海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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今作は智史がこれまでのことについて少し後悔します。
そしてヒュウガがイオナの件でまたしても彼によって酷い目に遭います。
前回のものを上回る虐待です…。
それではじっくりとお楽しみ下さい。


第17話 ピアノと料理、そしてサバイイ島へ。

「ヴォルケン様、お願いです、リヴァイアサンとの決戦に私も行かせてください‼︎」

「ダメだ。お前にはマスターシップの破片を挿れるための器が無い。」

「…でも‼︎」

「ダメなものはダメだ。マスターシップの破片を挿れられないお前では奴との決戦の際に艦隊の足手まといとなってその隙を奴に突かれてしまう。」

「なら私にマスターシップの破片を挿れられるようにして下さい‼︎」

「ダメだ、器が無い者の破片の挿れ方は分からない。」

「そ…そんな…。嘘だ…、嘘だぁ…‼︎」

そう言いその場を泣きながら去ってしまう艦これの大和もといオウミ。そんな彼女を皆は悲しそうな目で見つめていた、霧の太平洋艦隊旗艦、超巨大戦艦ヴォルケンクラッツァーの彼女に対する真意は分からなかったが。

 

 

「さて、この馬鹿馬鹿しい話は終わりにしよう、皆、私について来てくれるか!」

 

「たとえ化け物が相手でもお供します‼︎」

「この命、あなたに捧げる事が本望‼︎」

「全てはムサシ様とヴォルケン様の為に‼︎」

 

「そうか、皆、行くぞ‼︎」

 

 

「「ウォォォォォォ‼︎」」

 

 

彼らはヴォルケンの声に応えるのかのように歓声を上げる、そして彼らは遂に出撃の支度を始める、それがヴォルケンの真意の一つとも知らずに…。

 

ーーそしてオウミはというと…。

 

「ヴォルケン様…。何故…。」

彼女は廊下の壁に寄りかかりながら泣き崩れていた、そこにモンタナが現れる。

 

「オウミ、何故ヴォルケンがあなたの出撃を許さなかった理由が分かる?」

「モンタナ様…。私には分かりません…。」

「彼女はあなたには生きて欲しかった、私と共に。あなたは誰よりも優しかった、そして私達の事を誰よりも知っていた。そして彼女が言った通り、あなたにはマスターシップの破片を挿れる器が無いという事もあった。私達と同じく。」

「そ、それは一体どういう事なのですか⁉︎」

「わからないわ、ただ分かるのは我々が生を受けて目覚めた時から器の有無はあった、そして器の無い者は破片を挿れたらすぐに滅んでしまうということ、それだけよ。あと、器に破片を挿れたヴォルケン達は彼、リヴァイアサンに確実に負けて血祭りになるまで粉砕されるわ。そして私はヴォルケンから、非戦闘艦やあの決戦に参加しない艦と一緒に彼に投降するように指示されたわ、オウミ、あなたもよ。」

「そ、そんなの嫌です‼︎彼の下で生きるならヴォルケン様と共に運命を共にしたい‼︎」

「駄目よ、皆死んだら何も生まれない。それこそ彼の思う壺。彼に我々全員が抗っても彼にスコアを献上するだけ。そして彼を単に無邪気に喜ばせるだけに終わるわ。彼は我々を全員嬲り殺しにして、血祭りに挙げたくて嬉しくて仕方がないのよ、でもそれは我々が彼に敵対していればの話。大人しく降伏すれば、逆らわない限りは彼は寛容なのよ、マミヤが彼に降伏したけど、彼は彼女の悲しそうな雰囲気を察して少し落ち込んでいたわ。あなたは彼を悪魔だと言ってたけど、それは彼の純粋さ故の残虐性が生み出した一面なのよ。とにかく、私達は彼に降伏するしか他に道は無いわ…。」

「そんなの嫌です、彼は悪魔です‼︎ヴォルケン様達は彼に皆殺しにされて、私達は玩具として徹底的に弄られるなんて…。そんなの嫌だ…、嫌だぁぁぁ…‼︎」

「オウミ…。現実を受け入れて…。」

 

 

ーーその頃リヴァイアサンの方では…。

 

 

「遂にヴォルケンの艦隊が動き始めたか。それもまあ大規模な…。ドレッドノート級10隻、ハボクック、アルウス級12隻、インテゲルタイラント級24隻、ストレンジデルタ級6隻にアルケオペテリクス10機に新規建造された大艦隊…。しかも超兵器達はみんなマスターシップの破片入り、か…。ヴォルケンよ、お前は最初から生きて還ることなど望んでもいない、か…。ならそれに応えてやるとしよう…。」

どこか悲しみに満ちた表情で語るリヴァイアサンごと海神智史。しかし手を休めずに自己研磨はサクサクと、しかし着実に進めた。実際、彼は自己進化に関する努力を積み重ねたお陰で、もはやビッグバン数万発ものエネルギーにも余裕で耐えて吸収し、その全てを自己強化に回せる域に入ってしまっていた。また自身の戦闘能力も異常な迄に強大になってしまい、グレンラガンのアンチスパイラルの大群などにも余裕で圧勝、いや一方的な勝利を収めてしまうほどにもなっていた。それでもドラゴンボールの戦闘力1億2000万の孫悟空との場合は、今のままだと一撃で粉砕されてしまうと彼は判断した。(個人的な被害妄想)

 

「さて、宇宙を一撃ごとに4×10の11億乗も生み出す、常に進化することができる化け物も指ぱっちん一つで粉砕できるように己をじゃんじゃん磨くとしよう。」

 

彼は少し喜びながら更に自己研鑽のペースを上げ、己をもう常識を振り切ってしまっているというのに更に強化してしまう。彼はその孫悟空と同じ大きさ辺りを基準としてその孫悟空に一方的に勝てるように自己研鑽を進める、その強化が孫悟空本人を涙目にしてしまうほどのワンサイドゲームを生み出してしまう程だというのに…。

 

 

「あ、あの〜。智史さん、失礼します。」

「アタゴか…。ああ、少し悲しみに浸っていた。」

「何か、あったんですか?」

「ヴォルケン一味が動き出した、彼らに生きて還る気など無い故に引く気は無い、信念というものがあるが故に。だからこそ葬らればならないと。」

「なるほど…、でも何ででしょう、何でそこまでして引こうとしないんでしょうか…。」

「自分の生き場所が失われること、プライドを曲げられる事が嫌いなのさ。」

「そうなんですか…。あ、少し話変えていいですか?」

「ああ。」

「智史さんっていつも気まぐれみたいなんですけど、あれって何か理由あるんですか?」

「ああ、あれは生まれつきの性だからな、私ではうまく語れんかもしれんからそこの2人に聞いてくれ。それでもダメだったら仕方あるまい、私の手で語るとしようか。」

 

智史は琴乃とタカオのところを指差す、アタゴはそこのところへと向かう。

 

「アタゴちゃん、智史くんが突然凹んだり、人を面白半分に玩具のように使いまわしてしまう理由が分かる?」

「お姉ちゃん、琴乃さん。あの人が考えてることが少し分からないんです、私達の仲間を玩具でも扱うのかのように嬉しそうに色々と試して、壊して殺したり、残忍なのかと思ったら悲しそうな表情をしているマミヤさんを見たら突然凹んでしまったり。」

「そうね、智史さんは人間の言葉を拝借するとアスペルガー症候群という発達障害を前世では患っていたわ。そして彼自身の思考アルゴリズムが健在であったことからその障害も一緒に生き残っていたと考えた方がいいわ。その障害の主な特徴は人によって様々だけど、彼の場合は、大人が自然と身につけるズルさが身につかない、空気が読めない、人の感情が理解できない、常にマイペース、些細な音にも敏感に反応してしまう、自分の生活パターンを変えられたり予想外のことが起きるとストレスを感じたりパニックを引き起こしたりする、という所よ。」

「分かったわ、では琴乃さん、どうしたらいいんですか?」

「アタゴちゃん、智史くんの特徴、そして考え方を具体的に理解した上で誤解やストレスを与えないようにお互いに配慮した方がいいと思うよ。例えば、自分の言いたいことを具体的に伝えたり、パターンを変える時は事前に予告したりした方がいい。あなたの場合は彼の特徴が理解できていないゆえの態度が彼の笑いのツボにハマってしまって大笑いされたのよ、彼も気をつけてはいる所はあるけど、まだ不十分な所が多いわ。」

「でも彼は徹底的な情報収集を心がけていた筈では?」

「それは自己の思考ルーチンを障害共々変えないまま、自分の生死に関することや自分が一方的に有利に進むように情報収集をして、そのデータを自己強化と進化のベースにして徹底的な自己研鑽をしていた為。結果として情報収集・処理能力も上がっていったけど、それは人が考えている自身に対する負の感情や負の意思伝達を敏感に感じ取りやすい方向に進化してしまった。そして各種対人関係での思考ルーチンの進化は置き去りだった。つまりハード面での進化は凄まじいものがあるけど、ソフト面では一部人より劣ってしまう所があるわ。恐らく自分の意思を変えられたり自分に負の感情を掛けてくる人間が猛烈に嫌で、そんな自分の自我を貫き守り通し、自分が生きやすい世界にする為に自己排他的なヤマアラシのように進化してしまったのかもしれないわね」

「なるほど…。分かったわ、お姉ちゃん」

 

アタゴは智史がどういう考えを持っているのかが少し理解できたようだ、彼は自分の特性を理解しようとしない人間達を排除して自分が生きやすいように進化を遂げ続けてしまったのだ。というのも彼の特性に基づく性格は彼自身が過去の体験から大人が自然と身につけるズルさを身につけることを徹底的に拒否した結果、ヒエイのように真面目で、また自身に有利なことしか引き起こそうとしない自己中で常にマイペースな人格で、その場の感情に振り回されやすく、子供のような純粋さをずっと持ってており、それ故に残酷なことを平然とやる一面性もあるのだ。

 

「智史くん、マジョリティーの常識は少しづつ身にはついてはいるようだけど、まだ不完全かもしれないわね。そこを身につけるのは私も手伝うから。困ったことがあったら私に聞いて。」

「了解」

「言葉が機械的で硬い!こういう時は「わかった」とか「ありがとう」って返事をした方がいいよ。」

「分かった。」

 

 

そして智史はリヴァイアサン艦内のコンゴウがいる加工工場みたいな部屋へと歩いていくーーその最中、

 

 

ーー何故だろうか…。

私はこの世界に運命的とはいえ自分の都合のいいように世界を変えられて満足な筈だ…。

この世界は他人によって生み出されたその情景をスクリーンから悔しい思いをしていて見ていたシーンが多かった世界が元だった、これで自分の気に入らない奴を殺して、甚振って、好き勝手にできて満足な筈だった…。そして全てを上回り、全てを知り尽くせるように進化することで無双の域に達することが嬉しかった筈だった…。

だが何故だ、一時は満足しても直ぐに虚無感と孤独感が襲いかかってくる…。

 

嫌だ。

 

私は心に空漠など欲しくない、だがこの世界には私の心の穴を埋めるモノが限られている…。覇者は孤高の存在だという、だが私は強くなりすぎたせいで一人ぼっちになってしまったのだろうか…?それともその場の感情に任せたマイペースな行いが私の罪となっているのだろうか…?ああ、そうかもしれないな、仕向けているのは自分自身なのだから…。

 

 

 

「どうした、智史。お前がこのような提案をしたのは後悔という感情からか?」

「まあ半分はその通りかもしれん。監視用botとはいえ、お前の大切なものをその場の感情で叩き壊してしまったからな。あの無邪気な笑顔も、あのピアノの音も…。」

「そうだな…。かつて私はマヤのピアノの音楽を聞かされるのが煩わしかった、頻繁に聞かされたからな…。だが私がピアノに関することを教え込んでいくうちに彼女はピアノを弾くことが上手くなっていき、私もピアノのことを通じて彼女に心を許すようになっていった…。だが今はその煩わしい音楽も彼女の姿ももうここにはない、彼女が人形だったとしても私は彼女と共に居たかった…。」

「プログラムを組み込まれた人形だとしても一緒に居たかったというのか、コンゴウ?」

「いや、残虐にも映るお前のその場の感情による行動が私の運命を変え、蒔絵という友達との出会いをくれたのだ、それが今の私を作っている、だからお前が私に対してしたことを責めるつもりはない…。」

「そうか、なら手伝ってくれ、蒔絵と皆に新たな生き方を見せるために」

「そうだな…。お前がしようとしていることは私にしてみればマヤの記憶の名残を次代の人間に伝えていく行動に見える…。」

 

そして1人と1匹は赤色に金属的に光り輝くグランドピアノを静かに見つめる、そのピアノは、彼、海神智史の物質生成能力でそれ自体の材料とパーツを作り、加工し、それを組み立てたものだ。瞬時に一発で作ることも出来るが、それだと味気が無くて虚しい。なので材料や機材を物質生成能力で調達したこと以外は自分の手で自力で作り、自分で作りましたという欲望を満たしながら作ったのだ。

 

「力を持ちすぎたお前には己に並び立つものが居ない。それ故にお前は直ぐに実現してしまう己の願望が虚しくて仕方が無かったのだろう、だからその欲望を満たすために己の手で作り上げたのだろう?私達にしてみればその作り方をお前が教えてくれたから非常に大切なことだ。」

 

そして彼はグランドピアノを加工部屋から出すと、リヴァイアサンの左舷航空甲板上に出る、そこで予め生成して待機させておいたV-22 オスプレイにピアノを積み込む。そしてピアノを載せたオスプレイは彼とコンゴウと共にリヴァイアサンを飛び立っていくーー

 

 

ーーそしてソロモン諸島のマキラ島ではーー

 

 

「ハルハル、キリシマ、大きいヘリコプターが来たよ。智史が私に見せたいものがあるって言ってたけど、何だろう?」

「何だろうな、コンゴウと何か話をしてたらしいが…。」

「随分と巨大なヘリだ、相当なものが入っているのかもしれない。」

 

ーーババババババババーー

 

ーーキィィィィィィ…。

 

「智史、コンゴウ。蒔絵に見せたいものが有ると言っていたらしいがどういうことだ?」

「まあ見てみろ。」

 

ーーガチャ‼︎

 

ーーウィィィィィン‼︎

 

 

ーーガコン‼︎

 

ーーゴロゴロゴロゴロ!

 

智史に押されてピアノがオスプレイのペイロードから出てくるーー

 

「これって…ピアノ?」

「そうだ、お前や皆に音楽というものを身で味わって欲しくてな。」

「ピアノとは、どういうものだ?」

「鍵盤というボタンを押せば色んな音が出るものだ、それらの音を調律することで音楽というものが生まれる。」

「“ピアノ”、鍵盤楽器の一種。鍵を押すことでそれに連動したハンマーが対応する弦を叩くことで発音。内部機構の面では打楽器と弦楽器の特徴も併せ持った打弦楽器に分類。タグ添付、分類、記録。」

「これどういうものなの?触ってもいい?」

「いいだろう。ただしピアノをどのように弾けば音楽というものが生まれるのか、私が例を示そう。」

 

そう言うと彼はQuatre Mains (エヴァンゲリヲンQに出てきた曲)の1人版の曲を弾き始める。

 

ーーポン〜ポロリロリロリンロリロン〜リンロンリロリン〜リンロンリロリン〜‼︎リンロンリロリン〜リロリロリローー

 

「すげえ!リズミカルで癒されるような音楽だね‼︎」

「これが、音楽か…。」

「早速弾いてみよう、蒔絵」

 

ーーピロリロリロリンーー

 

「うん!」

 

そして蒔絵は智史の隣に座るーー

 

ーーポン!

ーーポロリロンリロリリッロリロンリロリッロリロン‼︎

ーーポン!

ーーポロリロンリロリリッロリロンリロリッロリロン‼︎

ーーポン!

ーーポロリロンリロリン!

ーーポン!

ーーポロリロンリロリン!

 

そして彼らは少しピアノを弾くーー

 

「蒔絵、お前音楽センス有るのか?」

「ん〜っと、4歳の時にチェロをやったことがあるな〜?」

「なら十分だ、自分が弾きたいものを弾くという基礎が少しは出来ているみたいだな。いいだろう、これに関することを皆と一緒に教え込んでやろう。」

「懐かしいな…。マヤがピアノを弾いていた時を思い出す…。」

「智史、皆を連れてきたぞ」

「ありがとう、キリシマ。」

 

 

ーーコンゴウに連れて来られた人達視点ーー

 

 

「何あれ⁉︎」

「タカオ、それはピアノってものよ。」

「一体何なのよって、非常に色艶があるじゃないっ‼︎」

「ヒュウガちゃん、それはピアノというもの。私と一緒に弾きましょう?」

「げっ…。あなたと一緒になるのだけは嫌…。」

「これは…。楽器の一種?」

「そうみたいですね、一体どういう音がするのでしょう?」

「ほら、早くその楽器使って戦争始めようよ!」

「アシガラ、それは戦争の道具じゃありません。」

「何これ〜?楽しいのぉ〜?」

「何か楽しそうな雰囲気になってきたな、私もその道具に触ってみたい‼︎」

「これが、ピアノ…。」

「艦長、ピアノを見るのは久しぶりですね。」

「私も触ったことないわ〜。」

「何かスポーツカーに使うような色具合をしてるな、おい。」

「すごい…。何かオブジェとして使えそうですね。」

「俺は幼い時にやったことがあるが…。まさかここで出てくるとはな…。」

 

 

 

「では、順番に触ってみるか?」

 

そして彼らはピアノがどういうものなのかを身体を通じて味わっていく、ピアノのメカニズムと同時に。

 

「智史、ピアノとはどういうものだ?」

「音楽という文化を奏でるためのものだ。霧にも通ずるところがあるだろう?」

 

疑問を投げかけるノースカロライナにこう答える智史。

 

「自分のピアノが欲しいか?」

「欲しい‼︎」

「他人から貰うのではなく自分で作った方が愛着が付くだろう?」

 

そして彼らは智史が事前に用意しておいたピアノの製作工場へと連れて行くーー

 

「組み立てるだけで簡単に出来るようにある程度の加工はしておいた。」

 

一人一人のピアノの組み立てが始まる、マニュアル通りに組み立てればいいだけの話だったので楽しく皆自分のピアノをオリジナル風に作ることができた。

 

「ヒュウガ、お前はいつもイオナ百合妄想だからイセと一緒にいれるようにイセのピアノの仕様をちょっと調整してある」

「ヒュウガちゃん、私と一緒に弾けるように鍵盤一式が上下に一つづつ付いてるわ♪」

「げっ…。智史、あんた私を徹底的に虐めるつもり…?」

「まあ悪く思うな。」

 

そして塗装が乾くまでの間、自由時間を過ごして、そしてピアノの音程調整をした上で皆がそれぞれの部屋に持ち帰った所で、夕食を食べることとなった。

 

「今日の夕食のおかずは、豚の生姜焼き。」

「タカオ…、イオナ…。各種情報に基づく予想シミュレーションの通りに、お前達が作ったのか…。」

「そ、そうですよ‼︎これは乙女の修行です‼︎私が作って何が悪いんですか⁉︎」

「いや、お前に実装されている乙女プラグインの延長線上の撫子プラグインが機能してると思うと思わず笑いが溢れてしまう…。」

「う、うるさいですよっ‼︎」

 

智史の指摘に素直に答えを返すことが出来ずに思わず照れてしまうタカオ。

 

「智史、私はあなたが作る料理を見て、自分も同じようなことをしてみたいと思った、その料理を群像やあなたにも食べて欲しかったから…。」

「かつてお前は言っていたな、群像の側にいて、その命令に従うだけと。それを命令していたヤマトが自分の体内から抜けた今、お前はこれからどう生きていくのだ?私の真似事だけをして生きていくというのか?」

「わからない…。」

 

智史の問いに頬を赤く染めて答えるイオナ。

 

「まあいい、お前達の作ったものはいただこう。」

 

そして智史は料理が並んだテーブルに皆が座っていることを確認し、こう呟く。

 

「皆、食事を食べる前にこう言ってから食べよう。

ーー“いただきます‼︎”」

 

「「「「いただきます‼︎」」」」

 

そして皆がイオナ達が作った料理を食べ始めるーー

 

「…美味いな。」

「ありがとう」

「姉様〜‼︎姉様が作ったものを食べるのはもったいないです勿体無いです〜‼︎これは姉様が食べてくださいまし〜‼︎」

「ダメだ。」

智史はそう言うとヒュウガの服の襟を掴み、イセが座っているテーブルに連れて行く。この日の智史は心の穴を埋めたかったのだろうか、この光景を見た瞬間、ヒュウガを戒めも兼ねて弄ろうとした。

 

「さて、ヒュウガ。貴様はイオナ好きだからな、その戒めとして貴様の腹が破裂するまで私とイセからたっぷりとご馳走を食べてもらおうか…。お代わりはちゃんと準備してあるからな…。」

「さあ、ヒュウガちゃん♪姉様がたっぷりとご飯を食べさせてあげるからね♪」

「ネ…姉サマ…、ダ、ダズゲデ…。」

 

そして2人はヒュウガの腹にたっぷりと生姜焼きとご飯、味噌汁に野菜を詰め込んだ、ヒュウガの体は破裂寸前の風船のようにたっぷりと膨らんでしまった。

 

「グ…、グルヂイ…。」

「うわぁ、たっぷりと膨らんで風船みたいにお腹一杯ね♪」

「さあ、たっぷりと苛めてた〜んと吐かせてやろう♪」

「ヤ…ヤメデグダヂイ…。」

 

この後豚のように、いや風船のように丸々と肥え太ったヒュウガは自身の体を弄ばれたりして2人に徹底的に虐められた…。

 

「ヒュウガ、一体誰がこんなことを…。」

「ネ、ネエザマ〜、ゴ、ゴノフダリガ〜。」

「智史、イセ。」

「?」

「何、イオナちゃん?」

「ヒュウガを虐めすぎるのはやめてほしい、彼女が私に対する異常なまでの愛着への戒めだということは分かるけど、幾ら何でも可哀想…。」

「…そうか?私はヒュウガへの戒めも兼ねてヒュウガに今やってることをしたらどういう反応をするのかどうかが嬉しくて仕方がないんだが」

「だ〜め〜で〜しょ〜‼︎これは立派な虐めだよ〜‼︎」

「そ、そうか?」

「智史、お前は人を玩具同然に扱う残虐さがあるな、その理由は分からなくはない、お前はヒュウガへの戒めも兼ねて、自分が他人に何かをすることでどういう反応を返すのかが知りたくて堪らないのだろう?」

「こ、コンゴウ…。」

「401にヒュウガが異常な愛着を示している戒めとはいっても、今のは酷すぎだ、元に戻してやれ。」

 

 

そして2人はヒュウガの口を機械のホースに押しやり、彼女を無理矢理吐かせる、そして彼女が吐いたものはプラズマで綺麗に分解処分されて再びエネルギー源へとなるのだった。

 

「こ…、殺されるのかと思った〜。」

「ヒュウガ、大丈夫?」

「は〜い、イオナ姉様〜‼︎姉様に心配してもらえるなんて、ヒュウガは、ヒュウガはすごく幸せです〜‼︎」

「やっぱりイオナキャーキャーだな、今の戒めを上回るものが必要か?」

「そ、それはやめて…。」

 

そして皆が食べ終わり、皆それぞれの寝床へと入っていくーー

 

 

翌朝ーー

 

「ん〜、いい目覚めか?」

ひょっこりと目を覚ます(?)海神智史。彼は超巨大戦艦リヴァイアサンのメンタルモデルになってからというものの、疲れを一切感じない、進化をし続けている影響か、演算能力や演算リソースの量がべらぼうに増えていった、そのせいで演算リソースのオーバーフローを全然引き起こさなくなっていたのだ、そのせいで他のメンタルモデルとは違い普通のメンタルモデルなら非常に負荷になることも本人は全く負荷にはならず、仮に負荷となってもすぐに消滅していた。だが、悲しいかな、そのせいで全く眠る必要性も消失してしまったことも確かである。

 

「…ん?イオナか?」

 

海岸でイオナがヒトデいじりをしていた、

 

「私は何?私は誰?私は自分の未来をどう生きていけばいい?」

 

「イオナ、昨日は済まなかった、その場の感情で悪のりしてしまって。」

「いいの、あなたがそういう存在である事は分かる、私の話を理解してくれただけでもよかったと思う。」

「そうか…。ところで自分の生き方に悩んでいたのか?」

「そう、あなたが昨日言った言葉について悩んでいた、私は人の真似をする機械?何をすれば1人の人間のようになれるの?」

「自分の世界を持て。他人の考え方や経験、色んな風景を見ることで自分の中の情景を創造し、知識を得て、感受性を育むのだ。私はそうして自分の世界を築いてきた。

お前には感情が少しづつではあるものの咲きつつある、自分の中のジレンマに気がついたお前はもう機械ではない、意思を持った存在だ。」

「何故、“人間”ではなく、“存在”なの?」

「私達は人と接していくために人の形を取ったからだ、ヤマトが千早翔像と会おうとした時に人の形を取ることで翔像に人ならざる存在としての警戒感を拭って欲しかったのだろう、もし人の形ではなかったら我々は外見上や第一印象上の意味で人ならざる存在として人間達に受け入れられなかっただろう。人の形を取るということは我々にしてみれば大事なことなのかもしれん。だからといって、我々が自身の全てを完全に人間にすることなどできない、いや必要ないと言った方が正しい。人間の全てを丸写しにしたら、人間の身体的限界、人間の強欲さまでまで人間そのものとなってしまうからな。」

「なるほど、あなたはそう考えているんだ。ありがとう、あなたのおかげで自分がどう生きればいいのか少し分かった気がした。」

 

そう海岸で会話をする智史とイオナ。そこへヒエイと琴乃が現れる。

 

「ヒエイ、済まなかったな、その場の気分でナガトを殺しコンゴウをクマにした挙句にお前達の艦も潰して」

「な、何故いきなり⁉︎」

「その時は気分が高揚してて嬉しかったが今は少し後悔しているからだ。」

「…言いにくいのですが、あなたに徹底的に敗れ、艦や大事なものを失うまではあなたのことを根本から憎んでいました、でも何故でしょう、あの敗北以降、あなたの本当の姿、自身の考え方と他人の考え方の違いを知ることが出来、そして生きるということが大切なことなのかを身をもって知ることができました。

皮肉にもあなたの気まぐれとはいえ、あなたが私達を殺さなかったことに感謝したいぐらいです。そして私達は他者の分まで生きることを楽しみたいと思います、自分をそんなに責めないでください、私達にも非はあります。」

「ありがとう、ヒエイ…。」

 

実はヒエイは琴乃から彼の考え方や彼の特性、アスペルガー症候群について説明を受けていた。あの決戦以降に考え方が変わったこともあったのか、智史がどういう人間性を持っているのかを以前よりすんなりと受け入れられたのだ。

 

彼らがこれからどう生きていくのかを話し合おうとした、その時ーー

 

「…?音声通信?霧の太平洋艦隊旗艦から?」

「まさか、あの巨艦から?」

 

ーーやはりか。

 

突如として入ってきた音声通信に予想通りと判断しつつもサークルを展開し、通信モニターを出す智史。

 

「“はじめまして、と言うべきかな、 霧の究極超兵器、超巨大戦艦リヴァイアサン。”」

「霧の太平洋艦隊旗艦を務めている、霧の究極超兵器、

超巨大戦艦ヴォルケンクラッツァーだな。私はリヴァイアサンでもあり、海神智史という存在でもある」

「“海神…リヴァイアサン…。いい名前だな海神智史、お前はまさにリヴァイアサンを名乗るに相応しい。これまでのお前の暴れぶり、拝見させてもらった。”」

「お前の狙いは何だ?やはり直接顔を合わせて私が何者なのかを直に再確認することが狙いだろうな?」

「“そうだな、艦隊を結集させて総力をもってお前を葬り、401の振動弾頭輸送を完全に阻止することが狙いだ、だがお前を現実空間でまだ見ていない、だからその前にお前と一度会うことでお前がどういう存在なのかを確認した上でお前を仲間たちの冥土の土産にしたいからな”」

「了承した。こちらの準備はもうとっくに整えてある。それで場所は何処だ?」

「“サモア諸島のサバイイ島だ。お前もこの島で行われたことを知っているだろう?”」

「ああ、霧や超兵器に関する研究をやっていたな、今はそのようなことはやってはいないが」

「“そうだな、さすがは海龍と言うべきか。”」

「その言葉、褒め言葉として頂いておこう。」

「“以上だ、向こうで会う時を楽しみにしている。”」

「こちらもだ。」

 

そして通信が切れ、モニターが閉じる。

「霧の究極超兵器ヴォルケンクラッツァーを、そこまで本気にさせるとは…。実際にデータベースで確認しましたが、彼女の率いる艦隊は霧の艦隊の中でも最強です、彼女は準備を念入りにし、慎重にかつ大胆に動くことを是としており、暴走したヘル・アーチェとは比にもなりません!あなたは、死ぬ気ですか…?」

「裏を返せば私に本気をもって葬り去るだけの価値を認めたということだろう?いいだろう、ならその期待をいい意味で全力で裏切ってやろう。」

 

ヒエイはヴォルケンクラッツァーの慎重さと恐ろしさを理解していたのだ、かつて彼女はリヴァイアサン=海神智史出現前にヴォルケンと一度だけ会ったことがあったのだ、その際にヴォルケン本人とその艦隊の陣容を視察したのだがあまりの威圧感とその威容に身が震えてしまったのだ、しかも彼女は常に長期的な戦略に基づいて進化と部隊の強化を積極的に推し進め、今では霧の太平洋艦隊を最強と言わせしめるまでに強大にしたのだ。彼女が智史を引き止めようという理由は分からないまでもない。

まあリヴァイアサン=海神智史はそれを遥かに上回るあらゆる常識を吹っ飛ばした強化と進化を常にし続けており、しかもそのペースはどんどん上がっている。彼は既にそんな彼らを鎧袖一触で蹴散らしてしまう程、いやそれ以上の勢いで強くなりすぎてしまっていたのだが、そういう雰囲気が外見からは何故かあまり出てこない。彼女の中の、彼の見た目の強さをヴォルケンの威圧感が上回ってしまったということもあるのだが…。

 

「行くか、琴乃、ヒエイ、イオナ?」

「とりあえず、行ってみましょう。彼女がどういう人なのかまだ見たことがないから。」

「そうか、では行こう。」

 

そして智史は目の前にYAGR-3Bを生成し、彼らはその機体に乗り込む、そして彼らを乗せた機体はヴォルケンが待ち構えているサモア諸島サバイイ島へと向かっていくーー




今作の敵超兵器紹介

超巨大要塞艦 ストレインジデルタ
全長 1680m 全幅 1120m
基準排水量 60000000t
最大速力 水上 100kt 水中 0kt(潜航不能の為)
武装
100口径120㎝3連装砲塔 1基
100口径457mmAGS 単装 6基
127mm全方位ガトリング砲 40基
80口径76mm連装バルカン砲 120基
各種ミサイル発射機 20連装 40基
155㎝拡散弾頭噴進砲 連装 40基
100㎝各種魚雷発射管 200門

クラインフィールド、強制波動装甲、エネルギー吸収調整システム、ナノマテリアル生成装置及び艦艇製造、修復システムを搭載。

ヴォルケンクラッツァーによって、リヴァイアサン対策としてオリジナルから複数の姉妹艦が建造された超兵器。直接戦闘に関わることが主目的ではなく多数の艦艇や航空機を大量に製造して、損傷した艦船を修復して戦略面で貢献することを主目的とする。姉妹艦全艦にマスターシップの破片を挿れる為の器のコピーが搭載されており、その器は本家のものとはやや性能が限定されるとはいえ兵器としての力を引き出す能力を持つ。
同様にその器はインテゲルタイラントやアルウス、アルケオペテリクスの姉妹艦、姉妹機にも実装された。またそのことはオウミを生かしたいヴォルケンの意思によって彼女には伝えられていない。


超高速戦艦 インテゲルタイラント
全長 840m 艦幅 90m 全幅 180m
基準排水量 1200000t
最大速力 水上6000kt 水中 2000kt
武装
100口径610mmAGS 単装2基
100口径406mmAGS 単装8基
88mm単装バルカン砲 20基
各種ミサイルVLS 3000セル
127㎝拡散噴進ロケット砲 単装12基
61㎝各種魚雷発射管 60門

クラインフィールド、強制波動装甲、超高速推進用大型スラスター搭載。

本家鋼鉄の咆哮3ではリヴァイアサンのベースとなった超兵器。本作では高速で敵を撹乱、翻弄し、一撃離脱のスタイルで敵の戦闘能力を奪い去る戦い方がメインとしている超兵器となる。
この艦も複数の姉妹艦が造られ、ストレインジデルタと同様にマスターシップの破片を挿れる為の器のコピーが装備されている。

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