから私はあっさりと勝てた。」

「智史…。何故そのようなことを…。」

「ヒエイ、お前は私に負けた、だからといって無能とは言えないだろう?曲がりなりにもお前は私のことを調べて戦いを挑んでくれた。それで十分だ。」

「なるほど、自らが汚名を進んで被ることでヒエイの名誉を守ろうとしたのか。いいだろう、ヒエイに対するこの評価は撤回しよう。」

「どこかのマンガでそういうことが書かれていた、それを実践してみたかったこともある。」

「お前は単純なクレイジーではなさそうだな。他者を思いやる優しさがあるという美点があるという点で。さて、本題に移ろう、お前はこれからどう生きようとしているのだ?」

 

ーーそしてその頃ーー

 

「ソナーにリヴァイアサンの反応が検出されました、ですがメンタルモデルの反応はありません…。」

「恐らく艦を万が一に備えてサバイイ島の近くに移動させただけで最初から乗るつもりは無かったのだろう。サバイイ島に智史達の反応は検出されているのか…?」

「本艦のソナーでは検出できません…。」

「そうか…。」

そう言い手当たり次第の捜索をするよう命令をしようとする群像、だがーー

 

「私達のことを忘れられては困ります。」

「そうだ、お前達に出来無いのなら私達にやらせてくれ。」

「ナチ…。ミョウコウ…。君達は敵対していたはずだが…。」

「確かにかつてはそうでした、ですが今は会長の身が心配です。捜索を手伝わせてください。」

「わかった、捜索を手伝ってくれ。」

「ありがとうございます。」

ナチはそう言うと予め同行させておいた12機の探索ユニットを起動させる。

 

「探索ユニット展開、サバイイ島及びその周辺の捜索を開始」

 

すると401とヤマトを囲むように12機の探索ユニットが展開される、同時にナチとその周辺に複数の黄緑色のサークルが展開され、ユニット群からのデータがモニターに示されていく。

 

「北東方向に微弱なノイズを感知。データベース照合、究極超兵器ヴォルケンクラッツァーとリヴァイアサンのメンタルモデルのものと確認、座標送ります。」

「な、なんだと⁉︎彼以外にも究極超兵器のメンタルモデルがいただと⁉︎」

「両者の反応、消失していません。」

 

「とにかく、手遅れになる前に急がなくては‼︎」

自分の予想を超えた事態に焦るヤマト。

 

「座標地点から南東5キロの所に上陸するぞ!機関最大、急げ‼︎」

 

そして群像達は慌ててサバイイ島の南東方面の海岸へと急行していくーー

 

 

ーーほぼ同時刻

 

 

「何故そのようなことを尋ねる、私を殺すつもりだろうというのに?」

「海神智史、お前を葬る前に有用なことがあるのかどうか聞きたくてな、もしこのことを聞き出す前にお前を殺したら勿体なくて仕方が無い。」

「ふっ、なるほどな。なら答えてやろう。だがその前に一つ付け加えておくが葬られるのはお前達だ。私にはその力量がある。」

智史はそう言うと自身のシステムの総出力を上げ、効果範囲を限定しているリミッター(のようなもの)をほんの一部だけだが解除する、それに伴い尋常ではない圧倒的な威圧感と威厳が醸し出され、同時にオーラのようなものもまとわり付き、地面が悲鳴をあげて激しく揺れ始めた。

「な、なんて力なの⁉︎」

「こ、これは地震⁉︎」

「か、体が震えている…。これが恐怖という感情…。」

「(こ、これは…。なんて威圧感だ…。これは魔王と相対したようなものだ…。そうか、これだ、今のお前は私達を軽く葬り去ってしまう力を持つ者に相応しい…。)」

「これは私の各種効果範囲を限定しているリミッターのほんの一部を解除している状態だ。今の状態でそれ以上解除すると太陽系、いや銀河系すら軽く吹き飛ばしてしまう。もちろん今の状態から進化し続けているから今の地球を壊さずに残すとしたらそのリミッター自体を解除する機会、いや必要性さえなくなってしまう。もう十分に震えているが更に出力を上げてみよう、お前達の反応がシミュレーションデータの予想通りなのか一応知りたくて嬉しくて仕方が無い」

 

 

そして群像達の方もーー

 

 

「座標地点に非常に強烈な重力震反応及びエネルギー反応検出‼︎」

「リヴァイアサン、いや智史さんのものと確認!」

「なんて揺れだ…。島だけでなく海まで揺れて地響きを奏でている…。」

上陸した途端に襲いかかってきたあまりの揺れにヤシの木にしがみつく群像達、同時に401の中にいたクルー達も何かにしがみつく。そしてその揺れやエネルギーはどんどん増大していく。

 

「おいおい、これで十分じゃねえって感じだぞ⁉︎更にエネルギー反応が増大してやがる‼︎」

「やっぱりすげえ〜‼︎とんでもない化け物だ〜‼︎」

「い、嫌ぁぁぁ‼︎誰か、助けてぇぇぇ‼︎」

「こいつ、地球を吹き飛ばすつもりぃぃ〜⁉︎」

「これが、この世の終わり…⁉︎」

「ああ、これが黙示録となってしまうのでしょうか…。」

 

 

そしてテンションがどんどん上がってしまいますます本気を出そうとする智史ーー

 

「智史くん…、じ、自重して…。」

「え、これ、やり過ぎぃぃぃ〜⁉︎」

「智史、あなたのテンションが上がりすぎたせいで周りが滅茶苦茶…。やめて…。」

「えっ⁉︎あ、あぁ〜‼︎本当だぁぁ、あははははははは」

「ふ〜…。地球と一緒にあなたに吹き飛ばされるのかと思った〜…。」

 

琴乃の注意に智史は喜びながら驚く、智史本人が本気を出していくのを止めたのか、彼から圧倒的な威圧感と威厳は消え、普段のマイペースで無邪気な彼に戻る、そして同時に揺れが収まっていく。そして、自身の行動の結果生じたあまりの揺れに滅茶苦茶となった島や施設、そして皆の光景を見て何かツボにハマるところがあったのか彼は思わず大笑いしてしまう。

 

「これは笑い事ではありません‼︎その場で死刑です‼︎」

「ひ〜!ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ‼︎あ〜こちょばい‼︎でも人の感覚や心を捨てないことはこれで楽しい〜‼︎」

そんな彼はヒエイに全身を擽られて大笑いしながら喜ぶのだった。

 

「まさに滅茶苦茶だな、だがお前の生き方がどのようなものなのかは僅かながらも分かった。お前は自我を貫く人間として生きようとしているのだな。」

「まあそうだね、少なくとも自分を抑圧する現実と他人が猛烈に嫌いだから自分の意思のままに生きたいという考えが心の奥底にある。だから他者を振り回して最悪ブチ殺してまでもいつもマイペースで居たいんだ。」

「なるほどな…。まさに社会性を無視したような行動性だな、しかもその場の気分や雰囲気で落ち込んだりハイテンションになったりして他者を激しく振り回す…。だからといって良心が無いというわけでもなさそうだな。少なくともマミヤを思いやったりヒエイを庇ったりしたという点で。」

「まあそうそう。うちは気分屋で常にマイペースだから。悪いね‼︎」

「気分のアップダウンが激しすぎるよ、智史くん…。」

「あ、琴乃。ごめんごめん。」

智史はこの後彼自身の所業を身で味わされた琴乃にたっぷりとお灸を据えられる。

 

 

「場が随分と滅茶苦茶となってしまったがお前の人間性は把握できた。お前は少なくとも無邪気な子供のような思考ルーチンだな。さて、次に移ろう、お前は何故振動弾頭をアメリカに向けて輸送している401ーー蒼き鋼に加勢しているのだ?」

「ん〜、その場の気まぐれかな〜。少なくともムサシからの命を受けたあの潜水艦の2人ーー400と402に攻撃食らうし、それでムサシを主とする霧の艦隊には悪印象しか抱いていない。降伏を自分からした奴を除いて、徹底的に甚振りながら一匹残らず殺してやろうと考えてる。それに対して蒼き鋼ーー401の艦長、千早群像とそのクルー達からそんな印象は受けなかったし。」

「お前らしい解だ。お前は私達にも守るべきものがあると事前に知っていてこう言っているのだな?」

「うん、どうしても守りたいものやうちに対する恨みがあって戦おうとする人もいるんでしょ?なら一緒に甚振りながら殺してあげるよ♪」

「そうか、そんなお前の台詞に応えてこちらも全力でお前を屠りに行くぞ!」

「うん、そうしてください。皆一匹残らず美味しくぶち殺します♪」

「智史、あなたの雰囲気が怖い…。」

「あ、そうだった、すまんすまん。」

 

ーーファイナルファンタジー6にラスボスとして出てくる悪役のケフカみたいな気分で言っちゃったよ、まあケフカになって殺る前に自ら降伏したのを除いた奴らを一匹残らずハカイだハカイだ〜‼︎

 

智史は彼らを量子スキャニングやハッキングといったあらゆる手段を使ってこの宇宙という世界の中のことをとっくに知り尽くしてしまっていたのだ、勿論彼らのことも知り尽くしてしまっていた。今でも念入りに調べ直してはいるが。そして彼はそのデータを基にして信じがたいペースで強化を今でも行っているのだ。

彼、海神智史に平和的解決という言葉は頭の中にはない、言葉で解決しようにも口で言いくるめられて色々とややこしいことになると判断していたからだ。実際彼がいた民主世界ではメディアによる情報戦や宣伝戦略によって物理的実力を持つ国、人がそれよりも弱い者に翻弄され、劣勢に追い込まれたりしているのだ。自分の見方で行けば力関係だけで決してしまえば醜い醜聞など聞く必要もないのに、平等な民主主義というもののせいで力があるものが一つの感情に洗脳された無数の弱者に振り回されることが嫌で仕方がない。そのせいもあるのか、彼は口だけ上手、表面だけ上手、猛烈に威張っているように見える、感情論を使い世間を味方にしようとする人間は猛烈に嫌いだった。そういう人間は見ただけで殲滅してしまいたいのだ。また彼は自身の特性を理解しようとせずに自身をコケにしてくる他者が猛烈に嫌らしくて報復したいと考えていた、だがそれは感情論に基づく裁きを恐れて出来ずじまいで悔しかった。それらの影響からか彼は感情論無き世界を好み、感情というものを抹殺し、統率してしまえば世界は平和になれると判断していたのだ。実際横須賀でやったことは彼の考え方をよく表していた。またそれらの経験から得た考え方はーー

 

 

ーー力こそ総て。

 

 

その考え方が智史の心の奥底にあった。どんなものも形作るには何らかの力が必要と彼は判断していたのだ。例えば人の形を構成するには原子を結びつける力や密着力をはじめとした力が必要である。もしそれらがなかったら人の形などできないのだ。愛や理想といった感情論では決して物事の解決などしないし、物が動くことすらない。場合によっては逆効果に終わることすらある。ならば従わぬ相手を実力でねじ伏せ、叩き潰し、殲滅することで自分に対する禍根や憎しみを叩き潰し、自分を中心とした物理的、理性的な平和こそが正しいと彼は考えていたのだ。

だが群像達をなぜ生かして、彼らに味方したのかというと、己と境遇が似ているので抹殺するのは惜しいという点が主だが、すべて抹殺したら面白みが無いと判断した為でもある。勿論彼らが自分に都合のよくないことが起こしても問題ないように敵や己を分析し、己を積極的に磨いて彼らをいつでも抹殺できるように準備を進めていたのだが…。

 

「我々にに降伏するという選択肢はお前の中には無いのだな?」

「うん、ないよ♪降伏してもムサシに色々と無理難題を押し付けられて抑圧され、こき使われるだろうからね。それに今のあんたらの置かれている環境が破壊できないじゃん。」

「(見事に本質を突いているな…。ムサシはお前やオウミを快く思っていない…。仮に私がお前の上司として頑張ってもムサシの命に逆らわずにお前を上手に運用することなどできん…。それにマスターシップの事もある、私達は破片の力によって滅びの化身と化しつつある、今は踏ん張って耐えてはいるが、それは滅びの時を先延ばしにするだけだ、その時は確実だというのに…。)」

「(自らの自我が滅びかけてるんでしょ?敵対してるから早く楽にしてあげるよ♪早くうちに殺されたくて仕方がないんでしょ、マスターシップの配下の操り人形となって自我もない自分の肉体だけが残って歩いていくのは虚しいよ、ねぇ?)」

「(そうだな…。)」

「んじゃあ話し合いはお開き〜‼︎早く決戦始めよ始めよ〜‼︎」

「ああ、話し合いは終わりだ、これよりお前を撃滅する‼︎」

 

 

そう言い会話を終えようとする両者ーー

 

 

 

「ちょっと待った‼︎」

 

 

 

「ふぇ⁉︎」

「何⁉︎」

 

 

ーー来たか、群像。ヤマトやミョウコウ姉妹全員を引き連れて。

 

 

「彼女がヴォルケンクラッツァーのメンタルモデルだ。」

智史はヴォルケンの方を指差しながらそう呟く。

 

「智史、俺達と話を代わってくれ。」

「了解した、気分がちょっと乗りすぎてしまったから頃合いがいい。」

 

そして群像とヤマトがヴォルケンと話を始める。

 

「なぜ君達はムサシの命令に従っているんだ?」

「リヴァイアサンごと海神智史が我々を殲滅する為に行動しているからだ。」

「智史さん、なぜあなたは平和的解決を望まないの⁉︎」

「口と話し合いで解決するなら世界はとっくに平和になっている。私がいた元の世界も実力を伴ってこそ平和が実現したのだ。」

「だが、相手を殺さずに平和的に解決する事は出来るはずだ‼︎」

「そんなはずはない。利害が食い違い、一度でも対立していればその場は収まれどいずれまた醜い争いが起こる。そして禍根も相手にそれを絶やす気が無ければそのまま残ってしまい、それもまた醜い争いの元となる。そうなるなら相手を全部壊し尽くし、焼き尽くした方がマシだ。そうだな、ヴォルケン?」

「その通りだな海神智史。霧は元は個性を持たぬ存在だった、だが人類と戦う事で各々が人類から知識や戦術を学び取る為にそれぞれの方向にハードやソフトを進化させた結果個性や自我が生まれた。その自我がそれぞれが違う方向へと学習、進化した結果霧の中で内紛が起きたり意見が食い違ったりしている事が起きるようになった。実際お前と私との考え方の食い違いがそれを証明しているではないか。そしてお前の言う通り、口だけで解決する事はない、実力をもってこそ事は解決するのだから‼︎」

「そうだな、実力をもってこそ納得がいく結果となるのだ‼︎」

「違う‼︎それは新たな禍根や憎しみを生み出すだけ‼︎」

 

イオナがそう反論する、智史は真顔でこう切り返す。

「それは相手を一匹残らず殺さずに情けをかけるから生まれるものだ。一匹残らず殲滅して無に帰してしまえばもう禍根や憎しみも生まれない。」

「それは他人の喜びや幸せも無に帰す行為だ!」

「それでいい。私は自分だけが幸せになればいいのだから。お前達以外の他者と共存しようとしても誰も私のことを理解してくれようとしない、寧ろコケにされて遠ざけられた‼︎だから私は自分に負荷を掛けてくる存在は排除するか殲滅するのみ‼︎私には自分のことを知ろうとしない、知らない他者と共存することなどできない…。これまでもそうだった…。だから私は一度対立した相手と共存する努力をするぐらいなら相手を叩き潰し、皆殺しにする‼︎」

「でも理解し合えることはできるはず‼︎」

「無理だ‼︎どうやったら他人と理解し合える関係になるのかがわからない‼︎他人との距離感が分からない‼︎寧ろ負荷を掛けられるだけだ‼︎誰もかもかが私の特性を理解せずに変人扱いする…。だからだ…。」

「う…。」

智史の凄まじい剣幕に押し黙ってしまう群像達。

 

「ヴォルケン、話し合いは終わりにしよう、死闘の幕開けだ!」

「ああ、お前の願いに全力で応えよう!」

 

ヴォルケンがそう応える、すると彼女の真後ろに突如としてVTOLが着陸する。

 

「ハワイ沖で待っているぞ、海神智史‼︎」

「了承した!」

「お願い、あんな悲しい戦いは止めて‼︎」

「ヤマトか、無理だ!私達は霧。守るべきもののために戦うことこそそこに存在価値がある存在‼︎」

「それでいい!それでこそ殺り甲斐がある‼︎」

「先にハワイ沖で待っているぞ!さらばだ‼︎」

 

ヴォルケンはそのVTOLに乗り込む、そしてそのVTOLは飛び立っていくーー

 

「(海神智史、破片を取り込んだ私達を、終わらせてみせてくれーー)」

 

「(ヴォルケン、貴様の覚悟は悲愴だな、破片を取り出す術すら知らずに…。まあ私はそんなこと御構い無しに貴様らを楽しみながら殺しはするがな…。しかし、強くなり過ぎたな、ヴォルケンに奥義を出すだけの価値を見いだせなくなった程に。まあいい、もっと強くなろう。)」

 

 

日が暮れて、朱色に染まった空の中をVTOLが北東の方向へと飛び去っていくのを見つめている智史達。そして群像が智史に尋ねる。

 

 

「なぜ君は平和的な解決を望まないんだ⁉︎」

 

「口で一時的に解決しても結果的にはまた争乱が始まる。そういう風に人間の自我というものはできているのだ。彼女らは人間の自我に近いものを持ってしまった、私も元々が人間だったからそうだが。人間には元々戦争することで自滅するようにプログラムが組んである。それは自然の摂理ともいうべきか。霧は人間から戦略を学び取ろうとする際に自我と一緒に個々に異なる考え方とそのプログラムも取り込んでしまったようだ。そして人間は魂の髄まで根本から変わろうとしない、根本から変わることを恐れて口や感情論ばっか使ってその場を一時的に誤魔化している。そんなの一時的だからいつか終わる。そして根本が変わらないから醜いことが絶えない。では誰がこの根本を変えてこんな醜い争いを終わらせるというのだ?人が皆根本から変わることを拒否している。ならば私が直接終わらせてやる、圧倒的な力をもって奴らを悉くねじ伏せ、殲滅し、根本から書き直して永久の平和を作り上げるまで。破壊と憎悪を背負わずして、世界を変えることなどできるものか‼︎」

 

「違う、人を人でなくす必要がなくても平和は実現できる!思いが伝わり、受け継がれれば平和は続いていく‼︎」

 

「偽善者め…。そういう理想論こそが偽善だ!貴様らは自らを根本から変えることを拒否している‼︎そしてその根本から変わらないから貴様らの今の思いは徐々に薄れ、いつか絶えてしまう!そしてそれを忘れた貴様らの子孫どもがまた同じ過ちを繰り返すのだ‼︎」

 

「それを言っている君自身が変わることを拒否しているのではないのか⁉︎」

 

「そうだ!私自身まで変わってしまったら人間の根本を変えることが完全には出来なくなってしまうではないか!実行している本人が変わってしまってそれが中途半端に終わる形となっては逆効果だ‼︎」

 

智史は群像の指摘を認めた上で徹底的に反論した、それは自身を正当化する行為でもあった。

 

 

 

「相変わらず自分に正直ね〜、智史くん。ヴォルケンの所に一緒に行く?」

「いい提案だ、琴乃。私のそばにいつも居てくれるお前には感謝している。」

「その気持ち、いつもあなたの心の中にあるから嬉しい。さあ、行きましょう。」

「ああ。」

 

そして彼は水中で待機していた自身の艦体であるリヴァイアサンを呼び寄せ、サバイイ島洋上に浮上させる。

 

「行くぞ、琴乃。ハワイへ。」

「智史、自分の言うことを聞かないものは皆殺しにするというのか⁉︎」

「そうだ‼︎それ以外の選択肢など私の中にはない!お前達はその死闘をじっくりと眺めているがいい。」

 

そして彼は琴乃をお姫様だっこしてリヴァイアサンに飛び乗る、そしてリヴァイアサンに青い龍のバイナルが灯り、スラスターが咆哮を上げ、リヴァイアサンはゆっくりとハワイの方に突き進んでいく。

 

 

 

「智史…。くっ、俺達に君やこんな悲しい戦いを止められるだけの力があれば…。」

そう言い彼や非力な自分達を責める群像。だがそんなことを口にしてもヴォルケン達に対する彼の一方的な蹂躙の時を止められるはずがない。

 

「遂に智史があの化け物と戦争か〜‼︎ナ〜チ〜‼︎私も見たい〜‼︎」

「アシガラ、空気を読んで!」

「私達は化け物同士の戦争を止められないというのか…。」

「こんな戦いを止められないんじゃ、私達がいくら頑張っても無駄だよ…。めんどくさい…。」

「今の私達は指をくわえてこの戦いを見守ることだけしか出来ないのでしょうか…。」

そして彼と群像に関する一連のやりとりについてそれぞれの感想をつぶやく元霧の生徒会のメンバー達。

それと同じくして、ソロモン諸島マキラ島では。

 

「なんということだ、智史がヴォルケンやモンタナ様達と戦うとは…。」

「ヴォルケン様は奴とサバイイ島で話をされたそうです、その際にサバイイ島から奴のものと思われる巨大な重力震反応が検出されました。恐らく奴の実力はヴォルケン様達が準備を万端にされても敵わない程、いやそれ以上と思われます。」

「そして彼によって我々の武器や機関のロックが解除された、恐らく我々に選択肢を与えるだけの余裕が彼にはあるのだろう。仮に我々が逆らっても彼は見向きすらしないということだ、つまり我々は彼にしてみれば一蹴されるだけのちっぽけな存在だということだ…。」

「それが事実ならとんでもない化け物でしょうな、もしやマスターシップの力を取り込んだムサシすら蹴散らせてしまうのでは?」

「そうだな、そしてその予想は事実ということが確実になりつつある…。モンタナ様、どうかご無事で…。」

 

智史はノースカロライナ達のロックをあえて外した、そうすることで考えるための選択肢を与えたのだ。常に己を磨くことに余念がない今の彼は、仮に彼らが逆らいヴォルケンやモンタナ達と一緒に突っ込んできても余裕で蹴散らせてしまうのだ、だからこそできることでもあったのだ。

それはさておきとして、遂にリヴァイアサンごと海神智史とヴォルケンクラッツァーの2人が待ち望んだ決戦の時が迫るーー




おまけ
リヴァイアサンごと海神智史本人の信条。


力こそ総て

これは智史がかつて、自身の特性を知らない、そうだとしても理解しようとしない他者に自身のことを理解してもらい、打ち解けあおうとしても自身が話すことが不器用なこともあったのか、理解しあえずにむしろ逆に理不尽なことを受けてしまったことに基づく経験から備わった考え方である。要するに弱肉強食。
強いものが己に従わぬもの、己の為にならぬものを力でねじ伏せ、殲滅していくことで己を正当化していく考え方であり、同時に自然の摂理に基づくもの。
彼がリヴァイアサンのメンタルモデルとなってしまう出来事以前から彼本人にはその考え方は備わっていたが、その考え方を具現化する実力がこの出来事で付いたことで彼は文字通りその考え方を霧の艦隊相手に実践していく。
もちろん自身が強大なことに驕っていてはいつかは自身を上回る強さを持つ他者に潰されてしまうと彼はちゃんと考えていたので、彼は今でも敵と己を事細かに知り、己を徹底的に磨き、向上することに余念がない。
またそのような経験に基づく考え方からの影響からか、本人には一度対立したと判断した相手に対しては会話をして解決をしようとする気は一切無く、むしろ徹底的に殲滅し、総てを灰塵と帰すまで焼き尽くすことを至上としている。それは第六天魔王の如き振る舞いを具現化したものでもある。

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