海龍のアルペジオ ーArpeggio of LEVIATHANー   作:satos389a

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今作はヒエイがリヴァイアサンごと智史の能力を無力化する為にある策略を仕掛けます、ですがあっさりと無効化されます。
そしてヒエイ達は文字通り智史に料理されて粉々にされてしまいます。
あと智史が群像達を鍛え上げる為に彼らを修練の旅に連れて行きます。
それとですが、前作の最後部分を一部修正致しました。
ご了承ください。
それではじっくりとお楽しみください。


第12話 ザ・クッキングタイムとオーバーキルと修練の旅

「皆、無事か!」

「無事です!」

群像達はヒエイ達の攻撃が始まってすぐに地下ドックに逃げ込んだ、そこでとりあえず出撃準備を整えていた。

「あれ、智史と琴乃はどうしたの?」

「智史の奴はヒエイに決戦を挑むつもりだ。」

智史がいないことに不思議がる蒔絵とその答えを出すコンゴウ。

「な、なんだって⁉︎あいつ本気であんな大艦隊に決戦を挑むのかよ!」

「彼はそのつもりだ、琴乃も一緒に。だがその戦闘に巻き込まれたら俺達はひとたまりもない。」

「それに、ヤマトも傷ついてる。逃げようとしてもまだ島が囲まれてる。今動くのは危険。」

「艦長、あなたの言う通り、その戦闘に巻き込まれる可能性もあります。ここは様子を見ましょう。」

彼らは結論としてここで一時待機して様子を見守ることにした、だがーー

 

「やはり、状況を判断して動くことを控えたか。無闇に飛び出しても私の足手まといになるだけだからな。」

「その通りね、ただそんな状況下だと言うのに動かないのは臆病過ぎると言うべきかしら?」

「まあ仕方が無いだろう。あまりにも戦闘のスケールが違いすぎるのだからな。」

そう会話する智史と琴乃。実際リヴァイアサン=海神智史は途轍もない圧倒的な力を持ち、更にそれにも満足せずに己を異常な勢いで更に磨いている。それに及ばなくとも霧も生き残るために凄まじい力を身につけているのだ。そして群像達はその戦いの蚊帳の外だった。

「さあ、始めようか。」

「ええ。」

「重力子機関及び波動エンジン始動、メインスラスター群に動力伝達開始」

そしてリヴァイアサンの機関群が唸りを上げて膨大な推進力をスラスター群に与え、その巨大な船体を動かしていく。

「まずはヒエイの攻撃を全て受けよう、奴にその攻撃を全て受け切り、吸収した所でこちらの無傷の姿を見せて、より深い絶望と恐怖を与えるために。」

そしてリヴァイアサンはヒエイの艦隊へと突っ込んでいく、ヒエイの策略にあえて引っかかったように見せかけて。

「今です、Z弾を発射しなさい!」

すると硫黄島を取り囲んでいるヒエイの艦隊から無数の弾頭が飛んでくる、そしてリヴァイアサンに直撃し周りの空間を凍らせていくーー

「智史くん、これって?」

「ありゃ冷却弾だ。だが、うちを甘く見るなよ。」

冷却弾はヒエイがリヴァイアサンを構成している材質を絶対零度まで冷却し凍結させることでリヴァイアサンの自己再生強化・進化システムを無力化し、僅かな衝撃でリヴァイアサンを崩壊させるためにハボクックから調達したのだ。

リヴァイアサンが冷却弾の白い煙で見えなくなった、そして彼女の思惑通りになった、はずだったーー

「冷却弾爆発地点に非常に巨大なエネルギー反応!」

「何ですって⁉︎」

「ま…まさか…。」

そう、白い煙から出てきたのは無傷のリヴァイアサンだった、リヴァイアサン=海神智史はレーザー冷却の原理を逆用して冷却弾の粒子に自身の構成原子を使用して対抗した。本来なら冷却弾が的確なタイミングで原子にぶつかることで原子の運動エネルギーを減殺するどころを、そのタイミングを完全にズラしてエネルギーを減殺するばかりか爆発的に増大させてこの攻撃を完全に無効化、吸収し自己強化に回してしまったのだ、そもそもリヴァイアサンは素粒子などとっくに通り越したレベルで超絶な自己進化を遂げてしまったので(今も猛烈な勢いで自己進化を続けている)そのようなことをしなくても余裕で今の攻撃を全て無効化、吸収し、自己強化に回せてしまうのだが…。

ーー蒔絵、お前の知識と思考アルゴリズムは少しは役に立ったぞ。

 

「な…なんて奴…。もっと撃ち込みなさい!」

あまりに異常な光景に動揺するヒエイ、再び冷却弾が多数撃ち込まれる、しかし結果は同じだった。

「冷却弾、全弾使い切りました、弾切れです!」

「奴は…、化け物なの…?」

「どうした、もう終わりか?」

「ヒィッ!ぜ、全艦攻撃開始しなさい!」

そして凄まじい規模の攻撃が開始される、あらゆるレーザー、光弾、ミサイル、ロケット、魚雷が超兵器、大戦艦、重巡洋艦、軽巡洋艦、潜水艦、航空機から放たれ、次々とリヴァイアサンに叩きつけられる、その光景は多彩な花火が次々と打ち上げられているようであった、しかしその攻撃全てが無効化され、吸収され、自己強化に回されてしまう。

「貴様等の攻撃はその程度か?では今度はこちらからだ。」

すると上空に巨大な空間の歪みが発生しそこから無数の艦載機が飛び出してくる、同時にリヴァイアサンからも無人戦闘機 E.D.IやF/A-37 タロンが次々と生成され飛び立っていく。瞬く間に空中で乱戦が起き、次々と航空機が爆発して墜落していく、しかも墜ちていくのはヒエイ達の方のものばかりだった。10機のヴリルオーディンがその乱戦を必死に掻い潜って攻撃をリヴァイアサンに仕掛ける、しかしその攻撃も無効化されて同じ展開に終わる。

「本家海龍を無数の光学兵器やミサイルで苦しめて沈めた奴か、忌々しい。」

そしてリヴァイアサンの前部2基の砲塔レールガンが旋回し、仰角を上げてヴリルオーディン達に狙いを定める。

「墜ちろ」

するとリヴァイアサンの砲塔レールガン群が速射砲の如く青白い光弾を次々と放ち、次々とヴリルオーディン達の機体に大穴を穿ち、吹き飛ばしていく。そして彼らは次々と爆発、四散して鋼鉄の臓物を海に撒き散らしていく。

「沈め、化け物!」

「これでも食らえ!」

ヴィルベルヴィントとシュトルムヴィントが必殺の203㎝量子魚雷や侵食魚雷を次々とリヴァイアサンに叩きつけるーー

「き、効かない⁉︎」

「無駄だ。全て自己強化に回した。」

「なら、当ててみやがれーー」

「貴様等は速さだけが取り柄か?その速さも無意味だ。」

「なっ、なんだと⁉︎」

「散れ。」

そしてリヴァイアサンのレールガンが唸りを上げる、一瞬で2隻は巨大な爆発と水柱を引き起こして跡形もなく爆沈した。

「いっ、嫌ぁぁぁぁ!来ないでぇぇぇぇ!」

「こ、こっちに来るなぁぁぁ!」

グロースシュトラールとナハトシュトラールが艤装を展開してβレーザー、γレーザー、光子榴弾砲に114㎝砲まで叩きつける、リヴァイアサンの表面で光子榴弾砲の光弾の白い爆発が次々と起こる、しかしそれが終わった後には無傷のリヴァイアサンの姿があった。

「もうお終いか?」

「ヒィィッ!」

あまりに一方的な現実から必死に逃げようとする2隻、しかしその現実は変わらない、そして2隻の重力子機関が悲鳴を上げて次々と破損し、縮退エネルギー量がどんどん落ちていき、それに伴いレーザーの光も細くなっていく。

「嫌ぁぁぁっ!お願い、動いてぇぇぇ!」

「誰か助けてぇぇぇ!まだ死にたくないぃぃ!」

そんな2隻の姿を見苦しく感じる智史。

「貴様等は見苦しいわ。一撃でバラバラにしてやる。」

そして今度はリヴァイアサンの重力子X線レーザー発振基が唸り、青白い光束が2隻を直撃する、2隻は上部構造物諸共船体を抉り飛ばされて、跡形もなく爆散した。

「さあ、クッキングタイムの始まりだ。」

そして智史は艦載機の大群を次々と生成するとヒエイ達に襲いかかっていくーー

 

 

 

ーー大戦艦ヒエイの独白ーー

 

 

ーーリヴァイアサン…、奴は一体、何者なのですか?

 

奴、リヴァイアサンは突然として出現した、ムサシ様はそれをアドミラリティコードに従わざる存在として奴を始末せよと潜水艦の2人に命ぜられた。だがそれは想定外の事態を招き、潜水艦の2人が奴に始末されたことを皮切りにコンゴウ様の艦隊やナガト様の決戦艦隊が次々と奴に殲滅されていった。私はナガト様が奴に殺されたということに激しく怒り狂い、奴を殲滅すべく大艦隊を編成し、自らその艦隊を率いて出撃した、だが奴は戦うごとに異常な勢いで強くなっている、おまけにナガト様の決戦艦隊からの交信記録によると全ての攻撃が吸収され、そればかりか逆に奴を強くしているということが判明した。しかも艦載機まで多数運用してナガト様の艦隊を悉く屠ったようだ。それらを封じるために私は航空戦力を多数用意し、ムサシ様の命を受けたハボクックから冷却弾を調達した、奴はいつも通りのパターンで行動を開始した、奴は私の作戦にまんまと釣られた、そして冷却弾を叩き込んで奴に止めをさせる、はずだったーー

 

「冷却弾、無力化されました!」

「冷却弾の効果確認できません!」

 

だが奴はそんな私の努力を嘲笑うようにその攻撃を無力化してみせた、そして奴は空間を歪め、自身からも無数の戦闘機を繰り出すとこちらの艦載機を悉く駆逐してしまった。

 

「嫌ぁぁぁっ!来ないでぇぇぇ!」

「お願い、殺さないでぇぇ!」

 

奴は、クラインフィールドを展開し必死に抵抗する超兵器達を嬉しそうに次々と惨殺すると、次は私達の番だと言わんばかりに無数の攻撃機、攻撃ヘリを生成した。

 

「くっ、攻撃が効かない!」

「何て奴らだ…悪魔め!」

「お願い、まだ死にたくない!」

「こんなの嫌ぁぁぁぁ!」

 

そして奴が創り上げた死の天使達は残っていた空母群や重巡洋艦、軽巡洋艦、潜水艦に次々と襲いかかっていく。もちろん彼らも必死で抵抗したが、天使達はその攻撃を次々と無力化、吸収してしまう。そして更なる猛攻が加えられる。

 

「ーーぎゃぁぁぁぁ!」

「やめてっ、いっ、いやぁぁぁぁ!」

「私の、足がぁぁぁぁ!」

「こ、来ないで、きゃ、きゃぁぁぁっ!」

 

そして天使達は彼らを嬉しそうに蹂躙し、嬲り殺しにしていった、気がつくと残っているのは私とミョウコウ、ナチ、アシガラ、ハグロの4人だけだった。

 

「艦隊…壊滅しました…。」

「残るのは我々か…。なんて奴だ…。」

「むしろこの方が楽しいじゃん、あいつと一騎打ちしたい!」

「アシガラ、状況を読みなさい!」

 

そして彼らを殺し尽くしてご満悦の奴が私達を食い殺そうと嬉しそうにこちらに向かってくるーー

 

「見つけたぞ、ヒエイ。さて、貴様を解体してやろう。」

「いっ、嫌ぁぁぁぁ!あたしに近寄らないでぇぇぇ!」

 

あまりの恐怖にハグロは艤装を展開して高速でこの悪夢から逃げ出そうとする、だがーー

 

「誰が逃げていいと貴様に言った?沈め。」

 

ーーキュオオン!

 

ーーズガアァァァン!

 

奴の主砲が逃げるハグロに狙いを定める、そして奴が唸りを上げた次の瞬間、彼女のいた場所に非常に巨大な水柱が立つ、その跡に彼女の姿はなかったーー

 

「ハグロが、い、一撃で…。」

「くっ、こうなったら、足掻くしかない!」

 

ミョウコウが艤装を展開して奴に巨大な超重力砲の砲身を向ける。

 

「ナチ、照準の調整を頼む!」

「了解、照準、誤差修正完了しました!」

 

そしてナチのデータに基づき彼女は奴、海神智史が立っている場所に超重力砲を滅茶苦茶に乱射した、そのぐらい彼女は迫り来る死の調べから必死に逃げたかったのだろう。

だが海神智史は非常に強靭なクラインフィールドを展開してこれを悉く受け止め、吸収してしまった。

 

ーードカアァァァン!

 

「超重力砲と重力子エンジンがオーバーワークで破損しただと⁉︎くっ、動け!」

「貴様の抵抗は終わりのようだな、ミョウコウ。まずは貴様から料理してやろう。」

「や、やめろ、やめてくれぇぇぇ!」

 

ーーズガガガガガガァァァン!

 

超重力砲を乱射し過ぎたせいで動けなくなった彼女に奴は副砲のようなもので容赦なく彼女に片っ端から大穴を穿つ、そしてその大穴を次々と穿たれた彼女の船体は大爆発を引き起こした。

 

「みょ、ミョウコウ…。やろう…ナチは殺らせないからな〜!」

「アシガラ、止めなさい!」

 

アシガラがナチを殺らせまいと奴に突っ込んでいく、それに対して海神智史は嬉しそうに微笑む。

 

「これでも食らえ〜!」

 

ーービイィィィィン!

 

「次はこれだぁ〜!」

 

ーーブォンッ!

ーービュゥゥゥゥン。

 

彼女は艤装を展開して主砲や魚雷を撃ちまくり、そして重力子の銛や攻撃用ポッドで奴を攻撃する、更には重力子の剣まで展開して奴に斬りかかる。だが、彼女がこのような猛攻を加えても奴の外殻に傷一つさえ付けられず、当然奴は平然としていた。そしてーー

 

「どうした、もう終わりか?」

「え?」

 

ーーズガガガガガガガガ‼︎

 

奴は邪魔だと言わんばかりに複数の機関砲をアシガラに向けて撃つ、それはアシガラの船体を次々と直撃する。しかもその威力が尋常ではない、一発一発の威力が超戦艦級の超重力砲を軽く上回るものであり、それが大量に彼女の船体を直撃するのだ。瞬く間に彼女の船体は蜂の巣のように穴だらけにされ、爆発四散した。

 

「ア…アシガラ…。い、嫌ぁぁぁぁ!」

「くっ、なんてこと…。」

 

アシガラが沈んだという事実を受け入れられないナチ。彼女は怯え、発狂してしまう。私はあまりに一方的な虐殺と言っていい光景を見て、体が動かなかったーー

 

「さあ、フィナーレだ。じっくりと切り刻まるのを楽しみにしながら死んで行くがいい。」

「…ヒッ!」

「くっ…。」

 

そして奴の主砲、副砲、機関砲が私達に対して放たれる、私達はクラインフィールドを展開していたものの、すぐに破かれ突破され、瞬く間に穴まみれにされてしまう。そして私の船体が爆発したところで私の意識は途切れたーー

 

「あれ?生きてる、み、皆はどうしたのですか⁉︎」

「生徒会長、我々は奴に回収されてしまい、ここに放り込まれてしまいました。」

 

気がつくと私はミョウコウ達と共にリヴァイアサンの拘置室に入れられていた、奴はその攻撃で壊れかけた躯体のまま海底に横たわっている私達を回収し、私達の躯体を修復した上でここに放り込んだのだ。脱出しようにもこの拘置室は非常に強靭な素材で出来ており、換気用ダクトと水回り以外のパイプも用意されていない。私達は何も出来ないままここで過ごすしかなかったーー

 

 

 

ーー海戦終了直後、リヴァイアサンにて。

 

「智史くん、楽しめたとはいえ、今回もやり過ぎじゃない?」

「奴らを面白半分で盛大に甚振ったからな。やり過ぎと言えばやり過ぎだろう。まあいい、勝てたからな。」

「そうは言っても、群像くんのプライド、やむを得ない事情があるにせよ、見事にぶっ潰しちゃったんじゃないの?」

「そうだな、私は自分が満足すればそれでいいと考えている、だがそのせいで他人が酷い目を見ることになることはある。」

「相変わらず正直で可愛い子ね〜。でも群像くん落ち込んじゃうよ?」

リヴァイアサンの艦橋でそう会話をする智史と琴乃。既にリヴァイアサンには青いバイナルは灯っていない。夜空に雲はなく、満月が海を照らしていた。

「海底で気絶しているヒエイ達を回収しておこう。後でさらにじっくりと甚振るために。」

「相変わらず自分の欲望に正直ね〜。でも彼女達悲惨な目にあって可哀想よ?」

 

 

同じ頃、硫黄島の地下ドックでは。

 

「うわあ…。もはや一方的な虐殺じゃねえか、これ…。」

「幾ら何でもやり過ぎとしか言いようがありませんね…。」

「こんな大艦隊が軽く吹っ飛ばされてしまうなんて…。凄すぎますね…。」

「もはや虐殺以外の何物でもないな」

「すげえ!智史悪い人たちみんなやっつけちゃったんだね!」

「ヒエイは対策をしていたはずだ、そんな彼女の艦隊を軽く一蹴するとは…。」

彼が見せた一方的なクッキングに様々な反応を示す群像達。その感想の意味の殆どはオーバーキルではないかというものだった、そして…。

「私が、ムサシを止められなかったせいで仲間が、次々と智史さんに…。彼に非はない、でもこのままの状態だとムサシに従っている仲間は彼に皆殺しにされてしまう…。」

リヴァイアサン=海神智史が見せた圧倒的、いや一方的な力の前に次々と惨殺されていく霧を見て、自身がムサシを止められなかったことと、その戦いを止められない自身の非力を嘆くヤマト。

「でも何としてもこの戦いを終わらせなくては、最後は自身の手で決着をつけないと…。」

何としても智史に仲間が皆殺しにされる悲惨な未来を避けるためにヤマトは行動を彼と共にする、彼による徹底的なオーバーキルを抑止するために。

 

 

「各ネットワークやレーダーで調べ上げ済み通りにヴォルケンクラッツァーの配下からの偵察機がこの状況を確認しに来たか。」

「智史くん、それどうするの?」

「もちろん叩き墜とす。でも私の姿はちゃんと撮ってもらう。そしてその姿を見て絶望に打ち震えて生き残る為に必死になって貰おう、私を更なる高みに導いて貰う為に。」

そしてリヴァイアサンのミサイルVLSのハッチが開きミサイルが放たれる、そしてそのミサイルは偵察機を叩き墜とした。

 

 

ーーほぼ同時刻、ハワイ近海

 

 

「やはりヒエイの艦隊は悉く粉砕されたか…。」

「しかもムサシに命じられたあなたの部下のハボクックが用意した冷却弾は悉く彼には通用しなかったわ、そればかりか逆にエネルギー源を増やすだけに終わった。」

「何て奴だ…。物理法則を平然と無視している、奴には物理的常識が無いのか?」

「最終的に叩き墜とされたとはいえ、彼はあえて私の偵察機に撮影されました、なぜでしょうか…。」

「オウミか。何事も無かったように平然としている姿を見せることでこちらを深い絶望に叩き落すのが狙いだろう、実際奴の異常な力の前に私は不安で一杯だ、奴に部下が次々と殲滅されるのではないのかと。」

「ヴォルケン様、あなたはムサシに排除されそうになった私を受け入れ、守ってくれました。あなたの力なら彼を倒せると信じています。」

「そうか?何れにせよ奴は無常識な強さを持つ相手だ。気を抜くな。何としても生き残らなくては…。」

 

 

そして、硫黄島沖ではーー

 

「智史、俺達はしばらくここには戻らない、アメリカに振動弾頭を届けたいし世界に風穴を開けたいからだ。」

「群像、その必要性は無くなりつつある、実際私が創り変えてしまったとはいえ、ついに人類が反撃を始めたようだ。彼らは東南アジア海域で霧と積極的に交戦し、成果を上げている。」

「そうか、それはよかった。」

「呑気に「よかった。」と言えるか、ボケナス。私に脅威を覚えた各地の霧が積極的にハードやソフトを強化している、今の予定でアメリカに行くとなると戦闘経験が足りないまま、霧の各方面艦隊群の中でも強力な霧の太平洋艦隊と交戦することになる。特にヴォルケンクラッツァー級は強大だ。太平洋の他に北海近くにもう一隻いる。今の私ならヴォルケンクラッツァー級2隻も含めた全ての霧の艦隊など余裕で跡形も無く吹き飛ばせるが、それだとお前達はひよこのままだ。私が目を離したら一瞬で蹴散らされて終わりだろう、今から生き残る為の術を戦闘経験と共に教え込んでやる。」

「それは、どういうことだ?」

「つまり今のお前達は、私抜きだとあっさりと消される存在だということだ。幸い実戦経験を積むための霧はトラック沖やニューギニア近海、オーストラリア近海にも存在する。そこでじっくりと術を教えてやる。」

「ま…、まあ、ありがとう…。」

「智史くんったら本当は優しいのね、他の人はそんなこと全然しないのに。」

「生き残るために為すべきことを徹底的に教え込むことは大切だからだ。教え方が甘いと結局はダメだ。」

「そうね、しつけが甘いとどんな子供もダメになるからね。」

智史と群像の会話を聞いていた琴乃が彼の考えに共感する。

 

「そうだ、群像。これを使え。」

智史が群像を含めた401クルー達にそう呟く、そして海面に歪みが生じ強い閃光が輝き始める、そしてーー

 

「何だ、これは…。」

「おいおい、今度は巨大な基地かよ、本当に贅沢万歳だわ、こいつ…。」

「ナノマテリアルを幾らでも生成できる、こんなものを平然と作るなんて…。今の私達には贅沢品と言ってもいい代物だというのに…。」

「超巨大ドック艦スキズブラズニルだ。こいつは私がお前達のそばを離れても大丈夫なように強力な基地機能を備えた移動基地だ。ここで弾薬やナノマテリアルの補充が利くようにしておいたぞ。もし不足があったら私に尋ねるがいい、但し、戦闘に関しては最低限の手助け以外は何もしないぞ、自分で倒さなければ強くなるための自信は付かないからな。」

「最低限の手助けとは言っても些か規模が大きいですね…。でもこれで補給に関する問題は解消されてしまったも同然でしょう。」

「これで取り敢えずはいいだろう、よし、まずはトラック沖に向かうぞ!」

そしてリヴァイアサンとスキズブラズニル、401、タカオ、ヤマトは艦隊を組んでトラック沖に向かっていく。

智史による彼らの為の戦闘訓練と生き残る為の術を教える為の旅が、今始まったのだったーー




今回登場した兵器

冷却弾

通称Z弾。レーザー冷却の原理を利用して原子に粒子を的確なタイミングでぶつけることでその原子の運動エネルギーを減殺し、最終的には絶対零度にまで冷却してしまう兵器。
ヒエイがリヴァイアサン=海神智史対策として使用したものの、智史はその原理を逆用し、タイミングを悉くズラしてしまうことで爆発的に原子の運動エネルギーを高めてしまうことで無効化、吸収して、そのまま自己強化に回してしまった。
(そもそも智史は素粒子などとっくに通り越したレベルで超絶進化を遂げているので(今も進化を異常な勢いで続けている)絶対零度にまで冷却されても機能は全く低下しない。)

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